グリー田中剛氏に聞く、“ヨーロッパならではのソーシャルゲーム”を目指して【gamescom2012】

2012-08-18 14:54 投稿

●「ヨーロッパではやらないといけないだろうな」というタイトルを開発中

2012年8月15日~19日(現地時間)、ドイツ・ケルンにて、欧州最大規模のゲーム見本市“gamescom2012”が開催。会場で、イベントへの初出展を果たしたグリー(⇒関連記事はこちら)のグローバル展開のキーパーソンにお話をうかがうことができた。ここでは、GREE UKの開発スタジオトップを務める田中剛氏へのインタビューの模様をお伝えする。田中氏は、カプコンに在籍し超ビッグタイトルのプロデュースなどを担当したあと、グリーへ転身。8月1日よりGREE UKの開発トップに就任している(gamescom2012開催2日目の8月16日にインタビューを実施)。

――gamescomでのグリーブースをご覧になっていかがでした?

田中 まだ2日目ですが、すごい人でしたね。「とにかくうれしかった」というのが印象です。正直なところ、ヨーロッパの子どもたちのグリーというものに対する認知度って、そんなに高くないと思うんですね。gamescomがヨーロッパに向けてのPRの実質的な第一歩だと思っているのですが、ドイツの子どもたちがゲームを触っている姿を見ると、「ちゃんとやっていれば大丈夫かな」という気がしました。

――ソーシャルゲームを受け入れてくれた感じですか?

田中 皆さんは、あまりソーシャルゲームという認識で楽しんでいるわけではないと思いますよ。モバイルソーシャルと言っても、携帯ゲームのひとつという認識の国も少なくないので、「モバイルもPCのオンラインゲームも同じゲームだよね」という認識で楽しんでくれているのが、いまの子どもたちなのかな……という感じです。昨日、ヨーロッパのテレビ局の取材をいくつか受けたのですが、彼らによく聞かれたのが、「モバイルが広がることによって、コンシューマーやPCゲームの市場が小さくなるのでは?」という質問だったんですね。そのときに僕が素直に思ったのは、「これからは境界線がなくなるんだろうな」ということです。人によっては、家に帰ってプレイステーション3やXbox 360で遊ぶ人もいれば、人によってはPCでオンラインゲームを楽しむ人もいる。それがさらに、人によってはタブレットを開く人も増えれば、通勤電車でモバイル端末を片手にコミュニケーション性の高いゲームを遊ぶ人もいる。いろいろなゲームの遊びかたがあってもいいのかなと。

――多様性の現れのひとつとして、ソーシャルゲームがあるということですね。そこでグリーが存在感を放つ余地がある?

田中 そうですね。幸か、不幸がヨーロッパって、日本やアメリカに比べるとスマートフォン市場はこれから……といった側面があります。ましてや僕らは中東や南米もカバーしていかないといけないので、そう考えると取り組むべきことは多いです。

――gamescomに話を戻しますが、『Assassin’s Creed Utopia』や『War Corps』の映像のクオリティーの高さには驚かされました。

田中 はい。iOSもiPhone5が出ると言われていますし、Androidもどんどんバージョンアップしていく。今後はどんどんグラフィック性能は上がると思っています。とはいえ、グラフィックが綺麗になるということは、当然のようにコストが上がるということでもあるので、そればかりがいいかというと、一概には言えないかもしれません。どの開発拠点が3Dに重点を入れたタイトルを作るかなど、グリーの戦略にも直結してきますので、的確な判断を求められることになるでしょうね。

――GREE UKではどのようなスタンスで?

田中 両方やっていきます。ただ、うちが得意なゲームモデルに、カードバトルがあるのですが、「カードだからクオリティーが低くてもいいのか?」というと、必ずしもそういうわけではない。カードゲームだからこそクオリティーを上げていかないといけないかなと思っています。ハイクオリティーのグラフィックが実現できる分、どこに力を入れるべきか……というのは、開発者の力を問われることになりそうです。

――カードゲームの話題が出たので、あえて伺いますが、欧米ではカードゲームというジャンルは定着しますかね?

田中 カードゲームが“どこか”によりますよね。たとえば同じカードゲームといっても『探検ドリランド』は、こっちでは“RPG”として区分けされています。カードをモチーフにしているわけですが、ゲームモデルはRPGだったりするわけです。一方では、『マジック・ザ・ギャザリング』のように、カードゲームらしいモデルもある。さらに言えば、いま開発中のカードゲームの『Moshi Monsters』では、カードゲーム+ミニゲームの要素があったりするわけです。カードゲームといっても幅が広い。同じRPGにしても、本格的なRPGからアクションRPG、さらにはMMORPGまでそれこそ多岐にわたっていますよね。実際のところ、カードをモチーフにしたいろんな遊びかたは世界で通用すると思いますね。

――なるほど。では、UKで手掛けていきたいカードゲームの方向性は?

田中 それはですね、もうちょっとしたら発表できるのかなと。『Moshi Monsters』はひとつの形としてありますが、もうひとつ作っているものがあるんです。

――それはけっこう手応えを感じている?

田中 手応えというか、「ヨーロッパではやらないといけないだろうな」というタイプのものですね。これ以上は、詳細は改めて……ということで(笑)。

――では、改めて伺いますが、田中さんがGREE UKの開発トップに就任されての目標を教えてください。

田中 僕らは多国籍軍なんですね。スタジオはUKにありながら、ヨーロッパ中から優秀なエンジニアが集まっているんです。僕はまさにそれが“ヨーロッパ”だと思っています。そういう多国籍軍として、ヨーロッパ的なゲーム作りができたらいいなと思っています。たとえば、なぜ『Moshi Monsters』のゲームを出すかと言えば、それが、イギリス独自のIPという部分での、“ヨーロッパならではのもの”だからです。そういう意味では、いろいろな“ヨーロッパ的なもの”に取り組んでみたいですね。いずれにせよ、僕らがロンドンで作る意味がないと、社内でも「なぜヨーロッパでやっているの?」と言われることになってしまうわけですから。

――となると、ヨーロッパ的なものって何でしょうね?

田中 オリンピックひとつ見るだけでも、いろいろとヒントはあると思いますよ。たとえば、ユービーアイソフトさんの『アサシンクリード』シリーズは、開発自体はモントリオール(カナダ)かもしれませんが、もともとの土壌がヨーロッパじゃないと生まれなかったタイトルですよね。それは、ゲームの遊ばせかたではなくて、絵的なものとか、雰囲気とかが違う。

――せっかくの機会なので伺いますが、なぜ田中さんはグリーに行かれたのですか?

田中 僕はもともと学生当時から、インターネットに対する興味があって、コミュニケーションが好きだったんですね。日本ではまだインターネットとは言われていなくて、ようやくニフティーサーブができたころでした。縁あってカプコンに入社して、手掛けるのはオンラインゲームで……という形でゲームを開発してきたのですが、3年くらい前に別の雑誌のインタビューで答えているのですが、当時からオンライン業界、ソーシャルゲーム業界、モバイル業界に興味があったんですね。なぜかというと、みんな若くて野心があるから。そういう業界って、パワーがあって、パッションがあるじゃないですか。という目線で見ていたら、たまたまグリーさんからお話をいただいたんです。かつ海外でやれれるチャンスもあって、「これはやりたいな!」と思ったという。だから、タイミングと運と縁ですね。

――なるほど。GREE UKでは、業界のパワーをゲーム作りに注ぎ込む?

田中 僕はグリーの中ではけっこう年配なんですよ(笑)。グリーはみんな若いじゃないですか。僕は年配な分、いろいろな経験もさせてもらっているし、いろいろな会社さんとお付き合いがある。ほかのコンシューマーさんの会社とも縁があったら、どんどんいっしょに仕事がしたいし、僕が立ちまわることでグリーが成功するのだったら、それに勝る喜びはないです。あと、3~4ヵ月くらいは産みの苦しみがあると思うのですが、いつか僕の作ったゲームをプレイしていただけたらいいなと思っています。まあ、ソーシャルゲームには産んだあとも苦しみがあるんですけどね(笑)。

 

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