【FFBE】『FF』シリーズのイラストを手掛ける天野喜孝氏にスペシャルインタビュー
2016-06-17 19:00 投稿
祝・『FFBE』全世界配信!
スクウェア・エニックスは、2016年の夏より、スマホアプリ『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』(以下『FFBE』、『ファイナルファンタジー』は『FF』)を全世界に向けて配信することを発表した。
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『FFBE』はスマホでの完全新作タイトルながら、温かみのある懐かしいドット絵や、クリスタルをめぐるストーリーなど、往年の『FF』シリーズの魅力を凝縮。歴代の『FF』キャラクターたちも多数登場する。さらに本作には、フィールドや街の探索によって味わえる冒険感や、戦闘時の召喚獣演出など、RPGとしてのこだわりも随所に反映されている。
今回は、『FFBE』でイラストを担当している天野喜孝氏に、本作の全世界配信を記念してメッセージをもらうとともに、特別インタビューを実施。ふだんあまり明らかにされていない制作に対する思いなど、天野氏の素顔に迫った。
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作り手の個性を生かして
――天野さんは、歴代の『FF』のシリーズのイラストを描かれていますが、いつもどういう流れで描かれているのですか?
天野 作品によってもさまざまなのですが、『FF』のシリーズでキャラクターを描く場合は、開発途中ではあるものの、キャラクターのコンセプトはある程度決まっている、という段階で描くことが多いです。『FFBE』もそうですが、最近の『FF』シリーズは、僕が描くときはすでに、もとの絵と、さらにそこからCGになったキャラクターの絵があるのです。とくにCGのキャラクターの絵はすごくリアルで、いままで別物だった写真と絵というものの、ちょうど真ん中あたりにあるという感じ。しかも動くのですよね。昔はそういうことがなかったので、おもしろいです。
――もともと絵があって、そこからイメージを膨らませて制作されているということですよね。
天野 そうです。人物の場合は、キャラクターの絵があって、すごくリアルなCGキャラクターの絵があるので、僕はそれをどうしようかなーって(笑)。デザインというのは、それぞれ作り手の個性があるのですよね。だからそれぞれの作り手の個性は殺さないように描くことを意識しています。とはいえ、自分の癖や好みがどうしても出てしまうことはありますけど。
もとのキャラクターを作った人の個性と、CGのキャラクターを作った人の個性が両方出ているので、僕はどっちに寄せようかなと考えます。あまりオリジナルのほうに寄せると、その人の個性が強く出た絵になってしまうし、CGに寄せるとリアルになりすぎてしまう。真ん中へんを意識しながら、どうしようかなと思うことはあります。
PCや紙で描いたものは、作った人の個性がすごく出るんですが、CGになると今度はCGを作っている人の個性ももちろん出るものの、CGの立体感というか、写実的な印象によって個性が中和されるんです。
なので、リアルになるにしたがって、絵から読み取れる個性は少なくなってくるように思えるんですよね。でも、それによって絵としてのバランスがとれて、完成度が高まる気がします。
――では昔と描きかたも変わりました?
天野 昔はゼロからキャラクターを起こしていましたから、ほかの作り手の個性を意識するようなことはなかったですね。
ただ僕は昔、アニメーターやっておりまして、アニメーターというのは人の絵を描くのが基本なのです。原作の絵があって、なるべくそれを再現しつつ、自分の手で起こす。そうやって、ふつうのイラストレーターとは違う作業や、違うポジションを経験しているのですよね。
だからいまも、イラストレーターと言うよりは、そのキャラクターデザイナーのときの経験を生かしてキャラクターを作っているのだと思います。
僕の絵を見た方からは、僕の世界観がすごく出ている、と思われがちなのですが、意外とそういうのはないのです(笑)。素直に、もとの絵を描いた方の個性を取り入れているだけ(笑)。
――『FF』にはさまざまなキャラクターがいますが、天野さんはどのようなキャラクターを描くのが好きですか?
天野 やっぱりまがまがしいキャラクターが好きですね。それから、怖いとか、カッコいいとか、かわいいとかすごい大柄とか……。ちょっと“ふつうじゃない感じ”の方向性のほうが好きですね。
僕の経験ですが、じつはキャラクターって、“ふつう”がいちばん難しいのです。たとえば、アニメーションのキャラクターを描いていたときは、毎週新しいキャラクターが出てきました。
メインキャラクターの場合はいいのですが、魚屋のおじさんとか、サラリーマンA、B、Cとかね。そういう、あんまり個性を出しちゃいけないキャラクターを作るときは、あまり多くなってくるといろいろなパターンを考えなければならなくて。まぁ、難しくはないけど、“ふつう”じゃないほうが楽しいですよね(笑)。
『FFBE』の作品への思い
――E3にあわせて公開される2点のイラストに関しては、天野さんはどのような思いを込めて描いたんですか?
天野 魔人フィーナはCGで描かれた完璧なキャラクターモデルがあったのでなるべくそれを壊さずに描くことを意識しました。
じつは、最初に依頼を受けたのは、キービジュアルのベヒーモスと戦っているイラストなのですが、そのときはじつはキャラクターのCGもできていなかったので、細かいところが描けない状況でした。
――その段階で描かれてこのイラストですか! すごいですね。
天野 とはいえ、ある程度の大きさとか色とかは決まっていました。この世界観のクリスタルの大地があって、そこに過去作のキャラクターたちが見えて、ベヒーモスみたいな大きな『FF』シリーズのモンスターと戦っている絵にしてほしいということはお願いされていました。資料が無かったら無かったで、好きにできるので気が楽でしたね(笑)。
(ここで、同席していた本作プロデューサーの広野啓氏も会話に加わる。)
広野 じつは天野先生からいただいたイラスト、ベヒーモスの背中から落ちていく謎のキャラクターがいるのですが……。でも、このキャラクターどうしようって(笑)。いまだに解答が出ていないです(笑)。
――これ絶対に覚えてる人いますよ! 絶対そのうち出てくると思っています(笑)。
天野 こんな風に戦っていれば、倒れている人、吹っ飛ばされてしまった人もいるかなと思いまして。ベヒーモスの上に乗っている人もいると思うのですよ、それで振り下ろされたとか……。そうやって想像を膨らませて描きましたね。
――この絵を見て、ゲームのストーリーをイメージするプレイヤーもたくさんいると思います。
天野 つぎに描いたのがラスウェル、フィーナ、レインですね。これは僕に依頼が来たときは、すでにキャラクターのCGモデルがありました。
天野 それから、キャラクターを、ひとりひとり描いていきました。このへんもCGが上がった後で描いて……。キャラクターの周囲に、関係ないものが飛んでいることもありますけど(笑)。
リドはメカの飛空艇技師のキャラクターと聞きましたので、自分なりにかわいらしいメカのイメージをいれました。チョコボのイメージです。
天野 つぎにニコルですね。服の模様って、描く人の好きな模様があると思います。
もとの絵に横向きの絵がなくて、分からないところは好きに描いてしまったのですが、それもありかなと。
人なので、いろいろな服着るし、マフラーもたくさん持っていると思うのですよね。髪型にしても、美容院に行って切ってもらうとかもあるでしょうし……。そういう風に思うと、多少違っても間違いじゃないかなって。そういう風に考えて描いています。
天野 つぎにジェイク。彼はラテン系の顔だったので、「肌の色は褐色系で」と打ち合わせのときにお願いされていたのですが、忘れてしまっていて……。後から指摘を受けて修正したというエピソードがあります。
――それは記事に書いてしまっても大丈夫ですか?(笑)
天野 私は正直に、言いますよ(笑)。
――『FFBE』の作品、かなりたくさん描かれていますよね?
天野 こうして見ると、けっこう描いていますね(笑)。
広野 じつは、『FFBE』は、近年の『FF』作品の中でいちばん天野さんに描いていただいているタイトルだと思います。
――今回新たに公開されたもう1枚のイラストがヴェリアスのイラストですが、これは描きやすい方向性の絵でしたか?
天野 そうですね。それぞれのキャラクターの役割は聞いていましたので、なんとなくイメージしました。最初は、建物の前にいたイメージだったのですが、描いているうちにクリスタルがパーッと輝いているところにいたほうがカッコイイかなと思い、クリスタルを中心にし、そこから光っているようにしました。
――いちばん上にいるキャラクターがひとりだけ白いのは?
天野 そこは、白でお願いしますと言われました。きっと何かあるのでしょうね。僕もまだ分からないのですが(笑)。
――ヴェリアスは6体のはずですが、絵では8体いるように見えます。これも何か意味があるのでしょうね。楽しみです!
ファンタジーへの思い
天野 僕は、ファンタジーイラストレーションがもともとすごく好きで、翻訳された海外作品の小説のイラストを描いていました。その延長線上に『FF』があります。
特別『FF』だからこういう世界! というこだわりもそこまで僕にはなくて、とにかく皆さんが作った『FF』の世界観を絵にしようと考えていました。
『FF』かどうかを決めるのは、ゲームを制作している人たちですよね。『FF』に“『FF』らしさ”が出るのは、現場の人たちが『FF』を作ろうとして作っているからだと思うんですね。『FF』の中にしかない空気感みたいなのを、僕が作るのですが、その前に制作する人たちがすでにそれを形作っているので、僕はそれを絵にしているという感じです。だから、そこに自分の考えた要素を入れてやろうという気持ちはないです。
そこが僕にとっては、新しく読む小説みたいなもので、新鮮です。すべてが分かっていたらつまらないじゃないですか。どんなキャラクターなのか、ストーリーがどんな風に展開するのか、考えながら描くのがすごく楽しいので、『FF』シリーズの作品に関わり続けています。
もちろん、自分の癖とか好みともありますが、そればかりにこだわっていても、たかがしれてしまうのですよね。自分のものではない要素を表現することによって、自分の絵も広がるかもしれないじゃないですか。
――なるほど! なんだか納得させられてしまいます。ファンタジー作品の世界が好きっておっしゃっていましたが、どういうところが好きなのですか?
天野 この世のものではないところ(笑)。メカでもSFでも、剣でも魔法でも……宇宙ではなくて違う次元の世界があってもいいし、そこに人間がいてもいいしいなくてもいいし、要するに、なんでもアリなところですかね。
たとえば、色って太陽の光線で反射しますよね、で、7色ありますよね。でも違う宇宙だったらまた違う色があるかもしれないし。そういう風に考えると、なんでもアリかなって。
自分の想像力って、やっぱりこの世の中から得たものなので、その中で創造したものってのはじつは限りがあるのではないかと思ってしまうのですよね。だったら、そうではないものを描けたらおもしろいのかなって思います。まあ、それを紙に、平面に表さないといけないですけど。
――天野さんの制作への思い、お聞きできてとてもためになりました! さて『FFBE』、これから世界展開されていくということで、世界の人たち、そして今も日本でプレイされている人たちに向けてひとことメッセージをいただけますでしょうか。
天野 世界展開、とてもうれしいです。自分の描いた絵が見てもらえるというだけでも満足です。とはいえ、まだ、出ていない絵もたくさんありますので、これからも新しいイラストを楽しみにお待ちください。
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