アクワイアの異色作『宇宙の寿司』トンデモ制作秘話・前編 “宇宙のラーメン”の可能性もあった!?

2015-06-05 16:00 投稿

宇宙と寿司の異色の企画はこうしてできた

寿司職人である主人公・ジローが、天然モノの高級食材として重宝される地球外生命体“ギョジュウ”とバトルをくり広げ、それを寿司ネタにお客さんに振る舞いつつ、宇宙一の職人を目指す本作。

インパクトのあるタイトルゆえ、“ネタ”感が強いが、実際にプレイするとかなりの骨太アクションゲームであることがわかる。

でも、そんな奇抜なタイトルや意外性のあるゲーム内容はどのように決まり、作られていったのか? アクワイアの開発者を直撃した。

(前・後編の計2回)

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※写真左
プロデューサー
横山栄介(よこやまえいすけ)氏

※写真右
ディレクター
佐藤広規(さとうひろのり)氏

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“宇宙”と何を組み合わせるか!?

――リリースされて約2ヵ月(iPhone版は約1ヵ月)になりますが、改めて心境はいかがですか?

横山 両OSのお客さまに無事届けられたので、それがうれしいですね。

佐藤 ようやくスタートラインに立った、これからだなという感じです。

――Android版を出したときから、iPhone版についての声はあったと思うのですが。

横山 そうですね、お問い合わせはありました。ファミ通Appさんの『これ知ってる?』のときにも、「iPhone版ももうすぐだよ」と紹介していただけたので、あれを観たお客さまから「もうすぐらしいぜ」という反応がありました。

リリースしたときも、「やっと来た!」という声が多かったですね。待ってくださった皆様に本当に感謝しております。ありがとうございます。

――そもそも、異色すぎる本作はどのような経緯で作られたのでしょうか?

横山 僕は『ロード・トゥ・ドラゴン』を担当しながらではあったんですが、もう1本新しいのをやってくれ、という話がまずありまして。自分が最初に立てた企画は、宇宙モノ、SFな世界観、そしてサイドビューの自動生成ダンジョンでアクションをするというものでした。

『ロードラ』も、企画立案時から変わらず、いまもずっと自分が担当しておりますが、つぎに何か作るのなら意識して『ロードラ』とは違うもの、離れたものにしようと最初から決めてました。

――なるほど、宇宙というテーマがまずあったわけですね。

横山 ええ。でもそれをウチの遠藤(代表取締役・遠藤琢磨氏)に出したところ、「宇宙モノやSFの世界観で売るのは難しいのでは?」と言われました。剣や魔法の世界で冒険するファンタジーに比べ、宇宙モノとかSFは、ハードルが高く感じる方も多いのではと。

――そう言えば、あんまり見かけないような。

横山 そこで、いったん“SF”から離れて、ベテランから若い人まで社内の人たちに片っ端から相談していったところ、いろいろなキーワードが出てきて。

そのときに、ふと“宇宙”という誰でも知っている言葉と、もうひとつ誰でも知っている言葉を組み合わせれば、新しい体験があるんじゃないか、ハードルを下げられるんじゃないかと思ったんです。

そこで、“宇宙”と対になるキーワードを開発スタッフに聞きながら出していき、自分の中でアレコレと組み合わせてみました。たとえば、“スペースマラソン”とか、“宇宙の市長”とか、“ギャラクティック雪合戦”とか。でも『自動生成ダンジョンでアクションする』企画であることも忘れずに。

――なんか楽しそうですねえ。

横山 ある程度キーワードがまとまったところで、その意図も含め、やっぱり宇宙モノ・SFでやりたいと遠藤に再プレゼンをしました。

そうしたら、自分が持ってきたキーワードをアレコレ並べ変えていたときに、遠藤が突然「ラーメン!」って言ったんですよ(笑)。

でも「ラーメン」どころか、食べ物のキーワードはそもそもひとつもなくて。僕もビックリして「宇宙ラーメンですか!? いやあ、ラーメンはちょっと……」って返したら、今度は「うーん……寿司!」って言ったんですよ。

――そんな感じだったんですか!

横山 でも、そのときに自分の中でゲームのイメージがバーッと広がったんです。海外でも広く認識されている、日本の代表的な料理である寿司。そして宇宙。

宇宙の寿司だったら、当然、魚とかはモンスターだろうな、職人が切った張ったするんだろうなと。お店の経営もあるだろうと。『自動生成ダンジョンでアクションする』という企画とも離れていない。“宇宙”も“寿司”も誰もが知っている言葉で難しくないけど、日常で組み合わされることは、ほとんどない。宇宙寿司を食べた人なんていない。

これは、ありそうでなかった新しい驚きや体験ができるのでは……と、自分の中で一瞬で“宇宙”と“寿司”がまとまって、うん、いいなと。で、結論だけ「宇宙と寿司、いいですね!!」って言ったんです。

そうしたら、遠藤が「ホントにいいんですか? 横山さん!?」って(笑)。言ったの自分でしょうって(笑)。もちろんそのあと、遠藤にちゃんと説明しましたが。

――意外なひとことがきっかけだったんですね。でも、言い出しておいて驚く遠藤さん(笑)。

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当初は横スクロールアクションだった

横山 そこから具体的なゲーム開発へ向け、いろいろ検討し始めました。僕は手帳に毎日のスケジュールと簡単な日記を書くのが日課なのですが、2014年の4月25日に初めて佐藤と『宇宙の寿司』の話をしたと残っています。

佐藤 ええ。『宇宙の寿司』という、横スクロールアクションゲームだと。すごい変化球が来たなあと(笑)。

横山 日記によると、「ブレストで非常に佐藤と盛り上がる。ぜひ参加したいとのこと」って書いてあるんですよ(笑)。あくまで、僕の目線からの話ですが。実際どうだったの?

佐藤 勢いとノリだけはすごかったので、もしかしたら化けるかなという思いもありました。世界観の部分でユーザーさんに対するインパクトは出せるだろうなと。

でも当時は、もっといろいろテーマがあるのに、なぜ宇宙と寿司だったんだろうとは思いました。説明を受けながらも、自分の中で一生懸命答えを探していた覚えがあります(笑)。

――その説明なかったんですね(笑)。当時、佐藤さんはどのような作品に携わられていたのですか?

佐藤  『アキバズトリップ』のPS4版をやっていたと思います。

横山 そのときは、まだ企画としては横スクロールだったんですよ。宇宙と寿司というコンセプトは決まってたんですけど、できあがったものとは、アクションパートのゲーム画面やルールがぜんぜん違いましたね。

――ではどうやって、横スクロールからいまの形に変わったのでしょうか?

佐藤 そもそも宇宙というテーマで、食材を探して戦うゲームなのであれば、探索感やマップを歩く感覚というのは大事にしたくて。それには、3Dのクォータービューのほうが、歩くという感じが得られるのではないかと思いました。

横スクロールですと、広がりがそんなにないように見えてしまうので……。縦横無尽に食材を探して回り、寿司を握ろうと。

ある機転が快適操作のカギに

――操作方法自体もボール型のコントローラーで特徴的ですよね。これは、どのようにして生まれたのでしょうか?

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佐藤 既存のゲームでよくあるバーチャルパッド系ではない、別の操作感を出したいという話になりました。

そこで、トラックボール型のコントローラーってあまりないのではないかと、試しに作ってみまして。それが意外と爽快でサクサク動いて気持ちがいいし、いままでにない操作感でおもしろいので、イケそうだと。

――実際、快適ですよね。

横山 最初、ボールコントローラーが認識する範囲を限定してやっていたんです。でも人間、熱くなるとぜんぜん違うところを触っていたりするんですよ。

佐藤 そこで、画面の下半分のどこを触っても、ボールと同じような挙動にすることにしました。

横山 リリースの直前まで、そういった手触りを調整していましたね。画面を縦にすることにもこだわって。同じゲームシステムで、横画面でもできるんですけどね。そこは佐藤が「どうしても縦」だと。

佐藤 電車の吊り革をつかんでいてもできるようにと。横にしちゃうと片手だと持ちにくいですし。とにかく片手で遊べるようにしたかったんです。

――操作も簡単で、電車内でやりやすいお手軽さだと思います。攻撃方法も試作の段階から、敵に近づけば自動でアタックするという仕様になっていたのですか?

横山 なっていました。佐藤はさっきすごく簡単に言いましたけど、僕からするとビックリで、いったい、いつからスマホのアクションゲームのことを考えていたのだろうと。

自分が、敵をタッチすれば攻撃するというような、よくあるクォータービューのアクションタイプを想像していたのに対し、彼の頭の中ではいまの『宇宙の寿司』の完成形が見えていたんでしょうね。

――佐藤さんは、そういうアイデアを温められていたとか……?

佐藤 いえ、まったく(笑)。3Dのアクションゲームということが決まったあたりから市場をチェックして、出ているアクションゲームのいいところをもらったり、ダメなところを参考にしたり。ボール型コントローラーは、アプリ市場ではほとんどなかったのでやってみようかと。

横山 ウチの土田(技術担当執行役員・土田智裕氏)は、右利きなんですけど左手でトラックボールマウスを使う人で。国内・海外のPCゲームもコンソールもスマホゲームも、よくプレイしているゲーマーですし、トラックボールマウスを日常的に使っている彼に相談してみたんです。

そしたら、海外メーカーの子供向けアプリでボールを転がすとキャラクターが動くやつがあるよって教えてくれたり、昔アーケードゲームで『マーブルマッドネス』ってあったよねって話になって。筐体にレバーやボタンはなくて、トラックボールがついていたゲームなんですが、世代的に佐藤はやってなくて。

ほかにも敵に体当たりという点だとアーケードゲームの『モトス』があったとか。そこから、ボール型コントローラーとレバーの違いとか、敵とぶつかったときのリアクションとかの気持ち良さみたいなものを土田と佐藤で分析したり。

試作の段階では、『マーブルマッドネス』のように細い道を落ちないように転がすというのもあったんですけど……。

佐藤 今回は、そっちじゃないな、と。爽快に転がして敵を倒していくのが楽しいのに、“イライラ棒”みたいな要素って本当に必要なのかなと。

横山 アクションの要素は、決まるまで早かったんですよね。でも、そこからは長かった。

当時に自分が考えた企画は、アクションパートで素材を手に入れたら、お店でお客さんに売るのは放置系ゲームで……という感じだったんです。でも、本当にそれでいいのかとなりまして。アクションパートで、その場で屋台として売ろうという、いまの形になるまでは時間がかかりました。

 
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命がけの寿司ツアー企画も!?

――いろいろ試行錯誤があったわけですね。

横山 実際、完全にアクションパートと分かれた、経営パートの試作も作りました。お客さんが入ってきて、カウンターの向こうには職人がいて、寿司を振る舞うという……。

佐藤 転機としては「アクションパートと経営パート、別々のゲームがふたつあるので一体感がない」という指摘がありまして。いくつかアイデアを出した中で、ポンと屋台を置いて、その場で客は来るけど、敵も来るというカオスな感じの経営パターンに(笑)。結果、「これなら違和感がない」と決まりました。

 
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横山 お寿司は鮮度が大事ですし、これ以上新鮮な状況ってないよねって。試作のときは、アクションパートでも屋台型の宇宙船に乗って操縦して移動もできるというパターンもあり、実際に作りましたけど(笑)。

佐藤 “寿司ツアー”というアイデアだったんですけど、もう客が乗っていて、そこへ敵が攻めてくるという。船を守りながら寿司を提供し、ゴールまで無事にお客さんを連れていけたらクリアーと。

横山 僕はそれを聞いて、オープンカーでサファリパークを走るみたいでいいなと思ったんですけどね(笑)。でも、実際に運転してみたら、屋台の運転と斬った張ったの爽快感はまた違うなと。だったら、シンプルに敵を攻撃したほうが、より楽しみが凝縮されるのではないかということで、いまの形になりました。

――ちょっとそのパターンもやってみたい気もします(笑)。

ギョジュウやキャラクター設定にもオドロキの秘密が!?
明日6月6日(土)公開の後編に続く!

※後編はこちら!

※最新アプデで新キャラ&曜日惑星追加!
※共感するかも!? インプレ記事はこちら
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宇宙の寿司

メーカー
アクワイア
配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS 7.0 以降、Android 4.1 以上

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