口コミで大ブレイク! じつは180°方向性が変わった『生きろ!マンボウ』の誕生秘話

2014-09-20 12:00 投稿

アプリ業界をインディーズが席巻?

いま、アプリ界ではインディーズがホット! 中でも、育成ゲームの『マンボウ』は、“死ぬこと”に遊び応えを見出し、プレイヤーの度肝を抜いた。その『マンボウ』を手掛けた、フレッシュな3人からなるインディーズメーカー“セレクトボタン”が目指すものとは!?

▲左から順に、宮川佳祐氏と中畑虎也氏。もうひとりの創立メンバー塚田拓実氏は、残念ながら不参加。

——まずは、企業のいきさつをお聞かせください。

中畑虎也氏(以下、中畑) 僕たちはスマホアプリメーカーの同期だったんです。当時は3人で1本のゲームアプリを作っていました。その会社を退社してからは、別々の会社に転職したのですが、この3人でゲームを作るのが楽しかったこともあり、皆で趣味でゲームを作りたいという話になりまして、土日に集まって作るようになったんです。そうしてできたのが『生きろ!マンボウ!』です。

——では、独立しようと言い出したのは……?

中畑 僕ですが、ふたりも『マンボウ』が思いのほか反響がよかったので、「これは独立するしかないな」という感じにはなっていたと思います。皆でもっと本格的にゲームを作りたい、100%、ゲームだけを作りたいということで、起業しました。

——お三方はどのようなお仕事を担当されているのでしょうか。

宮川佳祐氏(以下、宮川) 僕はエンジニアなので、ゲームのプログラムをガリガリ書いています。そして、塚田はイラストとUIデザインを担当しています。

中畑 それ以外の仕事、企画とコピーライティング、サウンドディレクションなどは全部僕がやるという感じです。

——皆さんの立ち位置、関係性はどのような形ですか?

宮川 中畑はガンガン行くタイプなので、会社の理念などを強く持っていているんですが、いつもガーッと突っ走っていくという感じで。それを僕と塚田で冷静に見ているという構図ですね。

中畑 基本的には僕が調子に乗って、それを関西組のふたりに「ちょっとやりすぎちゃうかな?」と、ツッコまれる感じですね。

——社名の“セレクトボタン”の由来とは?

中畑 僕たちはゲームが大好きで、小さいころからいままでゲームをやってきていますので、何かしらゲームのモチーフに由来した名前がいいなと思ったんですね。その中でもセレクトボタンを選んだのは、あってもなくてもいいけれど、本当は欠かせない存在だからなんです。スーパーファミコンのコントローラーにあるセレクトボタンって、あんまり押さないですけど、裏ワザの入力に使われたりしますよね。

——たしかに、必要になりますね。

中畑 いまの世の中、ゲームは娯楽で、あってもなくてもいいと思われているのが僕らとしては悲しいことで……。そんな現状を変えるくらいのアプリを作りたいと思ったんです。実際、僕らは友だちとゲームで遊んで友情が深まったことがありましたし。ですので、社名にはセレクトボタンのように、ゲームをもっと楽しくするという僕らの想いを乗せています。

——会社理念の“GAME IS GOOD”というのも、そこから来ているんですね。

宮川 そうですね。『マンボウ』は、土日を使って、半年以上かけて開発していました。前職の京都の会社と、住んでいる横浜を行き来する中、土日で作り続けられたのも、ゲームがすごく好きだったからだなと思いましたね。

『マンボウ』のターニングポイント

——マンボウをゲームにしようとしたきっかけは?

中畑 僕らが以前に作ったゲームは育成ゲームだったので、つぎも育成ゲームがいいなと。育成といってもモチーフはいっぱいあると思いますが、キャッチーで、人に話したくなるモチーフがいいなということでマンボウになりました。

僕らの最初の目標は50万ダウンロードだったので、それを達成するとなると相当魅力のあるモチーフじゃないと勝負できないなと。それで、いろいろとキャッチーなものを挙げてみたんです。『ウルトラマン』だったり、『名探偵コナン』だったり。彼らに共通するのが、強い部分と弱い部分があるところだと思うんです。ウルトラマンは強いのに、3分間しか戦えないですよね。コナン君は子どもですし。そんな部分があるものが、みんなに受け入れられるんだろうと。

——確かに憧れる一方で、親しみもわきますね。

中畑 マンボウは、骨がある魚の中でいちばん大きくなるんですよ。なのに、メチャメチャ弱い。マンボウの死因のネタも、ひと目で見ておもしろいですし、人に伝えたくなると思ったので、コレはいけるんじゃないかと。

——宮川さんは「マンボウで行こう」と言われたときはどうでしたか?

宮川 最初に、マンボウの死因の説明を聞いているとき、ちょうどみんなでご飯を食べていたんですけど、僕、ご飯を吹き出しちゃったんですよ(笑)。「そんなんで死ぬの!?」って。

中畑 僕としては、それで「行ける」と思いましたね。それだけ反応が返ってくるんだったら、みんなも初めて知ったときはそうなるんじゃないかと。

——開発時は、マンボウの生態も詳しく調べたりも……?

中畑 マンボウは本当にすぐ死んじゃうらしいので……。10匹飼育していて1匹しか残らないとか。ゲームの死因一覧は誇張されている部分もありますけれど、本当に体が弱いんですよね。

宮川 僕は大阪の海遊館に行ってきて、マンボウを実際に見て、たくさん写真を撮ってきました。そういえば、売店でマンボウのキーホルダーでも買おうかなと見てみたら、おなじみのマンボウの成体のものと、稚魚が2個セットになったものがあったんです。稚魚は、ゲームで最初の状態の茶色くて小さいアレですね。稚魚のほうはパッと見、ふつうの人は何かわからないと思うんですけど、僕は見た瞬間、「あ、これマンボウの稚魚だ」とわかって。

——マンボウ通になっていたわけですね。そのほか開発秘話などはありますか?

宮川 アプリを最初に作ったときは、中身や見た目もいまとは違う形でした。リリースできるかなという状態まで作っていたんですけど、そこで3人で遊んでみて、「あれ? なんかしっくりこないな」っていうところがあって……。

マンボウが死んでしまうと、本当に悲しくなって「死んじゃった、もうアプリ遊ぶの辛い……」となってしまったのです。それは、死んでもつぎに活かそうとなるような要因が足りなかったんだなと。それで中身をガラッと変えて、いまの形になりました。けっこう大きな改修だったのですが、やってよかったなと思っています。

中畑 ここがターニングポイントでしたね。宮川がすごくたいへんだったと思います。ほとんどプログラムを組み替えていましたから。

——変えようとなって、どのくらいの期間でリリースしたんでしょうか

宮川 2ヵ月くらいでしょうか。それも土日だけなんですが、週末や祝日に集まって夜中までいっしょに作業していたこともありました。

スーファミ育ちのゲームっ子

——ところで、3人でいっしょにゲームを遊んだりはしますか?

中畑 アプリのゲームは3人で遊んでいますが、コンシューマーのゲームはまだあまり遊べていなくて。でも、事務所にゲーム機を揃えてゲーム合宿をするつもりです。いま、それがいちばん楽しみですね(笑)。

——合宿では、まず最初に何をプレイしたいですか?

宮川 『スマブラ』ですね。小学校から中学校あたりに、ニンテンドウ64版をやっていたので。

中畑 平気で夜を明かせると思います(笑)。

——そのほか、お好きなゲームはありますか?

宮川 僕はアクションが好きで、『ロックマン』が大好きです。『デビルメイクライ』もすごくやっていました。『ポケモン』は『赤』か『緑』、どっちを買うか小学生のときに悩みましたね。

中畑 僕はシミュレーションゲームが好きで、『バーガーバーガー』はメチャクチャ遊びました。それから『スーパーマリオRPG』は衝撃的でした。RPGとしてもすごくよくできていて。こんなおもしろいゲームはないと思います。あんなRPGも作ってみたいですね。でも、僕たちも仲間を募って、パーティーを組んでからですね(笑)。

——では、お三方をジョブに例えると……?

宮川 僕は盗賊とか遊び人など、ちょっと王道から外れたほうが好きなんですよね。

中畑 そうだね、盗賊とか忍者だね。じゃあ、僕こそ遊び人かもしれません。スーパースターとかがいいな(笑)。

宮川 ハッスルダンスは大事だね(笑)。塚田は超ハードワーカーなので、パラディンとか上級職だと思います。

——マンボウはドット絵ですが、レトロゲームへのこだわりはありますか?

中畑 こだわりというか、単純に好きだというのが大きいですね。スーパーファミコン時代のゲームや、『ポケモン』のドットの感じが好きで。ゲーム業界全体的には、ハイクオリティー、高精細なゲームが主流だと思いますので、そことの対比も出て、僕らの色が出せるんじゃないかなとも思っています。

——なるほど。ファミコン以上、ニンテンドウ64未満あたりのドットの感じですね。

中畑 これからドット絵のゲームばかりを出していくわけではないんですけどね。大事にしたいのは、裏ワザという概念です。最近のゲームは、裏ワザってないですよね。ソーシャルゲームだととくに。でもあったほうが、おもしろいと思うんですよね。作りにくいのはわかるんですけど。でも、僕らが作るゲームには絶対に裏ワザを入れたいなと思っています。

——ちなみに、『マンボウ』にも入っていますか?

宮川 入っています。ゲームを起動してすぐに、何もしない状態で、マンボウをめちゃくちゃ連打すると死にます。

——(マンボウを連打)あっ、“触りすぎ”で死んじゃいました!

中畑 こういうのって、見つけたらしゃべりたくなりますよね。僕たちもそうでしたし、いまの時代でも通用するだろうと。

——では、『マンボウ』のアップデートや続編の予定はありますか?

中畑 まずは海外展開をしたいと思っていまして、まず英語版、そのつぎにスペイン語版と台湾語版をリリースしたいと思っています。マンボウって、温かい海なら、世界中どこでも生息しているんですよ。学名も“mola mola(モーラ モーラ)”ってかわいい名前だったり、いろんな国でユニークな魚だと思われているようなので……。アップデートは、何かを追加する形で、あと1回くらいは行いたいと思っています。

新作のアプリも着々と準備中

——海外版の後は、新作にチャレンジされるということでしょうか?

中畑 いまはそういう予定ですね。マンボウのキャラクターで、続編やアクションなどを作る話もあったんですが、やはりネタ性が強いものでもあるので、『2』を作ったとして果たしていけるのかと。それに、僕たちもつぎつぎ作りたいという性分ですので、まったく別のモチーフでチャレンジしたいなという思いもありますね。ですので、海外展開やアップデートをしつつ、新作を作っていくことを考えています。

——新作の構想はもうありますか?

中畑 アクションゲームを考えていたりはするのですが、当面の作戦として、1年くらいは無料育成ゲームに絞ってお金を貯めてから、新しいジャンルにチャレンジしようかなと思っていて。育成ゲームって、無料ゲームの中では断トツで収益性が高いんです。お金のことを心配せずにアクションゲームを作れるところまで貯めたいなと。

——受託で開発を受けるという選択肢は?

中畑 ないですね。独立したからには100%オリジナルで行きたいですね。

——なるほど。新作は年に何本くらい出したいですか?

中畑 3人でやっているうちは、年に3本をマストで、できれば4本出したいですね。

——今後は3人体制で続けていく予定ですか?

中畑 最初は3人でやっていきますが、将来的には30人くらいのゲームスタジオを作りたいと思っています。海外で言うなら、『Angry Birds』を出したばかりのRovio Entertainmentさんですとか、supercellさんのような。それを何年で作れるかはまだわかりませんが、将来的には目指していきたいですね。来年くらいには、パートナーを入れていきたいです。

——ところで、インディーズの定義とはなんだと思いますか?

宮川 開発者が10人以下とかでしょうか。

中畑 個人的には、“オトナの匂い”がしないことかなと(笑)。インディーズの作品って、あまりお金のことを考えていないなって作品かなと。好きで作ったというのがゲームから滲み出てくると思うんです。滲み出てくるものから、作った人が何となく想像できるんです。お金より、好きなものを作っちゃった、というのが見えるメーカーさんだと思います。

——では、インディーズのメリットとはなんでしょうか?

宮川 意思決定がスムーズなところですね。3人の意見を出し合って、ガラッと変えてしまうこともできます。結局、作業するのも自分なので、責任を持って動かしていけますから。

中畑 ゲリラ戦ができるというのもありますね。出してから考える、出してから作り変えることもできます。僕らは背負う看板をこれから作っていくので、好き勝手できるというか、思いついたらやれてしまう。『マンボウ』もそれでうまくいったと思います。

——皆さんにとって、インディーズ魂とは?

宮川 本当に好きなゲームを作る、ということですね。

中畑 守るものがないので、100%攻め、というのを心がけています。

——近年は、インディーズ作品、少数精鋭のメーカーが増えていますが、こういった現状に思うところは?

中畑 インディーズ業界に対しては、非常に戦いやすい環境であり、競争も激しくなってきたとも思っています。クオリティーの高いゲームが増えてきていますし。

——戦いやすい環境というのは?

中畑 『マンボウ』は、広告費用がほとんど0円なんです。それでも、60万ダウンロードを越えています。“いまつぶやいたらフィーバーモード”という機能を入れるなど、SNSを活用することで広まっていって。お金をかけなくても、みんなにゲームを届けられる方法が増えているので、戦いやすくなっていると感じています。

——では、ライバル視、あるいは目標とされているメーカーや作品はありますか?

中畑 ひとつは『アルパカにいさん』ですね。全世界で何千万もダウンロードされているとのことで、僕らもそれに続いて世界で展開させていきたいです。ですので、COCOSOLAさんは参考にさせていただいていますし、ライバルでもありますし、偉大な先輩でもありますね。

宮川 COCOSOLAさんの話は3人でもよくしています。それから、Yacht Club Gamesの『ショベルナイト』というゲームもいいですよね。

中畑 作る前に“KickStarter”でユーザーから開発資金を集めて、セールス的にも成功していますよね。ほかにも、すごいチャレンジをしているメーカーさんもありますよね。『ぐんまのやぼう』を作ってらっしゃるRucKyGAMES(ラッキーゲームス)さんは、iPhoneのアプリからニンテンドー3DSのダウンロードソフトに移植したり。

宮川 キャラクター的なところで言うと、『Angry Birds』でしょうか。海外の空港に行ったら、当たり前のようにグッズが売られていますよね。マンボウもそこまでいったらすごくうれしいですね。海遊館に、このマンボウと“突然の死”と書かれたキーホルダーが並ぶといいですね。

中畑 “突然の死”だと水族館としては困っちゃうかも(笑)。

——最後に読者へメッセージをお願いいたします。

中畑 お父さん、お母さんにも勧めてください。僕の親もスマホを持っているんですが、かなりのヘビーユーザーなんです。主婦のお友だちにも遊んでもらっているそうなんですけど、評判もいいみたいなんです。簡単なゲームですので、きっと楽しんでもらえると思います。

宮川 これからも、100%でがんばってゲームを作っていきますので、よろしくお願いします!

セレクトボタンをはじめとして、注目のインディーズメーカーを特集したファミ通App iPhoneは、9月18日(木)発売。Amazonでの購入はこちら。

生きろ!マンボウ!-3億匹の仲間はみな死んだ、放置系ドット育成ゲーム-

メーカー
SELECT BUTTON Inc.
配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS 6.0 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。 iPhone 5 に最適化済み。Android 2.3.3 以上

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