【インタビュー】“Sega×Aiming”海外に勝つためにタッグを組んだ理由とは?
2013-02-16 10:00 投稿
●世界のマーケットで成功するために
2013年2月14日に発表されたセガネットワークスとAimingが業務提携。週刊ファミ2013年2月28日号(2月14日売り号)では、業務提携について、株式会社セガネットワークスの代表取締役社長CEO、里見治紀氏と、株式会社Aimingの代表取締役社長、椎葉忠志氏のインタビューを掲載している。スマホ業界を牽引する両社がタッグを組む理由、アジアや北米などの市場の攻め方などを掲載したが、ここでは、誌面に掲載しきれなかったインタビューの全文を公開。『トワノツルギ』とは、いったいどんなゲームなのか。セガとAimingが世界を視野に入れて何をしようとしているのか。その動向に注目してほしい。
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※【動画あり】弾幕ありSega×Aiming第1弾『トワノツルギ』がイイ感じ 事前登録も
※セガネットワークスとAimingが業務提携を発表 スマゲ業界に新たな風が吹く
↑(写真左)株式会社セガネットワークス 代表取締役社長CEO 里見治紀 氏と、
(写真右)株式会社Aiming 代表取締役社長 椎葉忠志 氏
●“Sega×Aiming”のコラボが生み出す新たな化学反応
――セガネットワークスとAimingがタッグを組まれると聞いて、驚きました。まずは、どういった形での提携になるのか、お教えください。
里見治紀氏(以下、里見) 簡単に説明しますと、Aimingさんが開発したタイトルをセガがパブリッシングしていきます。第1弾は『トワノツルギ』で、今後は2、3カ月に1本のペースで、随時リリースしていく予定です。
椎葉忠志氏(以下、椎葉) 全部のタイトルというわけではないですが、セガさんと組むことの効果が高そうなアクションタイプやMO(※1)タイプのゲームは、積極的に出していきたいと思います。セガさんと弊社とで、狙っているターゲットや、ターゲットとしているマーケットの見かたなどがほぼ類似していたので、これはバラバラでやってもしかたないなと。2社で組んで、マーケットを新しく作るような動きをしたほうがいいのではないか、と思いました。
※1 MO……“Multiplayer Online”の略。同時参加型オンライン。
――もっとも合致しているという部分は、どういったところですか。
椎葉 オンラインゲームに近い、リッチコンテンツを作っている点です。以前、『キングダムコンクエスト』で少しお手伝いさせていただいたときに、これこそ世界で通じるゲームなのでは、と感じたことをよく覚えています。
里見 そうですね。ネイティブなものを制作しているという方向性、お客様に対する価値観などが非常に似通っていたので、「じゃあ、ごいっしょしましょうよ」ということになりました。
椎葉 加えて、セガさんも弊社と同様に、韓国のマーケットにすごく力を入れていらっしゃいますから、「これはもう、全部一致しているんじゃないか?」と(笑)。
――ゲームらしいゲームを作られている会社と、SAP(※2)が組むことは何度かあったかと思いますが、ゲームらしいゲームを作る会社どうしが組むのは珍しいですよね。
里見 そうですね。ネイティブをがっつり、マーケットとして捉えていきましょうというところでは、初の試みだと思います。
※2 SAP……“Social Application Provider”の略。ソーシャルアプリの開発や提供をしている企業を指す。
――今後はますますハイクオリティーなゲームの市場規模が大きくなっていくということですね?
里見 デバイスの性能が上がってきたので、我々がやりたかったことが表現できるようになってきました。新しいデバイスが出てくると、3Dのゲームがガッツリ動くようになってもおかしくありません。そうなると、お客さまはより、本格的なゲームをやりたいというニーズを持つようになるはずです。
椎葉 現在、スマホの普及率が30%と言われていますが、「まだまだ30%程度」と考えると、のびしろはありますね。それに、プレイステーション3やXbox 360でコアなゲームをプレイされている方も、スマホを持つようになると思います。誰でもスマホを持つ時代になると考えれば、その市場規模は大きくなるというのは、自然な考えだと思います。
――なるほど。そもそも、両社が組もうというお話は、いつごろから出ていたのでしょうか?
里見 本格的なお話をしたのは、昨年の東京ゲームショウの前後だったかと思います。
椎葉 東京ゲームショウの、セガさんのスタジオで行われたトークセッションでごいっしょした椎野さん(椎野真光氏。セガネットワークス、『キングダムコンクエスト』プロデューサー)のお話を聞いて、「やろうとしていることがうちと同じだな」と思ったのがきっかけです。
――何がきっかけになるのか、わからないものですね(笑)。そういった経緯で、セガネットワークスがAimingのタイトルのパブリッシャーになると。
椎葉 そうですね。パブリッシャーの名前はセガさんになります。
里見 実際には、“Sega×Aiming”という、ダブルブランドでリリースすることになると思います。
椎葉 形としては共同で、プロジェクトをすべてシェアするようなやりかたをしています。どれもとは言いませんが、いっしょに制作したほうがいいものはこの形で進めていますね。
――今後は、開発もセガネットワークスがいっしょに行うということはあるのでしょうか?
里見 いまのところ、Aimingさんが作られているタイトルを弊社がパブリッシングする形ですが、ポケラボさんとの共同制作(※3)のような形も、今後の状況次第で検討していきます。
椎葉 共同開発に関しては、どちらかというと、セガさんのほうに気を使っていただいていまして(笑)。私たちは、いっしょに制作することで、既存のタイトルもそうですし、今後のタイトルも含めて、両社のいいとこどりで長所を伸ばしていけたらと思っています。
※3 スマホ向け人気ゲーム『運命のクランバトル』は、ポケラボとセガネットワークスの共同開発となる。
――提携することで生まれる利点の一方で、セガネットワークスとAimingの両社のファンが混乱するのでは? という懸念もありますが。
里見 そこは、マーケティングの努力だと思いますが、先ほどお話しした通り、“Sega×Aiming”ですので、単純な足し算ではありません。掛け算によっていい化学反応を起こして、どちらのファンにも、「いいタイトルをお届けします」ということを約束いたします。
椎葉 そうですね。弊社だけでもやってできないことはないと思っていますが、弊社だけではどうしても“1なものは1”です。大事なのは、セガさんと弊社で、足し算ではなく掛け算にできるかどうかです。今後、スマホ業界の競争はさらに激しくなるでしょう。しかし、弊社がセガさんと手掛けるコンテンツは、ほかにないものですし、大きな価値を出すことができれば、自然と大きな結果につながなると思います。
●アジアをターゲットにした海外マーケティングの狙い
――先ほど、韓国のマーケットに力を入れているというお話がありましたが、現在、韓国の市場はかなりの激戦区だと感じます。両社は、どのように攻めていかれるのでしょうか。
里見 アジア圏はオンラインゲームの文化が強く、コアゲームのニーズがとても高いので、その市場をAimingさんといっしょに開拓していくのは、今回の提携におけるいちばんのキモだと思っています。具体的な攻めかたはこれからですが、韓国には弊社やAimingさんの現地法人がありますので、お互いのいいとこどりで、進めていければいいと思います。
――韓国の市場の熱気に関して、実際の感触はいかがでしょうか?
椎葉 規模は日本と同じくらいでしょうか。昨年の12月5日、弊社が韓国でサービスを開始した『ロードオブナイツ』で、1日2000万ウォンの売り上げがあります。いまのレートだと、日本円で約170万円くらいですかね。韓国の人たちがまったく知らない、Aimingという会社でも、がんばればそれくらいは稼げるんですよ。でも、アジア圏でサービスを展開するときは、セガさんの名前を出したほうがもっと売れるはず(笑)。たとえば、韓国で『拡散性ミリオンアーサー』がヒットしていますが、その裏にはスクエア・エニックスさんというブランドの力が確実にありますから。
里見 また、フィーチャーフォンでGREEさんやMobageさんのソーシャルゲームが日本で流行っていたとき、海外ではヒットしないと思われていました。ですが、スマホ時代に突入し、世界中で同じタイトルが遊べるようになると、欧米でもヒットし始めました。日本のスマホゲームに関心が集まるいまだからこそ、ハイエンドなタイトルを制作すれば、大勢のユーザーを集められると思っています。
――Aimingさんは、台湾やフィリピンでもサービスを行っていますが、同じアジアとして、そちらの連携はいかがでしょうか?
椎葉 台湾はマーケットとしては小規模ですので、まずは、ほかの国から攻めようと思っています。
里見 台湾や香港、マカオなどの繁体語圏でいうと、ターゲットとなるユーザーは、4000万にくらいいらっしゃるかと思います。そう考えると、韓国の8割くらいの規模があるので、そういうまとめた捉え方で攻めるなら、中国に行くよりもおもしろいかなと思います。
――なるほど。では、アメリカでの展開はどのようにお考えですか?
里見 アメリカは英語圏ですので、ひとつのタイトルをそのままカナダやヨーロッパなど、英語が公用語とされている国でリリースできることが強みです。ゲームの普及率がかなり高いので、重要な地域だと考えていますね。
椎葉 セガさんのブランド力は、日本のメーカーではアメリカ市場でも随一だと思うので、北米のマーケットをどうやって攻めていくかは、セガさんがいちばん得意とするところでしょう。『キングダムコンクエスト』がヒットしているという実績もありますしね。
――海外展開を行うとき、ライセンスアウトをする会社が多いと思いますが、お話を聞いてみて、セガさんとAimingさんは、真っ向から勝負を仕掛けるイメージが強いと思いました。これまでライセンスアウトをする気はまったくなかったのでしょうか?
椎葉 以前は、その国でのマーケティングプロモーションがまったくわからない、決済するのに現地法人が必要だといった問題があったんですが、スマホはまとめてリリースできるので、プロモーションのノウハウだけあればなんとかなります。ただ、新しいジャンルのものではありますので、現地の法人にもそのノウハウがないんですよ。つまり、今はスタート位置が同じ状況なんです。実際にできるかどうかは別にして、韓国の大手PCゲームメーカーをひっくり返せるチャンスは、いましかないと思っています。このまたとないタイミングに、勝負をするのが男だろ、と(笑)。
●化学反応から生まれた新たなゲームの形
―それでは、『トワノツルギ』がどういったゲームなのか教えてください。
椎葉 ベースは見下ろし型の3DのMORPGですが、いちばんのポイントは、戦闘がシューティングになっている点です。敵の弾を避けて近づけば、自動で弾を撃ってくれるという、とっつきやすさがウリですね。
――タイトルに“ツルギ”が入っていたので、剣を使ったアクションかと思いました(笑)。
椎葉 弾と言っても、“気”を放って攻撃しているんですよ。ちなみに、ゲームの世界観は和風です。海外に出したとき、「パッと目立つといいな」という安直な考えのもと、和風にしたんですが、ファンタジー世界で弾を撃つという設定にするのが難しかったのもありますね。ファンタジーの世界観でシューティングゲームを制作しようとすると、全員魔法使いになってしまうので(苦笑)。
――アプリのゲームを制作するときは、どのようなことを意識して作っていますか?
椎葉 時間の使いかたに気を使っていますね。たとえば、1時間遊んでもらうにしても、1回のプレイが12分で5セットなのか、それとも10分で6セットなのか、ユーザーの待ち時間がない設計が正しいゲームだと思っているので、かなり考えて制作しています。弊社の『ロードオブナイツ』は、ログインしたときに「何をするんだっけ?」と考える時間が確実にあると思います。もちろん、それを受け入れたうえで、遊んでくださっているのでいいのですが、どんなゲームでも短い時間にすぐプレイできるのが理想です。モバイルですから、そういう設計にする気の使いかたは、必要だなとつねに思っていますね。
――ユーザーを、毎日ログインさせる仕組みを作るのも大変だと思います。
椎葉 僕はだいたいコミュニティの要素に頼ってしまいますが。いわゆるギルドの存在があると、多くの人がログインしたくなるはずです。それがPCオンラインの必勝法なんですが、コミュニティ要素を充実させるぶん、弊社のゲームにはログインボーナスがありません(笑)。
――最大で、何人同時にプレイできますか?
椎葉 3人同時に遊べます。Wi-Fiのほうが安定しますが、3G回線でもプレイできますよ。また、マルチプレイのときは、ひとりで遊ぶときよりも敵が強くなります。もちろん、ただ単純に3倍強くなるわけではないので、マルチでプレイしたほうが何かとお得ですね。
――気になる配信時期は?
里見 いまのところ3月初旬になりそうですので、もう少々お待ちいただければと思います。
――リリースを楽しみにしています。それでは最後に、ファンへメッセージをお願いします。
椎葉 スマホで遊べる新しいゲームを、より多く皆様にお届けできるように、今回の提携を考えました。コアなゲームユーザーの中には、「スマホのゲームなんて……」と思っている方がいるかもしれません。今回は、セガさんのブランドがついていますので、そういう方にこそ、ぜひプレイしていただきたいです。
里見 ネットワークゲームやスマホゲームにおける勝利の方程式のひとつが、“いかに長くお客様にゲームを楽しんでもらえるか”だと思います。Aimingさんのタイトルをリリースすることで、いままで以上に良質のタイトルをお届けし、よりいっそうお客様にご満足いただけるようになると期待しています。
【『トワノツルギ』とは?】
3月初旬に配信予定の『トワノツルギ』は、伝説の剣“トワノツルギ”を求めて、仲間といっしょに敵を倒しながら進んでいくという、古代和風テイストのリアルタイムアクションシューティングゲーム。スマートフォンならではの簡単操作によるプレイが可能で、手軽に爽快感を得られることが特徴だ。なお、事前登録が、2月14日より開始されているる。登録者にはもれなく、ゲーム中で使えるお得なアイテムがプレゼントされるようだ。こちらの記事をチェックして、事前登録を済ませておこう!
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