【海外メーカーインタビュー第5回】急成長中デベロッパーBulkypixがアジア進出を計画中!? 突撃インタビューを敢行!

2012-12-12 18:00 投稿

●Bulkypix CEOに突撃インタビュー!

App Store、Google Playは、世界に門扉が開かれた市場であるからか、海外のメーカーが日本のマーケットにこぞって進出してきている。今回は、その中でもヨーロッパで活躍し、年々規模を拡大し続けている企業Bulkypix社にクローズアップ! 彼らから見る日本マーケットとは? 彼ら独自のユニークなこだわりとは? 日本ではなかなか聞けない、海外企業ならではの価値観や発想に触れてみようではないか。

■Bulkypix
フランスに本社を置くスマートフォンゲーム開発会社。創業して4年と若い企業ではあるが、驚くほどの成長を見せ、世界中から注目を浴びている。代表作は『Babel Rising』、『Kung-fu Rabit』、『ツインブレード』など。
▲左:CEOのOlivier PIERRE氏
 右:ビジネス開発部長のChristelle CHANDAVOINE氏

●フランス企業から見るアジア・日本マーケット

――今回の来日の目的を教えてください。

Olivier 弊社は、ヨーロッパとアメリカ市場に関してはゲームを直接販売しているのですが、アジアのマーケットに関しては、言語や文化の違い、そして市場の違いとい大きな壁があるので、それを乗り越える“パートナー探し”のために来ました。日本の市場はとても複雑で難しいと聞いていたので、今回の来日では、日本のゲーム会社さんから日本の市場のあり方をご教授いただいたり、弊社のゲームを取り扱っていただけないかと相談しました。また、逆に、日本のゲーム会社さんのタイトルで、フランスやヨーロッパで成功するだろうというタイトルを、弊社を通して扱わせていただきたいといったご提案もさせていただいてます。

――海外のデベロッパーさんは、必ず「日本の市場はかなり異質だ」とおっしゃるのですが、Bulkypixさんもすでにそういった点を感じていますか?

Olivier 私自身、独立するまで家庭用ゲーム業界に務めていたので、ヨーロッパ市場に関しては把握しています。その頃から、ヨーロッパの市場とアジアの市場では、文化的背景による差があるというのは感じていました。しかし、モバイルゲームとなると、これまでのゲーム市場とは形態が違うと思うんです。日本ではフィーチャーフォン時代からモバイルゲームが盛んだったので、ユーザーも携帯端末でゲームを遊ぶのに慣れていますが、ヨーロッパなどの地域では、フィーチャーフォンでのゲーム市場というステージを飛ばして、iPhoneによるモバイルゲーム市場が生まれたという現状があるので、日本とヨーロッパではユーザーさんへのアプローチの仕方を変えなくてはいけません。

――なるほど。市場に合わせて売り出し方を変えていかなければいけないんですね。

Olivier もちろん日本がフィーチャーフォン時代から培ってきたモバイルゲームの技術と、私たちがスマートフォンゲームで培ってきた技術というものにも大きな差があります。今回パートナーを探していて感じた違いのひとつが、アプリケーションの違い。ヨーロッパではネイティブゲームが主流となっているため、弊社はネイティブゲームしか開発していません。しかし、日本ではブラウザゲームが主流となっているため、弊社のゲームをアピールした際に「ブラウザゲームでないと困る」という返答をたくさんいただきました。そしてもうひとつが、タブレット端末とモバイル端末の扱いの違いです。ヨーロッパではタブレットで遊ぶというユーザーもたくさんいるのですが、日本ではスマートフォン端末で遊ぶというユーザーのほうが多いらしく、「タブレットは視野にいれなくていい」という意見をいただきました。デバイスの立ち位置が大きく異なるというのもまた、日本市場とヨーロッパ市場とのおもしろい違いですね。さまざまな違いはありますが、問題ではなく、むしろいい機会だと思っています。私は、両者の技術をドッキングさせて何かができるのではないかと、大きな可能性を感じているんです。

――デバイスの差異というのは意外ですね。カルチャライズやローカライズによる壁は感じていないのですか?

Olivier 弊社は、ローカライズに関してポイントを置いていません。しっかりとした会社に依頼をすれば、ローカライズは容易ですからね。確かに資金はかかりますが、この壁は当たり前のように越えなければならないステージだと考えているので、ためらうことはありません。また、文化の違いというのは当たり前のように存在します。日本ではカードをコレクションするというゲームが流行っているようですが、フランスにはそのような文化はなく、美しいグラフィックで描かれたアドベンチャー系のゲームが流行っています。私たちは、この文化の壁を乗り越えようとするのではなく、逆に融合させることにより、中間地点のような新しいものを作り出したいと考えています。自分のスタイルを押し付けるのではなく、お互いのいいところを取ってゲームを作りたいですね。

――ヨーロッパにはスマートフォンが登場するまで、携帯電話ゲーム市場がなかったとのことですが、なぜ携帯電話向けゲームコンテンツの開発をしようと思ったのでしょうか? 会社発足の経緯を教えてください。

Olivier 先ほど申し上げた通り、私はもともと家庭用ゲーム、PC用ゲームの開発に携わっていました。そして、その間ずっと「これからモバイルのゲームがくるんじゃないか」と長年感じていたんです。ただ、デバイスとの可能性を大きく感じていても、ヨーロッパではモバイル向けゲームを開発しても、市場に出すのがほぼ不可能でした。というのも、モバイル向けゲームをリリースするには携帯電話会社を通してリリースすることになるのですが、この携帯電話会社が利益の50%も持っていってしまうんです。その残りの50%をデベロッパーとエディターでわけるとなると、非常に利益率が低くなってしまう。コンテンツ制作には、手間と時間、そして費用がかかるのに利益が低い、それでは企業として成り立ちませんよね。なので、携帯電話向けコンテンツの配信は、ベンチャー系企業が進出できない市場になっていたんです。しかし、iPhoneの登場と同時にApp Storeという市場がヨーロッパにも大きく進出してきたため、小さな会社にも大きな可能性が生まれたんです。そして、「起業をするなら今しかない」と考え、Bulkypixを発足しました。

――App Storeの進出がチャンスとなったわけですね。では、Bulkypixさんがこれまで出したゲームの中で、一番ダウンロードされたタイトル、または日本で一番ダウンロードされたタイトルを教えてください。

Olivier 世界で一番売れたタイトルは『My Brut』というゲームですね。これは、友だちとギルドを作り、みんなで力を合わせて戦っていくというソーシャルゲームです。最初は、1日に5回しかバトルができないのですが、勝てば勝つほどバトルできる数が増えていったり、ギルドが強くなっていったりという要素も含まれております。このゲームは2009年にリリースしたのですが、当時はまだソーシャルゲームという概念がフランスにはなかったので、このゲームの登場を発端に、フランス国内でもソーシャルゲームというジャンルが確立しました。日本に関しては『Babel Rising』が、おそらく一番多くの評価をいただいたのではないかと思います。『Babel Rising』は世界でもそれなりに評価を頂いていまして、新しいバージョンもリリースしました。その高評価も受けて、『Babel Rising2』は基本無料のアプリ内課金というシステムを採用しています。ちなみに、これは日本ではauスマートパスでの販売となっております。

――Bulkypixさんがゲームを作る上で意識している部分はありますか?

Olivier どのようなゲームを取り扱っていくかということではなく、弊社は独立系の小さいスタジオとだけ仕事をするようにしています。インディーズ系というんでしょうか……5~10人くらいで作業をしているようなスタジオですね。そういう小さいながらも頑張っているところって、すごいクリエイティブな人が多いんです。独自の発想ですごく面白いものを作ってくれるので、そういったスタジオにプログラム費などを支援し、いっしょにお仕事をして販売につなげるという形をとっています。また、今度会社をベルサイユ宮殿の近くに移すのですが、ここに支援用のスタジオも設ける予定です。このスタジオは、「アイデアがあって技術もある。でも資金や設備が足りない」という小さな独立系の会社や個人クリエイターの方々に使っていただく予定です。もしマンパワーが足りなければ、弊社のスタッフを使って、アイデアを形にしてもらればと。技術と知恵を貸してもらう代わりに、私たちは資金と場所を提供するといった感じですね。

――まさにギブアンドテイクですね!

Olivier この形を採用していると、小さいスタジオに経済的な支援やアドバイスができますし、弊社からリリースということにはなりますが、年間50本ほどのペースでゲームをリリースしていくことが可能です。スタジオさんからは毎月だいたい300本ペースでゲームが送られてきていますが、私たちは一度それらをすべてを試遊し、そこから数本ピックアップして、お互いに意見を出し合いつつ作品のブラッシュアップしていきます。カジュアルであるということも大事ですが、収益のモデルであったり、そういったビジョンがないゲームをリリースしても、売り上げが伸びずスタジオさんに還元できないので、マネタイゼーションが取れるかどうかも重要なポイントなんです。このように、スタジオの方たちとお互いを尊重しあってクリエイティブな仕事をしていこうというのは、私がBulkypixを立ち上げたときから思っていたことなので、ずっと貫いてきていきたいです。

――独立系スタジオとともに、Bulkypixさんは大きくなってきたんですね。

Olivier はい。だいたい1年間で会社の規模が倍々となってきているので、なんとか頑張れているかなと感じています。

●ゲームロフトとの意外な関係

――フランス発のゲーム会社で大きなところというと、Gameloftさんが挙げられますが、Gameloftさんをライバル視したり、何か意識しているところはありますか?

Olivier じつは、Gameloftの日本の代表者は私の元同僚なんですよ(笑)。ふたりが前にいた会社では、私のほうから「これからモバイルがくるから、モバイルゲーム開発を始めたほうがいいよ」と彼に進めていたんです。なので、Gameloftに関してはライバルではなく、いい仲間という感覚の方が近いですね。お互いを尊重して、同じ市場で頑張っていこうという間柄です。Gameloftさんは規模が大きいですし、日本に進出してスタジオを開くということも可能になっているかと思いますが、弊社はそこまで大きな規模ではないので、日本にスタジオを設けるということは考えていません。私たちは、日本市場で活躍している方たちや日本をよく知っている方たちとパートナーシップを結んで、お互いを刺激し合いながら仕事をしたいと考えております。

――Bulkypixさんの今後の予定や見通しなどがありましたら教えてください。

Olivier まず、来年の早い段階で『Little Amazon』というゲームをリリース予定です。これはシンプルなジャンプアクションで、誰でも手軽に遊べるようカジュアルに、でもしっかりと楽しんで遊べるよう作っています。また、ゲーム内で取得したコインを使って、アイテムを購入するというシステムを採用しているのですが、課金を行うことでコインを増やすこともできます。このほかにも、AR(拡張現実)機能を使ったタワーディフェンス『Defense Tower』というゲームを作成中です。これは、ARカードをカメラで捕えると、そこにタワーが浮き出て、そのAR空間の中で遊ぶという作品になっています。

▲現在開発中の『Little Amazon』。

――AR機能を使用したタワーディフェンスとは新しいですね!

Olivier 最大4人までのマルチプレイにも対応する予定です。これまでにもAR機能を使ったゲームというのは少なからず出ていたのですが、マルチプレイヤーで遊べて、しかもタワーディフェンスとなると、かなり新しい体験を提供できるのではないかと思っています。ちなみに、これはヨーロッパでは先行リリースとなりますが、日本ではパートナーさんが見つかっていないので、リリースは未定です。

――遊べる日を心待ちにしています! それでは最後に、日本のユーザーに向けて一言お願いします。

Olivier とにかくまずは楽しんでください! 私たちの情熱の込められたゲームを十分に遊んでみてほしいです。そして、ゲームを遊んでみて思ったこと、批判でもお褒めの言葉でもいいので、私たちに直接その声を聞かせていただきたいです。「ここが使いづらい!」とか「この場面で必ずアプリが終了してしまう」とか、どんなささいな内容でもかまいませんので声を聞かせてほしいです。

――また来日された際はお話しを聞かせて下さい。本日はありがとうございました!

BABEL Rising

メーカー
BULKYPIX.AMA
配信日
配信中
価格
iPhone版 250円[税込]/Android版 99円[税込]
対応機種
iOS 3.0以降/Android 2.1以上

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