スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第七回 「ガラケーとスマホのナンボ」

2012-02-06 11:32 投稿

●第七回 「ガラケーとスマホのナンボ」

“携帯電話のゲーム”と一口にいっても、実は様々な種類やプラットフォームがあります。今日はそれぞれの市場がどのようになっているのか、現時点で感じている事を書きたいと思います。

まずざっと種類で分けてみると(1)フィーチャーホンいわゆるガラケー(2)スマートホンがあります。そこで動くゲームの提供形式も大きく分けて整頓すると(a)ブラウザ方式(b)ネイティブアプリ方式というものがあります。

(a)ブラウザ方式というのは主にHTMLなどの言語を使ってブラウザ上で動くようにプログラムされて出来ているゲームの事ですね。例えばiPhoneでGREEやMobageのゲームを遊ぶとブラウザのSafariが立ち上がる事があると思いますが、それがブラウザ方式です。Safariの画面上を見ると、それぞれのゲーム画面にアドレスが割り振られており、通信によってホームページをジャンプする要領でゲームが進行しているのが分かると思います。(1)ガラケーでは、ほぼこの方式でしか配信されていない。と言っていいと思います。

(b)ネイティブアプリ方式とはObjective-Cなどのプログラミング言語(ざっくり説明すると、これらコンピューターが理解できる機械語の事をネイティブ言語と言います)で創られたゲームの事です(これを、アプリと呼んでいます)。ブラウザ方式がホームページにアクセスするだけで始められるのに対して、ネイティブアプリはネット上のストアからまずダウンロードした後に、アイコンをタップして起動する事がほとんどです。Appstoreにおいてあるアプリは、ほぼ全てがネイティブアプリです。iOSとAndroidで遊べる『ケイオスリングス』『KingdomConquest』『カイブツクロニクル』も全部そうです。この方式の良いところはブラウザ方式に比べると、より家庭用ゲーム機的な表現が可能(3D表現や音楽などを凝る事が、現時点では容易)であったり、ブラウザよりもその都度通信&読み込みを必要としないので、サクサク、反応良く遊べる点などがあります。業界では“ネイティブ”といったり“アプリ”と呼ぶことが多いです。

では、それぞれがどのくらいの市場規模をもっているのでしょう? 変革激しい携帯電話でのソーシャルゲーム&アプリ配信ビジネスですから、あくまで“2012年2月6日付け、安藤の現場感覚。”として、下記をご覧ください。ランキングにしてみました。

1位・・・「ガラケーでブラウザ方式」
2位・・・「スマートホンでブラウザ方式」
3位・・・「スマートホンでネイティブアプリ方式」

そうなんです。スマゲ☆革命と言いながらも、まだまだガラケーの市場が1位なんですね。この延命っぷりはみな予想外だったと口を揃えます。もちろん2位との差は日に日に迫ってきています。タイトルによっては既に逆転しているものもあります。ちなみに、ほとんどのソーシャルゲームがどの形式でも遊べるようにゲームデータを連動させています。つまりガラケーからスマホに買い換えてもゲームデータが引き継げるので、その推移や、売上の規模が単純比較しやすくなっています。だいたいの感覚ですが、現時点で1位「ガラケーでブラウザ方式」の約半分の売上規模が、2位「スマートホンでブラウザ方式」です。僕がGREEで運営している『ナイツオブクリスタル』はそんな感じです。

そして3位。これこそ、僕が3年前から面白いものをお届けすべく頑張っている「スマートホンでネイティブアプリ方式」です。これも日に日に市場は大きくなっていますが、感覚的には2位「スマートホンでブラウザ方式」の5分の1から10分の1くらいの売上規模ではないかと思います。この規模がもの凄く小さいか? と言うとそんな事はなくて、私がプロデュースした『ケイオスリングス』だと、1500円(現在は1100円)で販売したものが、おかげさまで現在までに50万ダウンロードほどあり、ペース的にはシリーズ累計で100万ダウンロードも見えてきています。つまりそれだけ、1位と2位の市場規模が、特に上位にランキングされているソーシャルゲームでは凄いと言うことですね。やっぱり、はっきり言って“バブル状態”です。

で、これからどうなっていくか? 今年は何を創ったらいいのか? と聞かれたら、答えは「全部やれ」です。ガラケー市場の延命っぷりを見ていると、現在は「のりしろ」の部分が非常に長い過渡期と言えます。お客様がどこからでも遊べるように「全部で創っておきなさい」とおすすめします。これから数年後、家庭用ゲーム機のクラスであっても、ゲームデータはGmailの様に、ほとんどがサーバー上に置かれ、どんなデバイスでもつながれば、同じセーブデータで遊べる時代がくると思います。なんと第四の勢力として「ブラウザでもネイティブ言語」が動くようになってきています。Google Native Clientがそれですね。ようするにしばらくすると、ブラウザでも家庭用ゲーム機クラスのゲームが遊べるようになってしまいます。のりしろ、過渡期と言うよりは「それぞれが並行&クロスオーバー」しまくっているので、悩んでいるくらいなら全部創ってしまおうよと言うわけです。

体制によっては、「そんなん無理だわ」という場合もあると思いますから、その場合は「得意なところから攻めればいい」と思います。全張りで行くと言った僕が今年にリリースするタイトル(数えたら10タイトルほどあった)ですが、そのほとんどが、いまのところ最も市場規模が小さい第三位「「スマートホンでネイティブアプリ方式」です。なぜかというと、現時点でこの方式が一番「おもしろい」作品を創れるからです。僕達は家庭用ゲーム的な面白さを創るのが得意ですし、新進気鋭のSNSゲーム会社に、なかなかできないことといったら、ここですから今年はこれで勝負したいと思います。一番面白いものを、一番多くのお客様にお届けできるのはどの方式なのか? 市場のロックオンもあくまで「おもしろさ」ありきで行きます。

まずは『ケイオスリングスII』『拡散性ミリオンアーサー』あたりから、そろそろ具体的な情報も載せれそうですので、ご期待ください。マグロご期待下さい。

■追伸
僕と一緒にスマゲでナンバーワンを取りたい人、募集しています。

つづく

安藤武博
スクウェア・エニックスのゲームプロデューサーにして、同社のスマートフォンアプリ制作の中核を担う人物。早くからスマートフォン事業に携わってきたことから、アプリに対してはすでに確固たる理論を構築している。それでいて、つねに新たなステージへのチャレンジを忘れないスマートフォン業界の革命児。

[バックナンバー]
スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第六回 「KPIって何だ」
スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第五回 「GREEとMobage」
スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第四回 「価格にまつわるエトセトラ」
スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第三回 「おわり」と「はじまり」
スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第二回 「突撃隊長」
スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第一回 「革命開戦☆」

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