話題作を連発! 大学生のアプリ制作サークル”超水道”の創作のヒミツに迫る

2014-05-04 10:00 投稿

“大学生のアプリ制作サークル”として、最近ますます勢いを増している“超水道”。彼らが世に送り出すデンシノベルの最新作アプリ、『佐倉ユウナの上京(上・下)』はDL開始以来多くの共感と感動をユーザーに与えている。今回は彼らの創作活動に賭ける想いと、未来に馳せる希望と野望について、たっぷり語ってもらった。

超水道のメンバーはどんな人?

【ミタヒツヒト(以下、ミタ)】
超水道代表。ディレクションとシナリオを担当。代表作は『森川空のルール』『ボツネタ通りのキミとボク』。現在大学生。ここ最近危うい。シナリオ、小説、その他もろもろのお仕事募集中。

【山本すずめ(以下、すずめ)】
超水道のグラフィックデザイナー。各種プログラミングも。超水道関連のイラストはだいたい担当。現在大学生。体力が危うい。イラスト、デザイン関係のお仕事募集中。

【蜂八憲(以下、蜂八)】
超水道のシナリオライター。プログラミングも行う。代表作は『佐倉ユウナの上京』。元大学生。体重が危うい。シナリオ、小説のお仕事募集中。

サークルの誕生と創作の苦労

──“超水道”はいつから活動されているんですか。皆さん、大学で知り合われたんでしょうか。

ミタ 僕と、今日は来ていませんが幼なじみの斑くん、中学時代に知り合ったすずめくんが加わって、高校2年の冬から活動開始しました。蜂八さんに会ったのは、僕が大学1年生のときでした。蜂八さんは同時大学3年生で、彼の友人が超水道にライターとして紹介してくれたのがキッカケですね。

──当時からオリジナル創作を?

ミタ いえ、最初は二次創作でノベルゲームを作りました。ですが無謀にも、海外にデータCDのプレスを頼んだんですよ。ところが「届くのはイベント翌日」と、イベントの一週間前に連絡がきて。あわててCD-Rを焼いたり、1日でジャケットを印刷してくれる業者に頼んだら、資金を使い果たしてしまいました。おかげで会場に着いたとき、所持金が全員合わせて100円くらいしか残っていない、背水の陣でした。

──いきなり修羅場ですね。

ミタ つぎの冬コミは初めてのオリジナル作品に挑戦しました。オープニングをフルアニメにしようとしたんですよ。

すずめ ところがアニメだけで制作期間を半分以上使ってしまって、本編を半分に詰めよう、と本末転倒なことを(笑)。けっきょく、その作品は完成させられなかったんです。

ミタ 大作狙いの作品がことごとく失敗したので、今度は小さい作品を作ろう、と決めました。短編で絵は少しだけの、簡単に作れそうなやつです。当時はすずめくんが美術大学を目指す浪人生だったのも、理由のひとつですね。

すずめ 忙しいからスケールを縮めて無理なく作ろう、という発想です。そうやって出来上がったのが『森川空のルール』です。

『森川空のルール』

▲ごく平凡な高校生の“僕”に、ある日突然告白してきた、口が悪いと評判の転校生“森川空”。冬の町を舞台に彼らの不器用な恋愛物語が描かれる、超水道制作のiOS対応アプリ第1弾。作品内で取り上げられる“絵を描くこと”への情熱は、創作当時山本すずめさんが美術大学を目指していた影響が大きい、とのこと。

ミタ 『森川空のルール』制作で気づいたのは“小さい枠の中で完成度を高くするおもしろさ”です。超水道は人数も少ないし、高価な設備もない。ならば雰囲気よく綺麗にまとめて一点突破しよう、と思ったんですよ。それがその後の超水道の方向性を決めました。

すずめ それに僕らは、もっと作品を露出させたかったんです。だから小さめの作品を短期間で作って、どんどん出していくいまのスタイルになりました。

──確かに、超水道さんのリリースの早さは異例ですね。

ミタ 異例がいいんです(笑)。僕が演劇をやっていたことにも関係してると思うんですが、お芝居も作品も広くゆきわたらなければ意味はない。演劇でプロを目指す同世代を見ていて、「演劇は高尚なものだ。わかる人だけがわかればいい」というのは違うと思ったんです。逆にもっと広げなきゃ意味がないんです。

──そういえば“超水道”という名前は、どこから付けたんですか。

ミタ 日本の水道って、優秀なインフラとして世界で評判ですよね。どこにでもあって、どこでも安心して水が飲める。超水道もそういう“どこにでもある”を目指した……という説明を後から考えました(一同爆笑)。

──後付けですか(笑)。

ミタ 名前が決まらず相談してるとき、トイレに行ったんです。戻ってから「水道でよくね?」「さすがにソレはマズいだろ」「じゃあ超つけて超水道で」という感じで決まりました(笑)。これでバカっぽいゲームばかり作ってればいいんですけど、作品は真面目なので微妙に失敗したかな?

すずめ 誰もがインパクトの強さで覚えてくれるので、そういう意味ではいい名前だと思っています。

少数精鋭の創作集団

──皆さんおひとりだけで作家を目指さず、ユニットを組んでいるのはなぜでしょう。

ミタ 僕の場合、演劇の経験が尾を引いているんだと思います。ひとりずつの力では単純な足し算にしかならないけど、協力すれば何倍にも増える可能性がある。出版社さんから声をかけてもらって、小説を書くとしても、デンシノベルを作る楽しさと小説を書く楽しさは別物だろうな、と思います。僕にとってデンシノベルは特別な何かなんです。

すずめ デンシノベルは、みんなで1からすべて設計できるのが楽しいんですよね。自分がやりたいことを、すみずみまで行き渡らせることができるんです。

──裏方や統括も自分でやりたい、と。

ミタ 下手の横好きですけどね。でもけっこうアプリを作り慣れてきたので、メンバーそれぞれが個別に行動するのもいいかも、とは思ってます。

蜂八 僕もすずめさんと同じような感じですね。ただ「複数人で創る」ことが必ずしもプラスに働くとは思わないんです。1+1が2になるどころか0.5やゼロ、マイナスになることだってある。超水道に入った当初はそこが少しだけ心配だったんですが、いざいっしょにやってみるとやりやすくて楽しくて、相性が良いんだなって。でも逆に「こんなところいたくない」という人は絶対いると思うんですよ、超水道って。

すずめ そういえばミタくんは大学1年のとき、新しいサークルを作ろうとしたんです。ライターを大量養成して超水道に加入させようと(笑)。

ミタ メンバーの“やる気”をマネージメントできず、企みは失敗に終わりました(笑)。いまも「超水道に入りたい」っていう人がたまにいらっしゃいますが、超水道はストイックで、ひたすら作り続ける集団なので、合わない人はまったく合わないと思いますね。

蜂八 他の同人サークルの方から「超水道って熱湯風呂みたいなイメージがある。普通は30度ちょっとくらいでのんびりやるのに、50度のお湯に浸かっててなぜ平気なの?」と言われたことはありますね……。

ミタ それに僕は気の合う人としか超水道をやれないだろうな、と思うんです。内部政治はこりごりなので。

──まさに少数精鋭ですね。

すずめ ただ兼任が多いので、スタッフロールで同じ名前が何度も出てきて、まとめると1画面で終わっちゃう

ミタ スタッフロールはこだわって作りたいので、すぐ終わると困るんですよ。

すずめ たとえば『佐倉ユウナの上京』は、実際には5人くらいしか制作に携わってないので、なるべく担当名で出していくとか、スペシャルサンクスを入れたりとかで、かさ増しをしてます(笑)

──作品の方向性は、皆さん同じなんですか。

すずめ まったくいっしょではないですが、お互い尊重し合える部分はあります。

ミタ 超水道はバンドっぽくて、全体では同じ方向性だけど、メンバーそれぞれの趣味趣向に違いがある感じです。

──作品によってどなたかのカラーが表に出てくるとか?

ミタ 強さの違いはあるでしょうが、どの作品にも全員のカラーは出てますね。ただ絵とプログラム担当の、すずめくんのカラーは強いと思います。

すずめ 参加してほどなく、超水道のWEBサイトを作らされたんです。プログラミングは小学生の時にちょっと触っただけなのに(一同爆笑)。そのあとゲームのプログラムを任されたら、なんとなくできてしまったんです。それでおもしろくなって、以降ほぼすべてのプログラミングは僕がやってます。『佐倉ユウナの上京』からは、蜂八さんもいっしょにいじっています。ちなみにミタくんはデバッグがプロ級です(笑)。

ミタ バグをひたすら投げ返してました(笑)。

『佐倉ユウナの上京』制作秘話

『佐倉ユウナの上京・上』

▲聡桜大学2年生の主人公“咲間鷹司”は、ある春の日に後輩の“佐倉ユウナ”と再会。大学生と浪人生、立場が違ってしまったふたりの出会いから、物語は動き出す。本作は章立てが季節で区切られており、『上』にはノベルスフィアで公開された『春』と『夏』が収録されている。

──『佐倉ユウナの上京』は文字にこだわってますよね。作字もされていますし。

ミタ 同人ゲームをやっていて残念に思うのが、どんなゲームでも文字がMSゴシックとかで表示されていることです。だからフォント選びからこだわりました

──背景の紙の質感にもこだわっていたり、挿絵や音楽の入れかたにもインパクトがあって巧いな、と思います。

ミタ ありがとうございます! そういうデザインにしたつもりだったので、すごくうれしいです。

──そうした要素を入れる作業は、シナリオと並行して行っていたんですか?

ミタ じつは『佐倉ユウナの上京』のシナリオは、書いてから1年くらい経ってるんです。ですからシナリオを見ながら作業しましたが、普段はほぼ同時進行です。

すずめ ミタくんは自分を追い込まないと書けないタイプなんです(笑)。ただ書き始めるまでに設定を詰めたり、プロットを組み立てる作業をすごく密にやるので、そのときに絵も進めています。こうすると制作中の“勢い”が、自然とシナリオや絵に乗るんです。

ミタ 危険な勢いだけどね(笑)。

すずめ 僕らは飽きっぽいので、同じ作品を作り続けるのは苦手なんですよ。長期間作っているとモチベーションが下がりますから。その点アプリはいつ出しても自由なので、勢いをつけてやるのに向いてますね。

ミタ とはいえ、それだけだと自由過ぎるので、コミケ参加を通年の予定としてます。

──『佐倉ユウナの上京』のキャラクターたちは、みな等身大で描かれてますね。

すずめ 最近のキャラクターは、デフォルメされすぎてるというか、属性付けにこだわり過ぎてる感じがするんです。いわば記号化ですね。『佐倉ユウナの上京』はすごくリアルな話で、キャラクターの性格や人間関係が重視される作品だと感じてたので、なるべく属性に左右されないキャラクターにしたい、と思っていました。

ミタ 僕らはキャラクターデザインについて、事前にたっぷり打ち合わせるんです。とくに“女の子を可愛くなくするため”に(一同爆笑)。美少女っていう言葉の薄っぺらさに憤りを覚えていて、通り一辺倒のキャラクターにはしたくないんです。

──すずめさんが描かれたキャラクターが影響して、シナリオが変わった部分はあるんでしょうか。

すずめ 『佐倉ユウナの上京』は、既にシナリオができていたところに絵をつけたので、蜂八さんの中にあったキャラクターのイメージを、みんなで膨らまして作ったんです。

ミタ それにすずめくんのキャラクターは、シナリオにドンピシャのことが多いし。

すずめ 確かに、可愛くなくする以外のリテイクは、あまりないですね(笑)。

ミタ これからは「愛嬌をつける」と言おう(笑)。

すずめ キャラクターが属性に縛られて、ただの記号になってしまうのは愛がないな、と思います。ただ属性に頼らないぶん、キャラクターが認識されづらくはありますね。モブキャラっぽいと言うか。

ミタ でもそれが、超水道の“味”ですから。

すずめ 『佐倉ユウナの上京』でも、確か緒方が1回リテイクくらった程度ですよね。

蜂八 初期の緒方はガタイがよくてヒゲが生えてて、サブくんとキャラがかぶってたんですよ。彼をロン毛にしたような感じで(笑)。

すずめ あとはほぼドンピシャだと言われて、自分としてもどうしていいかわからなくなるほどでした(一同爆笑)。

──音楽制作はどのように進められたのでしょうか。

ミタ 『佐倉ユウナの上京』の音楽は、真島こころさんにお願いしました。レコーダーとグランドピアノを使って、即興で作曲されるんです。火がつくとものすごい勢いで曲を作る、アートな感じの方ですよ。

──発注はどのような形でされたのでしょう。

蜂八 発注というよりは、いっしょに考えることが多かったですね。僕と真島さんが、それぞれ自分で楽曲の雰囲気や範囲指定を済ませたシナリオを持ち寄るんです。たとえば「この章ならふたつまで、曲を入れたい箇所を考えてみましょう」という感じで。

──ずいぶんあっさりしてますね。

すずめ 真島さん自身、そういう作り方に期待してたようです。「こういう曲が欲しい」と丸投げする感じではないな、と。即興演奏なので、ストーリーの流れやキャラクターの心情を、強く汲んでくださいました。

蜂八 僕からの指定は、実際それほどなかったです。最初に打ち合わせをしたとき、あれこれ注文するより自由に進めてもらうほうがいい、と思いまして。あるとき、打ち合わせのチャット中に10分ほど真島さんが席を外されて、戻ってきたら「曲が出来ました」と(笑)。即興演奏家の底力を見た気がしました。

──それはすごいですね。

蜂八 だけど『秋』のあたりで、真島さんから「最近スランプなんです」と相談されました。マンネリ感というか、漠然とした不安感があるとのことでした。そのとき初めて『佐倉ユウナの上京』とは何ぞや、という根本の部分をお伝えしました(一同笑)。

──そういえば『佐倉ユウナの上京・上』は、かなりの難産でしたね。

ミタ App Storeからリジェクトされた件ですね。当時は悩みましたが、その中でいろいろな対策が見つけられたのは、大きな成果です。

すずめ インタラクティブな要素や、アドオンも追加したよね。

蜂八 でも『佐倉ユウナの上京・上』が出るまでの5ヵ月間は苦しかったですね。

すずめ 逆に『下』は、審査に入ってから10分くらいでOK出ました。

ミタ むしろ「スルッと行き過ぎだよ!」とは思いました(一同爆笑)。

──『佐倉ユウナの上京』のおもしろさは、デンシノベルだからこそ、だと思いますから、そこを曲げてまで出すのは厳しいですよね。

ミタ そうですね。ホント、そう思います。

『佐倉ユウナの上京・下』

▲転部試験へ向けて動き出す咲間鷹司と、聡桜合格のため邁進する佐倉ユウナ。時に近づき、時にすれ違う、自分の居場所を求めるふたりの結末やいかに。現時点での超水道最新作。『下』にはノベルスフィアで公開された『秋』と『冬』が収録されている。

ノベルスフィアとアプリの住み分け

──そういえば“ニコニコ自作フェス3”で『佐倉ユウナの上京』のノベルスフィア賞受賞、おめでとうございます。

ミタ ありがとうございます。リジェクト中のモチベーション維持、という意味で、ノベルスフィアという目標があったのはよかったです。

すずめ ノベルスフィアはそれほど厳しい審査はなく、ある程度のクオリティでバグがなければ出せるんです。

ミタ 以前から超水道はノベルスフィアで作品を出していたんですけど、それまでは、ノベルスフィアさんの方でiOS作品を移植して頂いていたんです。しかし自分たちできちんと責任を持って作りたかったので、iOS用の『佐倉ユウナの上京』から、初めて移植することになりました。正直ノベルスフィアは、App Storeに比べれば人は全然こないんですが、いま思えば本当にやってよかったです。

すずめ 作品を読んだ方が、感想をツイッターとかに書き込んでくれるのがうれしかったですね。アプリは出せないけど、自分たちはちゃんと作っているし、読んでくれる人たちもいる。その実感が大きなモチベーションになりました。

蜂八 それとノベルスフィアの反応を見ると、そもそもiOSを使える環境がない方も多いことがわかりました。ノベルスフィア版『佐倉ユウナの上京』で、超水道の存在を初めて知った方も多かったんです。

──ノベルスフィア経由で、アプリに触れる方もいらした、と。

ミタ 同人ノベルファンには、昔気質でスマホを遠ざける方がけっこういるんですよ。なのでディープな方にはノベルスフィア、そうでない方にはアプリ、という住み分けがおもしろかったです。コミケにくるお客さんも二層に分かれていて、いちばん多いのは若い女性ですが、つぎに多いのは30代後半から50代くらいの、ノベルゲームを最初期から見ている“おじさま”なので。

蜂八 『佐倉ユウナの上京』を書き始めた当時、超水道が最初にリリースした『森川空のルール』からもう数年が経っていることに気付いてしみじみしたんです。当時の読者はこれからどんどん大人になっていくんだなって。いままでのジュブナイル的な超水道作品を気に入ってくれた中高生たちも趣向が変わってくる。そんな彼らのそばに超水道の作品があれば嬉しいし、そのためには物語も年齢層を引き上げる必要があるなと。そう考えて『上京』では主人公を大学生にしました。

ミタ 僕には書けないタイプのお話なので、「それがいい」って感じでしたね。

──このあと年齢を重ねるに従って、対象年齢を上げるおつもりですか。

ミタ 僕は若い子を書きたいので、そんなに変わらないとは思うんですけど、ただ作品に登場する男性の描写は、昔より細かくなったと思います。そうした形で作品に影響は出るでしょうね。

蜂八 僕がいま書いているシナリオはまた大学生モノですが、今度は大学3、4年生の話です。明確に年齢を決めているのはそれと、つぎに予定している高校生主人公の話までですね。そのあとは自分の年齢に沿った話を書くと思いますし、逆に小学生や中学生の話も書くと思います。

次回作について

──そんな超水道の次回作は、どんな作品になりそうですか? ひょっとして公式ページに長らく放置されている……。

ミタ 『ありし日の空に花嫁を。』ですね。じつはあれが、いちばん初めに作ったオリジナル作品なんです。どんな話か、1時間もらえれば最後までしゃべれますが(一同爆笑)。

すずめ かなり規模が大きくなる予定なので、開発には準備が必要なんです。だからいまは無理のない規模の作品を全力で出そう、と夏コミに向けて動いてます。

ミタ 『ありし日の空に花嫁を。』は「いつか絶対作る」って、僕の中では決まっているんですよ。だからいつまでかかっても、僕自身はかまわわないんです(笑)。死ぬまでにはどうせ作るので。

すずめ あれは世に出さなきゃ終われないよね。それに一度公表したものなので、なんらかの形にして絶対出します。

──夏コミに出される作品は、アプリなんですか?

ミタ アプリをコミケの前に出して、夏コミで豪華版を頒布しよう、と考えています。お話はゴーストタウンが舞台で、主人公は女の子なんですけど、みんな幽霊で……(以後延々と構想が語られる)。

──な、なんだかすごそうですが。

すずめ ミタくんは話しながら物語を作るんです。漠然としたイメージをまとめるんじゃなくて、先に僕や蜂八さんに話すんです。そうしながら発想を広げて物語にするんですよ。

ミタ でまかせだけどね(一同笑)。

すずめ 蜂八さんは逆で、徹底的に準備してくるんですよ。キャラクターの名前とかも凝ってて。ミタくんはキャラクターの名前もないくらいなのに。

ミタ 全身武装した蜂八さんの横から、裸で走ってくるミタです(一同爆笑)。

蜂八 僕は基本的に聞きたがりで、人の話を聞いているのは楽しいんですが、ミタさんのように話しながらポンポン連想するタイプじゃないんです。積み重ねてきたものを削って肉付けして、地道に書き重ねていくので。

すずめ 僕から見ているとすごくおもしろいんですね。今度はどんな話がきけるんだろう、どんな話が準備されてくるんだろう、と。毎回作品を作る感覚が違うし、それにともなって自分の気持ちも変わるし、新鮮味があるので飽きないです。

──おもしろいですね。真逆の作りかたをするふたりがいて、お互いに刺激しあって、という。

ミタ いい感じに個性がバラけているのは幸運ですね。

蜂八 書きたい話も真逆ですね。僕は就職活動に奮闘する大学生の話を書いて、ひとまず大学生はひと区切りと思ってます。そのあとならファンタジー寄りの話が書きたくなるかもしれません。

ミタ そのころには僕が大学生の話を書きたくなっているかも(笑)。

サークルの将来と野望

──超水道は“大学生のアプリ制作サークル”というイメージが確立されていますが、年齢的にそろそろ一区切りですよね。今後はどういう形で続けていかれるおつもりですか。

ミタ たとえ大学を卒業しても、活動を辞めることは考えてないです。蜂八さんは就職後も参加してくださってますし。

──アプリの有料化は考えていないんでしょうか。

すずめ アプリは間口が広い土壌なので、そこにアピールするためにも“基本無料”の強みは手放したくないですね。

ミタ しばらくはノベルゲームのフォーマットを模索していくつもりです。『森川空のルール』の立ち絵のように、一枚絵をひたすらスキャンして色をつけるような“手のこんだシンプルさ”にはこだわりがありますから。

──スタイルを変えず、さらなる変化を目指すということですね。

ミタ はい。ただデンシノベルは『佐倉ユウナの上京』でかなり完成されたように思うので、つぎはもっと別な、絵本のようにしたいなと思ってます。

すずめ 『ボツネタ通りのキミとボク』の、ところどころコミックが出てくるフォーマットが評判よかったんですよ。『佐倉ユウナの上京』を出したあと、デンシノベルの進化について考えることが多いので、『ボツネタ通りのキミとボク』を参考に、新しいデンシノベルのありかたを考えています

『ボツネタ通りのキミとボク』

▲小説書きの高校生“ボク”が、謎の少女に導かれるように訪れた“ボツネタ通り”。その崩壊をくい止めるべく、彼は“ボツ子”とともにボツネタの世界をさまよう。“つくること”への切なる想いが込められた作品。幕間に挟まれる、コミック風のアイキャッチも人気。

ミタ ここで止まる気はないです。iOS端末の性能も上がっているので、まだまだいろんなことができると思ってます。

──たとえ大学を卒業しても、まだまだ超水道には期待していい、ということですね。

ミタ ええ、もちろんです!

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