『アイマス』の痛車まで製作!配信3周年『ドリスピ』独自の運営手法に迫る【仕掛け人に訊く!】
2016-11-28 18:00 投稿
『ドリスピ』だからこそできる運営とは?
バンダイナムコエンターテインメントより配信中のレースゲーム『ドリフトスピリッツ』(以下、『ドリスピ』)は2016年11月6日に3周年を迎え、ますます盛り上がりを見せている。
3周年を迎えてなお、新規ユーザーを増やし続けている本作。その背景には、クルマが登場するマンガ原作の作品やリアルイベントとのコラボなど、ほかに類を見ないタイプのプロモーションを行っていることが起因している。
本記事では、そんな『ドリスピ』の斬新なプロモーションを行うバンダイナムコエンターテインメントの仕掛け人に直撃インタビュー! 各プロモーションにいたった経緯や、その行程について語ってもらった。
・泉智久氏
バンダイナムコエンターテインメント
『ドリスピ』プロデューサー
・山口眞由子氏
バンダイナムコエンターテインメント
『ドリスピ』プロモーション担当
おもなターゲット層は20~40代の男性
――まずはじめに、『ドリスピ』のターゲット層について教えてください。
泉 智久氏(以下、泉) 当初のターゲット層はおもに20~40代の男性で、実際にサービス開始当初から遊んでいただいております。ですが現在は、それ以外のお客様、若年層や女性のユーザーの方も多いですよ。
――クルマ好きの方が多いイメージがありますが。
泉 そうですね。クルマへの関心の高い方は多いですね。新しいクルマやカスタマイズカーの実装を行うと、ホイールのデザインやクルマの車高、ウイングなどについて、さまざまな意見を寄せてくださります。
――実際にクルマに乗っている方が多いのでしょうか?
泉 じつはきちんと調べたことがないので正確にはわかりませんが、そうでない方も多いのではないかと思っております。いろいろなコメントを見ると、『ドリスピ』で、”いまは乗っていないけど過去乗っていた車”や”憧れの車”がたくさん所有できることを楽しんでいただけているのかなと。ふだんの生活ではなかなか乗る機会の少ないスポーツカーも操作ができるといった点も、楽しんでくださっていると思います。
――なるほど。憧れのクルマをゲーム内で操作して楽しむわけですね。
泉 一方で、じつはクルマに興味があることを自覚していないユーザーさんも多いのでは、と思っています。というのも、日本はクルマがあって当然の社会ですから、“このクルマは知っている”、“フォルムが格好いい”、といった気持ちが何かしらあって、深い知識はなくても潜在的にクルマに関心がある人もプレイしてくださっているのではないかと。
――ちなみに、男性はイメージしやすいのですが、女性はどういった理由で『ドリスピ』を遊んでいると分析されていますか?
泉 女性のユーザーさんは、恋人や友人が遊んでいるから、といった理由ではじめる方が多いようです。従来のレースゲームは難しく、ゲームやクルマに慣れていない人だと遊べない風潮がありました。ですが、『ドリスピ』は簡単操作で遊びやすいので、女性でも楽しみやすく、継続してプレイしてくださっているのだと思います。
山口 眞由子氏(以下、山口) 『ドリスピ』には“チーム機能”という、多数のユーザーさんでひとつのグループを作る機能があります。女性ユーザーの方には、友人どうしで同じチームに入りいっしょに遊んでいる方も多いようですね。
――本作において、とくに意識してゲーム制作・運営を行っている点があればお聞かせください。
泉 『ドリスピ』では、実際に操縦しているような感覚が味わえるようなクルマの挙動を意識しました。クルマの格好いい動きかたを物理演算も含めて意識して制作しているので、納得感のある操縦性が味わえます。そういった点が、プレイする理由のひとつになっているのではないかと思います。
――実車が登場して、リアリティのある動きができるゲームは希少ですよね。
泉 実写も国産車を中心に幅広くラインアップを揃えていて、ゲーム内で自動車メーカー様の名前もしっかりと出ますからね。クルマ好きの方にとって、満足が得られるものになっているのではないかと。
レースゲームの敷居を下げることを意識
――御社の別タイトルと比べると、『ドリスピ』は独自のプロモーションを行っている印象を受けますが、やはりターゲット層を意識しているのでしょうか?
泉 確かに『ドリスピ』は、独自のプロモーション施策を行っていますね。というのも、『ドリスピ』は過去のタイトルで培った成功事例の適応が難しいゲームでしたので。
――御社はIP(知的財産権)を扱ったタイトルが多いですが、『ドリスピ』は毛色が少し異なりますよね。
泉 そうですね。本作ではまず最初に、“いかにレースゲームの敷居を下げるか”ということを意識して展開しました。レースゲームは挙動や操作が独特で難しく、初心者が遊びづらいという印象がどうしても付いてきます。まずはそのハードルを下げて、簡単に遊べるということを伝えたんです。
――たしかに、実際に遊んでみるとわかりやすくてすぐに操作を把握できます。
泉 ほかにも、ゲームの特徴であるクルマの格好よさをフィーチャーし、カメラワークでプレイする際の気持ちよさを重視しました。どんな人でも楽しめるということを伝えるために、タッチするだけでOK、レースゲームで難しいと思われてしまう“ドリフト”も簡単にできるということをわかってもらえるよう意識してプロモーションを行っています。
――CMは、どのようなコンセプトなのでしょうか?
泉 リリース後のCM展開に関しては、難しいゲームだと思われないようにすることを意識しました。ですので、15秒のCMの中でもゲーム画面の露出を極力控えるようにしました。ゲーム画面を見せるよりも、有名人を起用して、難しくない、遊びやすいゲームということを印象付けたいという狙いがありました。
山口 最初のCMはより遊びやすさをコンセプトにしましたが、新CMではよりクルマを推していこうという話になりました。ふつうは乗れないようなクルマでも、『ドリスピ』には登場することを知っていただくことが狙いです。よりクルマを前面に出すために、CMでは実車をお借りして撮影を行っています。
▼テレビCMはこちら
――CM以外でのプロモーションはいかがでしょう?
泉 年末年始のシーズンには、高速道路に交通広告を掲載しました。帰省ラッシュなどで渋滞が起こりやすい時期でしたので、クルマが止まった際に見ていただくのが狙いです。
山口 ほかにも、おもにプレイしていただいているのが社会人の方ということで、今年からは電車内のモニターに映像が映る“交通広告”にも広告を出しました。また、Webに掲載するオンライン広告なども行っています。おかげさまで、3年経過した現在でも新規ユーザーの方が増え続けている状態です。
クルマ好きを満足させる充実したコラボ
――『ドリスピ』ではこれまでコミック系や実車系などのコラボを行ってきましたが、コラボにいたる経緯をお聞かせください。
泉 『ドリスピ』はほかのIPの要素が一切ない、完全な新規タイトルとしてスタートした作品です。そこには、将来的にほかのさまざまなIPとのコラボで盛り上げていきたいという考えと、クルマの格好よさで勝負できるという開発メンバーの自信が理由としてあります。当初は完全新規タイトルとしてのスタート、そこからさらに盛り上げるために『新劇場版 頭文字D』(以下、『頭文字D』)とのコラボに至りました。
――コラボするタイトルは最初から『頭文字D』と決めていたのでしょうか?
泉 『頭文字D』と『湾岸ミッドナイト』(以下、『湾岸』)は、配信開始当初からコラボの計画をしていましたね。
――御社でクルマが登場するゲームと言えば、アーケードゲームで展開している『湾岸』のイメージが強いです。先に『頭文字D』のコラボが実施されるのは、1プレイヤーとして意外でした。
泉 『頭文字D』からコラボをスタートしたのは、インパクトがあったと思います。
――『ドリスピ』内での初コラボとなった『頭文字D』ですが、実現に至るまでの経緯を教えてください。
泉 原作の『頭文字D』は、すでにゲームなどが展開されていてコラボが難しいかなと思ったんです。ですが、交渉を重ねる中で『新劇場版 頭文字D』とのコラボを実施させていただけることになりました。
――『ドリスピ』に登場するコラボ車は、劇場版で登場するキャラがメインですよね。
泉 劇場版とのコラボですので、『ドリスピ』に登場するのは劇場版で活躍するキャラクターやクルマがメインとなっています。コラボはユーザーの方からもご好評をいただき、第2弾、第3弾と続けることができました。
――『湾岸』とのコラボに関してはいかがでしょう?
泉 『湾岸』に関しては、弊社ですでにアーケードゲームでの展開していたこともあって、そこでの知見を活かしつつ、ファンの方に満足していただけるような内容に仕上げました。
――そういったコミック系とのコラボ実績が、『よろしくメカドック』(以下、『メカドック』)コラボに続いたのでしょうか?
泉 そうですね。コミック系とのコラボを重ねていくうちに、『メカドック』とのコラボという意見が上がりました。『ドリスピ』は、40代以上の方もプレイしてくださっているので、そういった方に向けたアプローチも兼ねています。また、クラシックカーを登場させることで、若い方にもクラシックカーの魅力を知っていただいて、クルマのラインアップを広げていきたいという狙いもありました。
――『D1 GRAND PRIX』(以下、『D1GP』)コラボは、コミックではない実車、リアルイベントとのコラボですがどういった経緯で?
泉 開発メンバーの中で、ドリフト走行が目的のモータースポーツということで注目をしていました。そこで研究として『D1GP』を見学しにいくと、家族連れや若い女性の方も多く、アットホームな雰囲気に驚いてしまって。
――確かに、『D1GP』はアングラな雰囲気なのかな、というイメージがあります。
泉 見学に行くまではそう思っていました(笑)。ですが実際はそんなことはなく、エンタメとして楽しんでいる方が多いということがわかり、いっしょに何かをやりたいなという思いが生まれました。
――『D1GP』コラボは毎年開催されていますよね。新規追加のクルマも多いので、愛車にしているユーザーさんもよく見かけます。
泉 レースカーはデザインが格好よく、パーツへのこだわりもあるのでそういった点でも楽しんでいただけているのだと思います。
――コラボを通して、新たに気づいたことや経験として得られたことなどはありますか?
泉 『D1GP』コラボを通して、ほかのIPとのコラボと別の軸、リアルイベントでの展開も可能だと実感できました。コミック系とリアルイベントのコラボ、ふたつの軸で今後も展開していけるのではないかという手応えを掴んできたところです。
――コラボ車のモデリングは難しかったのでしょうか。こだわりが強く、制作には苦労もありそうですが。
泉 『湾岸』に関しては、弊社が持っていた技術や資産があったのでそちらを活用できました。『D1GP』は各車を事前に取材をさせていただけたので、モデリングで特別苦労をすることはありませんでした。『メカドック』は独特なフォルムのクルマも多く、開発メンバーが一番苦戦していた記憶があります。
本気で痛車を作った理由とは
――『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』(以下、『デレステ』)のラッピングカー、いわゆる痛車ですがどういった経緯で製作が決まったのでしょうか?
泉 当時、社内のタイトルどうしで何かやってみようという企画が持ち上がりました。そこで、まったく違うジャンルの2タイトルを混ぜてみたらどんな反応が起こるのだろうという話になりまして。ラッピングカーという文化は以前からありましたから、どうせやるなら盛大に、という勢いでスタートしました。
――どちらかのタイトルが持ちかけた、というよりは社内全体で話が広がったという形なんですね。
泉 新しいプロモーションとして、どんな内容が考えられるかなと考えた結果ですね。小さくプロモーションを行っても、情報はすぐに流れてしまいます。そこで、何か記憶に留まるような大きな内容を考えている際に、開発メンバーの中からラッピングカーの意見が上がりました。ほかにもいくつか提案された企画案を削ぎ落としていくうち、最後まで残ったラッピングカーを採用した形です。
――ゲーム内のコラボであればわかりますが、そこを実車でやろうというのはすごいですよね。なかなかの暴走ぶりだと思います。
泉 これまで、実車がゲームに出ていたところを逆にパターンとして打ち出したわけです。実車がゲームに出ています、ではなくゲームのクルマが実車になります、というふうに。
――実際に、お披露目会にはゲームメディア以外の取材関係者も多く参列していましたよね。
泉 企画の甲斐あって、反響は大きかったと思います。インパクトの大きい内容で注目を引くという狙いとしては成功だったと思います。
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意外なアプローチで東京モーターショーにも出展
――東京モーターショー(以下、モーターショー)への出展も果たしましたが、まずは出展を考えた理由をお聞かせください。
泉 アプリゲームは、なかなかユーザーの方と交流する機会がありませんよね。イベントなどでお試しプレイができても、遊んでくれた方が『ドリスピ』ユーザーとは限りません。ですから、実際にユーザーの方にどのように遊んでいただけているのかを見たいという気持ちがありました。
――『ドリスピ』ユーザーを呼び込むためのプロモーションなどは行ったのでしょうか?
泉 『ドリスピ』ユーザーの方に来ていただけるよう、ゲーム内での実装に先駆けて“カウンタックLP400(ランボルギーニ)”などが先行プレイができるようにしました。いち早く新車で遊べるという点をアピールしたことで、実際に足を運んでいただけました。
――直接ユーザーの方と交流することで、新たに気づく点などはありましたか?
泉 意外だったのは、親子で遊んでいる方が多かったことです。父親の端末で子どもが遊んでいるという場面を見ることができたので、本当に幅広い年代の方が触れて下さっているなと。開発メンバーも、『ドリスピ』を楽しんでくださっている方が多くいるということが、自信になったと思います。
――モーターショーへの出展は非常に難しい面もあったと思いますが、実現に至った経緯を教えていただけますか?
泉 モーターショーに出したいという気持ちはありましたが、当初はゲームの出展は難しいだろうという判断でした。そこで、『ドリスピ』はファミリー層を呼び込めるというアプローチを行うことにしました。その結果、ファミリー向けのコーナーでの出展許可がもらえたというわけです。
――リアルイベントへの出展経験を経て、ゲーム内に反映された内容などはありますか?
泉 予想以上に幅広い年齢層の方がプレイしてくださっているので、スポーツカー以外にも意識を向けるようになりました。現実には乗れないようなクルマで遊ぶのも楽しいですが、ゲームに自分がふだん乗っているクルマが登場するのもうれしいのでは、と。
――登場車種についてですが、ドリスピのオリジナル車(HS車)を登場させようと思った経緯についても教えていただけますか?
泉 スタート当初から、各メーカー車の台数バランスをしっかりと取ることを重視していました。そこから車の数も増えてきた中で、人気のクルマをよりスポーツカーとして特化した性能で登場させようと考えたのです。実際にどのような反応になるだろうと思いながら制作していったところ、予想以上に受け入れていただけて安心しました。
――HS車は、性能はもちろんですがデザインも凝っていますよね。
泉 ありがととうございます。今後も徐々に増やしていき、バランスよく作っていけたらなと思います。
“できない”ことを“できる”のが『ドリスピ』
――3周年を迎え記念イベントも開始されていますが、今後さらに予定されているイベントやプロモーション企画などはありますか?
山口 これまでにないプロモーションを企画したいですね。『ドリスピ』は、弊社のほかのタイトルとは大きく毛色が異なるタイトルです。ですので、ほかのタイトルではできないようなプロモーションでも、『ドリスピ』ならチャレンジできると考えています。まずは、年末年始にコラボを重視したプロモーションを企画中です。
――ということは、年末は新しいコラボイベントが開催されるのでしょうか?
山口 年末年始は毎年何かしらのコラボを実施していまして、今年もコラボを予定しております。まずはこのコラボレーション企画をメインに、プロモーションを進めていく予定です。
――今回の内容は、過去に類を見ないタイプのコラボになるとか。
泉 “できないことができるのが『ドリスピ』”と思っていただければと! 皆さんご期待ください!
――IPに縛られないがゆえの自由ですね。
泉 最初からIPという枠を設けないようにしましたから、無茶ができたのかなぁと。コラボでは、キャラクターの持つ世界観を損なわないようにしながら、ユーザーの求める内容の一歩先を目指すようにチャレンジしてきました。ドリスピはいろいろとやってくれる、と期待していただけるように、今後も新しいチャレンジをしていきたいと思います。
――今後、4周年に向けてさらにチャレンジをしていくということですね。
泉 そうですね。当たり前を当たり前でなくしていかないといけないと思っています。半年前はできないことでも、いまなら実現可能かもしれない。その姿勢でさまざまなことにチャレンジしていきますので、今後もお付き合いいただけますと幸いです。
【仕掛け人に訊く!過去記事】
●『オルガル』の“体験”にこだわるプロモーションとは
●なぜモンスト禁止に?3周年感謝キャンペーンの舞台裏に迫る
ドリフトスピリッツ
- ジャンル
- レース
- メーカー
- バンダイナムコエンターテインメント
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iOS 7.0 以降、Android 4.1 以上
- コピーライト
- ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.<br>All trademarks and copyrights associated with the manufacturers,vehicles,models,tradenames,brands and visual images depicted in this game are the property of their respective owners,and used with such permissions.
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