スクエニ安藤ブログ“スマゲ★革命 シーズン2 SP対談(第3回)「『チェンクロ』の生みの親に問う 真のゲーム創りとは?」

2014-01-23 17:02 投稿

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『チェインクロニクル』の生みの親、ディレクターの松永純氏とプロデューサーの新小田裕二氏と対談した内容を、全4回に分けてお届けしている対談記事も、いよいよ後半戦に突入。今回は、“スマゲ業界のこれから”という一点に焦点を当てた内容になっている。今後の業界動向が気になる人はお見逃しなく!

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▲(写真左から)新小田裕二氏、安藤武博氏、松永純氏。

スマゲは次のステップへ

安藤 松永さんがやられていることは、現在のスマゲ作りにおける最先端だと思います。これまでのスマゲ製作者の中には、「所詮は電話で暇つぶし」ということで、スマホにおけるゲーム作りを、専用ゲーム機とくらべて無意識に手を抜くというか、軽視してきた人もいたと思うんですよ。それがお二人の登場によって、徐々にディレクターの色や作品論というものが語られる時代になってきた気がします。

松永 そうですね。そうあるべきだと思います。世界観やゲーム性の濃い作品が出ないと、ラインアップがすべて同じようなものになってしまいますし。

安藤 最近では、作品論に踏み込んで作られたスマゲがたくさんのお客様に支持され、結果を残し始めています。これからは参戦してくる人ももっと増えて、スマゲ業界はもっと面白くなってきますよ! それと同時に、多方面の思想を全部飲み込んでしまうスマゲの底力は、改めて凄いなと思いましたね。

松永 ランキングのラインアップを見ても、それは感じますね。ひょっとするとちょうどいまこの時期が、もっとも多様なタイトルが集まっている時期ではないかと。濃いゲームもランキングに乗るようになってきたし、いわゆる典型的なソーシャルゲームもランキング上位にいて、さらには『LINEゲーム』のようなカジュアルゲームも上にいますから。

安藤 デバイスとしても面白いし、市場としても面白いですよね。みんな早く作ればいいのに。新小田さんはスマートフォン黎明期からずっとアプリを作り続けている人のひとりですが、「みんな早くスマートフォンゲームを作ればいいのに」って思いませんでした?

新小田  正直なところ、僕はスマートフォンゲームの市場とクオリティがここまでのものになるとは思っていませんでした。なので、自分が作り手でありながら、周囲の人間も強力に巻き込むまでには至りませんでしたね。ただ、想像していた以上のスピードで市場が変化していったので、そこは非常に面白かったです。とくに、フリーミアムモデルが台頭してくる速度は凄まじいものでした。

安藤 変化のスピードは他に類を見ないほどのもので面白いですよね。僕が『ケイオスリングス』(※1)というRPG作品を売り切りの形でリリースしたときには、あと2年はプレミアムアプリの形が続いていくだろうと思っていたんですけど、その半年後には『キングダムコンクエスト』(※2)と『カイブツクロニクル』(※3)が出て、そこから運営型のフリーミアムが主流になってしまいましたから(笑)。

(※1)『ケイオスリングス』:安藤武博氏プロデュースのスマホ向け本格RPG。シリーズ作品として本作のほかに、『ケイオスリングスII』、『ケイオスリングスΩ』が配信中のほか、『ケイオスリングスΣ』の配信も控えている。

(※2)『キングダムコンクエスト』:スマートフォン黎明期にセガから配信されたオンラインRPG。ソーシャル、フリートゥプレイの流れをApp Storeに生み出した作品。

(※3)『カイブツクロニクル』:『キングダムコンクエスト』同様、App Sotreにフリートゥープレイの流れを生み出したソーシャルRPG。

松永  僕は、モバイル部門のマネージャーをやっているので、ちょうど半期に1回行われる会で使うプレゼン資料作ったんですが、そこであらためて昨年4月に作られた同会の資料を見たんですよ。そこには、「既存のソーシャルゲームに立ち向かうぞ!」という部門の長期目標が掲げられていて。おお、たった半年で達成されてもうむしろ全然状況が違うなと(笑)。

安藤 『パズドラ』や『ミリオンアーサー』、『チェンクロ』に『ブレフロ』などの登場もあり、昨年の短い期間でソーシャル畑と、ゲームクリエイター畑の立場が逆転したともいえますからね。一足飛びで変化が起きている状態です。

松永 それで改めて、プレゼン資料にこの半期で起きたことをまとめてみたのですが「『LINE』を筆頭とするライトなゲームが登場」と書いてみたら、そのすぐ後に「ライトなゲームが落ち着きを見せ始める」と書くことになって(笑)。ほかにもリアルタイムに通信協力プレイするゲームが登場とか、たくさん書くべきことがあって。いまは普通だったら1~2年かかるはずの動き”が、半年未満で起こっているんですよ。たった半年の間に起きた事象をまとめるだけなのに、年表みたいになって、改めて去年を振り返ってみると面白い。

毎度おなじみ、スマゲ界は今後どうなる?

安藤 面白い半面で、動きが早すぎて難しいマーケットでもありますよね。以前、松永さんと別の媒体で対談をしたときに、松永さんは「今後どれだけマーケットが広がって商業的な成果があがったとしても、プロダクションは少数精鋭で、全員に声かけできる範囲で作り続けていく。スマートフォンというデバイスは、今の規模で動いていたほうがコントロールしやすいし、狙ったところに着地しやすい」と仰っていましたが、ここから半年以内にどのような動きがあると考えていますか? 1年という範囲に設定してしまうと、スマゲ業界は二転三転する可能性があるので(笑)。

新小田 たしかに1年という期間だと何があるかわかりませんね(笑)。

安藤 僕は、ゲーム作りに制限を設けることが新しい面白さに繋がっていくんじゃないかと思っています。ここ最近の僕達はスマホのスペックがあがり、いろんなことができるようになったので、自らに強烈な“制限”を設けることをあまりしていなかったと思います。

そんな中、松永さんが言う、“声が掛けられる範囲の人数でプロジェクトを動かしていく”というのもひとつの制限ですし、『魔法使いと黒猫のウィズ(以下、ウィズ)』(※4)のプロデューサーの浅井さん(※5)のように、もともとめちゃくちゃ濃いゲームを作っていた人が、凄まじいスピードでゲームを作っていくというのも制限だと思います。なので、これからは自分たちに制限を課すことがトレンドになってくるのではないかと。おふたりはスマゲ業界の今後の動向を、どう分析されますか?

(※4)『魔法使いと黒猫のウィズ』:コロプラから配信中のクイズRPG。正式名称は『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』。App Storeのトップセールスでつねに上位に君臨し続けており、2013年にもっともブレイクしたタイトルと言える。

(※5)浅井氏:『ウィズ』を手掛けたコロプラのプロデューサー。

※『ウィズ』のプロデューサー・浅井氏との対談はこちらから

新小田 僕は、ゆり戻しみたいなものがあると思います。みんなが『チェンクロ』の真似をし始めた場合、それに辟易したユーザーさんが、ライトなものに戻り始めるという現象は十分にありえる話ですから。それと、これは個人的な希望ですが、先述の辟易したユーザーさんたちが、もっとストーリーをコアに楽しめるアドベンチャーゲーム的なものを好むような時代が来てほしいですね。

安藤 アドベンチャーゲームのようなものが来る可能性はありますね。先日、堀井雄二さん(※6)と対談をして、「スマホならではのゲームをデザインするとしたら、どのようなゲームが面白くなると思いますか?」と質問をしたところ「昔のアドベンチャーゲームは、カーソルで虫眼鏡を動かして調べていたけれど、スマホだったら一発で調べたいところを調べられる。アドベンチャーゲームとの相性はいい」と仰られていて、すごく印象的でした。デバイスの進化によって、枯れたと思われていたジャンルや、遊びのシステムが復活するというのはありえる話なんだなぁと痛感しましたね。

(※6)堀井雄二氏:『ドラゴンクエスト』シリーズを手掛けてきた名クリエイター。

※堀井雄二氏との対談記事はこちらから

松永 僕はスマホだからできることってまだまだたくさん残っていると思うんですよ。だっていつでもポケットに入っていて、すぐ通信できて、タッチパネルで、カメラもついてて、画面も綺麗なハードウェアって、ものすごいツールですよ。これからどんどん、そこの可能性を掘り起こすタイトルが出てくると思います。いままでのソーシャルゲームの時代は、スマホの可能性を掘らなくても勝負できましたが、もうそういう時代でなくなりつつあるので。

安藤 枯れたものの復活以外にも、ヒントはいろいろありそうですね。宮本茂さん(※7)は、体重計という身の回りにあるものにゲーム性を付加させることで、何千万台ものヒットを叩き出した『Wii Fit』(※8)を生み出していますよね? このように、つねに身に着けているものや、身の回りにあるものに遊びを付け加えてあげるだけで、新しい楽しさというのはドンドン生まれてくるものなんです。ゲーム的な面白さだけでなく、玩具的な面白さなどをきっかけにすれば、スマゲにはまだまだ発展の余地がありそうです。

(※7)宮本茂氏:任天堂株式会社専務取締役。『マリオ』シリーズをはじめとした、任天堂の大ヒットゲームを数多く手掛けたクリエイターとしても知られる。

(※8)『Wii Fit』:任天堂から発売された、Wii専用のゲームソフト。体重計のようなデザインの”バランスWiiボード”を用いて、体重測定やさまざまなトレーニングを行う。

松永 僕としては、スマホの一番の価値は、ポケットからいつでも出せる”ということだと思っています。どれだけ機能が増えても、3DSやPSPはポケットには入っていないので。”普通は体験できない体験”を表現するのがゲームであって、映画みたいに「さあ観るぞ」ってまとまった時間を使って体験する、という体験の仕方以外に、つねに現実生活に寄り添う形で体験する、というスタイルが可能なのって、すごく意味があるなと。僕が今回『チェンクロ』を作りたいと思った理由のひとつに「スマホを取り出すたびに物語を感じられたら、それは価値あるものになるのではないか」という想いがありました。「スマホを取り出すたびに●●できたら」という想いはまだいろいろあるので、これからもそういう価値を作っていけたらと思います。

(最終回へ続く)

チェインクロニクル

ジャンル
RPG
メーカー
セガ
配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS 5.0以降、Android 2.3.3以上

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