【インタビュー】ヒットの秘密は”ドリフト細胞”にあり!『ドリスピ』のキーマンを直撃
2014-05-29 18:45 投稿
レースゲームの常識を打ち破る挑戦作
バンダイナムコゲームスから配信中の超お手軽レースゲーム『ドリフトスピリッツ』(以下、ドリスピ)。お気に入りの国産車で誰でもタッチするだけで気持ちよくドリフトできるシンプルな操作性と、タイヤやエンジンなど車を自分好みにカスタマイズにする楽しさが魅力。2013年11月6日にiPhone版の配信がスタートし、2014年2月3日には登録ユーザー数が100万人を突破。現在は190万人を突破しており、いまなお、好調なセールスを維持している。そんな本作のAndroid版が5月29日についにリリース!
そこで今回は、本作を手がけたバンダイナムコゲームス ドリスピ プロデューサー 泉智久氏とバンダイナムコスタジオ ドリスピ 制作プロデューサー 中西俊之氏に開発秘話を伺った。
ついにAndroid版が配信
――まずはAndroid版の配信おめでとうございます! 昨年の11月にiPhone版がリリースされてから約半年ですが、当初からAndroid版を出す予定だったのですか?
泉智久氏(以下、泉) 状況次第というところでしたね。IPの強力なキャラクターというものではなく、オリジナルで車のゲームを展開するにあたって、いきなりiPhone、Androidの同時スタートではなく、iPhone版からの展開を行い、動向を見てからというのが正直なところです。結果として、加速度的にダウンロード数が上がっていったので、Android版も出すことができました。
中西俊之氏(以下、中西) 要はそんなに最初から上手くいくとは思っていなかったってことです(笑)。海外ならともかく、国内のレースゲームがビジネス的に本当にいけるのかという懸念があって。でも、おかげさまで、Android版をリリースするところまでは何とか(笑)。
――失礼ながらファミ通App編集部的にも完全にノーマークでした(笑)。配信から半年近く経っても、トップセールスの30位前後をキープしていますよね。
中西 社内的にも、ランキングの動向がいままでのタイトルとは違うと話が出ています。ありがたいことにランキングの上位にいる時間が長くてなかなか落ちない。車はユーザー層の広いキャラクターだったという認識が生まれましたね。
泉 通常、キャラクターものだと最初に一気にお客様が集まってダウンロードしてもらった後は数がなかなか伸びないのですが、『ドリスピ』の場合は断続的に一定数のユーザーに入ってきていただいた結果、上位をキープできています。ですので、何か大きなプロモーション活動をしたというよりは、車という強力なIPが集客したということだと思います。
――車好きにはリーチできていると手応えがあるんですね。
泉 プロモーション活動の一環で、車が好きな方のインストール数が増えていることはわかっていて、そういうところにはちゃんと刺さっていると思っています。
――車には興味はないけど遊んでいる方もいるのですか?
中西 例えば彼氏が車好きな女の子が、「私はレースゲームはできないんだけど、『ドリスピ』は楽しくて遊んでます」みたいなご意見があるんです。そうやって遊んでくれている人は、結構いるんじゃないかと思ってます。難しい要素の多いレースゲームを手軽に遊べるようにすることで人が増えてくれればいいと思っていたので、男女比はわかりませんが、広くリーチできていると思います。
泉 50代の方も遊んでくれていたりとか。
中西 是非そのへんの方に遊んでいただきたいですね。逆に、すごく車にこだわりがある方には物足りなくて「こんなのは車ゲームではない!」と言われてしまうんじゃないかと思っています。でもそれは最初から覚悟していたことなんです。僕としては回転寿司のように、気楽に食べられて楽しめるものを目指してお出ししているので、本場の寿司職人さんに「お前らのは寿司じゃねえ」と言われても「ハイ、そのとおりです」と(笑)。ただ、「これくらい気軽に遊べるのも楽しいよね」と喜んでいただけるお客様がいらっしゃることを信じて作ってきましたので、そういう意味では、結果として沢山のお客様に遊んでいただけていると思っています。
カードゲームからスタートした開発
――車ゲームには、自分で運転するのが楽しいという固定概念みたいなものがある中で、これらをいっさい排した発想というか、その思い切りのよさがすごいなと思います。
中西 それが不安要素でもあったんですよ(笑)。
中西 先程も言いましたが、「こんなのレースゲームじゃないよ」と言われたら、そのとおりなんですよ(笑)。ただ、『ドリスピ』がすごくいいと思うのが、プレイヤーがちゃんと車とコースを見ていることなんです。画面にバーが出てそれを見て押すと目押しゲームになってしまいますが、車とコースを見ているから、コーナーがブラインドになって先が分かりにくくて操作が一瞬遅れるとか、そういうことも含め、車を操作している感じが出せていると思います。車が変われば多少挙動が変わってくることもあるので、レースゲームじゃないと言われつつも、車に乗ってバトルしている感じが十分楽しめると思いますね。
――確かに、分かりやすくて簡単な操作なのですが、ちゃんと走っている感覚を得られるというのが不思議でした。
中西 そこは力を入れていますね。デジタルの操作を極力アナログに見せるようにして、ちょっとの感覚の違いでアウトに膨らんでいくとか、インにキッチリついていくとか、ある意味演出でしかないのですが、そこが車でバトルしている感覚に繋がっていると思います。そもそもボタンひとつで遊ぶというのは、シンプルにするためというのもあるのですが、タッチ操作にしたからこそカメラワークにこだわって、リプレイみたいな画面で遊ぶことができるようになったんです。『ドリスピ』では、車の距離によって、「いまのドリフトスゲエかっこよかった!」みたいなシーンがたまに生まれるんですよ。あまり離れ過ぎていても1台しか映らないし、“この重なり具合がツボ”みたいなものが、やっているとまれに起きるから、またやろうかなという気になっていただけるのだと思います。
――そもそも『ドリスピ』はどういった経緯で開発されたのですか?
中西 元々『ドリスピ』は、車を題材にカードゲームを作れないかという話から始まりました。自社タイトルの他のソーシャルゲームもそうですし、あれに続くように車でやろうと。元々ナムコの時代から『リッジレーサー』がありましたし、いろいろなノウハウやリソースはあったので、スマホでもやれないかという話だったんです。ですが、どうしてもカードゲームでは車のよさは引き出せないと僕は思っていて、だったらコースを走らせようと。
――最初はカードゲームだったんですね。
中西 そうなんです。ただ、本格的なレースゲームを作ろうとは思っていなくて、昔はバリバリゲームをしていたけれど、最近はそこまで反射神経や集中力が続かないっていう30代や40代の僕らでも、通勤途中の電車の中で軽く遊べるものだったらニーズはあるだろうと。それで、操作とルールはできるだけシンプルにしたという経緯があります。
――車種選びは、何を基準にされているのですか?
中西 車種自体は、実はアーケードゲームの『湾岸ミッドナイトマキシマムチューン』シリーズの素材をベースに手を加えて使っています。『湾岸マキシマムチューン』シリーズには既に走り屋さんとか車が好きな方のラインナップが揃っているので、その中でも台数をしぼりつつ、中西の好みも入れながら選ばせてもらって(笑)。ただ、『湾岸ミッドナイトマキシマムチューン』シリーズにはなかったホンダ車を是非使いたいと思っていて、OKをもらったので、ホンダ車に関しては新規で作っています。
――車のバランス調整は苦労されたのではないですか?
中西 そこは開発のこだわりの部分ですね。『ドリスピ』は、試作の段階で『リッジレーサー』のエンジン挙動のプログラムを持ってきました。『リッジレーサー』は車1台に対して、それこそギア比から車重、空力抵抗まで、膨大なパラメータがあります。それで、とりあえず最初は全部入れないと走らない状況でやっていたのですが、試作して本制作に移っていくうちに、ソーシャルゲームでパラメータが多いとお客様はついてこれないのではないかと思ったんです。それで、泣く泣く分かりやすいパラメータだけ残して、お客様に伝わりにくいとことは消していきました。皆さんは戦闘力で車を判断していると思うのですが、そこに戦闘力に表れていない、例えば車重とかで速さが決まると、プレイヤーとしては納得できないんですよね。
――確かに、車を扱ったゲームとしてはパラメータの種類が非常に少ないですよね。
中西 そのうえで、元々リアル風に使っていた挙動を、いくつかのパラメータとドリフトの判定だけで、結果がリアルに分かるように、誇張した感じで作っていきました。それが結果的に、高速性能を上げれば速くなるし、ハンドリングを上げればインにくいつく、といったように、お客様に伝わりやすくて、伝わりやすいからこそパラメータを上げたいと思えるものを残していきました。
――先ほど出た戦闘力という表現も、普通のレースゲームでは出てこない呼び方ですよね。
中西 開発中はレーシングポイント(RP)って呼んでいたのですが、初めてゲームを見たときにRPって何?って話になるじゃないですか。それより“戦闘力”と言ったほうが、子供っぽいかもしれませんが、逆に燃えますよね。企画当初からも、“リアル”と“分かりやすさ”がかち合ったら、分かりやすさを優先するって決めていたんです。
――その一方で、車を改造する部分はパーツごとに分かれていたり、フリーパーツがあったりと、奥深い作りになっていますよね。
中西 レースがシンプルなだけに、ゲームを遊んでもらう継続時間を伸ばすという意図があります。時間がないときは簡単にレースを楽しんでもらっていいと思うのですが、じっくり遊びたいときには、このパーツを強くしようとかこっちの車を使おうとか、いろいろ考えて時間をかけて遊んでほしい。そこは多少複雑に見えても、お客様はついてきてくれると思っていました。
――レース部分とカスタマイズ部分のメリハリもヒットの要因なのかもしれませんね。運営の部分で苦労していることはありますか?
中西 カードバトルゲームだと、どんどん強さがインフレしていくじゃないですか。例えば攻撃力10000のカードがいても、20000のカードが出てきて、10万が出てきてという形ができますが、『ドリスピ』の場合は実際に走るので、ある程度以上は速くできないんです。20秒で走るコースを3秒で走りますとかいっても、それはゲームになりませんからね。ですから当初から上限を設定していて、伸び代はそこまでしかないのですが、なるべく速さだけに目がいかないように気をつけています。そういう意味でメーカー別のレースを用意して、ホンダ車を使ってもらえるホイールがあるからホンダの車でやるとか、インフレになりすぎない運営をしています。ただ、その一方でお客様は速い車を欲しがっているので、そこはバランスですね。
spiritsのヒミツ
――まれにドリフト中に判定で“spirits”が出るときがありますが、あの条件は何なのでしょうか?
中西 TIPSに書いてあるのですが、「ドライバーと車の一体感が最高に高まったときに発動する」です(笑)。
――人馬一体ってわけですね(笑)。
中西 それ以上は言えないですよ(笑)。
泉 愛車に対する愛情とかですね。
――愛車レベル的なものも関係しているのかなって思うのですが?
中西 巷ではそんな噂もありますね(笑)。社内でもよく聞かれるんですけど、人馬一体です、と答えて唖然とされます(笑)。
泉 あれが必然的に出せてしまうのは、遊びの部分のおもしろさとしては違うだろうと思うんです。あくまでも気持ちよさの伸びしろとして入れているんです。だから、あまり具体的な内容を明記していません。
中西 スキルで出せるとなると、逆に出さないといけないってゲームになるんです。何十回も何百回もやるなかで不意にあれが出るからこそ、「あっ!来た!!」っていう驚きがあって。だからspiritsが必ず出せるタイミングがあると、みなさんが狙い始めると思うのですが、意図はそういうことではなくて、変化を起こしたかったんです。ただし、タイムアタックイベントとは相性が悪いので、今後修正を検討しています。
泉 spiritsが出たおかげで緊張して逆にミスが起きたりするとおもしろいと思いますね(笑)。
――spiritsは求めるモノではないと(笑)。
ドリフト細胞を呼び起こせ!
――最後に、ユーザーさんにメッセージをお願いいたします。
泉 本当にお待たせしました。友達同士で盛り上がっていただいて、いままでにないドライブゲームとして楽しめると思いますし、そこからまたご意見やご要望をいただきながらいっしょに育てていければと思っています。ぜひ『ドリスピ』を楽しんでください!
中西 『ドリスピ』の最大の成功要因を話したいと思います。これは僕が発見したのですが、要因は、“ドリフト細胞”にあるんじゃないかと思っているんです。ドリフト細胞って初めて聞いたかと思うんですが、スーパーカーブームとかF1ブームとか、『イニシャルD』ブームとかで、日本人には後天的に培われてきたドリフト細胞というのがあるんです(力説)! 特に30代から40代の男性に多くみられるようです(笑)。『ドリスピ』はここを刺激して活性化したことで、成功を勝ち得たと思っています。僕が発見したんですけど(笑)。
「ドリフト細胞ってあるんですか」って聞いてみてもらえますか?
――ドリフト細胞って本当にあるんですか?
中西 ドリフト細胞はあります! これからもドリフト細胞を刺激するようなものを作っていきたいと思います!
(C)BANDAI NAMCO Games Inc.
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ドリフトスピリッツ
- ジャンル
- レースゲーム
- メーカー
- バンダイナムコゲームス
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iPhone 4S、iPhone 5、iPhone 5s、iPhone 5c iPod touch(第 5 世代)、iPad 2、iPad (第 3、4 世代)、iPad mini(※iOS5.1 以上)、Android:4.1 以上(※一部非対応機種あり)
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