【TGS 2014】基調講演第1部・ゲームシーンの“いま”をリードする面々がグローバルビジネス成功への道筋を語る
2014-09-18 15:59 投稿
国内外からヒットメーカーのトップが集結!
2014年9月18日、千葉・幕張メッセにて、日本最大のゲームの見本市“東京ゲームショウ 2014”が開幕した。ここでは、初日に行われた基調講演第1部の模様をリポートしよう。
第1部のテーマは、“多角化するゲームプラットフォーム× グローバル化するゲーム= 成功の道筋”。家庭用ゲーム機やPCだけでなく、スマートフォンやクラウドなどネットワーク接続を前提としたプラットフォームが全世界で幅広く行き渡りつつある中で、グローバル展開を前提にしたビジネスをいかに成功に導くか? この、いまゲーム業界の誰もが頭を悩ませているテーマについて、スマートフォン向けゲーム市場で成功を収めている企業のトップが集まり、現時点での進捗状況や、今後に向けての課題などを、それぞれの視点から語っていった。登壇者は以下の通り。
◆高橋 英士氏(エイリム 代表取締役COO)
◆里見 治紀氏(セガネットワークス 代表取締役社長 CEO)
◆馬場 功淳氏(コロプラ 代表取締役社長)
◆浅沼 誠氏(バンダイナムコゲームス 取締役)
◆Alex Dale氏(King Chief Marketing Officer)
◆鵜之澤 伸氏(コンピュータエンターテインメント協会 会長)
(モデレータ)日経BP社 取締役 浅見 直樹氏
まず冒頭で鵜之澤氏が登壇し、挨拶を述べるとともに、本講演を企画した意図について説明した。同氏は、近年のゲーム業界が激しい変化を続けている中で、毎年“主役”が変わっている状況であると指摘。そして、プラットフォームがスマートフォン中心に変化し、今後グローバルに展開していく流れが明確な中で、「勉強会、情報交換をしたい」(鵜之澤氏)という意図で、今回のパネラーに集まってもらったのだという。
各パネラーが登壇し、自己紹介が終わったところで、ここからはモデレータの浅見氏からの問いかけに応じて、各自がコメントしていく展開となった。最初のお題は、“ここまでの1年の総括と、2015年の展望”。まずは各自が、ここ1年間での注目トピックを挙げていった。
最初に回答したエイリム・高橋氏は、「直近で気になっているのは動画」と即答。高橋氏は、スマートフォンが普及して定着し、スマホで動画を見ることが普通になってきたことで、「メディアが地殻変動を起こすのではないか」(高橋氏)と見ているのだそうだ。またゲーム実況のムーブメントについても、プロモーションの観点から見逃せない、と述べた。
続いてコロプラの馬場氏が注目トピックとして挙げたのは、ソフトバンクによるSupercellの買収だ。これは2013年10月の出来事で、「1年前のことですが、1年経っても、いちばんのホットトピックですね」(馬場氏)。また最近注目していることとして、キャリアによる通信制限について言及。馬場氏は、実際に『白猫プロジェクト』を遊んでいた際に、通信制限でイライラさせられた経験を披露しつつ、「通信量との折り合いをどうつけていくかが、つぎの焦点になると思います。ただゲームは収益性の高いビジネスなので、(キャリアにも)がんばって通信容量を上げてもらえるといいのですが」と語った。
つぎにセガネットワークス・里見氏は、最近の大きな注目ポイントとして、課金ベースでは日本が世界でもっとも大きいスマホアプリ市場になったというデータを挙げ、「ここ最近ゲーム業界では、日本が世界における話題の中心になることはなかったですが、スマホでは、日本が世界をリードしている。これは興味深いことだと思います」と語った。
これにバンダイナムコゲームス・浅沼氏も同意し、「課金額については日本の国民性もあるとは思いますが、独自のゲームアプリ産業が伸びてきたのかな、と」とコメント。そして直近の事象として、中国においてモバイルビジネスが加速してきていいる状況を指摘し、日本のメーカーがどう対応していくかが課題だと語った。
最後に、KingのDale氏がコメント。Dale氏は、欧米でも、スマホやタブレットの普及により、ゲーム人口が増えていると語る。とくに「50代の女性がカジュアルゲームをプレイするというのは、10年前にはなかった現象」(Dale氏)と、ゲームアプリが新しいファン層を開拓していることを指摘。また、スマホやタブレットでは配信が容易であることからグローバル展開がやりやすいことにも言及した。ちなみに日本市場については、「Kingの開発者たちも、『ソニック』を遊んで育ってきましたから(笑)」と、日本のゲーム文化への愛着について触れつつ、非常に重要視していると語った。
グローバル展開・その現状は?
続いては、グローバル展開についての話題に。各社ともに積極的にグローバル展開に乗り出しているが、まずは現状について語られた。
エイリム・高橋氏は、『ブレイブフロンティア』が韓国から台湾、中国へと展開し、その後英語圏がメインになってきている現状を説明。「コンテンツによると思うので、一概には言えないですね」(高橋氏)としつつ、まず日本国内で訴求できるものを作ったうえで、それを各言語に訳すだけではなく、いかにその地域に合わせるかが重要だと語った。
コロプラ・馬場氏も、さまざまな手法で海外展開を試みているが、その難しさを痛感していると語る。とくにマーケティング、プロモーションについては、「広くて深いので、どれだけお金を投じても枯れないんですね。どんどん入ってくるが、どんどんやめてしまう。ある意味怖い市場です」(高橋氏)との表現で、困難さを説明した。ただし一方で『白猫プロジェクト』は、まだ日本でしかリリースしていない状況ながら、香港、台湾のユーザーから普通にダウンロードされ、売上もけっこうな量が上がっているのだとか。以上を踏まえて高橋氏は、「工夫すれば、海外に通用するんじゃないかと思っています」との考えを述べた。
対してセガネットワークス・里見氏は、古くからゲームを展開してきたセガグループの一員らしい分析を披露する。まず、スマホアプリの特異性として、“先進国からではなく、世界で同時に成長している”、“配信が簡単である”ことを指摘。さらに、かつて誰もがマリオやソニックを楽しんでいたころのように、スマホアプリのユーザーにおいては、現時点ではまだ趣味嗜好がそれほど分化していない状況であると分析する。「だから、世界で同時に当たるタイトルが出てきています。チャンスが広がっている感じがしますね」(里見氏)。
バンダイナムコゲームス・浅沼氏は、自社で強力なゲームIP、アニメIPを多数擁していることを背景に、アジア圏でいかに展開し、どう遊んでもらうかが、これからの大きな課題であるとコメントした。
各国のランキングには日本の独自性が色濃く……?
つぎに、2014年9月17日における日本、アメリカ、フランス、インドネシアのApp Storeランキングを比較しつつ、各自の分析や所見を語っていくことに。ちなみにこのランキングについて鵜之澤氏は、「じつは、もっと日本製コンテンツが、海外でも上位に入っているだろうと思っていたのですが……」と、予想外な結果だったことを吐露。そうした部分も含めて、各自の考えを聞いていくこととなった。
まずKing・Dale氏は、同社の哲学として、各国におけるマーケティングでは、“オーディエンスを意識する”ことを貫いていると語る。これは日本でも、それ以外の国でも同様で、「とにかくオーディエンスを掴んで、そこからマネタイズしていくことを徹底しています」(Dale氏)。
バンダイナムコゲームス・浅沼氏は、日本のランキングの独自性を指摘すると同時に、世界でランクインしていないということは、これからランクインする余地があるということである、とポジティブにコメント。ただし、逆に日本が日本製コンテンツばかりということは、海外製のコンテンツが入ってくる余地があるということでもある、との見方を示し、「いかに対抗し、共存するかが大事になりますね」(浅沼氏)と語った。
セガネットワークス・里見氏は、ランキングがこうした結果になっていることについて、「日本のタイトルはイベントドリブンなところがありますから」(里見氏)と、集計時期によって結果が大きく変わるだろうとコメント。また、台湾、香港、韓国で人気となっている『チェインクロニクル』が、今後欧米で展開していく予定であることを説明し、今後の進展への自信を覗かせた。
コロプラ・馬場氏は、ランキングに登場しているタイトル自体に着目し、「海外ではシンプルで、競い合う要素があって、運用などで波がない。そういうコンテンツが受けるんだなと感じますね」と分析。コロプラでは、そうしたタイトルはまだリリースしていないものの、現在開発を進めているコンテンツのうち、7本中の2本ほどはそうした点を意識して制作しているものなのだそうだ。馬場氏は、基本的には“日本でいちばん強い企業”を目指しつつも、そうしたタイトルで世界にも進出し、いずれは売上に占める海外比率を4~5割ほどにしていきたいとの考えを述べた。
海外展開にいまだセオリーはなし? 各社が試行錯誤中
続いて、海外展開を成功させるためにするべきこととは何か? という話題に。各社の取り組みへの自己評価も含めて語ってもらうこととなった。
King・Dale氏は、『キャンディークラッシュ』を日本で立ち上げた当初には、「翻訳がとても悪く、甘いお菓子が苦いお菓子になっていたこともあります(苦笑)」など、数々の失敗を経験したと語る。現在の成功に至った大きな要因としては、日本のチームを作り、ローカルな視点から広告展開をしたことが、非常に重要だったと述べた。
エイリム・高橋氏も、プロモーションは非常に難しい課題だと語る。たとえばFacebookの反応ひとつとっても、「『ブレイブフロンティア』が日本で3~40000の“いいね!”だとすると、欧米では“いいね!”が軽く40万とかになったり」(高橋氏)と、大きな違いがあるのだという。『ブレイブフロンティア』の海外展開はgumiとの協業で進めているが、「やはり現地のスタッフとやらないと、ハマらないですね」(高橋氏)と痛感しているそうだ。
バンダイナムコゲームス・浅沼氏も、いまはいろいろな方法を試している段階だとのこと。全世界向けに日本人が運営したらどうなるか? 日本と世界の会社で同時にやったら? 100%海外拠点で進めたら……? さまざまなパターンを試し、コンテンツごとにどんな手法がベストなのかを探っているそうで、「実地も含めて考えながらやっていますが、難しいですね」(浅沼氏)。
セガネットワークス・里見氏は、自社の現状を「いまは30点くらいです」(里見氏)ときびしく評価。全売上に占める海外比率は2割ほどにとどまっているが、いずれは5割以上にしなければならないと考えているそうだ。そのために、まずは日本のスタジオは日本向け、欧米のスタジオは欧米向けのコンテンツをしっかり作って当てていく。そのうえで、各国のスタジオがローカライズ&カルチャライズを進めたり、各地の企業と協業したり、といった手法を使い分けながら展開していく方針だと説明した。
コロプラ・馬場氏は、海外展開において大事なことは、“ローカライズではなくカルチャライズ”、“マーケティング”、”なによりもおもしろいゲームを作ること”であると指摘。そのうえで自社のこれまでの展開について、「日本により過ぎている時代があったのは、あまりよくなかったですね」と振り返り、自己採点は「3点くらい」(馬場氏)。ただし、それは「まだ97点も上げられる余地がある」(馬場氏)ということでもあると語り、これからの上昇に向けての意気込みを強調した。
2015年はどんな変化が……?
最後に、今回のパネルディスカッションの感想と合わせて、2015年の目標や展望が語られた。
【鵜之澤氏】
それぞれに多種多様な考えをお持ちですが、海外へ、というベクトルは同じですよね。このパネルディスカッションから得たことで、来年同じことをやったときには、ランキングが変わっていると思います。また、馬場さんの「97点伸ばせるチャンス」というのは、たくましさを感じました。期待しています。
【コロプラ・馬場氏】
まずは3点を20点、30点くらいにはしたいですね。来年ではがんばってもそれくらいが限度だと思いますので。そして事業は長く続くものですから、継続的に良くしていく努力を続けたいと思います。日本市場においても、まだまだ全然だと思っているので、そこは手を緩めることなく、おもしろい新作を出し続けたいと思っています。
【King・Dale氏】
2015年も、すばらしいゲームをこのままどんどん出していきたいですね。まずは本日(2014年9月18日)、『ペットレスキュー』を日本でリリースしました。私自身このゲームが大好きで、665レベルがあと少しで終わるほど遊んでいます。しかも、アイテムに課金せずにです。フリー・トゥ・プレイであることは、2015年ではさらに重要になってくると思います。
【バンダイナムコゲームス・浅沼氏】
まずは中国展開というところで、すでに発表した通り、DeNAさんと、『ワンピース』を中国で、近日中にスタートします。そして2015年には『NARUTO-ナルト-』をテンセントさんといっしょに始めます。そして北米、欧州も当然重要です。我々もセガさんと同様に、アミューズメント事業も家庭用ゲーム事業もあり、玩具もありますから、総合的にどううまく展開できるかを考えながら、グローバル化を進めていきたいと考えています。
【エイリム・高橋氏】
我々の会社は5~60人規模で、開発スタジオに等しいので、まずは『ブレイブフロンティア』をよりよくしていくことですね。そして新プロジェクトというところでは、大きな会社さんとは違って、ちょっと話題性で勝負したいと思っていて。年内にいろいろ発表させていただいて、それが世界中に広まるスキームでトライしたいと思っています。
【セガネットワークス・里見氏】
我々はグローバルでトップ3を目指すと公言していますが、トップ3に入るためのいままでの最低条件が、スマホ市場だけで、グロスで1000億円を売り上げないとダメ、という規模だったと思います。しかし2015年もっとスマホ市場が伸びますので、1500億、もしかしたら2000億円は売り上げないと、というところまでいくかもしれません。まずは、直近で1000億まで伸ばしたいな、というのが個人的な目標です。
業界的には、PCでもコンソールでも日本は元気ないと言われてきた中で、日本の企業のタイトルがこれだけ注目されるのは10年ぶりくらいだろうと思います。2015年は、我々のタイトルも含めて、日本発の会社、タイトルが、世界を席巻できるし、しないといけないと思っています。
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