【インタビュー】レベルファイブ日野晃博氏が語る発表会に込めた想い
2015-04-14 00:00 投稿
LEVEL5 VISION 2015 -THE BEGINNING-
2015年4月7日に開催されたレベルファイブの新作発表会、“LEVEL5 VISION 2015 -THE BEGINNING-”。そこでは『妖怪ウォッチ』の今後の展開や、“クロスメディアプロジェクト”第4弾の新シリーズなど、驚きの情報が明らかになった。
本記事では週刊ファミ通2015年4月30日号(4月9日発売)に掲載された、レベルファイブ代表取締役社長/CEO、日野晃博氏へのインタビューを全文掲載でお届けしていく。
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日本中の子どもたちを夢中にさせている『妖怪ウォッチ』シリーズで、知名度をさらに上げたレベルファイブ。同社の発表会、“LEVEL5 VISION2015 -THE BEGINNING-” では、新規プロジェクトや近日発売予定のタイトルを一挙に発表する。
そこで、レベルファイブ代表取締役社長/CEOの日野晃博氏に、今後の展開や新作タイトルについて訊いた。(聞き手:週刊ファミ通編集長 林 克彦)
発表会はゲーム業界へのメッセージでもある
──ゲーム業界を始め、メディア関係者もレベルファイブの新作タイトルに注目しているなか、LEVEL5 VISIONが開催されます。
日野 前回から2年ぶりになりますが、“また皆さんに新しい世界を発表させていただける時期が来た”と、自分の中で感じられたので、今回開催することを決めました。
──その時が来たということですね。昨年『妖怪ウォッチ2 元祖/本家/真打』が大ヒットしたばかりですが、間を空けずに新たな作品を発表できる、日野さんのエネルギーに驚かされます。
日野 もともとLEVEL5 VISIONという発表会は、毎年開催したり、2年おきに行うなど、期間を決めていた発表会ではないんです。自分たちが「世間や業界に対してメッセージを発表したい」という気持ちになったときに、開催しようと考えていました。
──では、今年4月のタイミングが、日野さんの中で“新しい世界”を発表するのにいちばん自然な流れだったのですね。
日野 そうですね。おかげさまで、昨年は『妖怪ウォッチ』が世間で大ヒットを記録しました。その成功を受ける形で、また新たな挑戦を提案したいと、ちょうど考えていた時期だったんです。いま、LEVEL5 VISIONを開催するということは、レベルファイブとしては、ここからがまたひとつのターニングポイントというか……大きく変化し、成長していきたい、という覚悟の表れですね。
──逆に言うと、それほどの新しい大型コンテンツが作れたという、自信の表れのようにも感じてワクワクしてしまうのですが。
日野 それは、ご期待ください(笑)。
2年間模索し続けて完成した『レイトン』最新作
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※騙し騙されのアツい心理戦が展開するテーブルトーク推理ゲーム『レイトン7』
──それにしても、今回のLEVEL5 VISION2015 -THE BEGINNING-では、その名にふさわしく、新しいことが立て続けに発表されるようで、その資料を拝見しても驚きました。
日野 それはうれしいですね。
──まず何からうかがうか迷うほどですが、昔からのレベルファイブのファンの方々のために、レベルファイブの“始まり”に縁が深い作品と言える『レイトン7』からお訊きしたいと思います。この作品は、初報が“LEVEL5 VISION2013「渦」”で公開されて以来、じつに2年ぶりの発表になりますね。
日野 ファンの皆さんには、本当に長らくお待たせしてしまいましたが、ようやく発表できるところまでこぎつけました。とにかく、開発が難航しまして……。最終的には、“デジタル“人狼”という形に落ち着きましたが、とにかく難しいゲームデザインになり、何度作り直したかわからないほどです。
──“人狼”といえば、ゲームクリエイターにも人気のアナログゲームですが、人対人の心理戦などの要素を、デジタルのゲームに落とし込むのは難しそうです。
日野 そうなんです。しっかりデジタルの世界で“化かし合い”をしながら、推理ができる。さらに、笑いも起きるようなものを実現するのがたいへんで……。『レイトン教授』シリーズは、1年で1作品制作してきましたが、『レイトン7』は2年かかってようやく発表できる段階まで進みました。
デジタルでしかできない、人対人の新しい遊び
──本作には、“デジタルならではの遊び”というキーワードがあるようですが、いったいどのようなものなのでしょうか。
日野 『レイトン7』には、アナログではできない遊びをたくさん用意しています。たとえば、スキルは、特定の条件で発動できますが、なかには複数人から疑われている状況になると発動できるスキルもあります。各ユーザーの行動をもとに、システム側が疑われている人を判断し、その人のアイコンに汗のマークを表示させるのですが、それが一定以上のときだけ、誰かひとりの正体がわかるスキルが使用可能になります。
──吸血鬼に選ばれた人は、その汗まみれの人が自分の正体を見破るスキルを使うかもしれないので、警戒する必要がありますね。
日野 そうです。ただし、正体を見破るスキルを使うためには、みんなから吸血鬼と疑われなくてはいけない。でも、疑われることで、逆に追放されてしまうかもしれない……。そのような駆け引きが発生します。
──「スキルで犯人がわかったのに?!」などと言いながら、追放されてしまう場合もあるわけですか(笑)。デジタルで“人狼”の遊びを作り上げたのは、発明ですね。
日野 そうですね。ただし、『レイトン7』は、“クロスメディア展開”ではなく、単純にゲームそのものの魅力で売り出すので、ものすごくチャレンジした作品にしたいと思います。
──今回のLEVEL5 VISIONでの発表にふさわしい、象徴的なタイトルですね。しかし、このゲームは上級者どうしでかなり高度な心理戦が展開しそうですが……。
日野 最初は初心者の集まりのような部屋でプレイしますが、勝利を重ねてランクが上がると、最終的に研ぎ澄まされたトッププレイヤーどうしの、最高峰の推理バトルに挑めるようになります。プレイヤーの能力に応じてランク分けされるので、上位のランクはまさにF1のような世界になるかもしれないです(笑)。
スマートフォンで冒険するファンタジール
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──『レイトン7』の新しい遊びも楽しみですが、新しいといえば、今回発表される『ファンタジーライフ2』も気になってしかたがないです。なにしろ本作は、スマートフォン向けタイトルだというのが驚きです。
日野 『ファンタジーライフ』というゲームは、どちらかといえば、大人の癒しになるような要素や仕組みで作られています。子どもたちはゲーム機でゲームを遊んでいますが、大人は最近、スマートフォンでゲームをプレイすることが多いですよね。
──大人の癒しを考えて、今回のハードがスマートフォンに決まったというわけですね。確かに大人たちのポケットには、スマートフォンが入っている時代ですから、そこからファンタジー世界に遊びに行けても十分に癒されそうです。また、それだけ多くの人に遊んでもらえる機会にもなりそうですね。
日野 本作の対応機種は、より多くの大人がゲームを遊ぶ環境ということを考えて決断しました。また、スマートフォン向けのタイトルとしてはあり得ないくらい、コンシューマー級の規模の開発体制で制作しています。ぜひ注目していただきたいです。
冒険者であり“かみさま代理”でもあるプレイヤー
──本作のファンタジールでの生活には、従来のように主人公として世界を冒険するだけでなく、“ビレッジを作る”という新しい遊びも用意されていることに、非常に驚きました。
日野 これまでは、キャラクターを育ててファンタジールを自由に冒険するという、いわゆるMMO(多人数同時参加型オンライン)RPGのように楽しめる作りでした。
──まさに、手のひらサイズのオープンワールドという印象でしたね。
日野 本作にももちろん冒険をしたり、主人公がいろいろな“ライフ”(職業)を経験して極めていくという遊びはあります。さらに、プレイヤーが“かみさま代理”になるという、新しい遊びも盛り込んでいます。
──前作の物語にも深く関わる形で登場した、あの“かみさま”にプレイヤーがなれるということでしょうか? 代理ですが(笑)。
日野 プレイヤーがかみさまの代わりを務め、好きにビレッジを作る。従来のようにいろいろなライフも、もちろん登場しますが、今回はさまざまな人たちを集め、ビレッジを自分好みの世界にしていくことができます。
── 箱庭作りのような体験ができるわけですね。それは癒されそうです。
日野 もちろん、その箱庭がメインではありません。前作のように主人公も操作でき、RPGの醍醐味である成長要素も用意しています。
──自分のビレッジに手を加えながら、生活や冒険を楽しむといったイメージでしょうか。
日野 そうですね。自分のビレッジに頼りになる人材を連れてきたり、冒険に出て貴重なアイテムを手に入れて、新たな施設を建設したりもできます。プレイヤーは冒険者とかみさま代理という、ふたつの役割を楽しめます。
大人のための癒しのファンタジーを目指して
──冒険と生活がつながった遊びはすごく楽しみです。ところで、本作は基本プレイ無料でアイテム課金制とのことですが、時間経過でスタミナが回復して、課金アイテムでも回復できるようなシステムなのでしょうか。
日野 いえ、スタミナに似たパラメーターはありますが、そこに課金が発生するかどうかは、まだ検討中です。当然、サービスを維持するには、なにかしらの形でお金を払っていただく仕組みが必要になりますが、我々も課金形態に関しては、非常に深く考え続けています。現在は、『ファンタジーライフ』の世界に合った形を模索しているところです。
──ところで、サービス開始の時期はいつごろになるのでしょうか。
日野 順調に開発が進めば、夏くらいにリリースできると思います。
熱いレベルファイブ新作ラッシュが到来
──今回の発表会では、待望の『ファンタジーライフ2』、そして『レイトン7』の登場に加え、大期待の作品と、立て続けのうれしい新作情報が満載でした。しかも、多くのタイトルが夏にリリース予定とのことで、これにも驚きです。
日野 とくに立て続けに発表しようと考えていたわけではなく、ずっと作ってきたものが、たまたまこの時期に発表できるタイミングになっただけです(笑)。なにしろ、社内は『妖怪ウォッチ2』の開発の嵐が巻き起こっていましたから。
──レベルファイブのゲームを原作にしたコンテンツが日本中で大人気なので、今年の夏は過去最高に熱くなるのでは(笑)。
日野 本当に、ありがたいことだと感じています。また、レベルファイブという会社としても、そのように大きなタイトルを生み出せたという誇りも同時に生まれました。その誇りを持てたからこそ、また“つぎの段階”に進むときが来たと感じています。いまの時代は、ゲームをひとつのエンターテインメントとして見たときに、ゲームだけ単体で展開するということは困難でもあります。しかも、そのこと自体がなによりもったいないことのように思えるんです。
──もったいない、ですか?
日野 はい。やはり、優秀なコンテンツというのは、ゲームとしてもおもしろく、ほかのメディアで展開してもおもしろいものです。それが“いいもの”と考えています。いいものだからこそ、安心してほかのメディアにも邁進していける。現在のエンターテインメントには、それが必要だと感じています。
成長するレベルファイブのこれから
──“いいゲーム”を作り上げ、これまでの3つのクロスメディアプロジェクトの知識を活かした今回発表の新規タイトルで、つぎの段階に進むということでしょうか。
日野 そうです。レベルファイブはゲーム会社ですが、これまでのクロスメディア展開の成功を振り返ると、ゲーム制作だけではなく、エンターテインメントを総合的に生み出していく企業に成長するべきだと感じています。
──総合エンターテインメント企業といったイメージでしょうか?
日野 そうですね。いまはもちろん、ゲームを作るスタッフは丁寧にいいゲームにするべく、全力で制作してくれています。それを踏まえ、僕は良質のテレビアニメや映画を展開することにも注力してきました。
──人気沸騰中の『妖怪ウォッチ』では、毎回のストーリーを日野さん自身が相当細かくディレクションされているそうですね。
日野 そのように、ほかのメディアでもひとつずつきちんと成功させていくことが、ゲームのヒットにもつながると思います。
──お話をうかがっていると、レベルファイブの強みである、いい物作りに支えられた総合エンターテインメントの“発信”企業になっていくイメージが見えてくるような気がします。そのように物作りとコンテンツの統括を同時に行えるゲーム会社は、お世辞でもなんでもなく、ほかにはないと思います。しかも、ふつうの会社にはできないです。
日野 ありがとうございます(笑)。でも、我々もできないところから、皆で少しずつがんばり続けて、現状のレベルまで到達したという感じなんです。
──レベルファイブは、クロスメディア展開の核になる“いい企画”を作っているからこそ、それを多くのメディアで余すことなく展開できる会社になったわけですね。
日野 最初は本当に何もできませんでしたが、成長してここまで来られたんだなと、いまは改めて感じています。
──それはきっと、こだわりを持って作り続けてこられたからこそだと思います。今回の『レイトン7』や『ファンタジーライフ2』も、機種にこだわらずに、全力投球で開発されていることが、お話をうかがってわかりました。
日野 何しろ僕自身は、ゲームが大好きなので。連日徹夜でゲームを遊んでいるような人間ですから(笑)。
──そうでしたね(笑)。
日野 ゲームが好きという魂を持ちつつも、本当にいまの時代のエンターテインメントの世界では、テレビアニメを手掛けたり、映画に挑戦したりと、出来うるかぎりのいろいろなアプローチをしていくべき時代が始まったと思います。その中で、「ゲームをヒットさせられたらいいね」と考えながら、今後もいい作品を手掛けていきたいです。
『妖怪ウォッチ』シリーズの新展開と第4のクロスメディアプロジェクト――
その詳細に迫るインタビューは次号、週刊ファミ通4月30日号(4月16日発売)のレベルファイブスクープスペシャル後編に掲載!
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