安藤ブログ“スマゲ★革命 シーズン2” 第三回 「激熱対談! アソビズムの森山Dが読み解く、ゲーム業界の今後とは」

2013-03-22 19:01 投稿

●ゲーム作りにセオリーなんてない! 必要なのは情熱だ

このシーズン2では、安藤氏のいつものブログ以外にも、安藤氏が個人的に気になる方との対談企も掲載。前回に引き続き、今回の対談相手は、『ドラゴンリーグX』の生みの親、アソビズムのチーフクリエイティブオフィサー、森山尋(もりやま ひろし)氏。全3回でおくる今回の対談企画の2回目をご覧あれ。

【まとめ】スクエニプロデューサー安藤 武博氏のブログ“スマゲ★革命”

 

 
▲お酒も入って、ここからトークがヒートアップ!今を走る男ふたりがゲーム業界を本気で語る。

 

安藤 今回の対談はなんとなく「普段のセオリーはこうだけど、実際はそうじゃないよね」という話になっていますけれど、本来ゲーム作りにセオリーなんてものはないですし、これからもそうなっていかないと、お客様にも「あ、またこのパターンね」と見切られてしまう。ゲームの歴史が浅かった頃は、まだゲームのジャンルも確立されていなくて「なんだかわからないものが来たぞ!?」という感覚をお客様にたびたび与えられていましたけど、僕たちもその衝撃を与えて熱狂していただかないといけませんよね。最初に『スーパーマリオ』をやったときの衝撃は、今でも忘れられないものがありますから。僕たちもゲームクリエイターをやっている以上、大目標ですが、それに代わる何かを作りたいですね。

森山 ホントにね。『スーパーマリオ』に関して言えば、「おい、このゲームなんでもできるぞ!」みたいな衝撃もありましたし。それに、使うギミックが土管で、出てくる敵がキノコとカメというのも衝撃でしたよね。今、このゲームを普通にプレゼンしたら、ほかの人から「お前、頭大丈夫か?」って絶対言われますよ(笑)。

安藤 そうですよね。リアルタイムで同僚が「キノコ食べたら大きくなって、花を取ったら火が出せるゲームやねん!」って言い出したら、めっちゃ怖いし、だいぶ笑えますよね。

森山 そうそう(笑)。 『スーパーマリオ』を企画として説明したって、おもしろさはわからない。でも、それが今では世界で一番売れているゲームになっているという事実は生まれているわけで。

安藤
 『スーパーマリオ』を考えると、ホントにセオリーなんて必要ないんだというのを強く感じさせられますね。必要なのは、作るための情熱だけなんだと。結果としてあれだけ制限のあった時代のゲームなのに、あの自由な感じ!

森山 『スーパーマリオ』でひとつ思い出したんですけど。今のゲームは、すごく設定を大事にするじゃないですか? でも、僕はそんなのひとつもいらないと思っているんですよね。気持ちよければいい、楽しければそれでいい。『スーパーマリオ』も「なんで花を取ったら火が出せるの?」、「なんで土管からカニが出てくるの?」って設定を気にし始めたら、あの名作は生まれなかったと僕は思います。

安藤
 でも、なんでキノコを取ったら大きくなって、花を取ったら火が出せる設定にしたのか?というのは、作り手は一度は深く考えますよね。

森山
 誰もが一度は通る道ですね。

 

 

●制限があるからこそおもしろい

森山 昔、仕事で宮本(茂)さん(※注1)とお話しをさせていただいたことがあるんですけど。そのとき、宮本さんはマップとかメモリの話をされていたんですよ。「ゲーム作りとは、まずアイデアの前に工業製品」みたいなことをおっしゃっていて、たぶんメモリを削減するために、「キノコとクリボーはお互いに形を流用して使えるね」とか、「極力削ってドット絵を作っても、この形なら花に見えるね」とか、そういう制限の中で作られたんじゃないのかなと思ったことがありました。でも、そういった制限の中で『スーパーマリオ』が生まれたと考えると、それはそれでスゴイおもしろいですよね。僕は制限がないとゲームを作れないし、制限があったほうがおもしろいものは作れると思っているので、共感できる部分があって嬉しい感じもしました。技術の制限の話をすると、『シーマン』の話もありますね。これは、『シーマン』を作った斎藤(由多加)さん(※注2)が仰っていた話なんですけど、『シーマン』を作っていた当初って、そこまで音声認識の精度がよくなかったそうで。でも、斎藤さんは「音声認識がうまく働かない」という面を逆に活かして、ひとつのシステムを作ったんですよね。それが、音声が認識できなかったら、シーマンが「お前の言ってることわかんねぇよ」って反応で画面の奥に去っていこうとする。するとPlayerが「ちょっとちょっと!」と呼びかけ、シーマンが「なんだ?」って振り向くのでまた会話が繋がっていく、というシステム。このシステムが生まれたからこそ、初めて『シーマン』がゲームとして成り立ったと、そう仰っていましたね。技術に頼るのではなく、技術の限界や制限をいかに利用して、それをおもしろさに繋げられるかが、ゲーム作りのひとつのおもしろさなんだと、その話を聞いて改めて実感しました。

(注1)宮本 茂 氏:任天堂株式会社 専務取締役 情報開発本部長。『マリオ』シリーズをはじめとした、任天堂の代表作の産みの親でもある

(注2)斎藤 由多加 氏:株式会社ビバリウム社長。代表作は『シーマン』シリーズ

安藤 制限があったほうがおもしろいというのは、僕も同感です。僕が技術の制限についておもしろいと思ったのは、『どこでもいっしょ』ですね。あれは人工無脳なので、基本的にはアホなんですよね(笑)。たとえば「ビールって、はやいの?」とか、コッチからしてみたら、わけのわからない質問をしてくる。でも、それに対して「速くないよ」って答えてあげると、覚えてドンドン賢くなっていくんですよね。そのアホさが、めちゃくちゃ可愛いので、どんどん教えたくなる。そもそも何の区別もできないものに、キャラクターを付けて可愛らしく演出することで、ゲームの形を作ったというのは大発明ですよね。『どこでもいっしょ』もまた、技術的な限界点があるからこそ生まれた、歴史的名作のひとつだと思います。

森山 フィーチャーフォンのときも似たようなことはよくありましたね。もし、僕たちがスマートフォンからゲーム作りをしてたら『ドラゴンリーグ』は生まれなかったと思います。フィーチャーフォンで出来る技術でどうにかしようと思って作ったからこそ『ドラゴンリーグ』が生まれて、そしてそれが『ドラゴンリーグX』に繋がったという感じです。スマートフォンから入っていたら「もっとキャラ動かそうぜ!」とか、できないことをやろうとして、変なことになっていたと思います。

安藤
  僕も、フィーチャーフォンでゲーム作りをしたことがあるのですが、あれはすごくいい体験になりました。フィーチャーフォンでのゲーム作りは、今のコンシューマーのゲーム作りと違って、ファミコン時代の、原始的なものづくりに近かったですから。原始的だからこそ、どうやったら快適になるかとか、どうやったらおもしろさが演出できるかとか、そういった核の部分に注力しやすいんですよね。

森山
 フィーチャーフォンの作品のよさのひとつには、納得がいかなければ、いくらでも作り直せるというところもありますよね。コストが安いので。まぁ、これに関して言えば、スマートフォンにも言えることですが。僕たちが作りたいものは、設定でもグラフィックでも世界観でもストーリーでもなくて、あくまでもゲームであり、その根幹にある”遊び”なんですよね。で、やっぱり作り始めると、”遊び”がイメージ通りのものになるまで、納得のいくものになるまで、何度でも作り直したくなるじゃないですか? 絵コンテ描いて、それがバシッとそのまま作品になっちゃう宮崎駿さんのような天才は別かもしれませんけど、ほとんどの人はくり返しの試行錯誤が必要で、作って試して作り直してというキャッチボールの回数を増やしたぶんだけ、作品は自分のイメージに近づく。3回しかキャッチボールをしないチームと、300回キャッチボールをやったチームの作品だったら、300回キャッチボールをしたチームの作品のほうが、バランスを始めとした調整が行き届いているわけですから、おもしろいものになりますよね。フィーチャーフォン、スマートフォンでのゲーム開発は、このキャッチボールの回数を増やしやすいので、僕は好きですね。

安藤 すごくよくわかります。これっていま流行っている「誰かの勝ちパターンのコピー」ではなくて、いちからゲーム作りをするという前提条件があっての話なので、コピーをベースにしている人には、理解できないかもしれませんね。当然コピーベースのものでも、キャッチボールをしなければ、おもしろくはなりませんが、森山さんが言われるレベルでの作り直しや、つまらなければ途中で開発を中止するくらいの徹底したリビルドのやり方は、それとは厳密に違う。

森山 そうなるでしょうね。でも、人間ですから、見たものや触ってきたものに影響されるという事実は、どうしようもなくあると思います。なので僕は、単純に似ることすべてがNGになるとは思っていません。新しいものを考えようとしても、無意識のうちに『ドラゴンクエスト』や『スーパーマリオ』に影響されている部分が出るかもしれない。ただ、最初から真似をしようと考えるかどうかがポイントになるのではないかと。僕は、真似から入ることなんて絶対にありませんけど、それでも影響を受けているというものはありますから。たとえば、これは若干後付けみたいな感じの話にはなりますけど、『ドラゴンリーグ』は、『ストリートファイターII』に影響されている部分がありますし

安藤
 『ストリートファイターⅡ』ですか? なんか意外ですね。共通点のようなものも見えませんけど、どの辺が影響を受けた部分になるんですか?

森山
 僕にとって、『ストリートファイターII』と言えば、ゲームセンターで遊ぶゲームだったんですね。で、学生時代はゲームセンターによく行っていたんですが、それには理由があって。ゲームセンターには対戦用の筐体がありますよね? だから、そこに行けば必ず誰かがいるんですよ。その安心感がスゴイ好きで。『ドラゴンリーグ』の定刻開戦も、それなんですよね。行けば誰かがいるという安心感が欲しくて。いつでも戦えるよという形にしてしまうと、それはそこにシステムだけがあって、人が誰もいないのと等しくなってしまう気がするんです。なので、後付けではありますが、『ドラゴンリーグ』は『ストリートファイター』の影響があって生まれた作品と言えるかもしれません。

安藤
 なるほど、言われてみればアジトの画面はゲームセンターっぽい雰囲気がありますよね。みんなが自由に動いていて、それぞれが好きにしゃべっていてみたいな。ほかに刺激を受けたものはありますか?

森山 ゲームではないけれど『Path』というアプリのUIにはかなりの影響を受けましたね。写真投稿を中心としたクローズドのSNSアプリなんですけど、あれが1年くらい前にウチの内部で流行って。『Path』のUIは、写真を軸にして、スムーズに会話が盛り上がるように設計されていてカッコよかった。似たような感じで、上にゲーム画面を表示して、下にチャット画面を表示させたら、これはおもしろくなるなぁと思いまして。で、実は一度似たようなインターフェイスを作ったんですけど、似すぎちゃって「これはパクリだな」って言ってやめたんですよ。ただ、変化のあるキービジュアルにチャットのタイムラインが紐づく形は、スマートフォンが縦型である以上、デバイスに対して非常に親和性の高い見せ方なんですよね。

安藤  『Path』のインターフェイスはものすごくよくできていましたよね。あの動きとインターフェイスのクオリティーに、まだゲームは追いついていないですよね。『カイブツクロニクル』を作られた桑田(一生)さん(※注3)も「『Path』はヤバイ。こんなに生々しくセクシーに動くインターフェイスを持ったものは、ゲームにはまだない」と仰ってましたし。

(注3)桑田 一生 氏:株式会社ミューテーションズ スタジオ 代表取締役CEO。

森山 
いいインターフェイスなんですけど、あの形を採用しているゲームは、まだあまりないんですよね。もっと出てきてもいいと思うんですけど。ソーシャル性を突き詰めれば、ゲームとSNSの境界線は、なくなっていくはずですし。

安藤 海外では、スマートフォンを横に持ってゲームをするのが主流になってますけど、日本では縦持ちが主流ですからね。

森山
 でも、『拡散性ミリオンアーサー』は横持ちですよね?

安藤
 横持ちにしたのには、あんまり深い根拠はないんですけどね。横持ちにしたほうが、なんとなくゲームを遊んでいるように見えるかなと、感覚的な話ですね。『ケイオスリングス』が横持ち仕様になっているのも同じ理由です。あと、僕たち特モバイル二部は、専用ゲーム機でのゲーム体験とスマートフォンでのゲーム体験の間にある壁を取り払いたいと思って動いているので、その啓蒙的な意味合いも含めて横持ちにしたという感じです。縦持ちだと、フィーチャーフォンと同じですから、それを変えたかったという意図もあります。いまはわかりませんが、ちょっと前だとGREEさんやMobageさんだと「縦持ち以外はありえない。これがセオリーでありロジックなんだ」と仰っしゃるコンサルタントの方が多くおられました。僕の意見は、そういったセオリーとかロジックなんか無いよって話なんです。むしろ海外では横持ちのほうが評価が高い傾向にあるかなと思っています。たとえば、近い話だと去年末、韓国に『拡散性ミリオンアーサー』を持っていって、Actoz Softという現地の会社に運営をしてもらっているのですが、向こうのお客様にけっこう高い評価をしていただいたんですね。で、Actozのスタッフに「なぜこんなに売れたのか教えてもらえますか?」と聞いたら、いくつかあった理由のひとつとして「横持ちだったから。縦持ちだとゲームをしている雰囲気が出ない」という答えが返ってきました。やっぱり数値化できない雰囲気って大事だなと思いました。

森山 雰囲気もゲームをおもしろくする要因のひとつですからね。やっぱり、ゲームはおもしろくてなんぼですよ。

安藤  ホントにそうですね。ちょっと話は戻りますけど、極端な話、ゲームさえおもしろければお客様には、付きあっていただけます。『ドラゴンリーグX』の定刻開戦とか“勝利のお守り”にみんながいい意味で振り回されているのも、まず根本的なおもしろさがあっての話ですよね。

 

 

●スマートフォンゲーム市場は健全な市場

森山 僕たちは、ホントにスマホゲーマーのみなさんに感謝をしています。おもしろいものはおもしろいと言ってくれて、つまらない部分はつまらないとハッキリ伝えてくれるし。おもしろかったらしっかり付いてきてくれる。あと、僕たちの会社は正直まだまだ無名な会社ですけど、ゲームが面白ければみんなが評価してくれて、錚々たるゲーム会社さんたちが並んでいるランキング上位にも入れてますから。こんなこと、コンシューマーでは絶対に考えられないことですよね。

安藤 
そうですね。お客様の中には高い評価をしてくれているお客様のコメントに対して「ステマだろ」とか「社員乙」みたいに仰る方もいらっしゃいますけど、そういった評価を含めても、アプリのマーケットはかなり健全な評価がされる場になっていますよね。最終的な評価は、そこに書かれている通りだと思えることが多いです。プレイヤーの絶対数が多いから、ゲームメーカーやSAPさんによるプロモーションでよく見せようとする「お化粧効果」が追いつかず、むしろ正直な「すっぴん評価」が並ぶという面があるんでしょうかね?

森山 それはあると思いますよ。マンパワーやマネーパワーが通用する仕組みだとしたら、僕たちみたいな無名企業のタイトルがランキングに並ぶことなんて不可能ですから。だから、あのランキングには「なんでこんなのがランキングに入ってるんだ?」と思えるようなタイトルは少ないですよね。今のうちにいいゲームをたくさん出して、ぜひとも名前を憶えてもらいたいですね。ちなみに、今のこの調子のいい状態を、僕たちは「ハネムーンタイム」と呼んでいます(笑)。

安藤 僕たちも今似たような環境だと認識しているのですが、僕たちはこの状況を「星食ってる」と表現しています(笑)。『スーパーマリオ』でスターを取って無敵になってる状態ですね。でも、どう表現しようとも、ハネムーンタイムも無敵状態も永遠には続くものではなく、この環境がいつかは終わるものだと認識しています。

森山
 いや、終わりますよね。なので、終わったときのことを考えないとダメですよね。

安藤
  過去を見てもわかりますよね。こういった熱狂というのは一時的なものですから。これからどうしていきましょうかね? 先のことをあまり考えていられないほどスピード感ハンパないですけど。

 

 

●今後のゲーム業界はどうなっていくのか?

森山 理想を言えば、あんまり考えたくないというか、流されたくないというか。常に「おもしろいものを作る」という能力を上げていくしかないですよ。僕らはデバイスだとか、プラットフォームだとか、あまり気にしていません。その時代に生きる人に面白いって言ってもらえるモノをつくる。ただそれだけです。ソーシャルゲーム業界に関して言えは、今の状況から、だんだんと淘汰されていくのではないでしょうか?正直、わからないですね(笑)。

安藤
 わからないですよね。でも、わりと早いうちにこの「星食ってる」状態は終わると思います。ひょっとしたら・・・もう終わっているかもしれません。この熱気はいい熱気だとは思うけど、絶対に長続きしないだろうと思えるほど異常で、まさにソシャゲバブルな感じもしますからね。

森山
 おそらく、ファミコン黎明期、いろいろな会社がグワッと大きくなっていった時代にも同じような空気があったんでしょうね。ウチらの時代はもっと短そうですけど(笑)。

安藤
 最近、「ぼくたちのゲーム史」というゲームの歴史を振り返るという内容の本を読んだんですけど、その中に1980年初頭のゲーム雑誌の引用があって、とあるゲームが紹介されているんですが、「この手のジャンルのゲームはもう出尽くした感がある」という内容のことが書かれていたんです。30年前といえば、もっとバラエティに富んだ感じを持っていのですが、インベーターやパックマンからはじまって、似たようなものが出尽くして、スーパーマリオのリリースがあるまで、家庭用ゲームが、一回めちゃくちゃ閉塞しているんです。で、ふと思ったのが、今も昔と一緒だなと。カードばっかり、ガチャばっかり、パズドラもどきばっかりで。

森山
 僕は、絶対パズルは作りませんけどね。なぜなら作れないから(笑)。

安藤
 スリーマッチのパズルゲームをおもしろくデザインするだけでも至難の技なのに、それを解放して自由度を増した上でゲームデザインとして完成させている『パズドラ』はもはや神業。最初に作った人のみに許される領域であって、あれは真似できないし、してはいけないんです。

森山
 ある意味、時代が求めた完成形なんだと思いますね。

安藤
 やっぱり、真似ではなく、まったく新しい遊びを出さないと伸びません。真似は、生みの苦しみも少ないですし、着地しやすいかもしれませんが、元祖に勝つことは永遠にありません。だから真似はダメなんですよ。

森山
 なにかのジャンルとなにかのジャンルのマリアージュという形でしたら、まだ発掘できていないところがあるのかもしれませんけどね。でも、僕はその合わせて作るというのが下手くそなので、やらないんですけど。今度出る『ドラゴンポーカー』も、分かりやすい売り文句として、“ポーカー+RPG”という形で売り出してくれてるのですが、じつは全然違うんですよ。僕は、ポーカーでオンラインゲームが作りたいと思って、あれを作ったので。「リアルタイムで、ポーカーを10人で遊べたら絶対おもしろいよね」という思いだけで作っているんですよ。まぁ、ユーザー側から見てみれば“○○+○○”のほうがわかりやすいんでしょうけど。

 

 

●『ドラゴンポーカー』発売延期の真相に迫る

安藤 『ドラゴンポーカー』はまだ遊んでいないので、語ることはできないのですが、そんな感じのゲームになっているんですね。

森山
 そうですね。先ほど10人と言いましたが、対戦でなければ基本は5人でポーカーをやって、力を合わせて冒険をしていくといった感じですね。

安藤
 楽しそうですね。延期になったのが惜しいです。やっぱり作り直しで延期という感じでしょうか?

森山
 そうですね。じつは、昨年の10月くらいに一度完成しているんですよ。みんなはそれでおもしろいと言っていたのですが、僕がおもしろく感じられなくて。で、1月くらいにもう1回完成を見たのですが、やっぱりつまらなくて。今は3テイク目ですね(笑)。おもしろくなかったら、出す意味ないじゃないですか? それで、途中でお蔵入りにしようかという話も出たぐらいです。ある意味ピンチですが、逆に言うとまったく新しい体験をユーザーに楽しんでもらえるチャンスでもあるので生みだしきろうと現場は燃えています!

安藤
 でも、おもしろくないから出さないという話は、家庭用ゲーム業界では至極当たり前の話のひとつですよね。携帯電話の世界では、めっきりそんな話も聞かなくなりました。

森山
 期待してくれているお客様もいらっしゃいますから。もうそうなると、その期待に応えるためにも、プロの意地を見せるしかありません。いまポーカーゲームが急にドバドバーっと出てるじゃないですか? たまたまなんでしょうけど(笑)。でもまぁ、同じポーカーを謳ってるとはいえ、ウチが提供する予定のポーカーはそれらのゲームとはまったく違う体験のモノになっているので、あまり気にしてはいません。

安藤
 5人、10人でポーカーというのはおもしろそうですね。

森山
 けっこうオンラインゲームに近いものになっています。新しいシステムがいっぱい発明できているので、そこにも注目してもらいたいですね。

安藤
 オンラインは動かしてみないとわからない点もありますから、大変だとは思いますが、期待しています。

森山
 作り直す、直さないの話に戻りますけど、ゲーム作りでは見切り発車が当たり前じゃないですか? 最初から「これはおもしろい」と確信が持てるゲームというのは、それはもう過去にどこかで体験しているゲームということですから。真似をせずに新しいものを作る場合だと、作ってみないとおもしろいかおもしろくないかはわかりませんよ。「これはイケるかも!?」と思った時点でグワッと作り始めますよね。そんなこんなで今頑張って作っているので、唯一無二の新しいものができていますよ。それが広い層にウケるかどうかはまた別問題なんですけどね(笑)

安藤 
僕はプロデューサーなので、遊びの仕組み自体をゼロから発明するということはあんまりしないのですが、新しいことを仕掛けたりするのはスゴク好きです。でも、新しいものを作ろうとしても、まわりからの理解が得られないことが多いですよね。ただ、そういう状態こそ実は健全だと思っています。最初からまわりがあまりにも理解してくれると「あれ、あんまり新しくないのかな?」と疑うようにしています。「アイツ、ちょっと頭おかしいんじゃないか?」と思われているくらいが、完成して市場に問うた時に、ちょうど良い新しさになっている場合のほうが多いですね。

 

次回で対談はついにフィナーレへ!

 

■著者紹介

安藤武博(あんどう たけひろ)
スクウェア・エニックス 特モバイル二部 ジェネラル・マネージャー兼プロデューサー。ゲームプロデューサーにして、同社のスマートフォンアプリ制作の中核を担う人物。早くからスマートフォン事業に携わってきたことから、アプリに対してはすでに確固たる理論を構築している。それでいて、つねに新たなステージへのチャレンジを忘れないスマートフォン業界の革命児。

 

 

【まとめ】スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”

 

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配信日
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