HTML5でゲームプラットフォームの新大陸開拓に挑むヤフー“ゲームプラス”その狙いと本気度は?
2017-07-22 11:00 投稿
Yahoo! JAPANが挑むプラットフォーム戦略とは?
今回、新たにYahoo! JAPANに登場するゲームプラットフォーム、ゲームプラス。この取り組みはどういった経緯で始まったのか、そしてタイトルラインアップについても気になるところだ。
本記事では、7月20日発売の週刊ファミ通で掲載された、ゲームプラス立ち上げのキーマンである須藤岳氏と脇康平氏のインタビュー記事をお届け。
プラットフォームのコンセプトからタイトルラインアップに対する考えかた、Yahoo! JAPANのサービスとの連動など、ゲームプラスならではの可能性について大いに語ってもらった。
ヤフー ゲームプラス事業部 部長(文中は須藤)
ヤフー ゲームプラス事業部 ビジネスプロデューサー(文中は脇)
ダウンロード不要で
ゲームが遊べる仕組み
──さっそくですが、今回ヤフーさんが新しいゲームのプラットフォーム、“ゲームプラス”を立ち上げるということで、その概要やコンセプトから教えてください。
須藤 “すべてのゲームはWebでやれ”というのがコンセプトですね。PCからスマートフォン、タブレットといったマルチデバイス上のブラウザで、いつでもどこでも、カジュアルなものからある程度リッチなゲームまで、幅広く遊ぶことのできるゲームプラットフォームを目指しています。
脇 URLをクリックするだけで、ハイクオリティーなゲームがすぐに遊べるというのは画期的なことだと思っています。そこで皆さんに驚きと楽しみをお届けできればと。
──ブラウザでゲームと言うとPCというイメージですが、今回のゲームプラスではWebブラウザが立ち上がる端末であればどれでも遊べるということでしょうか?
須藤 そうですね。現時点ではPCとスマホ、タブレットが主戦場ですが、将来的にはブラウザを搭載したデバイスであれば、どんなものでも遊ぶことができるという可能性を秘めています。コンテンツのタイプは大きく分けて2種類あって、ひとつはいわゆるクラウドゲームと呼ばれるもの、もうひとつは内部でHTML5版と呼んでいるものです。
脇 クラウドゲームも仕組み的にはHTML5を使っているのですが、処理がサーバー側なのか、それともクライアント側なのか、その違いで分けています。とにかく、どちらもブラウザだけどネイティブアプリ並みの触り心地や画面演出などが可能になっています。
──クラウドとHTML5についてはのちほどうかがうとして、そもそもヤフーさんがなぜ改めてゲームプラスというプラットフォームを立ち上げるにいたったのか、その本気度、スケール感はこれまでとどう違うのか、という部分をお聞かせください。
須藤 僕らがHTML5を扱い始めたのは4年前からで、現在サービス中の“かんたんゲームプラス”の前身にあたる“かんたんゲーム”というものがありました。これは9leap(ナインリープ。ゲーム開発コンテストを行う投稿型ゲームサイト)さんと協力して、一般の方が作られたゲームをコンペ形式で集め、その中で人気があったものをスマホ版のYahoo!ゲームに置く、というものでした。
──かんたんゲームを始めたとき、ユーザーの反応はいかがでしたか?
須藤 ページビューは爆増しました。ブラウザゲームのユーザーもすごい数がいることがわかって、もっとリッチな形で表現したいということで、かんたんゲームプラスにつながっていくんです。そこで当時のブースターメディア(現・CoolGames)さんとクオリティーの高いカジュアルゲームを作ろう、とスタートしたのが3年前ですね。
脇 その後に僕が加わって、リニューアルをしてパートナーさんをもっと増やしていこうということになりました。かんたんゲームプラスの立ち上げ期と比べると、ユーザー数は10倍にもなったんです。
須藤 このあたりでほぼ確信めいたものがありましたね。「これは来るな……」と。ダウンロード不要、インストール不要の世界でゲームを楽しみたいお客さんは確実にいると思ったんです。ただ、当時はまだ技術的にカジュアルなゲームしか提供することができませんでした。商用可能なサービスのレベルにすらいたらないような状況の中で、突破口の種を見つけたのが2年前になります。
脇 積極的に協力していただけるパートナーさんの存在もあり、ついに今回発表することができたのがゲームプラスです。
須藤 これまでの経緯もあり、根幹部分としては、ダウンロード不要、インストール不要で手軽に楽しめる、しかもすごくリッチなものまで遊べるような世界を作りたい、というのがモチベーションになっていますね。
既存の市場と共存する
“新大陸”を目指す
──既存のヤフーさんのゲームはカジュアル寄りでしたが、そういった印象を変えていくという意気込みはありますか?
須藤 ありますね。いつでもどこでもゲームが遊べるということに加えて、もうひとつ僕らが実現したいことがあるんです。
──と言いますと?
須藤 モバゲーさんやグリーさんといった巨大なプラットフォームの登場を経て、ネイティブアプリ市場が一気に勃興しました。しかし、いま新しいものが生みづらくなってきている。歴史が少し停滞していると感じるんです。その一方で、ブラウザならではのゲームというのはまだまだ掘り尽くされてはいなくて、ブラウザのゲームがネイティブアプリに負けない表現力を備えることができたなら、それは大きな可能性につながります。
脇 ユーザーさんにとってみれば、アプリなのかブラウザなのかはあまり重要ではなくて、“新しい体験をできるかどうか”が大事です。その材料として、ブラウザゲームならではの要素やサービス提携といったものが活かせると思うんです。最終的にはユーザーさんにおもしろいものを届けたいというのがゴールですが、そのためには作り手の方々にいい環境を用意しなければいけない。
須藤 そこである程度仮説を立てて、この場でこういったコンテンツを提供すればユーザーさんに響くだろうと試してみた結果、先ほどもお話ししたように、市場の将来性にほぼ確実なものを感じることができたんですね。
脇 ゲームプラスのコンセプトには“新大陸発見”みたいな部分もあって、いまある何かを壊していこうという考えはいっさいないんです。1兆円のアプリ市場がある、ならばもうひとつ1兆円規模の市場を作って、そこにクリエイターさんを解き放てば、また新しい遊びが生まれるだろうと。ゲーム業界としては、楽しめる場所が増えるというのはとてもいいことだと思うんですよ。最近で言えば『ポケモンGO』のように、遊びの型を増やすための土壌みたいなものを作れたらいいなと。
須藤 そういう考えで、かんたんゲームプラスで挑戦したのが2014年のことです。最初は広告のビジネスモデルで進めていたのですが、収益の部分でももっと柔軟性が欲しいという要望も出てきていました。
脇 須藤がいろいろと準備を進めている中で、スクウェア・エニックスさんのような強力なパートナーさんも名乗りを上げてくださって、ゲームファンの方々にも注目していただけています。カジュアルユーザーからゲームファンまで、幅広いユーザー層というものは実現できていると思っています。
ダウンロード時間や容量から
ユーザーを解放する
──冒頭であったクラウド版とHTML5版について、特徴を簡単に教えてください。
脇 クラウドは、仕組みで言えば動画を見ているのと同じなんですよ。端末側では操作情報の送信だけを行い、ゲームのプログラムはすべてサーバー側で処理されて、その結果を映像として見るというイメージです。そのため、端末側に高い処理能力がなくても、リッチな3Dゲームなどが楽しめます。HTML5はWebの開発技術で、必要となるたびにデータをダウンロードする形です。
須藤 クラウドは“触って遊べる動画”で、HTML5は“手っ取り早く遊ぶことができるアプリ”と考えるといいかもしれないですね。
──アプリだと端末の容量も気になりますが、クラウドやHTML5だとそこから解放されるというメリットもありますよね。
脇 そうですね。
須藤 アプリだと、どうしてもアプリそのもののダウンロードに時間がかかってしまいます。分割ダウンロードなど工夫次第の部分ではありますが、HTML5はそういったストレスを軽減してくれるのも特徴だと思います。
新規タイトルだけでなく
“サムシングニュー”にも注力
──ゲームプラスに対応するタイトルの数も気になるところですが。
脇 ローンチ時は10本前後です。クラウドの細かいものを含めると、全体では40本近くになりますね。ローンチタイトルにはオリジナルの作品もありますが、いちばんの目玉はスクウェア・エニックスさんの『アンティークカルネヴァーレ』です。
──そちらはどういった作品になりますか?
脇 対戦モノのゲームなのですが、観戦モードのようなブラウザならではの要素もあって、世界観も非常に作り込まれた作品です。昨今のeスポーツ文化に沿った形で盛り上がるのではないかと。表現力も非常に高く、「こんなものがブラウザで遊べるのか!」という驚きを味わっていただけると思います。
須藤 あとは、ローンチではなく8月ごろになるのですが、万歩計のような機能を利用した『チョコボのチョコッと農園』というタイトルも出ます。スクウェア・エニックスさん以外にも、『イケメン戦国』シリーズのゲームプラスバージョンなども用意されています。
脇 『イケメン戦国』のような女性に刺さるものもあれば、タイトーさんのようなアーケード業界からの参入もあり、あらゆる層にフックしそうな幅広いタイトルを用意できていると思います。
須藤 変わり種で言えば、PC-98のゲームがブラウザで遊べるようなコンテンツも用意されていますので、そのあたりも楽しみにしていただければ。
──今後のラインアップについてですが、すでにネイティブアプリでリリースされている作品の移植・リメイクと、プラットフォーム専用タイトルとでは、どちらがメインになっていきますか?
脇 移植作品やリメイクもメーカーさんの要望があれば出てくると思いますが、僕らとしては新作をどんどん提供していただく方向で場を作っていきたいと思っています。世の中にプラットフォームはたくさんありますが、ゲームプラスでないとできない体験という部分で質を追求したいのです。アプリでいろいろな体験ができる時代ですから、ユーザーさんに「ここは良質な作品が揃っている」、「ここに来たら間違いなく楽しい」と思ってもらわないといけませんから。
須藤 もちろん僕らがゲームを作るわけではないので、パートナーさんがゲームプラスで展開することの意義や、ビジネス的なメリットという部分が成立するようにしたいですね。
脇 「ゲームプラスに来たら間違いない」というところまで育てていきたいです。
須藤 価値創造という言葉がふさわしいでしょうか。新作にも2種類あって、いわゆる新規の作品だけでなく、サムシングニューな新作というものがあります。たとえ移植作品であっても、そこに独自の要素が加わることで、それまでになかった遊びかたが生まれる、という意味合いです。『チョコボのチョコッと農園』にしても、こういう農園型のゲームはいっぱいありますが、そこに万歩計という要素が加わることで新しい遊びになる。そういう新たな価値の創造をメーカーの皆さんといっしょに提供できるようなサービスにしていきたいですね。
──万歩計が例にありましたが、そのほかでゲームプラスならではの付加価値とは、どのようなものが考えられますか?
脇 これは、言ってしまえばダウンロード不要、インストール不要という言葉をどのように解釈するかに尽きますね。観戦モードなどはその具体例のひとつです。もちろんアプリでも観戦はできますが、その場合は観戦したい人もアプリをインストールする必要がありますよね。ブラウザであれば、送られてきたURLを踏めばすぐに観ることができます。
須藤 あくまでそれも解釈のひとつですが、出入りの自由さというのはブラウザの特徴としてありますね。
──SNSなどでURLを共有するだけで観戦でき、そのまま参加することもできると。
須藤 そうです。アプリのギガ単位のダウンロードがあった場合には成立しない世界が、ブラウザなら成立するんです。もちろんこれがすべてというわけではなく、むしろ僕らが発見できているのがそのレベル、と言ったほうがいいですね。
──まだまだありそうと。
須藤 たとえば、プレイ中に敵にやられてしまって、時間経過で回復するのを待つか、課金して回復するかという状況だとします。ここでSNSやメールで友だちに「助けて!」とゲームのURLを送る。助けを求められた友だちがゲームの世界に入ると、その人のキャラクターが倒れていると。友だちがそのキャラクターをタップしてあげると、そのキャラクターが復活して立ち上がる、みたいなのもありえますよね。時間経過か課金かという選択肢以外に第3の復活方法が成立して、しかも助けた友だちも自然とゲームに参加している。これも新しい価値創造だと思うんですよ。
──ブラウザとURLさえあればアクセスできるということを考えると、他人の巻き込みやすさはいまのソーシャルゲーム以上ですね。
須藤 いま挙げた例もダウンロード不要、インストール不要の解釈のふたつ目に過ぎなくて、クリエイターさんのアイデアによって、これからどんどん進化していくのではないかと思っています。
脇 今年4月に正式版がリリースされたYahoo!JAPANのIoTプラットフォーム“myThingsDevelopers”の活用も新たな付加価値になると思っています。これは、Yahoo! JAPANの提供するWebサービスや、それ以外のWebサービス、ウェアラブルやセンサーなどのIoTデバイスなどをゲームともつなぐことができる仕組みです。それを活用すれば、たとえば『ポ
ケモンGO』のような位置情報をゲームに取り込んだように、新しい形のゲーム体験を生み出す事も可能ではないかと思います。Yahoo!JAPANには生活に紐づいたサービスもあるので、その導線の中でちょっとした遊びを入れることで、それまでゲームを知らなかった人の掘り起こしにも期待できますしね。
須藤 ダウンロード不要、インストール不要という軸と並んで、Yahoo! JAPAN IDの向こう側に広がるデータを使って何か新しい創造ができないか、それがもうひとつの軸です。
──Yahoo!JAPANの天気情報や検索機能といったサービスを、ゲーム側で活用できるようになるんですね。
脇 そうです。たとえば釣りゲームやゴルフゲームを遊んでいるときに、自分がいる場所の天気がリアルタイムに反映されて、釣り場などのコンディションが変わったり、ウェアラブルデバイスのバイタルデータを使って、活動量に応じてゲームのアバターが痩せるとか経験値が溜まるとかですね。天気をメインに据えてゲームを作るということができるかはわかりませんが、リアルとの結びつきを与えることでゲームの世界に対するなじみやすさが変わったり、そういった使いかたはできると思います。
7月18日オープン!
サポート体制も万全
──ゲームプラスの料金形態はどのようなものになる予定ですか?
脇 HTML5は基本無料+アイテム課金のモデルがベースになっていますが、月額や買い切りの形式も含めて準備は進めています。
──つまり料金形態はプラットフォーム側で固定されているのではなく、メーカー側である程度決めることができると。
須藤 要望に対応できるように準備中ですね。
脇 クラウドに関しては、月額もしくはチケット制がベースになってくると思います。
須藤 まだはっきりとは決まっていませんが、クラウドでも基本無料のアイテム課金型、いわゆるクライアントサーバーモデルのネットワークゲームをブラウザだけでやってしまおう、しかもスマホでもできるよ、というようなサービスも考えています。技術的な部分は確立されていますので、あとはどうやっていくか、そこを考える段階には来ていますね。
脇 今回、7月18日にオープンということにしましたが、そこは単にキックオフに過ぎません。文化として作り上げていくのもこれからですし、今後いろいろとプラットフォームが立ち上がっていく中で、ゲームプラスに対して可能性を感じてくれると思いますね。ブラウザで3Dをバリバリに動かせるゲームエンジンも徐々に出てきているので、そういったエンジンを作っている方々と手を結びつつ、開発者の方々を支援していくということも考えています。
須藤 ゲームプラスで配信していただくことが前提になりますが、すでにゲームエンジンとして皆さんに触っていただける状況にあります。ただ、これも最終的にはもっと広く開放してしまっていいとすら思っています。
──他社のサービスは競合相手でもありますが、新しい市場を作っていくという意味では、仲間意識を持っていけたらいいですよね。
須藤 本当にそう思います。
脇 でも、ウチも会社としてはかなり本気ですからね。参加いただいているメーカーさんの期待に応えないわけにはいきませんから。
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