安藤ブログ“スマゲ★革命 シーズン2” 第二回 「激熱対談! アソビズムの森山Dに聞く「ゲーム作りってなんだろう?」」

2013-03-14 17:40 投稿

●クリエイター魂のぶつかりあう、熱き対談の幕開け

もはやファミ通Appではお馴染みとなったスクウェア・エニックス安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”も、ついにシーズン2に突入! このシーズン2では、安藤氏のいつものブログ以外にも、安藤氏が個人的に気になる方との対談企画をお届け。今回の対談では、お酒を飲みながら、ちょっとリミッターを外してもらい、いろいろと熱く語ってもらったぞ。対談相手は、今iPhoneゲーム上で大きな盛り上がりを見せているソーシャルゲーム『ドラゴンリーグX』の生みの親、アソビズムのチーフクリエイティブオフィサー、森山尋(もりやま ひろし)氏だ。安藤氏と同じく、コンシューマー、フィーチャーフォン、スマートフォンでのゲーム開発を経験している森山氏。彼が思うゲーム作りとは何か? 『ドラゴンリーグX』の誕生秘話とは? そこに焦点を当てて熱く対談をしてもらったぞ。ちなみに、対談はちょっと編集部が引くほどの盛り上がり、熱量になったため、対談記事は全3回に分けての掲載になる。ほかではなかなか聞けないゲーム業界裏話も出てくるので、隅から隅まで読み込んでほしい。

【まとめ】スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”

▲まずはにこやかに乾杯! この爽やかな光景が、あそこまで白熱するとは誰も予想していなかっただろう……

 

 

●熱い二人が語る、ゲーム業界今昔物語

▲フィーチャーフォン時代に大きな人気を呼んだ『ドラゴンリーグ』をベースに、改良を加えてリリースされた『ドラゴンリーグX』。本作の魅力は、なんといってもチームで力を合わせて戦う“ドラゴンリーグ”の熱量! チーム内でチャットをして連携を取りながら、タイミングを計って猛攻をしかける瞬間は、まさに“白熱”という2文字がふさわしい。また、戦いはチーム戦だけにとどまらず、チーム内でもレギュラー争いという戦いが勃発する。実際に戦闘が展開されるわけではないが、本作の花形である“ドラゴンリーグ”には、各チームから上位5名までしか出場できないのだ。残ったメンバーは、裏方に回りサポートに徹することになるので、何もすることがなくなるというわけではないが、やはりプレイヤーとしては表舞台に立ちたいというのが本音。そのため、つねにチームの仲間どうしで叱咤激励し合い、そして試合に臨むという、とにかくアツいゲームなのだ!

 

安藤氏(以下、安藤) まずは乾杯からいきましょうか!

森山氏(以下、森山) お疲れ様です。

安藤 今年もよろしくお願いします。カンパーイ! さて、早速本題なんですけど、森山さんは相変わらず、自分でプロデュースもディレクションもグイグイやってる感じですか?

森山 何でもやりたい派なんですけど、僕は常に現場のドまん中にいたいので、ディレクターとして、全てのプロジェクト指揮と、開発の統括をしています。僕が決して”答え”じゃないと思うんですけど、自分の「チームビルディングやマネージメントを含めてのディレクション」というものを、若手には、そばで見て盗んでほしいんですよ。そもそも、クリエイターは、教えて育つものじゃないと思っていますし。まあ正直に言うと、教えるのも大っ嫌いなんですよね(笑)。で、順調に若手が育ってきたら、誰よりも真っ先に僕が全力で潰しますね(笑)。それでも育ってきたら”本物”として認めます。

安藤 それじゃあ、今はどんな形で作品制作や運営に関わっていますか?

森山 今も変わらずガッツリ全作品に関わっていますね。本来でしたら、僕のオリジナル企画だけを僕がやるっていうのが一番いいのですが…。ウチは、重要度とリソースの許す範囲内において、プロジェクトごとにディレクターを立てています。各ディレクターたちと、僕がおもしろさの核になる部分を共有しながら開発を進めています。スナックに例えるなら、ママとチーママみたいな関係ですね(笑)

安藤 なるほど(笑)。新作というと、『ドラゴンポーカー』とかですか?

森山 そうですね。新作はいくつか動いていますけど、『ドラゴンポーカー』に関しては、チーママを立てて、僕がママとしてやっています。って、もう何の話をしているのかよくわからなくなってきましたよ(笑)。そういえば、前に安藤さんが「スマホゲームは、一回全部自力で作ったほうがいいよ」と仰っていたじゃないですか?

安藤 外部の開発会社さんをプロデュースする私が言うのも、変ですけどね(笑)。でもどうですか? 自社パブリッシングで、やったほうが楽しくないですか?

森山 そうですね。大変でしたけど、いろいろ勉強になりましたね。当初、ウチはiPhoneでのゲーム作りは初めてでしたから。

安藤 なるほど。具体的には、どこが大変でした?

森山 なにからなにまで大変でしたよ(笑)。 まず、かけた人数が違いました。『ドラゴンリーグX』の前進にあたる、ガラケーの『ドラゴンリーグ』は、プログラマー1~2人くらいで作っていたんですけど、『ドラゴンリーグX』は最初から10数人で作りましたね。それと、昔は僕が絵を描いて、それをプログラマーに「これでUI作ってー」みたいな作業で済んでいたのですが、今回からは僕とプログラマーの間にデザイナーが必ず入って、スクリプターが入って、それでようやくプログラマーにいく流れですから。時間がかかりましたね。この流れは、コンシューマーでのゲーム作りにかなり近くなってますよね。僕は元々コンシューマーの人間だったので、懐かしい感じもしました。

 

●徹底したアソビズムのゲーム作りにおけるスタンス

森山 これはフィーチャーフォン時代からずっと変わらずに持っている考えなのですが、儲かったお金は、全部ユーザーに還元したいと思っているんです。僕らは、とりあえず食えるだけのお給料があればいいみたいな。

安藤 アソビズムさんはずっとそういうスタンスですよね。

森山 僕たちはゲーム開発会社なので、ゲームを作ったり、おもしろいことを考えることには慣れているのですが、運営となると難しさを感じることも多いですね。ゲームを作るのと運営をするのとでは、やることや心構えとかが全然違うじゃないですか? で、ソーシャルゲームは何か問題があったときにユーザーから直に声も届く。ときには心が折れそうになることもありましたよ。逆に色々と”気づき”もありましたし、ユーザーからの応援には涙がでるくらい励まされたりすることも多くありました。そんな感じで、ユーザーの声を”おもしろさ”につなげようという現場の思いは一層強くなりましたね。今でも現場は全力で運営をやっていますし、僕たちの根底にあるのは、とにかくおもしろいゲームを作って、それで稼いだお金のほとんどは、次のゲーム開発費に充てるという単純なスタンスです! あと大変だったことと言えば、『ドラゴンリーグX』が始まってから最初に行われた緊急メンテナンスが、36時間という長丁場になったのですが、アレは本当に死ぬ思いでした(笑)。

安藤 あのメンテナンス内容をよく36時間で終えられましたね。普通だったら、もっとかかる内容だったと思います。

森山 寝ないで36時間ずっとやりましたからね(笑)。課金をしていなくても、ユーザは時間という資産を使ってゲームを遊んでくれているわけですから、僕たちにとっては、変わらずとても大事なユーザーなんですよ。人によっては、時間はお金よりも大切だという方もいらっしゃいますし、僕も時間は資産のひとつだと思っています。なので、緊急メンテナンスも必死で対応しました。

安藤 でもその結果、いまApp Storeに並んでいるゲームの中でも、かなりユニークな部類に入る作品に仕上がっていますよね。アソビズムさんっぽい感じもすごく出ていますし。アソビズムっぽいと言えば、“召喚嬢”を捕まえるときに連打させるシステムは、アソビズムさんならではですよね。

森山 連打は裏切りませんから(笑)。

安藤 連打のバランス調整って意外と難しいですよね。

森山 そうですね。ほかのメーカーさんだったら、いろいろ計算して作ったりするんでしょうけど、僕はわりと器用なんです(笑)。 ただ、僕たちは不器用な集団ですから、ひたすら作って試してをくり返しました。ゲーム作りは、頭で考えてもなかなかわからない領域があると思っています。それを見つけるには、実際に触り倒さないとダメなんですよ。身体が導き出してくれる答えもあると思っています。

安藤 でも、あの連打はいいです。「やった! 捕まえた!」という感じが出ていますし。数値化できないおもしろさやうれしさがあって、僕はアレがすごく好きです。あと、『ドラゴンリーグX』といえば、“勝利のお守り”がおもしろいですね。クエストでの連勝が途切れるとムカつくので、つい敵との勝率が100%になる“勝利のお守り”を使っちゃいます。あと、仲間が“勝利のお守り”を使ってくれると、メンバーである僕たちにもその効果がおよんで、みんなで熱くなれるというのもおもしろい。で、仲間が“勝利のお守り”を使うと、プッシュ通知が届くじゃないですか? あれはヤバイですよ(笑)。 あの通知を見ると、何があってもゲームに戻っちゃいますよね。僕は、あそこまで拘束力の高いプッシュ通知をこれまでに見たことがないですよ。

森山 僕もあのプッシュ通知を見たら、いまだにすぐゲームに戻っちゃいます(笑)。ウチの経営会議なんかはひどいですよー、ホントにお恥ずかしい話しなのですが、大手(※注1)すらも、会議中にゲームに戻っちゃうことがあります(笑)。

(注1)大手 智之:アソビズム代表取締役社長

安藤 あのシステムはいいと思うんですけど、あまりに危険なのでプッシュ通知は切りましたよ。大事な打ち合わせ中にあの通知がきたら、もうソワソワしちゃって打ち合わせどころじゃなくなりますからね。あれは本当にヤバイ(笑)。

森山 iPhoneでゲームを開発しているときにプッシュ通知が使えると知ってから、とにかくアレをやってみたかったんですよ。なので、うまく効果を発揮してくれているみたいで、嬉しいです。

安藤 あの「今しかねぇだろ」感は、すさまじいですね。仲間から“勝利のお守り”を使ったというプッシュ通知が来たり、チーム対抗戦である“ドラゴンリーグ”が始まった時間に電車に乗っていた場合、より良い通信環境を確保するために、そこで電車を降りてゲームに没頭するという人の話もチラホラ聞きますし。最近のスマートフォンゲームは、お客様のプライベートを長時間拘束して差し挟まるということはあまりしませんけれど、『ドラゴンリーグX』は、まさにその逆ですよね。“ドラゴンリーグ”は定刻開戦ですし。お客様の時間にゲームが合わせるのではなく、ゲームの時間に合わせてお客様が動くというのは、久しく見ていなかったような気がします。でも、よく考えれば、元々エンターテイメントってそういう感じのものですよね。テレビにしても「ドラマが見たいから、今日は早めに帰るね」とか。

森山 いつでもドコでもできるゲームを作れるなら、作りたいとは思っています。僕らが、いま作っているものはライブ感を重視したもので、リアルタイムで入ってくるユーザーの声や、ユーザー間のコミュニケーション量から、”今”のユーザーの”温度感”を感じ、それをでゲーム運営に最大に活かしています。“誰もがいつでもできる”とか、そういうゲームは作らないんじゃなくて、たぶん作れないんですよ(笑)。

安藤 でも、定刻開戦のシステムをアソビズムさんが作ってから、いろんなメーカーさんがあのシステムを参考にして、今ではひとつのジャンルになりましたよね。今はプレイヤーが、ギルドバトルの開戦時間を選択できるものも増えてきてはいますが、やっぱり個人的に一番心地いいのは、ゲームに振り回される『ドラゴンリーグX』。なので、僕はアソビズムさんが持っている方針はすごくいいと思います。今のゲームやゲーム開発会社のほとんどは、「サービスさせていただきます」とお客様がより快適になる、おもてなしや仕様になることが多いですよね? でも、『ドラゴンリーグX』は「どうだ、おもしろいだろ? ちょっとゲームに付き合ってけよ」みたいな部分があって。で、実際遊んでみたらすごくおもしろくて。行列のできるラーメン屋みたいな感じですかね。「ウチのは美味いから、並んででも食ってけ!」みたいな(笑)。それもやっぱり、データとにらめっこしてるだけでは、作れない空気ですし、だからこそ『ドラゴンリーグX』は魅力的に感じるのかもしれませんね。あと、中の人たちは36時間寝ないで働くドMばっかりなのに、その人たちが作ったゲームが、プレイヤーを振り回すドSな仕様というのもおもしろい(笑)。

森山 確かにウチが作るものは、今でいうゲームの“普通”という価値観やシステムからは、少し離れたところにあるのかもしれません。でも、別に既存の構造で作るのはNGと考えているわけではないですよ。ただ、みんなと同じ構造で作ってしまうと、同じものしか出来あがらないと思っていて。僕は、それがイヤなだけなんです。

 

●クリエイターという生き物とは?

安藤 クリエイターというのは、誰かが新しいことをやると「やられた! 今度はウチが出し抜いてやる」と感じて、とにかく新しいものを作ることに喜びを感じる人種です。だから、昔は水面下で、こっそりアイデアを温めたり、クリエイターどうしがライバル視をして、それが業界をいい方向に向かわせていきました。でも、今はお金儲けが先走ってしまって「お、これが必勝パターンらしいから、ウチもこれ使おうぜ」と真似から入ってしまっているところが多くて、クリエイターという人種が減っているのを感じます。

森山 そうですね。僕は、その安藤さんの言うところの昔のクリエイターに近いところがあるので、真似から入る人たちの気持ちがわからないんですよね。僕だけかもしれませんけどゲーム作りの目的は、自分たちが作ったものをユーザーに届けて、ユーザーがそれを体験して、その体験が、ユーザーにとっての初体験になってほしい。それでおもしろいと思ってほしいんです。なので、真似はチョット考えられないです。半年とか1年かけて作っているものが、すでに誰かが体験しているものと同じだとわかったら、もうそこに意味は見い出せません。モノづくりのエネルギーが発生しないというか。達成感が薄れてしまうと、つぎへのエネルギーも薄れてしまうような気がするんですよね。

安藤 でも、たぶんそうですよね。僕がゲームの仕事をしようと思ったのは、自分自身、プレイヤーとしてゲームに熱狂したタイミングがあるからです。で、その熱狂したゲームを作ってくれた人たちは、きっと商品をを売って儲けることを第一にゲームを作っていたわけではないと思うんです。新しい遊びの可能性を探していたり、シンプルにおもしろいもの作りたいと思って商品をを作ったら、それがたまたま売れちゃったという感じだったのではないかと思います。「ただただ作りたい。作らなきゃ死んじゃう」という人たちが、クリエイターという生き物ですから。

森山 「作らなきゃ死んじゃう」という言葉はウチでもよく出てきますね。ウチの若手が新しい企画を持ってきたときも、それがおもしろいかどうかではなく、まずは、どれだけその企画を形にしたいのかをじっくり聞きます。そこで「作らなきゃ死んじゃいます」というくらいのエネルギーを持っていないと最後まで作りきれないと思うんですよ。ゲーム作りとはやっぱりスゴイ過酷ですよ(笑)、作り手に大きな衝動がないと、最後まで走りきれませんし。しかも、それがまったく新しい体験を目指すものだとしたら、その”おもしろさ”は完成するまで他の誰にも理解されないと思っていたほうがいいです。本気のゲーム作りは過酷で孤独なんですよね。だから、僕は企画がどうとかではなく、どれくらい作りたいのかを重要視していますね。

 

ふたりの対談は第三回へつづく……

 

■著者紹介

安藤武博(あんどう たけひろ)
スクウェア・エニックス 特モバイル二部 ジェネラル・マネージャー兼プロデューサー。ゲームプロデューサーにして、同社のスマートフォンアプリ制作の中核を担う人物。早くからスマートフォン事業に携わってきたことから、アプリに対してはすでに確固たる理論を構築している。それでいて、つねに新たなステージへのチャレンジを忘れないスマートフォン業界の革命児。

 

 

【まとめ】スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”

 

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メーカー
アソビズム
配信日
配信中
価格
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対応機種
iPhone4 以降(iPhone4S、5 推奨)

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