元々は爆発する流星!?意外と知らない天狗のルーツ【しゃれこうべが語る元ネタの世界 第19回】
2020-02-26 12:00 投稿
花月、11年半のキャリアに幕!!
2020年2月24日……、エディオンアリーナ大阪に響く引退の10カウントゴング……。
いまここに……、プロレスラー・花月のキャリアが幕を閉じた……。
う、うぅ……、おォ疲れ様でしたァァァーー!!!
最後の最後まで名選手! 引退試合とは思えぬ激闘に寂しさどころか高ぶる心!!
編集U「さ~て、今週のコラムさんは~?」
完全スルーッッ!!!
とまぁ、そんなこんなで始まりました! “元ネタの世界”!
今回お話しするのは、天狗ッ!
先週の雪女と同じくメジャーもメジャーですが、その由来は意外にも……?
【目次】
・ばァーくれつ!!
・がんばれ是害房~バキバキ道中~
・どうして天狗さんのお鼻はそんなに長いの?
・次回はロキとトールの珍道中!?
ばァーくれつ!!
さァーて今回紹介しまするは天狗!
言わずと知れた妖怪の代表格でございますね!
鳥のようなクチバシと翼を持った姿、あるいは赤い鼻長の顔をした人型の妖怪、それが天狗!
しかし天狗の狗が意味するのは犬! しかし犬って天狗のイメージとはちと違いますよね~!
編集U「確かに犬要素はないよな」
というのもこの名前、もともとは中国から伝わったもので、そもそもは流星が爆発する現象に名付けられたものなんだそうな!
天狗と書いて“テンコウ”と読むこの現象、流星の破裂音は日本で言えば関東一帯に響き渡るレベル! 実際、1996年、2003年には謎の爆音が観測されており、のちの調査で流星によるものだと判明したそうな!
中国ではそのすさまじい音が犬の鳴き声と考えられ、吠える犬的なニュアンスを持つ狗の字が使われたとか!
そしてこれが中国帰りの学者によって日本にも伝わり、712年に編纂されたとされる日本最古の歴史書『古事記』にもその名は登場しています!
編集U「どうしたら流星の爆発があの天狗に……?」
いやそれがですね、最初こそ中国の天狗が輸入されたんですが、伝えかたの問題やら思想の違いやらがあってか、天狗現象の名は浸透せず! なんと再登場するのは400年後!!
編集U「いや時間経ちすぎだろ!!!」
逆によく言葉として残ってたな、ってな感じですね!
ただし再登場当初は「天狗のせいで病気になった」程度に書かれるだけで、まだ存在感は薄い感じ! 何気に『源氏物語』にも天狗の名は出てくるそうですが!
余談ですが、源氏と言えば源義経がまだ牛若丸の名だったころ、鞍馬山の天狗に剣術を習ったってな話も有名ですね!
で、平安期に再登場したあたりからすでに天狗=半鳥半人のイメージはついていたそうな!
そして天狗の存在が浸透していき、平安末期に成立したと言われる説話集『今昔物語集』には、10個のエピソードで天狗がメインキャラとして登場!
編集U「お~、けっこう出番多い」
今回はそのなかでも有名&ギャグテイスト満載な天狗“是害房”(ぜがいぼう)のお話をしましょう!
がんばれ是害房~バキバキ道中~
ときは康保(こうほう)3年、西暦で言うところの966年。中国に住まう大天狗たちの首領・是害房が日本にやってきました。
愛宕山の日本天狗たちに、是害房は言いました。
「中国はインドに近いゆえに、仏法の威力も非常に強く、名だたる寺や僧がひしめいている。だが、我ら天狗を凌駕するものはおらぬ。
日本は小さき国だが、中国と同じく仏法の伝わる国。少しは歯応えのある僧がいるのか見てみたいのだ」
編集U「また何か偉そうな……」
天狗ですからね!!
僧たちに手を焼いていた日本天狗たちは、これで勝つるとばかりに是害房を比叡山に連れていきました。
是害房はさっそく老いた僧に化け、通りがかった僧を襲うべく待ち伏せます。
すると、ひとりの僧が輿に乗って山から下りて来ましたが、その僧は不動明王の火界(かかい)の呪を唱えていたため、輿のまわりには火が燃え上がっていました。
炎の勢いはすさまじく、是害房は襲い掛かるどころか火を恐れて逃げ隠れてしまったのです。
編集U「おっとクソザコの予感」
ま、まぁ不動明王の炎はそりゃあね?
「なぜあの僧を襲わなかったのか」と聞かれた是害房は、「羽が燃えては中国に帰れぬからな」と返し、つぎこそはと待ち伏せを再開します。
しかし、今度の僧は不動明王の慈救(じきゅう)の呪を唱えており、是害房の近くに来るや、不動明王のしもべである金迦羅(こんがら)童子、制多迦(せいたか)童子が現れ、是害房をシバこうと追いかけ回しました。
是害房は全力で逃げ回り、なんとか童子たちを振り切ります。
僧が去った後で日本の天狗たちがあたりを探すと、息を切らして藪のなかでヘバっている是害房を発見します。
編集U「よし、国に帰れ」
あの中国から来た大天狗が比叡山の高僧に挑む、と聞いて集まった日本の天狗たちでしたが、さすがにこれには呆れかえったようですね!
このエピソードを伝える絵巻物『是害房絵』にも、日本の天狗たちにヘタレっぷりを責められる是害房の姿が描かれていますよ!
編集U「哀れな……」
しかし是害房、このままでは国にも帰れぬ、と再び気合を入れて僧を待ち構えるのでした!
しばらくすると、またひとりの僧がやってきます。こちらは摩訶止観(まかしかん)を念じていたため、複数の護法童子が護衛として顕現しておりました。
是害房はやはり正体を見破られ、今度は逃げることもかなわずにボッコボコにされてしまいます。
とうとう心が折れた是害房が先ほどまでの失敗も含めて詫びを入れると、童子たちは最後に是害房の腰を踏みつけ、去っていくのでした。
その後、またまた日本の天狗たちが様子を見に来ると、ぶっ倒れた是害房は全身の骨を折られているという有様です。
編集U「予想以上にダメージがエグい……!」
仏敵許すまじ、慈悲はない、ってな勢いですね……!
さすがに気の毒と思った日本の天狗たちは、是害房を湯治で癒してやろうと担架に乗せて運びますが、どこの温泉に行っても獣臭いと一蹴されてしまいます。
けっきょく、天狗たちは仕方なしに鴨川の河原で水を沸かせて湯治を行うのでした。
治療の甲斐あって完治した是害房でしたが、さすがに懲りた様子で中国に帰ることを決心します。
日本の天狗たちは別れを惜しんで是害房に和歌を送りましたが、陰では是害房の悪口を言いまくりなのでした。
~ めでたしめでたし……? ~
編集U「とんだザコだった……」
仏法って すげー! ってことですね!
編集U「ところで和歌と言いつつ画像だと俳句なのはいったい」
スペース的なアレで!!!
さておき、別のエピソードでは天狗が10万人単位で中国から別の国(おそらく日本)に移ったという話もあり、中国には相当数の天狗がいたと考えられていたっぽいですね!
編集U「さすがに多すぎるだろ……!」
どうして天狗さんのお鼻はそんなに長いの?
ところで、天狗と言えば鼻が長くて赤顔の、ってなイメージも強いですよね!
編集U「天狗が鼻長、烏天狗がクチバシって感じだよな」
先ほどのエピソードなどでは基本クチバシの烏天狗なのですが、鼻長天狗が生まれた経緯としては、中国から伝わった仮面劇の伎楽(ぎがく)で使う面の影響という説があるそうな!
面には西洋人の顔を模したものが多かったらしく、一部の面は赤ら顔で鼻が大きかったそうな!
編集U「あ~、鬼の見た目もじつは外国人のことを指してた、みたいな話もあるしな」
そうそう!
で、それと違うパターンとしては、烏天狗が人間に化けるとき、化けた人間から元の姿に戻るときの姿が鼻長として残ったのでは、というのもあります!
人間形態の鼻が伸びて上のクチバシに、アゴが伸びて下のクチバシになる、その途中の姿が鼻長天狗なのやも、ってことですね!
編集U「図はめちゃくちゃ雑だが、まぁなるほど……」
ちなみに、是害房よろしく調子に乗った人のことを“鼻高々”、“天狗になる”なんて言ったりもしますが、これは高慢な僧が天狗に堕ちたというエピソードがあることに由来するそうですよ!
次回はロキとトールの珍道中!?
ってぇことで、今回は天狗のお話でしたよ!
今回紹介した以外にも、蛇に変身した龍を天狗がさらってしまう話なんかもあったりしまして、調べてみるとけっこうおもしろかったですね!
編集U「しかし元が流星とはな……」
天から降ってくる、って部分で鳥と結びついた感はあるかもですね~!
さて次回でございますが、しばらく元ネタと言うにはピンポイントなネタが続いていきましたし、つぎはもうちょいデカいネタにしますか!
言うならそう、北欧神話とかね!!
編集U「北欧神話の話はもうしたんだが?」
いかにも! しかしまだまだ在庫はございます!!
今度はロキとトールの別エピソードでもお話ししましょうってなもんですよ!
乞う、ご期待ッ!!
そんではね!!
観てきたばっかりの花月引退興行のお話をね!!
いやもう本当に花月引退試合の里村明衣子戦が! すさまじく!!
緊張感のある組み合いから始まる20分超えの激闘!
打撃、関節、投げ! 両者ともにすべての一撃が息を飲む鋭さ激しさすさまじさ!!
これが最後の試合……、と湿っぽくさせるどころか猛烈に燃え上がらせるこの激闘に!!
アタシャ! 敬意を表さざるを得ない!!!
編集U「ときに、貴様ァ……」
ちょ~っといま人が気持ちよく喋ってるでしょうに!
編集U「締切を厳守できないライターはゴミだと教えたはずだがな……!」
※間に合いませんでした。
……こ、公開日は守れてるってことで何卒!!!
したら、アタシャ来週に向けてエスケープですよ! HAHAHA!!
おさらば!!
文/しゃれこうべ村田(@SRSWiterM)
参考文献
杉原たくや(2007)『天狗はどこから来たか』 大修館書店.
志村有弘(2011)『日本ミステリアス 妖怪・怪奇・妖人事典』 勉誠出版.
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