『シャドバ エボルヴ』コラボパック“カードファイト!! ヴァンガード”新カード2枚(ビショップクラス)をファミ通App独占公開!
2024-06-03 17:00
2017-08-30 21:45 投稿
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シャドウバース
※ お詫びと訂正(2017年8月31日16時)
記事内に、一部実際の講演と原稿に表現上の差異があり、修正致しました。読者の皆様ならびに関係各位にご迷惑をおかけした旨、深くお詫び申し上げます。
2017年8月30日~9月1日の3日間、パシフィコ横浜で開催中の開発者向けカンファレンス“CEDEC 2017”。
1日目に行われた講演“『Shadowverse』におけるデッキのトレンド分析を題材としたデータマイニング技術(※1) の活用手法紹介”では、サイゲームスのアナリスト・鈴木貴都氏と、同社のサーバサイドエンジニア・草野友弘氏が登壇。
※ 今回、題材として取り上げる“『Shadowverse』におけるデッキのトレンド分析”は現在開発中のため、現環境の能力調整には分析結果は適応されていない。
※1 データマイニングとは、膨大なデータに対して、データ解析技法を用いることでそこから価値のある“知識”を取り出す技術のこと。
本セッションでは、カードゲームのバランス調整の中枢となる“デッキのトレンド分析”について、具体的なデータを交えながら問題点や分析事例が紹介された。
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800種類ものカードの中から40枚を選定してデッキを組む『シャドウバース』。3ヵ月にひとつのペースで新弾カードパックが追加されるという背景からも、ユーザー体験を保持、向上させるには、ゲームバランスを保つことが最重要事項なのだ。
『シャドウバース』では、TCGプランナーと呼ばれる専門役職の人がゲームバランスを調整しているが、新規カード追加によりデッキトレンドは激しく変化するほか、既存カードとのシナジーも正しく理解しなければならず、プランナーの負担は大きくなる一方。
そこで、ユーザーの対戦情報やアイテム獲得履歴が確認できる行動ログのデータ分析を行い、それを可視化することでTCGプランナーやディレクターがプレイヤーの動向を確認しやすくすることが求められたという。
言わずもがな、カードバランスの最適な構図は、デッキの有利不利がサイクルになっていること。特定のデッキが強すぎるとなったしまえば、マッチングでもそのデッキばかりと対戦することになってしまい、結果それがプレイヤーの“飽き”にもつながってしまう。
そこで始まったのが、デッキのトレンドを定量的に把握するための手法開発だ。
まず行われたのが、k-meansと呼ばれる分析手法。これは傾向が似ているデッキを特徴別にグループ化してその中心点を取り、平均値を算出し、またそこからさらにグループの中心点を定めるという手法。
分析手法としてはメジャーなものではあるが、この手法は『シャドウバース』が求めるデータマイニングとしてはうまく働かなかったという。
その原因のひとつは、k-meansが外れ値(※2) に弱いという問題にあったとのこと。
※2 外れ値とは、データ、グループをグラフ内に配置したときに、集合から大きくはずれて存在するデータのこと。
『シャドウバース』プレイヤーの多くは、Tier1と呼ばれる現環境で強いとされているデッキコンセプトを採用するが、中には、自分のこだわりをもったプレイに偏る人も多く、そういった少数派の人が外れ値としてデータに出てきてしまったため、グループ化(クラスタリング)がうまく働かなくなってしまったという。
これを受けてつぎに採用した手法が、k-medoids。
k-medoidsは中心点を作るのではなく、そこにあるデータそのものを中心にしてしまうというもの。こうすることで、外れ値は外れ値としてクラスタ化(※3) できるため、クラスタリングが正確に行われないという問題は解決。
※3 クラスタとは、複数の要素がひとつにまとまったもの。クラスタリングは、まとめようとする行為。
しかし、クラスタ化ができたところで、つぎに問題になってくるのが、デッキ間の距離。デッキ間の距離とは、デッキとデッキにどれだけの差異があるかを、グラフ上の距離で表したもの。デッキ間の距離が近ければ近いほど、似たデッキであると言える。
距離が近いものをクラスタリングすることで、より精度の高い分析結果が得られるが、距離の測定を感覚で行ってしまえば正確なデータは採れないため、何かしらの指標を利用して、定量的に定めなければならない。
k-meansではこの問題を解決するために、通常ユークリッド距離と呼ばれる指標が採用される。
一見すると有用な距離測定ができると思われるかもしれないが、この場合、それは誤りだ。それだと上の図の通り、Aを1枚Bを3枚採用したデッキより、A2枚B2枚を採用したデッキのほうが、Aを1枚Bを1枚採用したデッキに近いものと判別されてしまうが、その根拠を説明できる要素はそこにはない。
つまり、デッキ間に生じた距離に意味が伴っていないのである。
サイゲームスはこれへの対策としてマンハッタン距離と呼ばれる指標を採用。これは、Bというデッキを基点Aのデッキと等しくするには、どれくらいのアクションを起こす必要があるのかで考える距離算定法だ。
『シャドウバース』でいえば、BをAにするためには、何回カードの追加・削除というアクションが必要になるかという考えかたになる。
デッキ編集を、行動アクション数という差異を1枚ごとに表す一定値にすることで、距離に意味を持たせることができ、クラスタリングの精度は向上。客観的な分析ではあるものの、人間の直観にも近いものにでき、わかりやすい指標図が作れるようになったそうだ。
つぎにハードルとして直面した問題は、クラスタをいくつにわけて分析をするかというもの。
これに関しては人が主観でクラスタの数を設定することもできるが、人の目の届かない部分などには対応できず、データマイニングをする意味そのものが削がれてしまう。
また、前述の通り『シャドウバース』は3ヵ月に1度カードパックの追加を行っており、カードパックが追加された直後から、日を追って変化するトレンドが観測できない。人が主観で観測できるのは、それがトレンドとして確立し始めたポイントからだ。
この問題を解決するために採用されたのが、クラスタ数をあらかじめ大きめに設定しておき、それを絞っていくという手法。
しかしそうなると気になってくるのが、どうやってクラスタ数を決め打ちするのかという点。そしてこれは、デッキ内にある“コアカード”を抽出することによって見えてくるという。
コアカードとは、勝敗を決めるコンボの始動となるようなカードやフィニッシャーとして活躍するカードで、ほかのコンセプトデッキには含まれないものを指す。つまり、分析対象にもっとも影響を与えている要素となる部分だ。
このように重要な意味を持つカードだけをピックアップし、それを指標化することで、クラスタ数をある程度の精度を担保した状態で算出できたという。
こうすることで、デッキ内に含まれたカード全体を見れば大きな差分があるデッキも、戦法の主軸を担うコアカードが同じならば、同じコンセプトだとみなし、ひとつのクラスタとしてまとめることができるようになる。
また、テンプレートとして提示されたコンセプトデッキから、個性を出そうと改変されたデッキも同じクラスタとしてまとめることができるので、客観的にも主観的にも意味のあるクラスタリングができたという。
クラスタは、通常あくまでもその時系列のみを切り抜いたもので、そのままでは時系列ごとに比較してトレンドの動向を追うのは難しい。
とくに、新カードパック登場時と、戦術が収束してくる成熟期とでは、クラスタ数に大きな差が生まれることもあるため、そのままでは比較がしにくくなるようだ。
しかし、カードバランスを考える役職からしてみれば、トレンドの動向というのは非常に重要な要素となる。
サイゲームスは、これを視覚化することにも挑戦。各時期の各クラスタの中心点だけを抜き取り、ひとつのグラフ内に落とし込むことで、その動向を視覚的にとらえやすくしたという。
こうすることにより、たとえば「このコアカードを使った戦術とこのコアカードを使った戦術が収束して、この形に落ち着いたのだな」、「この戦術が分離して、この戦術とこの戦術に分派していったのだな」と時系列とともに把握できるようになったという。
このように、結果は少しずつ出てきているようだが、このデータマイニングはまだまだ実験段階。アナリストの鈴木氏はこれについて以下のように語っている。
「この分析を実運用に適用するためには、レアリティ以外の特徴、たとえばコアカード前後にプレイされたカードの抽出などを押さえていくことが必要だと認識しています。それによって、現場の運用に耐えうる分析に近づくと思います」
サーバーから吐き出された膨大なデータを的確にまとめ、TCGプランナーが視覚的にそれを把握し、調整に活かせるようなデータを作りあげるには、さまざまな試行錯誤があるようだ。
講演の最後に、鈴木氏、草野氏は以下のようなコメントで本公演をまとめてくれた。
「ユーザーの行動ログ分析のコストは高いです。しかし、我々はユーザー体験向上に向けて努力を続けます。ニューラルネットワークやディープラーニングは精度の高い分析はできますが、出てきた結果に大きく影響を与える特徴量が何か、というところを人間が認識することが非常に困難です。プランナーやディレクターが認識できない分析を行っても、ゲームに活かすことはできません。我々にとっても、ユーザーにとっても、まったく価値のない分析となってしまいます。
分析対象に影響を与えているものはなにか。行動ログの分析には非常に重要なことです。これは、ちゃんとゲームをプレイしてみないとわかりません。なので、コストこそかかりますが、ユーザー体験を向上させるためにも、今後も研究を重ねていきたいです」
ゲーム作りには、ゲーム作りを支援するためのさまざまな背景が必要であることを改めて確認できる講演となった。
今後は、ふだん表に出ることのない彼らの貢献を感じながら、『シャドウバース』をプレイしてみたい。
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【『シャドウバース』攻略まとめ】 |
対応機種 | iOS/Android |
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価格 | 無料(アプリ内課金あり) |
ジャンル | カードゲーム |
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メーカー | サイゲームス |
公式サイト | https://shadowverse.jp/ |
公式Twitter | https://twitter.com/shadowverse_jp |
配信日 | 配信中 |
コピーライト | (c) Cygames, Inc. |
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