『ヘブバン』新ストーリーイベント“Silhouette of Summer Light Square”開幕。水着衣装の新スタイルSS神崎アーデルハイドと佐月マリが登場
2024-07-05 12:30
2022-08-29 07:00 投稿
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ヘブンバーンズレッド
2022年8月25日に開催されたゲーム開発者向け技術交流会“CEDEC2022”。
ゲーム関連事業に携わるさまざまな技術、知見の共有が行われる本イベントでは、今年も多くのセッションが実施され、さまざまな知識交流が行われた。
本稿では、そんな“CEDEC2022”にて開催された『ヘブンバーンズレッド』(以下、『ヘブバン』)のビジュアルアートに関するセッション“ヘブンバーンズレッドにおける「最上の、切なさを。」を形にしたビジュアルアイデンティティ”のレポートをお届けしよう。
※本稿には一部ネタバレにつながる要素が含まれています。ご注意ください。
本セッションには、Wright Flyer Studiosでリードシネマティクスアーティストを務めるの竹俣太樹氏、マネージャーの南敬介氏、3Dアートディレクターの菊池景伍氏所属する3名のスピーカーが登壇。
『ヘブバン』の重要なコンセプトである“切なさ”をプレイヤーに感じてもらうために、画面構成や美術面からどのような表現を用いたのかが、3つのビジュアルアイデンティティという言葉とともに解説された。
セッションではまず、『ヘブバン』の画作りにおいて重視された点が語られた。
菊池氏によると、『ヘブバン』を象徴する言葉「最上の、切なさを。」をどのようにアートとして表現するかが最重要視されていたという。これを実現するため、色の調和や光の加減によって演出を深めるなど、さまざまな工夫がなされているそうだ。
そもそも『ヘブバン』には、テキストをユーザーに読ませることなく、ビジュアルでゲームの世界観を伝えるというコンセプトを持つという。
具体的には、湖畔に沈む夕日のビジュアルを表現する場合、地の文を読ませずとも、ビジュアルによって切なさを伝えられるような作りになるよう、意識が払われているそうだ。
しかし地の文を読ませずに世界観を伝えるというのは生半なことではない。夕日のはかなげな光を表現できなければ、切なさを伝えることができないため、ビジュアルを調整するごとに目標が達成できているかどうか、チーム内でくり返し確認とすり合わせが行われたという。
切なさを演出するのに重要な要素であるカラーリングについても、こだわりをもって設計されたそうだ。
暖色の美しさ、色から連想される情緒やはかなさ、全体としての整合性を重視しつつ、その調和を模索したのだという。
たとえば画面内に入る建物や木々といった要素が多い場合は、色合いを調整しなければ、まとまりのない画になってしまう。それを避けるために、夕方の景色ではカラーリングを暖色で統一するなど、細かな工夫が重ねられているとのこと。
こうしたカラーリング、彩色に関するルールは開発の初期段階からこだわりをもって方針を立てられており、このルールは現在にいたるまでの画作りにおける指針として運用されているそうだ。
光の表現も、切なさを演出する重要な要素。これに関しては、要所要所で逆光や遮光を意図的に使用差し込むことで、登場人物の不安やさびしさといった感情の表現を図っているとのこと。
この光の表現だけでもある程度の感情は表現できるものの、『ヘブバン』のアートチームはさらなる工夫として、余白も利用しているという。画面のシンプルさや余白を用いて表現することで、寂りょう感(さびしさ)をより一層強くプレイヤーに感じさせ、『ヘブバン』の世界を体験させる画面構成が作られたのだそう。
どのような意図や方針をもとに画作りが行われているのかが語られた後には、画面作りのディレクションについてが明かされた。制作フローに関しては、一般的なゲーム制作のディレクションと同じく、モデルなどのデータを作成した後、各パートにチェックが入るという形が取られているとのことだが、『ヘブバン』ではそこに濃度を加えた形になっていたようだ。
具体的には、各パートの出来上がりごとに、色の調和、光、間といった、先に挙げた『ヘブバン』におけるアートワークの3つの柱がしっかり守られているかを確認していたのだという。
こうしてあらゆるビジュアルを徹底的にチェックすることで、コンセプトアートとズレが生じない、統一された世界観を演出しているのだ。
なお、チェックにひっかかったアートワークはレタッチが制作され、チェックに通るまで細かく修正が重ねられたそうだ。ここからも『ヘブバン』のアートワークがどれほどこだわり抜かれているかが感じられるだろう。
こうした強いこだわりを実現するために、画面作りのための多様な調整が行える開発ツールも生み出されたそうだ。
この開発ツールが生まれたことで、日差しや遮光のライティング、キャラクターライトを状況に応じて細かく調整できるようになり、よりレタッチとすり合わせがしやすくなる環境になったという。
環境カラー、フォグ、ライティングなどによる画面作りを紹介した菊池氏は、キャラクターの感情や世界を表現を通して、切なさを軸とした世界観を伝えることが『ヘブバン』におけるビジュアルアイデンティティのひとつだとまとめている。
続けて南氏から、スキル発動時の演出、リザルト画面、バトル演出において、開発中に重視した要素が語られた。
まず語られたのは、スキル演出について。南氏は「長くても数秒という短い時間しか持っていないスキル演出の中で、いかにしてキャラクター性や威力、効果、そしてかっこよさなどの要素を伝えきるかが重要だ」と語る。
実際に『ヘブバン』では多彩なカメラワークやキャラクターの特徴をとらえた攻撃方法など、キャラクター性やかっこよさを伝えるためのスキル演出が取り入れられている。
これを実現するために、『ヘブバン』ではスキル演出でバストアップ以上の決めカットが必ず挿入されている。このカットを入れることで、主張したいキャラクターの特徴が強くアピールでき、またそれと同時にスキル自体のかっこよさも演出できるのだそうだ。
また決めカットでは、キャラクターの性格に応じた演技(ポーズ)を取らせることによって、よりはっきりとキャラクター性を表現できるようにしているとのこと。
たとえば、男勝りなキャラクターには大股で立つポーズで、クールなキャラクターにはスタイリッシュな立ち姿で、その性格を表現しているそうだ。
大股で立つポーズは、力強さにつながり、プレイヤーにとって男勝りなキャラクター性をつかむ一助となるだろう。一方、スタイリッシュなポーズは、冷静さや余裕を感じさせることから、プレイヤーがキャラクターの性格を想像しやすくなるに違いない。
また、スキル演出にはキャラクターのモチーフや設定が積極的に取り込まれており、ひとりひとりのキャラクターが独立した存在となるように設計・デザインされているとのこと。
このほかにも、キャラクターのカードイラストにおける色味、世界観、衣装の雰囲気をスキル演出と一致させることによって、統一感を生み出しているそうだ。
こうしてスキル演出により多くの情報を持たせ、そしてかっこよい内容にすること自体は、それほど難しくない。しかし情報量の多さと演出時間は比例するため、ただ情報量を増やしてしまうと、冗長になり、プレイヤーの感情も途切れてしまう。
これを解決するために、南氏はポーズひとつにもこだわりぬいて、ポーズにもしっかり意味合いを持たせられるようにこだわったそうだ。
このこだわりを実現するのに使われたのが、シルエット化。キャラクターをシルエット化してもそのポーズが持つ意味合いが通じれば、それはそのポーズ(形)にしっかり意味合いが付けられているということ。そしてシルエットでもニュアンスを伝えることができれば、一瞬で情報をプレイヤーに届けることができる。
開発チームではこれを目指し、ポーズへ込めた意味合いが短い時間の中で伝わるように徹底して検討がなされたという。
また、身体全体の流れを線に見立てた“ラインオブアクション”も、ポーズの視認性を上昇させるために、重要となっているそうだ。
南氏によると、身体に沿ったラインが途切れてしまうと視認性が大きく下がってしまうらしい。ここへの対策として『ヘブバン』では、身体の流れにまとまりを持たせるC字型のラインや、女性的なしなやかさや可憐さを表現するS字形のラインが多く用いられているという。
さらに、ポーズの左右バランスを変えることで、動作そのものから伝わる印象を強調しているそうだ。人体は基本的に左右非対称の動きをするように構成されているため、『ヘブバン』でも身体に強く力が入るようなスキルほど、非対称性を大きくするようにしているという。
ポーズの検証に加えてキャラクターが映る画面の構図も重視されており、画面をグリッド分けする三分割構図、斜めに1対1で分ける対角線構図などが使われている。
三分割構図は、画面を縦と横に直線で三分割したときに、縦横の直線が重なる部分に被写体を置く、画面構成の基本となる構図。
『ヘブバン』においては、コンセプトにある切なさが伝わりやすいように三分割構図が用いられており、キャラクターの視認性を上昇させることで、キャラクターの感情がよりダイレクトにプレイヤーへ届くようになっている。
対角線構図は、被写体によって斜めに画面を分ける構図で、力の方向性が一目でわかるように表現されているそうだ。
また、日の丸構図や消失点の使用といった、画面中央に視線を誘導する構図も採用。
日の丸構図は被写体を画面中央に映す大胆かつシンプルな構図で、前述の三分割構図よりもさらに直接的にキャラクターの表情を伝えることができる。
一方、消失点が作られた画面は、遠近感を表現することに優れており、攻撃のヒット地点を消失点上へ配置することで、攻撃したキャラクターと攻撃を受けた相手の距離感が判断しやすいようにされている。
『ヘブバン』のスキル演出は、このようにポーズだけでなく構図にも強いこだわりを込められているのだという。
こうした解説を振り返って南氏は、「インゲームで感情を途切れさせない演出とは、バトルとストーリーを途切れさせずにつなぐことだ」と総括。また、さまざまな演出手法を用いて『ヘブバン』らしい世界観を表現していくことが、本作のビジュアルアイデンティティのひとつでもあると語った。
続いて竹俣氏からは、シネマティクスチームからのアプローチが語られた。
竹俣氏によれば、シネマティクス(ストーリー中などに挿入される映像)のクオリティは、そのままプレイヤーの感動体験に直結するという。
そのため、シネマティックシーンにおいても『ヘブバン』ではこだわりぬいた映像表現が行われている。しかし、制作には時間と人員に制限があったため、竹俣氏がやりたいことをすべて詰め込むことは難しく、何が『ヘブバン』にとって重要かを考えつつ、最小手で表現を進めていくことにしたそうだ。
こうしてシネマティクスチームは、ただ映像のクオリティを伸ばすのではなく、“最小手で史上最大限のドラマチック表現を。”という目標を掲げて、映像制作に取り組んでいたという。
この最小手を実現するために、チームではムービーにおけるふたつのレンダリングのハイブリッド、キャラクターの表情による表現、アクターによる物語の実演を交えたモーションキャプチャーといった3つの要素を徹底した制作が行われたそうだ。
まず『ヘブバン』のムービーは、リアルタイムレンダリングとプリレンダリングという、ふたつの手法によるハイブリッド体制となっている。リアルタイムレンダリングは細かい表現に向いており、おもにキャラクターの感情が表出し、会話によるドラマがくり広げられるときに用いられている。
一方、プリレンダリングは、巨大な敵の登場シーンに採用。敵のスケール感や情景のスペクタクル感をリアルタイムレンダリングよりも効果的に表現できるそうだ。
あわせて竹俣氏は、キャラクターの感情を表現するためには、顔の表情がもっとも重要であると考え、ここに注力するべき部分だと判断。
もともとは、2Dテクスチャの切り換えだけで表情を変化させる予定だったところ、より多彩な表情を作り上げるために、ブレンドシェイプ(CGにおけるアニメーション手法のひとつ)を実装することになったそうだ。
加えて、モーションキャプチャー時には、アクターによる役作りと演技指導の徹底によって、臨場感とリアリティある感情表現を追求したとのこと。
もちろん、アクターとスタジオ選定も徹底。ドラマによる切なさの表現を最大化するべく、演技指導における明確なイメージ、スケジューリング、アクターとのコミュニケーションも重視したことが明かされた。
こうして映像表現に用いる技法とアプローチ手法を厳選することで、制限がある中でも最良の映像表現を実現できたのだそう。
最終的に竹俣氏は、シナリオ、演技、映像演出、サウンドといった丁寧な積み重ねによって感情表現を最大化させることが、『ヘブバン』におけるビジュアルアイデンティティのひとつだと定義付けた。
セッションの最後には、心に訴えかける画作り、ゲーム内をシームレスにつなぐ演出、キャラクターの感情表現の追求が『ヘブバン』におけるビジュアルアイデンティティだと改めて語られた。
そして、Wright Flyer Studiosとしても追求してきた“心を揺さぶる感動体験を”というスローガンが『ヘブバン』で結実したことも、竹俣氏から明かされ、セッションが締めくくられた。
対応機種 | iOS/Android |
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価格 | 無料(アプリ内課金あり) |
ジャンル | RPG |
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メーカー | ライトフライヤースタジオ |
公式サイト | https://heaven-burns-red.com/ |
公式Twitter | https://twitter.com/heavenburnsred |
配信日 | 配信中 |
コピーライト | ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS ©VISUAL ARTS/Key |
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