スマホゲームのIP化最前線を『モンスト』『タガタメ』『ラスピリ』の仕掛人が語る【Next Marketing Summit】

2017-05-09 13:45 投稿

トップランナーが語るスマホゲームのIP化

2017年4月26日、東京のベルサール六本木にて、第1回となる“Next Marketing Summit”が開催された。

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本記事では、その中で開催されたセッション“スマホゲームのIP化の最前線を語る!”の模様をお届けする。

 
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出演者紹介

“Next Marketing Summit”とは、スマホゲーム業界のマーケティングに関わる人のための、セッションや交流を目的としたイベント。

セッションでは司会進行を務めるモデレーターとして、ちゅらっぷす取締役の成沢理恵氏が登壇。

さらにスピーカーとして、gumiよりStudio gg2プロデューサーの今泉潤氏、ハッピーエレメンツよりマーケティングディレクターの松田晃佑氏、ミクシィよりモンスト事業本部本部長の多留幸祐氏が登壇した。

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▲写真左:成沢理恵氏。写真右:今泉潤氏。
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▲写真左:松田晃佑氏、写真右:多留幸祐氏。

そもそも“IP”ってなんだ?

セッションがはじまってすぐ、今泉氏が「“IP”ってなんの略だかわかります? 俺は知らないです」と語る一幕が。

ここでいうIPは“intellectual property”の略で、日本語に訳すと“知的財産”。

セッションのタイトルにある“スマホゲームのIP化”とは、スマホゲームの著作権を活用したグッズや漫画、アニメ、新たなゲームなどを作り出すことを指す。

スマホゲームを原作としたビジネス展開を成功させるための方法論を考えるのが、このセッションの狙いとなる。

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今回討論するIP化の定義について、多留氏は「グッズ化、アニメ化などがそれ単体で黒字化するのがひとつの指標。固定ファンがついて、展開したものが安定した収益を得られることが基準となる」と回答。

さらに松田氏も、「固定ファンがいれば、この作品が好きだからゲームをしよう、グッズを買おうという動きになり、初動が速い」と、固定ファンの存在の重要性を挙げた。

一方、今泉氏は「IPという言葉がひとり歩きしている。鳥山明さんが『ドラゴンボール』を作ったのはIP化しようという狙いがあったわけではない。作り続けたいものと作り続けた人がいて、それがビジネスとして成立して続いていった結果IPになってゆく。歴史に磨かれ、携わっていると誇りに思えるものがIP」と、作り手の立場からIP化を定義する展開に。

IPは継続することで自然に作られていくという、この考えかたには松田氏、多留氏ともに賛同。

松田氏はさらに「作る時点でIP化を狙うということもある。うちでは開発の時点で狙いつつアイデアを出す。キャラと世界観を練り、ゲーム以外での展開をしやすいように枠組みを作っている」と、最初からIP化を狙っていくことで、IP化する速度を早めることができるという切り口を示した。

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なぜIPが注目されるのか?

続いて、“なぜIP化が注目されるのか”という話題に。

これに対し、今泉氏は「楽だからです。みんなが知っているし、安心感があるから流行っている」と即答。さらにその理由を掘り下げ、「遊びかたやデバイスは変わっていく。時代を超えられるのは世界観やストーリーだけ。いわゆる版権物のゲームは、そういう世界観をスマホで楽しむ、という意味で流行っているのではないか」と分析してみせた。

既存のIPを利用したタイトルに注目が集まる現状について、多留氏は「固定ファンがいて、一定の収益が見込めるゲームであれば会社は出していきたい。さらにユーザーとしても、ゲームが飽和している現状では、より知っているタイトルを手に取りやすい」と説明。

そのうえで、「『ポケモンGO』はIPものだが、それ以上にいままでと違うゲームだったから社会現象となった。IPゲームがランキング上位を占める環境でも、『ポケモンGO』のようなゲームが登場するチャンスは続いている」と語った。

IPタイトルの“らしさ”を象徴するエッセンスとは

“そのIPを象徴するエッセンスはどこにあるか”という話題では、それぞれの生み出してきたタイトルによって意見が分かれ、三者三様の回答が出る結果となった。

『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)を手がける多留氏は、「IPはキャラだけじゃない。『モンスト』で言えば、引っぱるというアクションも大事なエッセンス。その手触りが大事」と、ゲームをプレイした際の“手触り”を重視。

『ラストピリオド』のプロデューサーであり、ハッピーエレメンツのタイトル全般でマーケティングに携わる松田氏は、キャラと世界観がIPの中心にあるとし、「うちのタイトルは、極端に言うとゲームで勝負していないところもある。強いのはキャラと世界観。そこさえ押さえておけば、パズルゲームになってもリズムゲームになってもいい」と述べた。

『ファントム オブ キル』(以下、『ファンキル』)や『誰が為のアルケミスト』(以下、『タガタメ』)に携わる今泉氏は、「『タガタメ』とは、“俺”ですよ。俺とチームが作っているというだけです。ほかの人が『タガタメ』や『ファンキル』を作っても、ああいう感じは出ない」と回答。ゲーム内のあらゆる部分に存在する“作り手”のカラーが、そのIPを象徴するエッセンスになるという考えを示した。

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『FGO』はなぜ成功したか

おもしろい結果が出たのが、“IP化に成功していると感じる他社タイトル”。

ここでは今泉氏が「『Fate』以外ないでしょう」と即答。先ほどと一転し、全員の意見が一致するという展開となった。

『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)のIP化が成功した理由について、今泉氏は「奈須きのこさんにしか作れないものを、本人が最新作としてスマホゲームで出してきた。20年近く続いてるのかな。ロックですよね。かっこいい」と、IPの歴史とともに評価。

松田氏は「『FGO』もすごいんですけど、スマホで出る時点ですでに人気はあった。まったくゼロからのIP化というわけではない」としながらも、「IP化として考えるとすごく成功していると思う」と評価。

松田氏の回答を受け、多留氏は「もちろんファンはいたが、リリース時点では一般ユーザーにはそこまで知られていたわけではない」と話を展開。

「アプリストアにユーザーが集約される状況がよかった。つねにランキング上位にいることで、いままで『Fate』シリーズを知らなかったユーザーの目にも止まり、認知度がすごく上がった。流れにマッチし、スマホで成功したという意味では『FGO』しか思い浮かばない」と、スマートフォンというプラットフォームにうまくかみ合ったことが、より広い層を巻きこむ大ヒットにつながったと分析した。

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作り続けること、アニメ化、熱量の流れ

最後のトークテーマは、“IP化していくうえで自身が大切にしていること”。

今泉氏は「当時遊んだ思い出を追体験して楽しめるのがIP化」としたうえで、「既存のIPを超えていくには、続けていくしか方法がない。続けていくための手段を選ばず、努力し続けること」と回答。

松田氏は「ゲームをやっていない人にも知ってもらうことための手段として、アニメ化をいちばん重視している。アニメがいちばん幅広く、キャラや世界観を届けやすい。新規の人にも世界観を広めていきたい」と、より幅広いIP展開の起点として、アニメ化が重要な鍵になるという見かたを示した。

多留氏は「ゲーム内外に“熱量”の流れを作り、そのはけ口をゲーム内に設けること」と回答。昨年公開された劇場版『モンスト』を例に挙げながら、映画やリアルイベントで“熱量”を生み出し、最終的にガチャやクエストというかたちで発散してもらえるよう、“熱量”の流れを強く意識していると語った。

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