スクエニ安藤ブログ“スマゲ★革命 シーズン2 SP対談(第1回)「『チェンクロ』の生みの親に問う 真のゲーム創りとは?」

2014-01-23 17:00 投稿

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2013年に大ヒットを記録したセガの『チェインクロニクル』。個性的なキャラクターたちが織りなす重厚な物語や、戦略性の高いストラテジーバトルなど、従来までのスマートフォンゲームとは一線を画すゲームデザインが、多くの人たちを魅了し続けている。今回、本作の生みの親である松永純ディレクター新小田裕二プロデューサー安藤武博氏との対談が実現。

『チェインクロニクル』はどのように生まれたのか? そのヒットの秘訣とは? 全4回にわたって、この濃密な対談の模様を余すことなくお届けする。その初回となる今回は、ディレクター松永氏の凄まじいこだわりが垣間見える対談内容になっている。乞うご期待!

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▲(写真左から)新小田裕二氏、安藤武博氏、松永純氏。

リリース直後から続いた怒涛の3カ月

安藤 『チェインクロニクル(以下、チェンクロ)』が出てから、もう半年ぐらい経ちましたね。

松永 リリースが8月ですから、ちょうどそれくらいでしょうか。

安藤 「まだ半年」って感じもしますね。僕がガリガリやり込んでいるからなのか、1年くらい経っているような気でいますよ。

松永 ありがとうございます! そうですね、作っている側としても半年でもかなり密度濃かったです。

新小田 とくにリリース後の3ヶ月間は怒涛でした(笑)。

松永 そうですね。当時はこのゲームをちゃんと把握しているのが開発チームだけだったので、少ない人数で運営しながら、同時に次のエリアの調整や、新しいキャラクターやストーリーの用意をしたりしていて。怒涛すぎて、当時のことはもうハッキリとは思い出せないことも……。

新小田 途中から、運営元のセガネットワークスさんが運営に入ってくれるようになって、やっと息ができるようになったんですが、それでもまだ半年なのかって感じですね。

安藤 遊ぶ側、作る側ともに「まだ半年なのか……」と思っているということは、作り手側が想像していたよりも早いペースでゲームが遊び込まれていると思います。おふたりの中で、その実感はありますか? 僕たちは、何をリリースするにしても半年間は遊び尽くされても大丈夫なように作りこんでからリリースするんですが、毎回2~3週間で遊び尽くされてしまい、てんやわんやするんですけど(笑)。

新小田 その実感はたしかにありますね。自分たちが想定していたスピードの3倍くらいのペースでしょうか?

安藤 でも、遊び尽くされるのが早いということは、それだけ『チェンクロ』にかけるユーザーさんの熱量がスゴイってことです。僕も遊んでいて、ほぼほぼカンスト状態になりましたし。

松永  本当に、非常に濃く遊んでいただけているなぁというのは感じますね。熱量をすごく感じています。ありがたいです。

安藤 『チェンクロ』のユーザーさんたちは、古くはネットワークゲームの時代のユーザーさんたちのように「誰よりも早く全要素を遊び尽くしたい!」と思ってプレイをしているんですよ。

松永 そうですね、ハイペースでカンストまで行ってしまうユーザーさんの数が予想以上に多くて驚かされました。『チェンクロ』をリリースする前は、同じ進度のユーザーさんどうしでコミュニティを作って、いろいろ盛り上がって欲しいなぁと思って開発をしていたのですが、まさかカンストしたユーザーさんたちでコミュニティができるとは。ふつう、そこまで遊んでいただけるユーザーさんってごく少数だと思っていたので。

新小田 ユーザーさんの進度に関して言えば、「そこまでコアな人は、そんなにいないはず。大多数の人が、中盤くらいの内容でコミュニケーションを取りはじめ、そこから序盤、終盤の 内容を扱うコミュニティが増えていくだろう」と想像していました。ですが、実際にはコアな人たちが作るコミュニティのほうが早く生まれて、さらにはそれが 『チェンクロ』全体のコミュニケーションを引っ張っています。

安藤 そのほかにも予想外だったことはありましたか?

新小田 メインストーリーを最後まで遊び尽くすだけでなく、バトルの究極までいって「バトルではもう脳汁出ない」と言っている人がいたのにはビックリしました。『チェンクロ』はキャラクターとストーリーをメインに据えているので、コンテンツを遊び尽くすとしたら、そのどちらかを突き詰めていくものだと思っていましたから。最近では、ユーザーさんそれぞれが独自の解釈で『チェンクロ』を遊び尽くそうとしているため、その全部に対して全方位で対応していかなければならないのは苦しいですね(笑)。

松永さんは、なんでもお見通し!?

安藤 『チェンクロ』のいいところというのは、シンプルなゲームシステムにあると僕は思っています。完成度の高いRTS(※1)なので、何を残して、何を変えるかといったさじ加減が、非常に難しいと思います。現時点で、松永さんの中に進化した『チェンクロ』の遊びのイメージがあれば、ぜひ教えてください。

(※1)RTS:リアルタイムストラテジーの略。

松永 『チェンクロ』は、必殺技にアクション性があるRTSにしてあるので、そこには無限の拡張性があると思っています。アクション要素には、“あと0.5秒待って撃ったほうが強い!”など、一瞬の動きひとつひとつに固有のワビサビがあります。そうした”ワビサビ”を感じるポイントに変化を加えることで、ゲームの拡張が可能になるんです。アーケードゲームに携わっていたころから、「アクション性がプレイの楽しさを無限に広げていく」ということを感じていたので、この点はこれからも伸ばしていきたいですね。

安藤 伸ばせる要素をしっかり残しておいたということは、リリース後の展開もあらかじめ考えられているということですね。

松永 開発初期からリリース後にどのような展開をしていくかについては強く意識していました展開の要となるのは、つまるところ、キャラクターをいかにして立てていくかです。今回の場合はとくに、”キャラクター数で勝負するRPG”という作りなので、どのようにしてキャラクターを生かし、主張させるのかを突き詰めていけば、いままでにないタイプのゲームでも、ちゃんとした展開ができるだろうと。

安藤 シナリオ先行ではなく、キャラクター先行で作られていたんですね。

松永 はい。僕の中で、「キャラクターという土台が確立された上に、しっかりしたシナリオとバトルシステムが備われば、総合力でも劣らないRPGがスマホでも作れる」という考えがあったので。その結果、さまざまな遊ばれ方がなされるというのは想像していましたし、遊び尽くされたあとにどのような要望がくるのかというのも、ある程度は想像できていました。追加要素を用意していくのが、死ぬほど大変なことになるのも想定の範囲内です(笑)。

安藤 ディレクターの松永さんは確信犯的にいろいろ進めていたみたいですが、新小田さんはプロデューサーとしてこの事実は知っていましたか?(笑)

新小田 ぜんぜん見抜けませんでしたね。本当に松永は底が知れない。ていうかこんな大変だって知ってたら止めてました(笑)。

安藤 (笑)。「底が知れない」ということは、なんだかほかにもエピソードがありそうな口振りですね。

新小田 開発のときに「なるほど」と思ったのは、キャラの育成要素についてですね。さっき、カンストの話がありましたが、ここまで速くなくとも、わりとカンストがすぐに起きることは想定していたんです。なのでもっと複雑なカスタマイズ要素を入れてほしいという要望があったりしたんです。でも上級者向けにカスタマイズ要素を構築すれば、初級者がついていけなくなるなどの弊害も出てきますよね? でも、松永は開発前からこの問題もしっかりと結論を出して、ゲームデザインをしているんですよ。あえて複雑なことをしないで寝かしておいて、来るべき瞬間に遊びかたを拡張させようとしてるんです。

松永 それに関しては、“入り口は広く、先端は深く”という思想のもとにゲームを設計しているだけです。これは、たくさんのユーザーさんに遊んでいただく機会のあるスマホでは絶対だと思っています。初期のうちは、たくさんの新規ユーザーさんが遊んでくれるので、全方位に向けたサービスが求められます。

なので、この要素を足したら、いまこのときダウンロードしたお客様が戸惑わないかを常に考えるようにしています。ですが、1年や2年も経てば、そこに残っているのはずっと遊んでくれているコアなユーザーさんたちなのでそうなったら内輪向けのウケを狙ったイベントであったり、めっちゃ面白いけどコアで複雑なシステムなんかを実装していったりしたいなって思っているんです。

安藤 もしかして、1年くらい先のデザインまで既にイメージして開発されているんですか?

松永 これくらいの時期にこれを導入しようというカレンダーは、もう出来ています。

安藤 スゴイですね。年単位のスケジューリングというのは、松永さんがアーケードゲーム畑で、長期に渡った運営をしてきた経験で身に付けたものなんですか?

松永 そうですね。まとまった要素を年単位でどうするかというのは、その経験が大きいと思います。もちろんまだ半年なので、今は単なる絵に描いた餅ですが。でも今のチームには、いっしょにアーケードゲームの運営をしてきたスタッフが何人もいるので、きっと面白いアップデートをしていけると思っています

安藤 セガさんは、運営型のカードゲームをたくさん出されてますよね? ということは、松永さんのチームだけでなく、セガさんの中にはそうしたノウハウを溜め込んだ人たちがたくさんいる……。正直いって羨ましい(笑)。でもまさか、アーケードゲームのノウハウがスマートフォンゲーム市場で活きてくるとは。新小田さんは、想像できていましたか?

新小田 僕はそこまで想像していませんでしたが、松永はハッキリと想像していたと思いますよ。

松永 想像していたというか、活かせると実感できたのでスマホを始めたというのはありますね。すごく昔、『戦国大戦』シリーズのソーシャルゲーム『戦国大戦G』(※2)というものを作る機会があって、それを作っているときに「カードゲームの基本となるところはアーケードと同じだな」というのは感じました。ただ、スマートフォンが身近にあるツールということもあって、アーケードゲームの比にならないくらい、ユーザーさんがゲームを進めるスピードが早いんですよ。その差を予想できていなかったため、『戦国大戦G』はすこし奥行が足りなくなってしまったんですけど。

(※2)『戦国大戦G』:『戦国大戦』の世界観を踏襲して作られた、GREE向けソーシャルゲーム。

新小田 あと、アーケードの場合、店舗の営業時間もありますから。スマホゲームと違って、ユーザーさんは夜寝ていますし(笑)。

安藤 たしかに(笑)。それにしても、出自の違いから生まれる感覚の差というものは面白いですね。

松永 自分たちがこれまで関わってきたフィールドとは異なるゲーム作りを『戦国大戦G』で経験できたおかげで、「ここはアーケードのノウハウが活かせるポイント、ここはソーシャルゲームについて学ばなくてはならないポイント」とハッキリと切り分けて勉強することができるようになりました。それと、逆に言うとソーシャルゲームのここは変えても大丈夫、もっと面白くできる、というのも分かることができました。それが今のチェンクロに活きていると思います。

ターゲットはどこを?

安藤 ゲームセンターによく通う人とスマートフォンゲームをよく遊ぶ人では、ターゲット層が大きく異なると思うのですが、『チェンクロ』は、どこをターゲットに見据えて開発されたのでしょうか?

松永 アーケードの頃は、コアなユーザーさんに濃い体験をしてもらいたい”と思っていましたが、それとは異なり、スマホではコアじゃないたくさんの人にも濃い体験をしてもらえるように”することは意識しています。ただ、個人的には、真のターゲットは明確にいるんです安藤さんとは、過去にTRPG(※3)の話をしたことがありましたよね?

(※3)TRPG:テーブルトークRPGの略。

安藤 しましたね。松永さんは、いまでも1年に1度はTRPGのイベントに出席されているとおっしゃってましたよね。

松永 はい(笑)。僕のRPG好きはそこからきているのですが、TPRGって準備とプレイにめちゃくちゃ時間かかるじゃないですか? 学生の頃は、濃い体験として全力で楽しんでいたのですが、大人になると時間が足りなくてなかなかプレイできなくなってしまいます。コンシューマーの濃い大作RPGも同じで、ゆっくり時間を確保しないと没入してプレイができません。僕はそれが理不尽だと思うんですよ! 現実では体験できない、濃い体験ができるゲームという最高のコンテンツを、ただ歳をとっただけで出来なくなるとか、そんなアホな話があるかと!

安藤 僕も学生の頃は、昼夜問わずTRPGをプレイしてきた経験があるので、時間がないことによって濃いゲーム体験ができない不満はとてもよくわかります。

松永 そんなことを思っていたら、ソーシャルゲームという、“短時間で濃いゲーム体験をしているような気になれる”新ジャンルが出てきました。ただ、これはあくまで“ゲーム体験をしている気がする”だけで、僕らが学生の頃に体験したような学校に行って友達に話せるゲーム体験”はなかったんです。刺激はきちんとあるんですけど、体験としてはちょっと違うなと。

安藤 そう思われていながら、なぜスマホでゲームを作ろうと思われたんですか?

松永 それでも、スマホが時間の問題を解決する突破口になってくれると思ったからです。スマホ特有の手軽にプレイできる利点を活かして、”短い時間で本当に濃い体験ができるゲーム”を作ってやろうと思って開発したのが『チェンクロ』になります。なので、『チェンクロ』の真のターゲットは、僕と同じように濃い体験はしたいけれど、時間がなく、でもやっぱりソーシャルゲームでは物足りない大人のゲーマーだったんです。

(第2回へ続く)

チェインクロニクル

ジャンル
RPG
メーカー
セガ
配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS 5.0以降、Android 2.3.3以上

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