【E3】スクエニ本気RPG『BLOODMASQUE(ブラッドマスク)』特別インタビュー

2013-06-15 00:00 投稿

●若手クリエイターたちの成長を見据えて

 

さきほどのプレイレポート記事に続いて、この記事では『BLOODMASQUE(ブラッドマスク)』のプロデューサー市村龍太郎氏(以下、市村)とアシスタントプロデューサー藤永健生氏(以下、藤永)に行ったインタビューの模様をお届けする。本作の裏に秘められたストーリーや、コンシューマーゲームの最前線で活躍されている両氏がどうしてスマートフォンでゲームを製作しようと感じたのか、率直な意見を語ってくれた。

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▲今回インタビューに応じてくれた、市村氏(写真左)と藤永氏(写真右)。

 

―そもそもコンシューマーゲームに注力してきたお二人が、どうしてスマートフォンでRPGを作ろうと思われたのですか?

市村 そう思われますよね(笑)。理由はいくつかあるのですが、その中でも一番大きいのが 『Infinity Blade』との出会いですね。スマホをバカにしていたわけではないんですが、こんなゲームを作れるのかと衝撃を受けました。あとですね、『Infinity Blade』は、昔私が作っていた『ドラゴンクエストソード』のゲーム性に近いものがあり、純粋にジェラシーも芽生えたというのもありまして(笑)。これ、うちがスマホで本気で作ったらどんな作品ができるんだろうと挑戦してみたいなと感じるようになりました。どのクリエイターも共通してハイクオリティーなゲームを作りたがっていると思うんです。僕はいままでコンシューマーゲームという場所で戦ってきましたが、一度場所を変えて究極を求めようとした結果、スマートフォンに辿りつきました。

―理由が複数あるとおっしゃられていましたが、そのほかにはどんな理由が挙げられるのでしょうか?

市村 スマートフォンゲームは手軽にプレイしてもらえるという点も理由のひとつとして挙げられますね。今までコンシューマーの現場で開発を経験してきて最近ひしひしと感じることがあって。自分が作ったゲームをまわりの人に遊んでもらいたいときに、「ハードを持ってないんですよ」なんてパターンが多いんですよ!(笑)。開発のモチベーションを保つ上でほかの人に遊んでもらえることは重要で、今作は内製で作ってますけど、「友達に見せたい」とか「自慢したい」、「もてたい」とか感情がモチベーションにつながるというか(笑)。やってもらえる環境があったほうが開発者にとって絶対にいいんですよ。そういうことを考えた時に挑戦する価値があるかなと考えました。

開発者は作品をリリースしてはじめて経験値が上がっていくと思っています。お客様の評価をもらって、初めて成長できる。このサイクルを早くしていかないと考えています。いままでのように4、5年かけるのであれば、スマホで毎年のように新しいものをガンガン作っていった方がセンスのいい開発者が育つのではないか、という思いもありますね。

―Unreal Engineを使って開発されていますが、これは『Infinity Blade』を意識してのことなんですか?

市村 意識はしてましたね。それにUnreal Engineを研究していたチームがいまして、『ラストレムナント』を手掛けたチームなんですが、ここが今作の開発の母体になってるんですよ。Unrial Engineのバージョンもあがってきたし、それじゃこれでやってみようと。

―街並みが半端なく綺麗ですよね……!

市村 ありがとうございます。(E3のスクウェア・エニックスブースの)メガシアターで『BLOODMASQUE(ブラッドマスク)』のプロモーションムービーを流してるんですけど、ちゃんと”観れる”んですよ。『ファイナルファンタジーXV』や『キングダムハーツ3』の映像も流れてる場所ですからね、最初はうーんって感じだったんですが、出してみたら意外といけてて(笑)。戦おうと思えば戦えるのかなあと。

―App読者の意見でもプロモーションムービーがかっこいいといった声が目立ちましたよ

市村 よかった……(笑)。やっぱりうちの会社のウリなんですよね。グラフィックはインパクトとして大きいので、スクエニが本気でっていうんだったら、そこは保障しないといけないとは考えていました。iPhoneやiPadでここまでできるのか? というくらい追及しています。Appleさんも驚愕してたんで(笑)。街並みは19世紀末のパリを再現していて、ただちょっとifの世界なんで、エッフェル塔ではなくツインタワーになっています。ヴァンパイアタワーという名で物語上重要なシンボルとなっています。

藤永 今作はグラフィックだけでなく、UIもスマートフォン用に完全にチューニングしていて、どこに情報があるのかなど把握しやすいように計算しているので、かなり快適にプレイできると思います。それに、モバイルであればサクサクゲームをしたいという願望が根底にあると思うので、一回クリアーしたミッションならいつでもプレイできる、というショートカット仕様も入れてはいます。ですが……モバイルだからといって街の探索を完全にカットしてしまうのはスクエニ的にありえないなと思いました(笑)。グラフィックと世界観を感じるために必要であると、フィールドもきちんといれこんであります。

―ストーリーはどのようにして作られているのですか?

市村 じつは、かなり深い設定まで作り込んでいます。本作を作るにあたって、我々は“バイブル(聖書)”というものを作りました。それは、“ヴァンパイアが地球上にいつ登場し”“どのように支配を進めていったのか?” “どういう歴史をたどってきたのか?” といったことを考慮しながら、ヴァンパイアが突如現れた紀元1000年から未来の3000年までの歴史をすべて作りました。そうして、実際に起こった歴史上の出来事をヴァンパイアが存在したときに置き換えて、史実を作り変えていきました。『BLOODMASQUE』のお話は、19世紀パリに焦点を当てて切り取ったものをゲームにしているので、今後はバイブル上で作り上げたそのほかの時代の事象を切り取って、小説化や映像化などの新たな展開もできる下地を作ったという感じです。

人間はこの世界では家畜状態で、完全に支配されちゃってるんですね。この世界はおかしいってことで立ち上がるのはヴァンパイアハンターたちなんです。でも、ヴァンパイアハンターたちは不遇な人生を送ってるわけです。人間からは恐れられ、ヴァンパイアからは煙たがられ……。これを打破するために、ヴァンパイアをせん滅して、世界を人間のものにしないといけないよね、という話が骨子になります。

さらに深いところまでお話させていただくと、ヴァンパイアハンターの本拠地はアメリカのザイオンというところで、ここは実在するんですよ。ザイオンを本拠地にして、ルーマニアにいるヴァンパイアの親玉を倒すために、まずはフランスに上陸した、というところが物語のスタートになります。

―ヴァンパイアハンターは生まれながらにして孤児という設定ですが、そこらへんもバックボーンがあるんですか?

市村 そこにも深い設定がありまして。いちばん最初に生まれたヴァンパイアハンターの子孫に、アレキサンダーという子がいるんですが、こいつが中心となってハンターギル(ハンターの集団)を作ってきたんです。ヴァンパイアにはヒエラルキーがあって、頂点に立つのがピュアヴァンパイア―と呼ばれる者たち。ヴァンパイアハンターは人間とヴァンパイアのハーフであるとお話させていただきましたが、彼の父親(ヴァンパイア)は何者なのか? という点もストーリーの鍵を握るファクターになっています。

―主人公はやっぱりピュアの子供だったりするんですよね?(笑)

市村 え……(笑)。それはお楽しみで(笑)。

―混血のヴァンパイアハンターは生まれながらにして、本当はヴァンパイアより能力値が高かったりするんですか?

藤永 逆ですね(笑)。人間が1だとしたら、ヴァンパイアハンターは5、ヴァンパイアは10倍上位くらいの差があると思います。その能力値があるので、バトルのギルドとしては3人ひと組になっているんですよ。

―なるほど! スマホでここまで考えられてるゲームってあったかなって感じですが(笑)。

市村 ふつう考えられないと思いますよ(笑)。アプリで世界観をきちんと感じてもらって、小説や映像などにできたらいいですし、いざ次世代機で勝負しようかということも考えやすいかなと。RPGって世界観を伝えるのがいちばん時間がかかるんですよ。とくに僕らのような会社は、そこは相当凝りますので、最初に下地作りをきっちりやってます。

―実際にスマートフォンでゲームを作られてみて、スマートフォンに未来を感じますか?

市村 感じますね。タッチインターフェースがダイレクトなので、ユーザーを選ばないという点が大きいです。コンシューマーのコントローラーだと、ボタンの多さから難しい印象を受けて、ある意味ユーザーを選んじゃっている部分はあると思います。ですが、スマートフォンならば究極赤ん坊でもプレイをすることができますよね。今後はなんでもスマートフォンやタブレット端末が中心となって話が進んでいくと思うので、ユーザーの目が肥えたとき、ここで僕らが勝負できるような体制を作らなきゃいけないと考えるようになりました。

 

―カメラを使ったり、血液を分配するといったような楽しみを共有することは、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人(以下、ドラクエⅨ)』の経験からの発想だったりするんですか?

市村 それはありますね。おっしゃるとおり、『ドラクエⅨ』のすれ違い通信はDSに入ってからの新機能でした。ハードの機能を使って何をするか? 今回の写真を取り込むなどのアプローチには、そうした過去の経験が活かされているのかなとは思います。

―開発期間はどれくらいかかりましたか?

市村 もともとはコンシューマーの企画としてはじまっているので、バイブルの作成からさかのぼると約1年くらいですね。

―本作の肝と言っても過言ではない”顔写真を取り込む”といったシステムをどうして導入しようとお考えになられたのですか?

市村 キャラクターユニットは作品にオリジナリティを持たせる上で重要になると考えていて。僕がiPhone、iPad向けのゲームを作るにあたって、何かユニークな要素を取り入れたいとつねづね考えてきました。そうした中で、「顔写真をはめ込む事はできるのか?」と思い立ったことがきっかけですね。そのほかの理由としては、ワールドワ イドで販売を行うにあたって、いろいろな国の方やさまざまな人種の方に当てはまるキャラクターをあらかじめ作るよりも、顔写真をそのまま取り込んだほうが早いんじゃないか? と思ったことも理由の一つですね。このゲームくらいきちんと生成できるとなじむんじゃないかなと。

―本作の想定プレイ時間はどれくらいですか?

藤永 現段階でひととおりクリア―をしたところ約10時間ぐらいです。しかし、今後も強力なヴァンパイアを登場させる予定ですのでクリアー後も満足していただけるような施策は既に考えています。

-リリース後の価格はいくらぐらいになるのでしょうか?

市村 現時点で価格は未定です。ですが、有料ダウンロードにさせていただこうとは考えています。あらかじめお話させていただきたいのは、スクエニのアプリは高いといわれてるのも知ってますし(笑)、有料ダウンロードにしても高い値段設定をするつもりは一切ございません。まず遊んでいただくことが最優先ですから。

―どうして買い切りのかたちをとられたのですか?

市村 運営系のゲームにするほどのリソースをかけられなかったというのはあります。また、海外のゲームのほとんどが買い切りの方式になっているので、ワールドワイドに遊んでいただきたいという想いから、それらに習うかたちで買い切りを採用しています。

―最後に『BLOODMASQUE』のAndroid版リリースは予定されていますか?

市村 検討はしています。ですが、最初の時点で最高峰のものを作りたいと思っていたことがあることと、『BLOODMASQUE』を開発する際に使用した”Unreal Engine”がAndroid OSに対して苦手意識があることから、iOSに特化させて開発を行いました。iPhone、iPadで究極のものを作り上げることが重要でしたので。

―ありがとうございます! 配信を楽しみにしております!

語弊を恐れず言うならば、クオリティーの高さよりも「モバイルに的したゲームを作る」という風潮が強い国内のスマートフォンゲーム業界で、敢えてAAA(トリプルエー)作品で挑戦するおふたり。有料アプリで重厚なゲームと、ある意味時代と逆行するこのタイトルがヒットすれば業界に一石を投じるのは確実。ファミ通Appは『BLOODMASQUE』を追っかけて行きますのでお楽しみに!

 

 

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