commが“つなげる”コミュニケーションの未来、若き開発陣に意気込みを訊く
2012-12-28 17:00 投稿
●DeNAが提供する新しいコミュニケーションアプリの可能性に迫る
この秋、ディー・エヌ・エー(DeNA)が世界204ヵ国で同時展開を開始した“comm(コム)”。吉高由里子や美輪明宏によるテレビCMなどでご存じの方も多いと思うが、commは高音質な通話やメッセージによって多彩なコミュニケーションを可能にするスマートフォン(iOS&Android端末)向けアプリだ。そんなcommの魅力とは? ここでは、関係者へのインタビューを通して、commの可能性に迫る。記事は、ファミ通Mobage Vol.11(2012年12月10日発売)にて掲載したインタビュー記事の完全版となります。
〈commを作った皆さん〉
DeNA
ソーシャルプラットフォーム事業本部
comm戦略室室長
山敷守氏(中央)
2012年5月よりプロジェクトに参画。commの企画やビジネス戦略を担当する。
ソーシャルプラットフォーム事業本部
UKデザイン部
山本麻友美氏(左)
新卒1年目でプロジェクトに参加。各機能の画面の構成などを担当。
ソーシャルプラットフォーム事業本部
UKデザイン部
松江萌氏(右)
スタンプのディレクションなどを務める。彼女も新卒1年目!
●技術力とチューニングでcommの“高音質”を実現できた
――まずは、commが立ち上がった経緯を教えてください。
山敷 ちょうど1年くらい前に、新卒1年目の長田(ながた)というエンジニアが、「メッセージングアプリをやりたい」ということで企画を立ち上げまして。そのころ、そういったサービスだったりアプリがよく利用されており、スマートフォン上で展開するコミュニケーションへのニーズが高まっていたんですね。新しいサービスに取り組んでいきたいという社内全体の雰囲気もありました。当初はエンジニア4人でスタートしたプロジェクトですが、徐々に膨らんでいって、現在は100人近い体制になっています。
――発表会のときに、守安社長がコメントしていましたが、commは新卒1~3年目くらいの若い人材を起用しているとのことだったのですが、あえて若い力を結集したのですか?
山敷 そこはDeNAがかなり変わっているところだとは思うのですが、「あえて若い人材を起用した」という意識はなくて、守安自身、若い若くないはまったく気にしていなくて、「実力があれば任せる」というスタンスの人間なんです。
――同種のサービスは競合がありますが、どんな方向性で開発を?
山敷 多くのメッセージングアプリが提供している”無料通話”は、お客様にとってかなり魅力的な機能かと思うのですが、けっしてその品質には満足していないというのが、このプロジェクトを前進させるうえで大きなポイントでした。”高音質な無料通話”を実現すれば、お客様に使っていただけるに違いないと考えたんです。
――では、キモとなる高音質は、どのようにして実現させたのですか?
山敷 ポイントはふたつです。ひとつが、音を聞こえやすくするための”音質”。もうひとつが途切れないようにする”接続性”です。音質に関しては、非常にリッチなコーデック(音声圧縮技術)を利用したり、特殊な音声処理を施したり、端末ごとに徹底的なチューニングを実施するなど、改善に改善を重ねました。これらによって肉声に近い音声の実現に取り組んでいるんです。接続性では、電波の弱いところでは音の質を若干落としてでも接続できるようにするといった具合にチューニングを施しています。ユーザーの方の体感として、「どういった音がいいのか?」というのを実際に調査してチューニングをしているんです。つまり、技術力とユーザー目線のチューニングが、高音質のヒミツになりますね。
――海外との通話も遜色なく?
山敷 そうですね。基本的には電波の状況によるのですが、たとえばアメリカの都心部であれば、遜色なく使っていただけると思います。実際に弊社の国際会議もcommを活用していたりしますし。
――おお、それはすごいですね。実際に海外に行かれる方は、commは利便性が高そうですね。
山敷 さらに、commで特徴的なのが実名登録制の採用です。実名だと名前を調べてすぐに申請を出せるのに対して、ニックネームだと、サービス固有のIDやニックネームを交換する必要があり、友だち検索にワンクッション挟まれる。そのため、ニックネームだと卒業や引越しといった、人間関係ががらりと変わるタイミングで、「また、つながろう」というアクションに対する敷居が高くなってしまうんですね。リアルな関係のコミュニケーションサービスを作るうえで、人間関係が更新され続けることが重要と判断して、実名登録制にしました。
――実名登録というと、Facebookが代表的ですよね。
山敷 commは、リアルなコミュニティーを志向している点において、Facebookを意識している部分もあります。違いは、Facebookが”オープンコミュニケーション”だとすれば、commは”クローズドコミュニケーション”であるということですね。Facebookのコメントはすべての人に向けたものになるので、最大公約数的な発言が多くなりますが、commだと、”個別なグループ”を対象に”個別なコミュニケーション”が取れるんです。人間はいろいろなグループに所属していて、それぞれのグループによって見せる顔がちょっとずつ違うので、そういったサービスのほうが好ましいと感じるお客様も多いのではないかと考えています。
――つまり、目指すところは、心おきなく気軽に友だちとコミュニケーションが取れるサービスということですね?
山敷 そうですね。メールや電話に近しいものかなと思っています。
●全世代に受け入れられるデザインにするのが難しかった
――では、UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)、デザインは、どんな方針で作業を行ったのですか?
松江 私と山本は2012年5月にプロジェクトに加わってからは、機能まわりやUI設計などを担当していたのですが、いちばん意識していたのは、あまりプロダクト側に寄り過ぎないように、ということでした。作り手としては、「内容を充実させてから出したい」という思いがありつつも、あまりに要素を盛り込み過ぎると複雑になってしまう。「ユーザーの方は何を求めているのか?」を考えつつ、取捨選択して作り込んでいきました。
――とくに注力した点は?
松江 写真です。commではプロフィールに写真を載せられる仕様になっているのですが、コメントもつけられるんです。何もすることがなくても、友だちのページに行けばその機能を楽しめる。見ているだけでおもしろいページを作りたいというのもポイントのひとつでした。
山本 commは全世代を対象にしているのですが、すべての世代に受け入れられるデザインを考えるのが難しかったです。commが毎日頻繁に使っていただくサービスだということを前提に考えると、うるさいデザインの場合、逆にユーザーの方が離れていってしまう。そこまでコテコテさせずに、commのキモである”高品質”感を出すというバランス調整がけっこうたいへんでしたね。
山敷 僕のほうで、「王道かつシンプルで、とはいえ、ステキなデザインで」みたいな無茶なオーダーを出していたので、そこはかなり試行錯誤があったのではないかと(笑)。
山本 そうですね。たとえば、テキストが入る吹き出しの角の丸みを何回も作り直したりと、細部のデザインは相当調整しました。
――ちなみに、“comm”というネーミングの由来は?
山敷 先ほどもお話しさせていただきましたが、commは世界中の方に使っていただけるクローズドコミュニケーションを目指すということで、シンプルかつ王道的なものが不可欠だと思っていたんですね。ネーミングにしても同様で、ちゃんと世界でも認識される名前にしようと考えたときに、コミュニケーション(communication)の頭文字がわかりやすいだろう、ということでcommにしました。
――そういえば、commはスタートと同時に世界204ヵ国に向けてサービスを開始しましたが、当初から世界同時開始を予定していたのですか?
山敷 はい。当初は日本だけで……ということも考えたのですが、スマートフォンで展開するのであれば、全世界に同時に配信できてしまうんです。そうすると、「なぜ世界同時でやらないのか?」という疑問に対する答えがなかったというか(笑)、むしろやるべきだという判断になりました。そのため、開発時からデザインや名称はグローバルでのサービスを前提としたものになっていました。
●愛されるキャラクターを志向して、スタンプ作りは試行錯誤
――スタンプもかわいいキャラクターが特徴的ですね。
松江 ありがとうございます。commのスタンプも、既存のサービスとどう差別化をしていくかを念頭においてデザインしました。commではオリジナルキャラに注力しつつ、愛着を持っていただけるようなデザインを心掛けています。10代~50代まで、幅広く愛されるキャラクター作りということで、調査も重ねましたし、かなり長い期間をかけて作り上げているんですよ。キャラクターの表情にしても、「この表情はダメだから作り変えよう!」ということで、ひとつひとつだいぶ作り替えています。ちなみに、グローバルで展開するということで、キャラクターに関しても、事前に海外の方に調査をして選定しています。
山敷 オリジナルキャラクターのスタンプにこだわる理由のひとつとして、できるだけスタンプを無料で提供したいという想いもあるんですよ。さらに言うなら、現状我々はcommでのマネタイズは考えていないんです。
――それは思い切った判断ですね。
山敷 はい。commを基本的にたくさんのユーザーの方に使っていただきたいんです。そのうえで、自社のほかのサービスであるMobageだったり、ビッターズなりを紹介することで、シナジー(相互作用)が生まれることを期待しています。commは純粋にユーザーの方に使っていただける、すぐれたサービスにするというのが私たちの目標です。11月末からは吉高由里子さんや美輪明宏さんを起用したテレビCMも展開しておりますが、大きな手応えを感じています。
――では、最後に今後に向けての目標を教えてください。
山敷 メールや電話など、ベースとなる機能の強化には引き続き取り組んでいきたいです。加えて、詳細はお話しできないのですが、思わず会話が楽しくなるような”トークのスタンプ”みたいな機能も考えています。スタンプは、テキストを使わずに感情表現ができるという画期的な手段だったのですが、そういったサービスを電話でもご提供したいと思っています。
松江 UXの見地からすれば、そんなにスマートフォンに詳しくない方やアプリを使ったことのない方でも、ひと目見て何をすればいいかわかるように、チュートリアルを強化していきたいです。
山本 commでは、どの端末に対してもメールを送れる機能を実装しているので、誰とでもつながれるのですが、今後もさらに広がれるようなシステムやサービスを追加していきたいです。今後のcommの広がりにご期待ください。
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