【TGS2014】アジア・ゲーム・ビジネス・サミットで問われた日本のゲームアプリの真価
2014-09-18 19:06 投稿
日本のゲームは世界で通用するのか
東京ゲームショウ2014初日の本日、“Asia Game Business Summit 2014(アジア・ゲーム・ビジネス・サミット2014)”が行われた。
今回で5回目となる本フォーラム。「ジャパンコンテンツ争奪戦~日本のゲームタイトルは本当に魅力的なのか~」という副題のもと、アジア各国のマーケットの代表となるキーパーソンが集まった。
まずは、主催元である日経BP社の渡辺敦美氏が登壇。東京ゲームショウ2014においての海外からの出展社が過去最高であり、グローバル化が進んできているということ、トレンドの中でも最近『パズル&ドラゴンズ』や『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』などのスマホ発のゲームが上位を占めている旨が語られた。
その中で、「ゲームコンテンツがアジアに進出して通用するのかどうか」と、本イベントのテーマを投げかけて挨拶を締めた。
渡辺氏の挨拶のあとは、ステージ上に今回のフォーラムに参加する各国のキーパーソンが登場。自己紹介とともに、現在自国におけるゲーム市場の現状を話した。
①インドネシアのXL Senior GM Digital Entertainment
Revie Sylviana氏
②シンガポールのTMGamer
CEO Alvin Yap氏
③中国の盛大遊戯(シャンダ・ゲームズ)
総裁 銭東海氏
④韓国のGAMEVIL 事業開発本部 本部長/GAMEVIL JAPAN
代表取締役社長 李京一(イ・キョンイル)氏
⑤株式会社グリー
取締役 執行役員常務 青柳直樹氏
⑥株式会社ディー・エヌ・エー
取締役 小林賢治氏
アジア各国におけるゲーム市場の現状
インドネシアの場合
近年、とくにAndroidの使用率が急速に伸びている、とはいえまだまだ初期のステージで、どのようにアプリを使っていくかを国民が知ることだと、まずは語ったSylviana氏。
そんな中でもアプリを使っている人は、月に大体15ドルから20ドルくらいモバイルに使用しているそうだ。現状の課題としては、「クレジットの普及率が低く、20%くらいのため、どうやって大きな市場のように到達させるか」とのことだった。
シンガポールの場合
「東南アジアの市場で一位を目指すことが目的」と語るYap氏。まだネット環境やデータプランなどが整っていない新興国こそ、つぎの舞台であり、それを目標としているのだそう。これからスマートフォンアプリの波が来ると踏んで、100年に一度のチャンスと意気込んでいた。
中国の場合
日本のスマホアプリのタイトルを現地で配信している銭氏は、現在中国はすさまじい成長をしていると語る。そんな中国にあるグーグルプレイでどう展開していくか、さらなるIPの発展を考えているとした。
韓国の場合
数々のジャンルのモバイルゲームを手掛ける李氏。「韓国のゲーム環境はすで整っており、現状ひとつのゲームにつき1000億ほどの売り上げが期待できる」とのこと。グローバルな展開をしていく中で、さまざまな企業と協業していきたいのだそうだ。
日本の場合
スマートフォン向けのゲームが出始めたときのことを考えると、かなりユニークなゲームがでてきたと語る青柳氏。多くの海外企業と協業しながら、グローバルにやっていくことが大事と話す。
また、小林氏は日本ではリアルタイム系のゲームや短時間、高頻度のゲームが着目されてきたこと、配信後の運用の大切さを語った。
アジア各国から見た日本のコンテンツ
続いて議題に挙がったのは、「日本のコンテンツは本当に魅力的なのか?」というもの。スマホのアプリに対して、海外からの買い付けが増えている現状に着目して、海外から日本のアプリはどう映っているのかを渡辺氏が聞いた。
インドネシアの場合
いろいろな人が集まるインドネシアは多文化で、それぞれが独特の文化を形成しているそうだ。そんな中でも日本のコンテンツはいずれも魅力的で、非常に影響力が高い。「インドネシアの各所で日本のマンガやゲームのキャラクターが使用されている」とSylviana氏は語る。
シンガポールの場合
日本のコンテンツはいろいろとローカライズされており、非常に多くの人に認知されているのだそう。とくにアニメや特撮は海賊版から入ることも多く、それだけ影響力は高いのだそうだ。
中国の場合
「日本のコンテンツは大衆がわかりやすく、商品化しやすい」と銭氏。IPが浸透しているものは、それだけ人気が出るのだそうだ。しかし、逆を言えば日本の新たなIPをそのまま持ってきても浸透するのが難しく、そこをどうやって認知させるかが問題だと語る。
韓国の場合
「日本のコンテンツは、ほとんどが韓国で人気」と李氏。しかし、韓国ではゲームがあまりよく思われていない傾向にあり、文化として認識されていないのが現状にあるという。そんな中、頭角を現してきたのがモバイルゲームだ。パーソナル化したモバイルゲームは隠れて行えるため、いま非常に成長しているそう。
ただ、「日本のものとは作りが少々違うため、さらに日本のゲームを浸透させるには、さらなる工夫が必要」と語った。
日本の場合
日本の企業の視点から見て、青柳氏と小林氏は、日本のものを海外にそのままもっていくのはなかなか厳しいことを挙げる。
他国では、日本とゲームの遊びかたや通信方法が異なるので、日本でのやりかたでは通用しない(小林氏)と苦笑いを見せた。しかしながら、既存のIPを使ったものの爆発力は相当なものがあるそうで、協業をやることが大事なのだと語った。
ここで、モデレーターの渡辺氏より、では日本と海外で遊びかたが異なるのはどういった部分かと問われ、「日本では昔からなんとなく浸透している、このボタンを押せばダッシュ、このボタンを押せば決定という風潮が形成されていない」と小林氏は話す。そのために、そういったものをどう作っていくのかが重要なのだそうだ。
李氏はそれを受けて、「両国が協業して、互いのよい部分を融合させることが大事」と答えていた。
さらに渡辺氏は、どうすれば課金を多くできるようになるか質問を投げかける。
それに対し、Sylviana氏は、グーグルプレイやクレジットカードの普及率がインドネシアではまだ低いこと、チャージしても少額であるということを挙げ、課金アイテムをどう工夫して売り出すのかが課題だと語る。
続けて、「進出するのであれば、人口や経済状況のよくなるであろう1‐2年後がベスト」と答えた。
日本企業がこれからすべきこととは
協業が大事だと語る登壇者たち。そこで続いて、日本企業と海外企業が提携するに際し、準備すべきことを問われる。
各国の代表者たちからは、「日本で人気のあるタイトルでもシステムをそのままではなく、進出しようとしている国に合わせたものにする」、「ビジネス環境が異なるため、進出タイミングが重要」、「手続き上複雑な部分があるので、もう少しIPやライセンスの管理体制を簡略化すべき」などといった課題が挙げられた。
それらの意見を受けて小林氏は、一番のポイントは現地の感覚をどれだけつかめるかだと語る。「日本ではCMでのマーケティング効果は高いのだが、海外だと豊富なチャンネル数があるためCMの有用性は低い」そうだ。リリース前にどうプロモーションし、どれだけ惹きつけられるのかが大事だという。
これに対し銭氏は、「元々有名なIP以外のコンテンツは、事前にコミュニティをつくってやらなくてはならない」と答えた。
日本のゲームやコンテンツは確かに人気があるものの、地域や、場所に合せたマーケティング、展開が必要ということが窺える。「日本で流行ったから海外でも通用するハズ!」ではなく、展開しようとしている現地をしっかり調査して、その地域の企業と協業を考える必要があるということだろう。
渡辺氏は、100年に一度のチャンスをものにするためにも、しっかりとしたビジネスパートナーを見つけるのが大事なのかもしれないと、この議題をまとめた。
各国が見据える2015年に向けてのビジョン
最後に渡辺氏が、それぞれに2015年に向けてのひと言を問う。
Sylviana氏「アグレッシブにゲームを展開していく」
Yap氏「新興国でも、グーグルプレイよりもいいプラットフォームを作っていく」
銭氏「協業を考えている日本の企業は、手を組むのならウチだと思ってほしい」
李氏「グローバルでのサービスをしっかりと提供していきます」
とそれぞれ答えた。
そして、「原点回帰で新しくゲームを開発し、創業10周年をいい意味で終えて、つぎの10年にむけてがんばりたい」と青柳氏が、「現地化した拠点を持っているという意味では、ウチは他国の企業からみれば協業先でありながら競合先でもあります。日本から進出するのであれば、むしろ我々も協業先のひとつとして考慮してほしい。それから、コンテンツを作る人にしっかり利益が還元されるものを作っていきたい」と小林氏が語り、本フォーラムは幕を閉じた。
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