【注目アプリレビュー】巨猿がビルを壊して走る『大脱走 HD』を遊んで無の境地に至る
2014-02-06 17:39 投稿
映画『大脱出』を観て、アプリ『大脱走 HD』を遊ぶ
先日、シルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーの本格初共演作『大脱出』を観てきた。
脱獄のプロとして、各地にある監獄の弱点を指摘する“セキュリティーコンサルタント”を生業とするスタローンは、何者かの罠によって“墓場”と呼ばれる難攻不落の監獄へ収監されてしまう。そこで出会うのが、謎多き囚人のシュワルツェネッガー。挨拶代わりに筋肉でスキンシップを交わしたふたりは意気投合し、墓場からの脱走を計画することになる。
脱走の準備を整えるためのサスペンスなやり取りもあるにはあるが、稀代のタフガイふたりがそんな生っちょろいことをいつまでもやっているわけがない。物語が後半へ進むにつれて頭脳よりも肉体の重要性が増し、クライマックスではもはや目的が“施設からの脱出”なのか“施設の破壊”なのかわからない域に。つまりは、ファンの期待をイチミリも裏切らない快作となっていた。
……ふつうであればココで『大脱出』に関連して“脱出ゲーム”のジャンルからアプリゲームを紹介するのが美しい流れな気もするが、映画『大脱出』を観た後ではとてもそんな気分にはなれない。散りばめられたヒントを便りに脱出の方法を探る知的な遊びなど、あまりにも生温いのだ。スタ&シュワであれば、閉じられたドアの横の壁をぶち抜いて「ミッションクリアーだ」と言いながら鼻先に銃口を向けてくれるはず。破壊こそ答えなのである。
そんなわけで、今回は『大脱出』と一文字違いで、同作を遥かに上回る破壊活動が楽しめるアクションゲーム『大脱走 HD』(iOS向けに配信中)を紹介することにした。
『大脱走 HD』は、秘密実験室を脱走した巨猿が自由を求めてビルをぶっ壊しながらまっすぐに駆けるという、シンプルかつ被害規模のでかいゲーム。操作に関しても“障害物(ビル)が近づいてきたら画面タップで攻撃をくり出して破壊”という、ひと昔前のタイミング重視なアクションゲームを彷彿とさせるシンプルさだ。
とにかくシンプルなゲームルールなので、もしダウンロード購入した際にはまず何も考えずに遊んでみることをオススメする。難易度は“EASY”、“MEDIUM”、“HARD”、“RECKLESS(無謀)”の4段階が用意されており、最初はEASYしか選ぶことができない。クリアーをすると次の難度が開放される仕組みだ。
難度EASYのプレイは間違いなく拍子抜けするだろう。画面右からスクロールしてくるビルを20個破壊したらクリアーで、タイミングもシビアではない。むしろミスするのが難しいくらいだ。アプリの価格が200円で、難度は4段階。単純に割り算をすれば、これで50円分を遊んだことになる。思わずスマホをぶん投げそうになるので、忍耐力が試されるところだ。
操作法を攻略するという攻略
スマホをぶん投げたい誘惑に耐えたら、つぎは難度“MEDIUM”に挑戦。そこでは、EASYの拍子抜けぶりはどこへやら、悪夢のようなタイミング地獄があなたを待ち受けている。
『大脱走 HD』の巨猿には2種類の破壊アクションが用意されており、ひとつは地面をすくうような軽いパンチで、もうひとつは両手を合わせて振りかぶる強力なパンチ(『ファイナルファイト』シリーズの“ハガー”がくり出すフィニッシュパンチを想像してほしい)となっている。難度EASYではふたつを使いわける必要はないが、MEDIUMでは新たな障害物として、強力なパンチでしか破壊できない“太いビル”が登場。ここに来て、いよいよゲーム性らしいゲーム性が生じるというわけだ。
とは言っても「2種類しかないなんならラクじゃない?」と思う人もいるだろう。筆者も最初はそう思っていた。しかし、実際にプレイをするとあることに気づく。「そもそも、ふたつの攻撃ってどうやって出し分けるんだ?」。
タッチする場所を変える、本体を上下に傾けてみる、細かく2回タッチしてみるなど色々試してみるも、攻撃の出かたが制御できている感はない。基本に立ち返ってメインメニューの“HOW TO PLAY”をチェックすると、イラストと記号で2種類の攻撃が説明されているだけ。なんて不親切で不可解な! と激しく憤りながら、ビルに激突する猿を何十回も見ているうちに、いよいよスマホをぶん投げたくなってしまった。
しかしお金を払った以上、せめて半額分は遊びたい。そんな不埒なモチベーションで悪戦苦闘するうち、筆者はついに攻撃の出し分け方法を見つけたのだ! 仕組みはまったくもってシンプルで、ビルと巨猿の距離によって自動で出し分けられるというもの。ビルと一定の距離が空いている状態でタッチをすると強力なパンチ、それ以外のタイミングはすべて弱いパンチが出て、さらにビルと超接近状態になるとショルダータックルを出せることもわかった。改めてHOW TO PLAYを見ると、しっかりソレが説明されていたのだが、簡素すぎてふつうは理解できないと思う。決して筆者の読解力が低いわけではない。異論は認める。
攻略の鍵は“月”、そして無の境地へ
これで一気に200円を取り返せる! と胸を弾ませた筆者だったが、現実はそんなに甘くなかった。さきほど強力なパンチが出る条件を“ビルと一定の距離が空いている状態でタッチ”と説明したが、この“一定の距離”がじつにクセモノなのである。画面内に一定の距離を示す目盛りがあるわけでもないし、巨猿の動作に変化があるわけでもない。つまり、それなりのスピードでスクロールしてくるビルと巨猿の距離を目視で測り「ここぞ!」のタイミングでタッチする必要があるのだ。しかも、“一定の距離”はかなりシビアに設定されているらしく、うまく強パンチをくり出せる確率は1/4くらいが限界。難度MEDIUMではビルを30個破壊する必要があり、そのうち太いビルは1/3程度の頻度で出現するので、とてもじゃないがクリアーなんてできない。
操作がわからないで失敗するのもストレスだが、操作がわかったうえで失敗するのはさらにストレスだ。延々と続く失敗に、いよいよ堪忍袋の緒が切れそうになる筆者だったが、ここで更なる発見をする。
「月だ……月を見ればいいんだ」
月だけにルナティックな精神状態になったわけではない。やや高速でスクロールする『大脱走 HD』では、背景もそれに合わせてズンズンと流れていくのだが、そんな中にあってひとつだけ位置がまったく変わらないものがあることに筆者は気付いたのだ。月である。
画面の中央やや上に凛と輝くこの月が、ビルとの一定距離を測るうえでこれ以上ない目安となるのだ。具体的に言うと、月の右下部分がビルと重なる瞬間にタッチをすれば、ほぼ確実に強力なパンチがくり出せる。走る巨猿の姿など見る必要は一切ない。
主人公(巨猿)には目もくれず、神経を研ぎすまして“月とビル”だけを見てタッチをくり返すプレイ。少しでも雑念(主人公の姿)にとらわれると、たちまち失敗してしまう。なんという緊張感! これはもはや瞑想の世界だ。目指すは無の境地である。巨猿の破壊活動を楽しんでいたはずが、気が付くと月を眺めていた……なんとも詩的な話ではないか。
何かと息苦しいこの現代社会。そんな生活に疲れたときは『大脱走 HD』を遊んでみてはいかがだろうか。破壊(難度EASY)を経て、無の境地(難度MEDIUM以上)に至るという経験は、自分自身を見つめ直すいい機会になるかもしれない。筆者はHARDで挫折中なので、まだまだ雑念を捨てきれていないようである。
あと余談だが、引きちぎった鎖をぶら下げたまま自由を求めて破壊活動に勤しむ、という『大脱走 HD』の巨猿の設定&外見は『キ○グコング2』にソックリ。というか、ギリギリでアウトな感じがしないでもない。しかし、体毛が白いだけに「身の潔白」を訴えている可能性も捨てきれない。そんなことに思いを巡らせて遊ぶのも一興だろう。
(キモ次郎)
大脱走 HD
- メーカー
- GOLCONDA GAMES
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 200円[税込]
- 対応機種
- iOS 5.1 以降。 iPad 対応。
- コピーライト
- (C)GOLCONDA GAMES
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