FOVE代表&VR ZONE Project i Canの仕掛け人も登壇! 命綱必須のVRにおける予想外な出来事とは!?
2016-05-02 14:38 投稿
VR体験がより身近なものに
2016年4月28日、VR専門のインキュベーションプログラム“TOKYO VR MEETUP(TVM)”の第4回が、デジタルハリウッド大学で行われた。
今回のトークセッションは“VR×ネカフェ・アミューズメント施設の可能性”という題目で行われ、“VR×ネットカフェの可能性”、“VR ZONE Project i Canが切り開くVRエンターテインメント施設の未来”といったふたつのトークセッションが開かれた。
まずはじめにトークセッション”VR×ネットカフェの可能性”の模様をリポートする。
VR体験ブースを100店舗に常設
このセッションに登壇したのは、ネットカフェ向けのコンテンツ配信ソリューションを持つテクノブラッドでVR事業部ディレクターを務める栗原俊幸氏と、VRゴーグルFOVE(フォーブ)を開発しているFOVE代表取締役の小島由香氏。
こちらのトークセッションでは、タイトル通りネットカフェを利用したVR体験の提供と、それに起因した普及の可能性について語られた。
テクノブラッドは、ネットカフェにコンテンツや、そのコンテンツを管理するサービスなどを提供している企業。
簡単に説明すると、MMORPGを初めとするネットゲームをネットカフェへ導入する際の仲介や、ネットカフェで利用されているゲームクライアントのアップデート等を行うサービスを行っている。
テクノブラッドは、現在ネットカフェを通じたVRコンテンツの普及を目指しており、すでにネットカフェにVRゴーグル”FOVE”を無償提供するという発表も行っている。
これに関して栗原氏は「“ネットカフェは、家ではできない(しにくい)体験を手軽にできる場所”として成長してきた。この歩みの先にあるのは、まさしくVR体験だ。これを利用してネットカフェを盛り上げ、ひいてはVR市場そのものを盛り上げたい」と語る。
なお、現段階でテクノブラッド社が掲げる展開スケジュールでは、今年末までにVR体験ブースを100店舗に常設させ、FOVEの量産体制が整う2017年末には1500店舗での常設を目指すという。
VRゴーグル、FOVEとは?
この話を聞いて気になるのは「FOVEとは何か?」という点。
FOVEは、PCベースで動作するVRゴーグルで、視線の動きを0.2度の違いまで検出する高度なアイトラッキングを実装しているのが最大の特徴。なお、この機能を利用すると、視点だけでゲームや動画コンテンツの操作ができるようにもなるという。
また人間の視線のように、一部分だけピントを合せて、その周囲をぼかすことも可能となっている。
▼FOVE
FOVE代表取締役の小島氏は、このVRゴーグルについて「VRはアミューズメント向けの機器だと思われていますが、そのほかにも可能性がある。実際に、FOVEは体が不自由な人の世界を広げるものにもなるという実証もできています。このアイトラッキング機能を使って、いまあるさまざまな課題をクリアーしていきたい」と語る。
▲体の不自由な人がFOVEを装着することで、孫の結婚式に参加(実際の式場には、FOVEとリアルタイム連動したカメラを内蔵するペッパーが参加)した事例を紹介。
なお、現在ネットカフェで利用できるFOVEのコンテンツは、アプリが30種、動画が100種を目安に動いているという。
コンテンツに関しては「FOVEは一部のSteam VR(HTC Viveのメインコンテンツ)もサポートしているので、不足という事態はあまり考えていない。個人的にはアンコンシャスインタラクション(無意識下で進められる対話)を使ったコンテンツを推していきたい」と小島氏は語っている。
クリックやタップといった操作はユーザーの明確な意思によって行われるが、視線はユーザーの意識とはべつに動くことがある。アイトラッキングと、この無意識の動きを利用して進む会話イベントを採用したゲームや、それだけで進むアドベンチャーゲームなどを期待しているという。非常に楽しみなビジョンだ。
トークセッションの最後には、小島氏がVR業界の未来を予測してくれた。
「業界全体としてはまだ見えません。ですが、2017年まではFOVEを初めとしたPC用VRキットは苦戦を強いられると思います。おそらく最初に覇権を握るのは、手軽にVR体験ができる体験型アトラクションや、導入ハードルの低いプレイステーションVRでしょう。そこから数年後には、必ずPCベースのVRコンテンツが隆盛を見せ、そこで始めてVR元年からVR黄金期が始まるものと信じています」(小島氏談)
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人気のアトラクションで見えてきた課題
続けて行われたセッション、“VR ZONE Project i Canが切り開くVRエンターテインメント施設の未来”を行ってくれたのは、VRアミューズメント施設“VR ZONE Project i Can”のプロデュースも行った、バンダイナムコエンターテインメントの小山順一朗氏と田宮幸春氏。
20年以上、アーケード筐体とVRアミューズメントの研究・開発を行っている小山氏。古くはナムコ・ワンダーエッグにおけるバーチャルアトラクションから、近年ではアーケードゲーム『機動戦士ガンダム 戦場の絆』も手掛けている。
とくに『機動戦士ガンダム 戦場の絆』開発時にディスプレイの研究をしてきたことが、今回のVRアクティビティを作る際に「VR酔いの観点で非常に役立った」のだという。
まず最初に両氏に対して出された問いは、「なぜアミューズメント施設でVRを扱おうと思ったのか」というもの。
この問いに対して田宮氏は「バンダイナムコゲームスから、バンダイナムコエンターテインメントに社名が変わったときに、ゲームじゃない何かをやろうというプロジェクトが始まりました。うちはアミューズメント筐体も作ってきましたが、VRゴーグルが出てきたときに「コレだ!」と感じまして。VRゴーグルを使ったアミューズメント施設を作ろうという考えに至りました」と述べている。
また、小山氏も「VRを普及させるためには、まずユーザーの皆様に良質なコンテンツを触ってもらわないと始まらない。そう思ったのも、このプロジェクトを始めたきっかけのひとつ」と語る。
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その後いくつかQ&Aが続き、「お客さんの反応は?」という問いで、会場は大きな盛り上がりを見せた。
「お客様からの反応は、最大級の賛辞を含めて非常にポジティブなものを頂いている」(田宮氏談)とするいっぽう、「お客様からの反応やプレイスタイルを見て、意外な問題点も浮き彫りになってきた」(小山氏談)というのが、盛り上がりのきっかけだ。
まず挙がったのが、VR慣れしていない一般ユーザーの動きが想定外であったという点。
「メディア内覧会や関係者内覧会に参加した人たちは、VRコンテンツに慣れているので、悪ふざけの域も我々の想定内。ですが、一般ユーザーの方のそれは、我々の予想を飛び越えたものでした」(田宮氏)という。
その例として紹介されたのが、高層ビルから伸びた1本の木の板を渡る『高所恐怖SHOW』で実際に起こった出来事。
このアクティビティ内では、板から落ちたときのシーンも用意されているらしく、それを知ったユーザーのひとりが、両手を広げ、まるでスカイダイビングをするような姿勢でジャンプしたというのだ。
「あれを現場で見たときは、心底命綱を用意しておいてよかったと思いました。まさかあそこまでVR世界に入りこむとは……」(小山氏)
「VRに慣れていない人がVRを使ったアクティビティ、それもVR世界である程度の自由が与えられたアクティビティを利用すると、必ず想定外の動きを見せます。何かあったときのためにも、安全対策と運営マニュアルの細かな更新が重要です。コンテンツそのものはデジタルだけど、運用はアナログで行うのが大切だと感じました」(田宮氏)
と、両者は語る。
また、セッションの最後に出た質問「今後挑戦していきたいアイデアは?」との問いに対して、小山氏から「いまは(VR ZONEに)6つのアクティビティを展示していますが、じつはもっと用意してあります」と驚きの発表が。
「いまあるものをいつ引っ込めて、いつ新しいものを出すのか、そのタイミングを見計らっているところ」(小山氏)と述べ、会場を沸かせた。
ゲームやアミューズメントはもちろん、さまざまな分野でも今後の活躍が期待されるVR。まだVR元年は始まったばかり、これからの展開にも注目していきたい。
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