コアゲームはどうなる? GameBank発表会にて著名クリエイターたちが徹底討論
2015-04-09 07:40 投稿
アジアの動向についても分析
2015年4月8日(水)に行われた、GameBankの事業説明およびタイトル発表会。
この第二部として、“国内モバイルマーケットにおけるコアゲームアプリの潮流と展望”というテーマをもとに、著名クリエイターによるパネルディスカッションが行われた。
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パネラーには、スクウェア・エニックスの安藤武博氏、Aiming(エイミング)の椎葉忠志氏、NHN PlayArtの馬場一明氏、そしてGameBankの椎野真光氏が登場。モデレーターは、わがファミ通App編集長の目黒輔が務めさせていただいた。
そもそも定義は?
目黒 まず、コアゲームかどうかという線引きを皆さんはどう考えられていますか?
椎葉 ゲームそのものというより、僕のなかでは、ゲームに対するユーザーのモチベーションをコアかライトかの定義にしていますね。
いちばんコアな人は、PS4を買って、毎月家庭用ゲームの新作を楽しみにしていて、それを何千円も出して買う人。このようにゲームを趣味としていて、みずからゲームを探してくるモチベーションが高い人がコア。
そのいちばん対極にいるのが、ゲームを探せないというライトな人。「みんながやってるからやってみた。テレビCMで観たからやってみた」という感じで主体性がないんです。
安藤 最近だと、Steam(※PCで遊べる仮想のゲームハード)で遊んでいる人のエリート意識って高くないですか?
『FFXIV』をそれでやっている人とスマホゲームとかの話をしたら、「そんなもんやってるはずないやろ!」とか言われて。あの人たちをコアゲーマーだなと感じるところはありますね。
コアゲームだからこその苦労
目黒 安藤さんは、コアゲームをスマホゲームにもってきた人でもありますよね?
安藤 『ケイオスリングス』の話ね。
目黒 あれは、スマホゲーム業界が本格的に立ち上がり始めたぐらいのときでしたけど、「いける!」という感触はありました?
安藤 自分たちのチームのなかでは。応援してくれた人がいたので世に出たわけですが、反対意見もあって。
最初の『ケイオスリングス』って、5000万円ぐらいで作ったんですよ。いま考えると安いけど、当時はiモードの残滓がある時代だから、それでも自分も高いと思いましたよ。ただ、スペックを見たらDSとかPSPみたいなもんで、これが動くんだったら作ろうかなと。
マーケットのことは考えてなかったから、ある意味暗闇に向かってジャンプしているような(笑)。結果、運よく売れたぐらいの感じ。戦略的なことで言うと、こういうのは早めに動くと人と違う景色が見られるかなあと。
目黒 結果として、市場がある感触は掴めたわけですね。
安藤 市場があって、これなら1500円とかの前売りでやっていけると思ったら、椎野さんが『キングダムコンクエスト』を出されたわけですよ。あれだけ高いクオリティーのものが基本無料。あっというまにプレミアムダウンロードコンテンツの時代が変わったと。
椎野 あの2009年という時代は、いわゆるソシャゲーで、1本2000万円とかで作っていた時代でしたよね。でも、そういう同じことやってちゃダメですよと会社で言ってすごく怒られた記憶が。
目黒 あれって北米が先にリリースされましたよね?
椎野 当時は「北米で売るんだ!」って豪語してまして。でもいっしょにやっていた椎葉さんに言ったら……。
椎葉 結果として『キングダムコンクエスト』は当たってますけど、関わりながら「あ、これは無理だな」と思ってましたもん。
一同 (笑)。
安藤 馬場さん、あんな感じで風呂敷広げたプロジェクトって、だいたいポシャるでしょ?
馬場 そうですね。要素が確かに多い。どんな人がやっていたんですかねえ。
椎野 あれは、じつは『ブラウザ三国志』をやっていた人たちが流れてきていまして。アンケートをとってみたら、「モバイルで『ブラ三』ができるなんて!」みたいなご意見がすごくありました。それと、中国などの海外の方が日本のアカウントを作って相当プレイされていたり。
目黒 それで『キンコン』の成功を見た椎葉さんが会社を立ち上げたと、インタビュー記事か何かで見ました。
椎葉 僕らも共通しているのは、ほかの人がやらないことをやるしかないということ。
スマホはリッチなゲームを作れるようになったので、将来的にスマホでMMORPGが作れるようになったら当てましょう、と作ったのがAimingで。でも、投資をいただいた方以外からは「何を目指しているの?」という状態でしたね。
安藤 薄氷を踏む思いでやっているのはどこもいっしょですねえ。
目黒 で、『キンコン』の翌年に『パズドラ』が出て。コアというか、間口が広いけど深いタイプのゲームというか。完全に流れが変わってきましたね。
安藤 登録者が3000万って、コンソールじゃありえなかった数字じゃないですか。ケタがひとつ違うというか。『妖怪ウォッチ』で600万本。その5倍ですよ。そうなると、もう600万本ももうコアなのかなと。
目黒 この時期に安藤さんも『ミリオンアーサー』を作ったじゃないですか。コアゲームと思って作ったのですか?
安藤 そう思って作ってました。僕は子ども向けというか、老若男女向けのゲームは作らない、というか作れないんですね。
でもフリーミアムって、デイリーで2万人ほど熱狂的なお客様がいれば、売上で言うと億ぐらいは狙えます。なので、100万本を前売りで売らないと成立しないパッケージソフトと違って、そういった意味でのテーマのコア化はいけるなーと思っていて。
それが『ミリオンアーサー』でいうライトノベルとか中二萌えみたいなところで、老若男女には少ないけど、熱狂的な人をとらえられるだろうと『ケイオスリングス』のときよりは戦略的にやりました。
目黒 逆に馬場さんは、間口が広いゲームを作るというイメージがあるのですが。
馬場 そうですか? それはたぶんイメージですね(笑)。でも、間口が広そうかコアかって、見た目よりは、中身がコアな仕組みになっているかどうかだと思います。なので、プレイ時間やプレイ頻度が多いものは、全部コアと認識しています。
椎葉 ハマったユーザーはみんなコアですよ。
安藤 もう、ゲーム自体コアですね。市場規模を考えると。
目黒 なるほど。で、つぎの2013年に『ログレス』が出ます。このへんからオンラインゲームが大きく動き出してきました。当時は僕らもこれを見たときに、「ちょっとコアすぎないか?」と思ったんですけど。
椎葉 僕らは、『ログレス』の前にもっとコアな『ロードオブナイツ』など、『ブラ三』からの流れのゲームをいくつか作っていまして。安藤さんが「2万人ぐらいの熱狂的なファンで億を稼げる」と言っていましたが、ここのユーザーは1万人ぐらいで億いっちゃうんですよ。
一同 おお。
椎葉 ウチのほとんどのゲームって、5000万前後の売上があるんです。でも、それを支えているユーザーって、DAUで言って5000~1万いるかいないかぐらい。そういう感覚からすると、『ログレス』はすごくカジュアルで間口が広いなと。いまほどの数字は想定していませんでしたが、「なんとかなるだろう」という雰囲気ではありました。
目黒 実際にスタートした当初はどうでした?
椎葉 いまの売上の100分の1ぐらい(苦笑)。
安藤 じわじわ来ましたもんね。友だちのネットワークができあがるまでの時間、という感じかと思います。
椎葉 ゲームのなかでハマればもうやめないですね。
安藤 椎葉さんの「ゲームには飽きても友達には飽きない」って、名言やなって思ってます。
椎葉 もう10年ぐらい言ってます(笑)。
目黒 ブレイクしたきっかけってなんですか?
椎葉 地道に集客を進めてきたんですけど、ハマってくれた方がヤメないので積み上げた形です。ランキングとかのグラフを見てもいまだに伸びているのは、そのおかげですね。
目黒 ユーザーに関しては、PCとスマホだとまったく違ったりします?
椎葉 そうですね。おそらくいま『ログレス』を熱心にやってる方は、人生で初めてMMORPGにハマったのだと思います。PCでMMORPGをやっていた方はいないんじゃないかな。
安藤 MMOとすら気づいていない人も多いんじゃないですか?
椎葉 気付いたら、みんなと遊べるRPGだったと。「あ、これがMMOと言うんだ」という方が大半なんじゃないですかね。
目黒 プレイスタイルもPCとスマホユーザーだと異なります?
椎葉 そこは、私たちがスマホのプレイスタイルに合うように変えています。
目黒 具体的にはどんなところでしょう?
椎葉 PCのオンラインゲームだったら1日数時間続けて遊ぶことが前提で作るのですが、スマホの場合はやはり5~10分のこま切れで遊べるように設定する必要がありますね。
アジアとの付き合いかた
目黒 最近、韓国系のゲームとか増えていますね。
馬場 韓国では、市場規模が圧倒的に日本より少ないんです。なので、韓国の企業の人たちはみんな、日本で成功することを目指しているんじゃないですか。日本から韓国に進出するのは、日本で当たったタイトルの延長で、オプションでやるかやらないかといった具合ですが。
目黒 『ミリオンアーサー』は韓国で展開されていましたよね?
安藤 韓国で売れて1位取りました。中国でも台湾でも売れました。これはいちばん最初に動いたからですね。もう同じようにはいかないと思ってます。昔、エニックスが『クロスゲート』というMMOを中国で成功させたときも、じつはまだ中国にMMOという概念がなかったからうまくいったのかと。
目黒 いまアジアを攻めるならどこがいいのですか?
安藤 難しいですね。なぜなら、中国も韓国も台湾も開発者やパブリッシャーが優秀だから。
椎野 日本は圧倒的にコンシューマー文化が強いので、そこまでオンラインゲームに詳しくないんです。でも韓国など、オンラインゲームをやって育った子どもが開発者になっているので、その数とか質とかは上ですね。
目黒 椎葉さんは各国にスタジオを作られていますが、手ごたえはどうですか?
椎葉 日本で成功したタイトルがアジアでなかなか成功しないように、簡単ではないし、それぞれの国の市場が伸びている=開発者が増えている状況です。一説によると中国には13000社のスマートフォンゲーム開発会社があるらしく。そのなかの勝者が海外に出るだけあって、良質なゲームが増えています。
目黒 そんななか、アジア進出も視野に入れている椎野さんは、どうやって戦っていきます?
椎野 我々は、やはりパブリッシング力を高めていこうかなと思っていまして。開発力というのは一朝一夕で付くものではないので。
日本のコンテンツを海外にもっていきたいけど、まずは国内からしっかりと。韓国はやはり開発力が高いですが、常時接続型のPC文化なので、カルチャライズをきちんとやる必要があります。椎葉さんはどう思われます?
椎葉 ゲームオンという会社で韓国からタイトルを輸入してやっていたんですけど、正直僕らのポリシーとしてカルチャライズはしないんですよ。そもそも、日本で当たるものを持って来いと。椎野さんは開発者、僕はパブリッシャーの仕事が長いので、ちょっと違いますね。
いずれにせよ、カルチャライズをちゃんとやるのか、それとも日本に向いてるものを見つけ出してくるのか、どちらかがきちんとしていないと難しいと思います。
今年はこれが来る!
目黒 目立ちそうなジャンルはどんなのが来そうなんでしょうか? まあ、1年ぐらい前から皆さんが作り始められていたタイトルだと思いますが。
椎野 大手ゲーム会社さんとか、SAPさんが、気合の入った相当でかいタイトルをどんどん出す時代にはなりましたね。
目黒 職業柄いろいろ聞こえてきますが、やはりオンラインRPGが多そうという風みたいなものは感じています。
安藤 お客さんは、ジャンルとゲームシステムでタイトルを選ばないですよ。ジャンルみたいなものは後づけで。
昨日のレベルファイブの発表会であった『妖怪ウォッチ』のゲームも、誤解を恐れずに言うなら『ツムツム』みたいなものです。でも、『ツムツム』と同じだからやらない、とはお客さんは思わないわけですよ。ミッキーがジバニャンになってくれたらいいな、と思う人がいるのだから、あれはあれでいいと思います。
日本人でも“対戦”の第一人者に!?
安藤 スクエニもやっていますが、ゲーセンの対戦イベントは異様に盛り上がるんですよ。対戦についてみんなどう思っています?
椎葉 対戦があると長く遊ばせる秘訣にもなりますが、対戦だけ成り立たせようとすると難しい。競技性が高くなればなるほど、お金で強さが変わったらいけないという話で。
それと僕自身もスマホの対戦ゲームで世界的なヒット作が出てくると考えていますが、日本の市場で考えるとマネタイズがしんどいです。やるんだったら世界的にヒットして、チリが積もって大きな売上にできれば。
馬場 ゲームの仕組みで言うと、やはり対戦でおもしろいのは麻雀とかオセロとかパラメータに関係ないものでビジネスになりにくいとは思います。また別の視点で言うと、日本の小学校とか幼稚園の運動会を見ればわかるように、教育的なところでも難しいと思います。
目黒 日本からも対戦ゲームの第一人者のような人が出てほしいですけどねえ。
安藤 出ますよ。ゲーセンのゲームを作ってる連中ならできますよ。ウチの会社にもゲーセンの部隊ってあるんですけど、そこの連中が『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』を作ってますし。
セガで言うと、『チェインクロニクル』を作った松永さんもゲーセンタイトルを手掛けてきていました。今年以降、そういう動きは絶対加速すると思いますよ。
それぞれのGameBankへの思い
目黒 では最後にGameBankに期待することを教えてください。
安藤 まず言っておきたいのは、今日僕ら呼ばれた3人ともGameBankと仕事するとは決まってないんですよ。椎野さんが好きで来ているので。政治的、ビジネス的なところとは関係なく、GameBankに期待しています。
椎葉 スマホ市場はこれからまた変わっていくところだと思います。GameBankがヤフーの力を使ってどんなことをやるのか期待したいです。
馬場 ITの会社ではなくクリエイティブな会社として成功してほしいですね。人気も出ますし、転職したくなるのではないかと思います(笑)。
目黒 ファミ通AppもGameBankを応援させていただきます! 今日はありがとうございました。
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