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老舗・東映アニメの新たなる挑戦『円環のパンデミカ』はパンデミックを巻き起こすか?

2014-05-16 11:00 投稿

▲タイトルはDNAの螺旋構造やパンデミック(感染症の世界的な大流行)をイメージしているのだとか。

アニメ業界を現役で引っ張る老舗・東映アニメーションと言えば、かの名作『デジモンアドベンチャー』を生んだ制作会社である。そんな東映アニメーションが、何やらゲームを作ったらしい。それも、既存の作品に頼ったものではなく新規IP、世界観から作り上げた完全オリジナル作品というのだから驚きだ。これは、いったいどういうことなのか? ファミ通Appは東映アニメーション・中野オフィスへ向かい、ふたりの重要人物に話を聞いた。

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東映アニメーションの新規事業

ーーまずは制作の経緯から教えてください。

松浦 東映アニメーションの本業はアニメ制作です。これからもそうでしょう。でも、時代とともにアニメ全体の視聴率は下がっています。それこそ『Dr.スランプ アラレちゃん』が25%とかすごい時代がありましたから、比べてしまうといまは落ちている。人気の『ONE PIECE』でも2桁いくかどうかです。

僕らとしては作品をどんどん世に出したいのですが、視聴率が低いと相対的に価値が低く見られてしまう。杞憂かもしれませんが、そう思っていました。そこで、新しくキャラクタービジネスを始められる場所はないのか、考えてみたんです。僕らはどんなところで作品を出していけるのか、そのひとつの形が『円環のパンデミカ』です。

▲『円環のパンデミカ』の産みの親、松浦寿志氏。好きなゲームは『MOTHER』シリーズ。

松浦 ゲームを選んだのは、僕が重度のゲーム好きであること以外にも理由があります。エンターテインメントにはさまざまな形がありますが、今後いちばん伸びるのはゲーム市場だと考えました。家庭用は落ち込んでいるそうですが、オンラインやソーシャルはまだまだ伸びる。でも、ソーシャルをやるのは違うと思いました。ジャンルとしてキャラクターを消費しすぎている気がして……。

ーーと、いうと?

ソーシャルのキャラクターが使い捨てとまでは言いませんが、ファンビジネスで50年以上ご飯を食べている弊社としては、ちょっと苦手です。じつは、弊社からも『SLAM DUNK』や『聖闘士星矢』のソーシャルゲームが出ています。だから人気の作品に人が集まることはわかる。でも、それで売れたんじゃ新しいプラットフォームとして認められない。既存IPに頼るのは……ちょっと話が違うんです。

アニメーション制作会社の現実

松浦 アニメは基本的にB to Bのお仕事です。僕らは企画を立てて、アニメーションを制作します。でも、アニメーション制作だけでは赤字なんですよ。その代わりに、二次利用や自らライセンス事業を行って収入を得ています。悪い言い方をすれば赤字補填ですね。たぶん、他所の制作会社さんも同じでしょう。

だから、ライセンスを管理する版権事業部は制作部と同じくらい活発な部署です。ことキャラクタービジネスに関しては、弊社には一日の長があると自負しています。でも、キャラクターという素材まで戻ったときに、初出がアニメである必要はないと気付いたんです。キャラクターとして育ってから、アニメというゴールに向かう形もあり得る。

ーーこれまでスタートだったところをゴールにすると。

松浦 はい、そのほうが人気の声優さんも起用しやすいかなって(笑)。今回の企画に関しても、アニメーション制作まで辿り着きたい気持ちはあります。約束されているものではないのですが。

2年の構想の果てに、ついに出航!

ーー松浦さんにとっては『円環のパンデミカ』が初めての新規IPなのでしょうか?

松浦 はい、初めてのオリジナル作品です。アニメではなくゲームとして出すという部分で、企画を通す段階で難航しました……。

黒川 ようやく「出航だ!」って感じですよね。

松浦 企画として認めてもらうまでに、じつは2年くらいかかりました(笑)。そこでようやく黒川さんに相談できたんです。

黒川 「いつ開発が始まるんだろう?」とは思っていました(笑)。ただ、松浦さんのゲームに対する想いはひしひしと感じていたので、私もやっぱり具現化したいと思った。ずっとお付き合いしていましたよね。長かったですね!

ーー黒川さんは作品にどう絡んでいるのでしょうか。

黒川 松浦さんとの出会いが1年半ほど前。私はNHNジャパン(当時)でセガさんとの協業で『戦場のヴァルキュリア』のPC・スマホゲームに関わっていまして、プロジェクトの組成から開発会社、イラスト、企画のセットアップをしたんですね。このゲームを、当時は接点のなかった松浦さんに高く評価していただいた。それで、第三者を通じて会うことになり、オリジナルIPで丁寧に作られたシミュレーションゲームをやりたいというお話を伺ったんです。

▲もうひとりのキーパーソン、黒川文雄 氏。

黒川 それから松浦さんの管理のもと、『円環のパンデミカ』のプロデュースをしています。開発会社やイラストレーターの手配、プロモーションやパブリシティのトータルコントロールなどが私の仕事ですね。ただ、実際に開発が始まったのはここ8ヵ月ですよ。それまでは基礎研究です。松浦さんが考えた世界観や人物を具現化するには何が必要なのか考えていました。

初めて味わう”産みの苦しさ”

ーーゲームの世界観や設定作りはどのような形で進めたのですか。

松浦 初めてのことばかりで全然わからなかったから、とにかく案を出して、整形してもらう形です。シナリオに関しては、こちらでアニメ風に作って、それをゲームにどう落とし込むかの相談でした。作業的には無駄が多いかもしれませんが、まずは弊社らしく、泥臭い方法でないと進まないかなって(笑)

黒川 設定資料はかなり細かいですね。松浦さんがほぼ単独で用意していて、いまは200キャラくらい。この辺りの”産みの苦しさ”はずっと松浦さんが担当しているんです。そういう意味では、本当にゼロから産み落とされた作品です。松浦さんはゲーム開発が初めてでも、作り手としてのこだわりはお持ちなので、途中で”やっぱり変えよう”ということもある。すごく細かくご指示いただいてます。

ーーアニメーション制作のノウハウも活かされていますか?

松浦 どうでしょう(笑)。アニメーターをやっていたわけじゃないので。けれども、東映アニメーション魂は込めているつもりです。うちは泥臭いんです(笑)

ーーゲームにはアニメーションムービーが挿入されるのですか?

黒川 アニメーションは、現在、製作準備中です。

松浦 ムービーやストーリーよりも、まずはゲーム性を大事にしたいんです。例えばストーリーに関して、最初から最後までのシナリオは用意してありますが、それに沿ったゲームにする必要はない。実際、ゲーム性のためにストーリーの調整もしました。

ーーゲームとして遊んでおもしろいことが最優先だと。

松浦 はい。ゲームシステムも相談していくうちにかなり変容しました。最初はボードゲームとパンデミックがテーマだったんです。そこから、いまのストラテジーに落ち着きましたね。ゲーム性については、黒川さんや開発会社の方にもアドバイスをいただきました。

黒川 毎週、開発会社さんと打ち合わせるんですが、松浦さんも開発会社さんも”絶対こうでなきゃダメ”というのはなくて、フレキシブルに対応していましたね。良いものになるなら、そうしようと。それが時間がかかっている要因でもあるんですけれど(笑)。だから、毎週ハラハラします。“それを入れたら間に合わないですよ!”って。でも、それを実現する為に私がいるので、可能な限りの調整はしています。

ーー実装を断念した要素もありますか?

松浦 そうですね。開発会社さんから“ちょっと複雑になりすぎだね”と意見をいただいて、”じゃあ、もっとシンプルにしましょう”ということもありました。

“長く”がひとつのテーマ

ーー『円環のパンデミカ』はどんなゲームですか?

松浦 正確に表現するなら“脱出・探索がメインのリアルタイムストラテジー風RPG”です。3Dフィールドをスタートからゴールまで進むのですが、そのあいだに障害物や感染者が待ち受けています。それを取り除いたり、避けたりしながら進むのがゲームの基本構成です。敵の感染者はものすごく強いので、積極的に戦うというより、凌いでゴールまで逃げるイメージですね。でも、直接ゴールに向かうだけでは報酬が少ない。寄り道をして人を助けたり、素材的なものを集めたり、探索をしてから辿り着くと、報酬がたくさんもらえる設計です。

▲逃げる、凌ぐと聞くと『クロックタワー』や『ICO』を思い出すが、『円環のパンデミカ』のジャンルはストラテジーに近いらしい。

ーー歯ごたえがあるゲームになりそうですか?

松浦 前半は難易度を下げていますが、後半の難易度は高めです。ゲームとしての楽しさを追求していくと、難易度が高くなるのは必然かなと思っています。

ーー間口は広くとも、やり込まないと最後までは辿り着けないというバランスですね。バージョンアップで難しいステージが追加されることもありますか?

松浦 はい、少なくとも数年間は運営したいです。“長く”というのは、今回の重要なテーマです。アニメの人気は放送中だけなんですよ。放送は2クールか4クール、つまり半年~1年なので、そのあとの展開が厳しい。視聴者の気持ちも途切れてしまうんです。だから、オンラインゲームみたいに数年に渡って愛してもらえる作品は羨ましいです。『円環のパンデミカ』でやりたいのは、アニメ放送のタームよりも長く、ユーザーさんに愛されることです。

ーーなるほど、最初から作り込むというよりも、バージョンアップをくり返して調整していく形ですね。

黒川 キャラクターに関しても、最初から全員を出すわけではありません。いままでのソーシャルゲームみたいな形って、最近は敬遠されているじゃないですか。その一方で、ガンホーさんのように”長く”遊んでもらえるような運営を重視したやり方もあると思うんですよ。そこを目指したいですね。私もオンラインゲームの制作や運営の経験があるのですが、やっぱりどれだけ”長く”遊んでもらえるかはポイントだと思うんです。”長く”と言えば、”30日ごとに世界が変わる”みたいなコンセプトがあったんですよ。

ーー自分が育てたキャラクターを引き継いで、別の世界観で遊ぶということですか?

松浦 そうですね。世界観がまるっと変わるというのは、ゲームの切り方というか、演出方法のひとつとして考えていたんです。

黒川 まだ検討中ですが、実現したらユーザーは毎月新しい気持ちでゲームを楽しめますよね。

多種多様なデザインのキャラクターたち

ーー『円環のパンデミカ』の想定ユーザーを教えてください。

松浦 女の子のキャラクターを多めに用意しているので、まずは20代、30代の男性を狙いたいと思っています。この世代が登竜門なので、そこからどれだけ広げていけるかですね。

※ここで松浦氏、キャラクターのイラスト資料を取り出す。

ーーすごい量ですね!

松浦 東映アニメーション作品として許される範囲で、いろいろと用意しています。イラストは似通わないよう、さまざまなテイストの方にお願いしていますが、メインのイラストレーターは村上ゆいちさんです。

ーー並んでいるものはA案B案みたいなものではなく、差分としてすべて登場するのですか?

松浦 そうですね。概ねフィックスされたものです。

▲キャラクターの外見は個性豊か。とくに白衣のキャラには並々ならぬこだわりを感じた。

ーーキャラデザの段階から、いつかアニメーションになって動くことを想定していたのでしょうか?

松浦 ええ、気持ちとしては。動いたときにいちばん魅力的に映ると感じたのが村上さんのイラストだったので、メインでお願いすることになったんです。

野望は何処まで広がるのか

ーー『円環のパンデミカ』が東映アニメーションの新たな可能性の嚆矢であることがよくわかりました。続く二の矢、三の矢の予定もあるのでしょうか?

松浦 『円環のパンデミカ』が指標になりそうなので、まずはこれを何とかしなきゃいけません。ただ、新規事業として横に並んでいる作品もあります。例えば、今度イベント上映する『ロボットガールズZ』というアニメーション。これは『マジンガーZ』のようなロボット作品の萌え化です。『スタプラ!』というアイドル育成ゲームも、同じように横で動いていた作品ですね。

ーー『円環のパンデミカ』の配信後の予定を教えてください。

黒川 ユーザーさんの反応を見ながらですね。まずは、どれだけ遊んでいただけるかに注力しています。

松浦 どの辺りの強化がユーザーさんに喜ばれるのか、早々に判断したいですよね。運営型のゲームではありますが、野望をどこまで広げて良いのか、まだイマイチわからない(笑)。

ーーところで、企画を通すまで苦労されたみたいですが、社内の評判はいかがですか?

松浦 わりと好意的に見てくれています。フワフワした感想も届いていますよ(笑)。期待には応えたいです!


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円環(えんかん)のパンデミカ

メーカー
東映アニメーション
配信日
2014年5月下旬予定
価格
無料(アイテム課金あり)
対応機種
iPhone4s 以降、Android 4.0 以上

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