ボルテージ発『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』開発陣インタビュー
2014-10-24 12:00 投稿
数多くの恋愛ドラマアプリを提供し、たくさんの女性の心を掴んで離さないボルテージ。先日開催された東京ゲームショウでの「壁ドン」体験ブースも大変話題になりました。
そんなボルテージが“サスペンスアプリ”の最新作としてリリースするのが『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』。今回は、配信されたばかりの本作を開発したクリエーター陣へのインタビュー記事をお届けします。
登場するのは、『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』プロデューサー兼ディレクターの加藤慶太氏(株式会社ボルテージ 執行役員 サスペンスBusiness Unit長)と、同作のシステム面の開発を担当する玉井謙介氏(同 執行役員 システム本部)、さらに、本作の楽曲を担当したZUNTATAの土屋昇平氏のお三方。
「女性はもちろん、ぜひ、男性の方にも遊んで欲しい!」と、本作について熱く語るプロデューサーの加藤氏。そのゲームとしての魅力や開発の経緯について詳しく聞いてみました。
さらに後半では、同社の”サスペンスアプリ”を下支えするテクノロジーについてもご紹介。「念願のボルテージさんとついにコラボすることができました!」と嬉しそうに語る、本作へのミドルウェア採用を推進した幅朝徳氏(株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長)もインタビューに加わり、本作の技術的な側面についても迫ります。
実際の人間同士の会話を擬似体験してもらいたい!
―ボルテージというと女性向けアプリという印象がありますが、本作はちょっと趣向がちがいますね?
加藤慶太氏(以下、加藤) はい。当社は女性向けの恋愛ドラマやシミュレーションゲームが多いのですが、今回の『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』では従来の当社作品とはかなり想定しているターゲットが異なっています。
従来作品のように女性がメインターゲットの場合は、たとえば“どれだけイケメンであるかどうか?”という部分が重要になるのですが、今回は、いかに男性にも遊んでもらうか?という点をじっくり考えてきたので、こだわるべきポイントも自ずと変わっていきました。
―どのような点にこだわったのでしょうか?
加藤 全体的なゲーム性を高めるために、細かい部分の演出に徹底的にこだわりました。ボルテージが開発するアプリの強みは“ストーリー”の部分なんですが、ストーリーには没入感がとても重要です。本作のようなサスペンスアプリの場合、画像やキャラクターだけでなく、物語を紡ぎだす“文字”そのものが没入感の実現のために重要な要素になります。
従来のアプリでは、一定の表示スピードでテキストが流れていくシステムを採用していたのですが、本作では、この部分にかなり手を加えています。
―といいますと?
加藤 いろいろと工夫しています。一文字一文字の表示のタイミングを変えたりとか、表示の仕方が違っていたりとか、文字のサイズを変えたりとか。単にセリフの文章が表示されているんじゃなくて、まさにゲームのキャラクターが本当に喋っているような演出を“テキスト”で行いたいと思ったんです。
たとえば、なにか言いにくいことを喋るシーンでは、テキスト表示の手前に「間」を入れたりしています。実際の人間同士の会話のように、発言をするときの躊躇の間を表現できるシステムにしました。
―ゲーム中の“会話パート”をプレイすると、そのこだわりが良く解りますね!
加藤 会話パートでは、吹き出しが表示されるタイミングを0.1秒単位で調整しています。コンマ単位のタイミングの調整を何度も繰り返して、ストレスにならないギリギリの演出を実現しています。お客様には待って頂かなければならない時間になるのですが、表現上必要な“間”にはこだわりました。その結果、物語への没入感がとても向上したと手応えを感じています。
―会話パートでの“発言 or 沈黙”というゲームシステムも、そうしたこだわりから生まれたものなのですか?
加藤 そのとおりです。ほら、実生活でも、会話の際にうまく空気が読める人と、そうでない人っていますよね(笑)。ずっと話をし続けてばかりで相手に耳を貸さなかったり、また逆に、肝心なところで伝えるべきことを伝えなかったり。こうした体験こそがまさに“会話を体験する”ということだと思うので、それをゲームシステムに反映しました。頭のなかで浮かんだことを、今ここで言うべきかどうか、そういう選択ができるようになっています。
企画段階ではうまくゲームになるかどうか心配だったのですが、実際にプロトタイプで実験してみると、かなり“実際の会話”に近い体験を実現できました。初期のころは、紙のカードを使って“発言 or 沈黙”のシミュレーションをしてみたりもしました。ダンボールでキャラクターを作ったりして、いろいろと実験してみましたよ(笑)。
―それはアナログな実験ですね(笑)でも、だからこそ“会話”という人間くさい体験をゲームに反映出来たのかもしれませんね。
加藤 はい。ひとつの会話パートのなかでの“発言 or 沈黙”の選択シーンも、多すぎず少なすぎず、ちょうど良いバランスを心がけています。ただ、いくら会話の体験といってもあくまでゲームですので、失敗しても先に進めるという、程よいゲーム性にしています。
好ましい選択でない場合は“スタミナ”がより消費されるという要素はありますが、実はそれだけです。しかも、同じパートで繰り返し失敗した場合は自動的にその会話のループから出して先に進めるというシステムにしているので、ストレスなく遊んで頂けるようになっています。ストレスを感じるよりも、「あれ、ちょっと空気読めなかったかな?」って思ってもらえるくらいでいいかなと思っています。
リリース後の反響と、気になる男女比率は…!?
―9月24日にリリースされてから、今日までの反響はいかがですか?
加藤 数字的な面で如実に結果が出てきているのは、KPI(注:Key Performance Indicator/重要業績評価指標:業績の達成度評価のための定量的指標のこと)のひとつである“継続率”ですね。サスペンスアプリとしての前作にあたる『新・生存率0%!地下鉄からの脱出』と比べても、かなり高い継続率となっています。
遊んで頂いているお客様にはとても楽しんで頂けているようです。毎日、ちょうど良いボリュームで続けて遊んで頂けていることが分かります。
―継続率はソーシャルゲームにとって大事なポイントですよね。
加藤 はい、まさに“お客様が面白いと感じて頂けているかどうか”の指標だと捉えています。システムが分かりやすいか、とっつきやすいかどうか、といった基本的な部分の評価でもあるので、まずはホッと安心しています。
―先ほど「男性にも遊んでもらいたい」というお話がありましたが、現時点でユーザの比率はどんな感じですか?
加藤 実は、思いのほか女性率が高いんですよ(笑)。女性に支持して頂けているのは嬉しいですし手応えも感じていますが、今後、さらに男性にも拡がっていくと良いなと思っています。
楽曲提供に留まらなかった、ZUNTATAとのコラボ
―今作では、楽曲をZUNTATAが手掛けたことも話題になりましたね。
加藤 そうなんです。ZUNTATAさんとコラボするというニュースが、twitterなどのソーシャルでもとても話題になりまして…。本作にとって、単なる楽曲参加に留まらない素晴らしい試みになりました。
―と、言いますと?
加藤 正直に言うと、本作は、かなり音楽先行で話題になったんですよ。とても嬉しかったですね。さらに開発の面でも、かなり初期の段階からZUNTATAさんには協力して頂き、作品のコンセプトや世界観を固める部分でも重要な役割を果たして頂きました。そのへんはぜひ、土屋さんの口から…
―ZUNTATA土屋さん、宜しくお願いします!
土屋昇平氏(以下、土屋) 『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』では、主に楽曲を担当しました。また、同じZUNTATAの石川(注:石川勝久氏)がSEや演出面を担当しています。
―本作の楽曲作りはどのように進めていったのですか?
土屋 最初に頂いたゲームの仕様書が非常にカッコイイものだったので、その雰囲気をバックアップできるように、モダンでアーバンな世界観にしようと思いました。開発チームのなかで作ろうとしているゲームのイメージを共有するのに楽曲はとても重要な存在なので、できるだけ早く曲を完成させました。
アートや文章だけだと、ゲームのイメージや世界観はブレてしまうことがよくあるので、音楽によるコンセプトデザインはすごく重要なんです。開発の最初に音楽が存在すると、チーム全体で共通のイメージを共有しやすくなります。
加藤 開発現場での反響は凄かったですね。実は当初、コンセプトデザインの段階で2種類の候補があり、どちらにしようか悩んでいたんです。こっちで行くぞ!と決めていたものはあったのですが、土屋さんから届いた楽曲を聴いたときに、その決断が正しかったことを確信出来ました。ボクも企画の人間もデザイン担当も、ずーっとその楽曲を聴きながら仕事していましたね(笑)。
実際、その楽曲があったおかげで、チーム全体でブレることなくイメージを共有し続けることができました。
土屋 上がってくる台本などを見ても、全然ブレがなく世界観がしっかりと立ち上がっていたので、本当に良かったなぁと思います。音楽って、ゲームのテンポ感を決定づけますからね。
―曲のイメージはどのように決めていったのでしょうか?
土屋 今回は、ありがたいことに、とても自由にやらせて頂きまして…(笑)。ボクがいちばん得意な領域で勝負しました。ひとことで言うと“音が枯れている”んです。あんまりゲーム中で耳にすることはない音楽なんじゃないかなぁ。
ボクもゲームは大好きで色々とプレイしていますが、本作のBGMみたいな曲は聴いたことがないですね。
―ジャンルで言うと?
土屋 Jazzy HipHop です。まずゲームでは使われないですね(笑)。なぜ、こうした雰囲気の楽曲にしたかというと、やっぱり加藤さんがおっしゃるところの「男性にも遊んでもらいたい」という部分があります。
“オトコの背中” “夕陽”って感じのイメージで曲作りをしました。だから“音が枯れてる”って感じなんです。これが、ゲームのコンセプトとピッタリ合致しました。
―本作には何曲くらいの楽曲が収録されているのですか?
土屋 現時点でたしか15〜16曲くらいだったと思います。結構多い印象を持たれると思うのですが、アドベンチャーゲームなので、心情や場所などのバリエーションごとに楽曲を用意する必要がありました。
―順番が前後してしまいましたが、本作で担当された役割を教えてください。
加藤 本作では、プロデュースとディレクションを担当しました。仕様の策定やコンセプトデザインも行っています。ボルテージでは『恋人はNo.1ホスト』というタイトル以降、5年ほど女性向けアプリの運営を担当してきました。
玉井謙介氏(以下、玉井) システムの責任者として、SE/PGを束ねる立場としてプロジェクトに携わりました。ミドルウェアを初めて採用するということで、CRIさんとのやりとりなども担当しています。
土屋 先ほどもお伝えしましたが、楽曲を担当しました。3年前くらいから、会社を超えてZUNTATAとしては活躍の場を広げようという動きを積極的に行っており、今回もそうした位置づけになります。加藤さんがもともとタイトーのプロデューサーだったこともあり、かなり初期の段階からご相談を頂くことができました。
加藤 実はしっかりした企画書ができる前から土屋さんにはいろいろと相談に乗って頂きました。それぞれのゲームのパートに適した音の使い方など、たくさんのアドバイスを頂きました。
ゴシップライターやサスペンスアプリシリーズの今後について
―本作の今後の展開について教えて下さい。
加藤 続々と新たなストーリーを配信していく予定です!実は、リリース前からすでに追加配信用のストーリーの作成に着手しています。
魅力的なキャラクターが次々と登場するのが本作の特長でもあるので、継続してプレイして頂きながら、自分の“好み”のキャラクターを見つけてもらい、そのキャラクターのストーリーをもっと読みたい!という気持ちにお応えしていきたいと思っています。
そうそう、ZUNTATAさんの魅力的なサウンドも、どんどん追加されていきますよ!
―ZUNTATAさんとのコラボはこれからも?
加藤 はい、ぜひやりたいですね!いろいろとアイディアもありますので。
土屋 楽しみにしています!
―サスペンスアプリの展開はどのようになっていくのでしょうか?
加藤 ボルテージとして女性向けのタイトルはもちろん主軸として続けていきます。一方で、本作やサスペンスアプリの使命は、従来のボルテージのターゲットをより拡げて、男性にも支持して頂けるようにしていくことですし、その手応えも感じています。
ゲームにはいろんなジャンルがありますが、ボルテージとしては自社の得意領域である“物語”をお客様に届けていくことにこだわり続けていきたいと思っています。
今後、恋愛やサスペンス以外にも別のテーマの作品が出てくると思いますが、どんな作品であっても、お客様に物語を提供するというボルテージのDNAを軸足にしていきたいと考えています。
―ファミ通Appの読者にメッセージはありますか?
加藤 本作は、アクションゲームやバトルのような面白さとはちょっと違って、物語の面白さを感じて頂けるように作っています。ある意味で、腰を据えてやらなくても十分楽しめるアプリとなっているので、ぜひ気軽にプレイしてみて欲しいです。
例えて言うなら、facebookやTwitterでタイムラインを眺めたりしている“合間”にでも、ちょっと遊んでもらえるような、そんな存在感がいいなぁと思っています。
ゴシップライターを支えた“技術”について
―今回の作品では、ADX2を使って楽曲再生をして頂いていますね。
土屋 現状、スマートフォンでまともに音を鳴らすことができるミドルウェアはCRIWAREのADX2しか無い、と当初から確信していたので。技術に対する信頼性もいちばん高いと思っています。
とくに技術サポートがビックリするほど速いので、すごく助かりました。なにか質問をしてもすぐにサポートから返事が返ってくるっていう安心感は、特にスマートフォンアプリの開発のように、進行スピードが速いプロジェクトにとっては不可欠と言えます。質問や要望に対するフィードバックの速さは、CRIさんならではだと思っています。
幅朝徳氏(以下、幅) ありがとうございます。もちろん質問の内容にもよりますが、原則として頂いたご質問には一両日中にお返事を返すように心掛けています。簡単なことではないのですが、こうして地道な努力をご評価頂けると、とても嬉しいですね。
土屋 スマートフォン上での動作の信頼感はダントツです。CS機はもちろんですが、スマホの場合もCPU負荷が高いミドルウェアって使い物になりませんからね。その点、ADX2はすごくCPU負荷が低いので遠慮なく使えています。本音を言えば、さらにもっと低くなったら嬉しいですけれど(笑)。
幅 頑張ります(笑)!本作では、ADX2のどんな機能を活用されましたか?
土屋 まず、当然ですが、サウンドデータの圧縮と再生に使っています。これほど音質を維持したままサイズをちっちゃくできる圧縮技術は他にはないので。
圧縮コーデックは、ADX2に用意されているコーデックの『HCA 中品質および低品質』をメインで使いました。音質的にも申し分なく、CPU負荷もとても低く抑えられました。
それから『REACT機能』(注:リアクト/ゲームの状況に応じて音をリアルタイムに変化させるADX2の機能)はとても便利で、本作でも大活躍しました。
幅 どんなふうに使われたのですか?
土屋 おもに“ダッキング”(注:ある音声を目立たせるために他の音を絞る制御や演出のこと)ですね。
ダッキングって、ゲームみたいにさまざまな音が同時に鳴っている場合、けっこう複雑な制御が必要になります。単純に、一括して音量を絞るので良ければプログラマさんに頼んでやってもらえば良いのですが、今作のように、ひとつひとつの音にこだわって個別にダッキングの制御をしたい場合は、REACTがとても便利でした。
REACTを使うことで、ダッキングの制御をプログラマではなく、サウンドクリエイターが担当することができることがポイントです。
しかも、スマホアプリはリリース後に次々と追加コンテンツを増やしていく必要があるので、そういう場合も、プログラマの手を煩わせずにダッキングを追加できるのは本当に便利です。プログラマさんはいろいろな部署がシェアしますので、取り合いになりがちですから(笑)、そういう意味でも助かっています。
加藤 複数の人間を煩わせずに調整ができるというのは、とても有難かったです。実際、本作のサウンド面での調整は、配信開始の直前ギリギリまで行いました。妥協せずに最後までこだわり抜けたのは、まさにミドルウェアのおかげだと思っています。
土屋 プロジェクトの終盤って、プログラマさんはいろいろなバグとの対決が大事なお仕事になりますからね。さすがに「音のボリューム調整を…」なんてお願いはできません(汗)。だから、ディレクターとクリエイターだけで完結できるADX2の仕組みは、渡りに船でした。CPU負荷的にもビックリするくらい軽いので、ほんとに便利に使ってます!
加藤 2章目にあたる“久世編”は、とくに本作のなかでもサウンド的にアツい演出(SE)が盛り込まれています。ぜひ聴いてもらいたいですね。
土屋 REACT機能をフル活用して、こだわりの音を実現しています。まだ久世編に届いていない方は、ぜひ楽しみにして欲しいです。
加藤 本作のようなゲームでは、シーンの演出上、重要なSEというのがいろいろと鳴ります。そういうときに、ちゃんとBGMの音量が下がるというのは大事なポイントです。また、ゲームのモードを変えるときも、BGMがクロスフェードしながら切り替わるようになっています。
土屋 BGMだけでなく、環境音ってアドベンチャーゲームにとって重要な要素なんですよね。スマホ上で、環境音を複数鳴らしながらBGMも再生できるっていう部分は、ほんとCRIWAREのおかげです。地味な部分なんですけど、MP3だと同時再生がかなり難しいので…。
加藤 ビジュアルと音のズレは非常に良くないので、本作では細心の注意を払っている部分です。シーンによって、音のフェードアウトの“長さ”も実は違うものなんです。一律ではないんです。
最高の没入感を実現するために、シーンごと、音ごとに、細かくフェードのタイミングを調整するような仕組みを実現しています。
つづく
ゴシップライター ~消えたアイドルを救え!~
- メーカー
- ボルテージ
- 配信日
- iOS版は配信中 Android版も配信予定
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iOS 6.0 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。
- コピーライト
- (C)VOLTAGE Inc.
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