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安藤ブログ“スマゲ★革命 シーズン2” 第五回 「ミリオンアーサーから見えた韓国市場の話」

2013-05-23 12:45 投稿

●第五回 「ミリオンアーサーから見えた韓国市場の話」

今回は韓国のスマゲ市場に関して思うことを書きます。

『拡散性ミリオンアーサー(以下、ミリオンアーサー)』。(現地では『밀리언아서』と書きます)が好調です。

※韓国版公式サイトはこちら

昨年の12月にリリースをしてから常に売り上げランキングのTOP3くらいにはいます。アプリカ社がサービスしている、ファミ通Appでもおなじみのランキング検索データベース「AppDB」で観ると今月は平均2.3位のところにいますね。(2013年5月21日現在)

本題に行くその前に書くこともあります。

一方で日本版『ミリオンアーサー』の運営は現在、プレイヤーの皆様から厳しいご意見をいただく状況が続いています。また2013年5月16日には『ギャラクシーダンジョン』のサービス終了を発表させていただきました。いずれも私のプロデュースおよび運営能力が低いために招いた結果です。お客様におかれましてはご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。『ミリオンアーサー』については今後に向けて、体制の変更や運営の見直しなど根本から見直しをかけている最中です。ある程度の目処がつきましたので、後はつくるだけとなっており、プロデューサーの岩野をはじめ、現場が全力で対処中です。詳細は近日中に、いまやミリオンアーサーのご意見番である声優の明坂聡美さん(不満爆発寸前とのこと……)を呼んで、岩野と私からネットTVでお話する予定です。番組の予定が決まりましたら『ミリオンアーサー』アプリ本体の「お知らせ」で告知する予定です。

さて、話は戻って韓国市場です。韓国版『ミリオンアーサー』に関してはすでに売り上げが日本を上回る規模になっています。上記の日本版の運営状況を差し引いても、かなり存在感のあるマーケットになっています。韓国版は我々ではなく現地法人であるActoz社が運営を担当しており、この点でも運営力の違いを見せ付けられる格好になりました。まさにネットワークゲーム先進国である韓国の本領発揮といったところですが、今回の海外展開の大きなポイントとしては「すべてを現地法人に任せる」という方針を最初から決めていました。結果として、これがとてもうまくいきました。(その反面、自分の運営スキルを猛省)

10年前、ネトゲMMOが隆盛を極め始めたころ、アジア市場の様子を現地に行って確かめてみて、「細かいことは日本人にはわからんなー」と痛感した体験が大きかったように思います。逆を考えるとその難しさは想像しやすいかもしれません。韓国やアメリカのタイトルを、韓国人、アメリカ人の人たちが日本で展開するときに、やはり現地に強力なパートナーが必要になって来ます。たとえば日本人が日本ならではの「まとめサイト」で情報を得て、独特のネットスラングを交えながらゲームの話に一喜一憂している感覚は、日本人以外には厳密に理解できないのではないでしょうか。このように、現地の嗜好や、お客様に突き刺さるマーケティング手法などの細かいところは、はっきり言って「わからない」。なので、わかる人が思い切りやる。任せた人はああだこうだ言わない。これが幸運にも良いパートナーとめぐり合うことによって実現しました。

このやり方は台湾でも成果があがっており、台湾版のミリオンアーサーもiOSが10位、Androidが5位以内にいます。同じく現地法人が現地のやり方で運営マーケティングを行っています。韓国に関しては韓国オリジナルのカードキャラクターも沢山登場しており、それぞれ現地の有名キャラクターデザイナーにActozが作画を依頼しているので日本人の私が見ても大変クオリティが高いです。ここ数年アジアのキャラクターデザインはかなり進化しており、去年リリースした『星葬ドラグニル』のメインキャラクターデザインがユ・ジェテさん。コミック版の『ケイオスリングス』の作画もパク・ジンジュンさんでお二人とも韓国の方ですが、色気のある良い絵を描く作家さんです。韓国版で良いクオリティの騎士カードは今後日本版にも登場させようと考えています。

 

 

実は私が一番可能性を感じたのは市場のスケールのことではありません。

なんと、現地に「この絵はミリオンアーサーっぽい・ぽくない。」などといった、コンテンツの内容に深く根ざした“目利き”が存在したのです。つまりラノベっぽさやアニメっぽさ、日本人発の世界観・デザインなどについて韓国台湾の人たちは日本人と同じような解釈や理解をもっているのです。

韓国展開の前にActoz社がつくった現地のファンコミュニティでは「日本でスクウェア・エニックスが展開している、そのままの内容で上陸させてほしい」という意見が多数を占めました。つまり、我々が洋画の吹き替えで、「イメージとかけ離れた芸能人の方にはやってほしくないな。」とか、「洋楽に変な邦題をつけないで欲しいな。」といった類の事が日本と韓国で行われているのです。

これは下手に現地の文化を分かった気になって、中途半端にローカライズや現地対応をするくらいならば、まずは自分たちが良いと思ったものを、自国の人たちに対して、のびのびとつくっても良い。という可能性を示していると思います。アメリカだからダークファンタジーで……塗りはマットな感じで……キャラはマッチョで……だけではなく、まずは日本人ならではのものを日本人に向けてつくれば、それが海を越えて日本発のオリジナリティとして「良いものは良い」と受け入れられる文化圏もあるのです。ここ何年か専用ゲーム機のものづくりが海外ディベロッパーの超大作中心になって、日本人がハリウッドのようなモノづくりに挑むというケースが多々ありました。莫大な製作費用と期間がかかるチャレンジの多くが失敗に終わりました。

ゲームの製作規模は置いておいて、世界観や内容を(言い方が乱暴ですが)媚びる必要は全くない。正直言って『ミリオンアーサー』は元々、日本人が日本人のためにつくった物です。立案時にプロデューサーの岩野と、世界展開しやすいスマホだから、全世界で通用するものをつくれ。という風潮はあるが、それで中身が薄まるくらいならば、日本人にしか通用しないけど俺たちが熱狂できる、濃いものをまずつくろうと立ち上げたものです。こういったマーケットインではなくコンテンツインのやりかたが、結果として複数国のマーケットで受け入れられるというのは日本人クリエイターにとって朗報なのではないかと思うのです。

決してローカライズ自体を否定しているわけではありません。宗教や人種問題など絶対にケアしなければならない要素も多くありますが、おおざっぱにいって現地の方々が嫌な思いをされるかどうか。ここだけクリアーすればのびのびとつくればよいと思うのです。個人的な推測ですが、いまや海外でも大人気の『ファイナルファンタジー』シリーズも、最初の最初は日本人のため、身近なゲームファンに向けてつくられたのではないでしょうか。

もちろん今回のミリオンアーサーの件は、韓国台湾での話ですので、北米欧州が中心のコンソールゲーム機になると話は違ってくると思います。『CALL OF DUTY』(※1)『TOMB RAIDER』(※2)を遊ぶと、その余りの出来栄えの良さに「俺もいつかこういうゲームが作ってみたいな」と思いますが、一方でこれを組織的に日本だけでつくることの難しさも感じます。文化的な土壌やプロダクション、産業システムの差もあるとは思います。スクエニにはそこに真っ向から挑んでいる優秀なクリエイターも多数います。一方で自分のつくりたいものがまず日本中心のターゲットと内容の場合、そのまま通用する可能性がアジア圏にあるというのは、JRPGをはじめとしたJの要素が強いクリエイターにとっては新たな光です。ミリオンアーサー以降、韓国製のミリオンアーサー類似タイトルも早速多数出ていますが、日本のように、柳の下にどじょうはいないようです。これはとても健全な事だと思いますので、今後もどんどん個性的なゲームが出るといいですね。それでは!

次回につづく

(※1):戦争をテーマにしたFPS(ファーストパーソン・シューティング)シリーズ。
(※2):1996年にシリーズ1作目が発売されたアクションアドベンチャーゲーム。アンジェリーナ・ジョリー主演で実写映画化もされている。

 

【まとめ】スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”

 

■著者紹介

安藤武博(あんどう たけひろ)
スクウェア・エニックス 特モバイル二部 ジェネラル・マネージャー兼プロデューサー。ゲームプロデューサーにして、同社のスマートフォンアプリ制作の中核を担う人物。早くからスマートフォン事業に携わってきたことから、アプリに対してはすでに確固たる理論を構築している。それでいて、つねに新たなステージへのチャレンジを忘れないスマートフォン業界の革命児。

 

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