『モンスト』さなぱっちょ『ブレフロ』かおりんごらが語るスマホゲーム公式動画配信の未来【Next Marketing Summit】
2017-05-09 13:45 投稿
動画を通じたユーザーとのつながり
2017年4月26日、スマホゲーム業界のマーケティング関係者によるセッションや交流を目的としたイベント“Next Marketing Summit”が、東京のベルサール六本木で開催された。
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本記事では、その中で開催されたセッション“動画配信を通じたユーザーコミュニケーションの次の一手”の模様をお届けする。
出演者紹介
今回のセッションでは、スマホゲームの公式動画配信で活躍している、エイリムの原田香氏(かおりんご)、KLabの柴田和紀氏(しばやん)、ミクシィ XFLAG スタジオのさなぱっちょ氏の3人がスピーカーとして登壇。
また、YouTuberのマネジメント事務所として知られるUUUMより、笠原直人氏がモデレーターとして司会進行を務めた。
なぜYouTubeチャンネルを
最初のトークテーマは、動画配信を始めたきっかけ。
原田氏によると、『ブレイブフロンティア』(以下、『ブレフロ』)のYouTubeチャンネルは「テキストで発信するよりも動画で発信したほうが思いは伝わるのでは」という考えでスタートしたという。
チャンネルスタート時点では明確な数値目標はなかったが、今後リリースするゲームを楽しみにしてくれるような、会社のファンをつくるという目標が背景にあったとのこと。
一方、ブランドの新規タイトルを紹介する目的で、プラットフォーム的な役割として開設されたのがKLabGamesチャンネル。
複数のタイトルを取り扱うことについて、柴田氏は「新旧タイトル含めたKLab Gamesのラインナップでチャンネル運営を計画していても、リリーススケジュールの変更や新規タイトルの想定外な早期撤退などでチャンネル計画も状況に合わせて変わっていくこともある」と、チャンネル運営の難しさを語った。
チャンネル開設に際し、投資に対する利益率がチャンネル開設のハードルになるという話題も。
これに対し、柴田氏は「数字についていろいろ言われるのなら、お金をかけずに始めてみればいい」と回答。
原田氏も「いまは動画が注目されているが、次は何が来るかわからない。乗り遅れるくらいなら、数字は気にせず始めてみるのもひとつの手」と続け、機会損失のリスクを回避するためのスタートという考えかたを示した。
チャンネル運営に求められるコンテンツとは
原田氏はコンテンツについて、「YouTubeでは何がきっかけになるかわからない。エンタメに寄せることで、それを経由してゲームに触れてくれる機会もある。広いエンタメを提供することを心がけている」と語る。
その一方で、コンテンツがゲームから離れすぎると、ユーザーがついてこれなくなるケースも。さなぱっちょ氏はチャンネルを『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)というコンテンツを外に広げていくためのコネクションとして位置づけたうえで、「公式チャンネルに求められていることと、コンテンツ拡充のバランスは繊細。現在も試行錯誤しながらやっている」として、実例とともにコンテンツ制作の難しさを語った。
さらに、YouTubeでは国外のユーザーに向けたコンテンツづくりが必要になる場合も。
『ブレフロ』チャンネルは当初国内向けを想定して運営していたが、国外のユーザーが自主的に翻訳した動画を再アップロードしていたことで、その需要を認識。現在は、グローバル版ユーザー向けのコンテンツも用意しているという。
同様にKLab Gamesチャンネルも、英語圏のアクセスが多いことから英語放送のチャンネルを別途設立。海外向け放送にはアメリカとフランス出身の社内スタッフがMCとして出演し、国内向けとは別軸で企画運営しているとのこと。
動画展開のリスク
動画展開による想定外の反応というテーマで、柴田氏が挙げたのは出演者の精神的負担。
出演者や番組企画スタッフは放送のコメントやSNSを通してよりダイレクトにユーザーの反応を受け取ることができる。それが励みであり改善に繋がっていくのだが、なかにはひどく凹んでしまうスタッフもいるという。
またさなぱっちょ氏は、YouTubeを使用するリスクとして、情報が瞬時に波及していく点を挙げる。
公式チャンネルでいったん間違った情報を発信してしまうと、そのままゲームメディアやSNSなどを通じて拡散され、収拾をつけるのが難しくなるという。
予防としての情報共有の重要性を説きつつ、「間違いがあれば隠さず、明らかにするのが大事」と語った。
動画コンテンツの持つ力とは
続いてのテーマは、“動画だからできたこと”。
原田氏は、「運用型のゲームだとプレイ開始が無料で終わりもないため、ユーザーはいつでも簡単にやめることができる。スマホゲームが飽和する中で勝ち抜くには、ユーザーとの絆が必要」と述べ、ユーザーとの距離を近づけるツールとして動画を位置づける。
また柴田氏は、“リアクションする場”として動画を評価。
ユーザーの意見をゲーム内に反映するには3ヵ月や半年、1年といった期間が必要になるため、ユーザーが望むようなスピード感ある対応は困難であるとしながら、そこで運営側がリアクションしていくことで、ユーザーも納得しやすくなると言う。
顧客満足度を高めるためのコミュニケーションツールという側面が、各スピーカーから共通して高く評価される形となった。
動画配信の持つ可能性
さなぱっちょ氏は「YouTubeはチャンネルについているファンが能動的に観るプラットフォーム。どれだけそのゲームを周りのYouTuberなどに遊んでもらえるかが重要」と語り、さらに「ゲーム実況しやすいゲームを作ることもひとつの手段」として、ゲーム開発の時点で動画配信を視野に入れる道を提示する。
柴田氏は「昔と比べると技術的な進歩や民生機の性能アップが目ざましい。スマホひとつで海外中継もできる。やる・やらないの判断をする際、コストを気にする必要はもうない。やりたいと思ったらすぐにやったほうがいい」とコメント。コスト面でのハードルよりも、動いてみることの重要性をくり返し強調した。
ゲームと動画配信の未来
本セッションで登壇者が共通して言及していたのが、確固たる方法論がまだ存在していない分野ということ。
先駆者である今回の登壇者たちですら、手探りで進めている部分が多く存在するという。
現在の状況では、新規参入したタイトルが状況を大きく動かす可能性もある。つぎの一手がいつ、誰によって打たれるか、注目していきたい。
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