クリスタルを守るため、光の戦士たちは旅に出る
国内、海外問わず人気の高いRPG『ファイナルファンタジー』(以下『FF』)シリーズ。その『ファイナルファンタジー5』(以下『FF5』)のピクセルリマスターのレビューを、シリーズ初心者である筆者がお届けします。
この企画で『FF1』と、『FF3』のピクセルリマスター版を遊んでみた筆者。ストーリーもシステム面もナンバリングを経るごとに進化していたので、『FF5』をプレイするのを楽しみにしていました。
『FF5』のストーリーは、多くの『FF』シリーズと同様に、クリスタルを守るために光の戦士たちが旅に出る、という王道展開。
各地のクリスタルが砕け始め世界が崩壊に向かいつつある、そして空から謎の隕石が飛来する、という導入から始まり、わりと序盤で4人のパーティーメンバーが揃います。(後からもうひとり追加されますが未プレイの方向けにここでは伏せます)。
父の遺言で各地をチョコボのボコといっしょに旅している青年・バッツ、タイクーン王国の第2王女・レナ、記憶喪失で謎まみれのおじいちゃん・ガラフ、そして海賊・ファリスの4人です。
このパーティーメンバーのバランスがめちゃくちゃいい!
とくにガラフがいい味を出していると思います。勇者パーティーに壮年の男性や女性が組み込まれて活躍しているの、とても好きです。
最初、ガラフは記憶喪失ということもあり、「じつは敵サイドのキャラクターでいつか裏切って離脱するんじゃ……」という不安を一方的に抱えていました。
しかし物語が進むうちに、仲間思いでお茶目なおじいちゃんということが分かり、「裏切られてもいいからちゃんと育てよう」と方向転換。後悔はしてません。(意味深)。
戦略性の高いバトルとジョブシステム
攻撃するのは魔法をうつのかアイテムを使うのか、といった行動を瞬間的に選ぶ必要があり、筆者は慣れるまでにそこそこ時間がかかりました。
ただ、ゆっくり考えたい方は、設定でバトルスピードを調整できるので安心してください。
冒険の途中では、立ち寄った街の宿で回復できるのはもちろん、ダンジョンの中にも安全なポイントが存在。ここではテントを張って仲間のHPやMP、復活ができます。
そして、バトル面でかなりおもしろいのがジョブシステム。
各地のクリスタルを集めていくと新たなジョブが解放され、ジョブにはそれぞれ習得できるアビリティというものがあります。
このアビリティは、そのキャラクターが一度覚えてしまえば、別ジョブに転職しても選択可能である、というのがポイント。
つまり、組み合わせ次第では回復魔法を使えるタンクや、やたら殴れる魔法使いなんかも作れるということ。なんかもう、ひと通りのジョブを経験してもらって、スーパーマンを作りたくなってきますね。
かなりロマンのあるシステムだと思います。
ファリスとシルドラについて語らせてほしい
『FF5』のストーリーは、とにかく別れが多い。そしてしんどい。
本作で描かれた別れの中でも、個人的にしんどかったのがパーティーメンバーでもあるファリスと、その相棒である海竜・シルドラとの別れです。
本作で描かれた別れの中でも、個人的にしんどかったのがパーティーメンバーでもあるファリスと、その相棒である海竜・シルドラとの別れです。
風の神殿へ向かいたいバッツたちは、ファリスの海賊船を貸してほしいと交渉を持ちかけます。
最初は相手にしていなかったファリスですが、レナの首に光るペンダントを見て、突然協力的な態度に。
なんと、ファリスもレナと同じペンダントを持っていたのです。
ファリスはレナにやたら優しいし、レナはタイクーン王国の“第二”王女……。これ、絶対ファリスの正体はレナのお姉ちゃんですよね!? と序盤で勘ぐり始めた筆者。
あれ、でもファリスは男のはずじゃ……。
あれ、でもなんかフラグが……。
女の子だった!!!
じゃあやっぱりレナの実のお姉ちゃんですよね!? どういう事情で海賊やってたのかは知らないけど!
聞けばファリスは小さい頃、海賊に拾われたといいます。女の海賊はナメられる、ということから、男のフリをしてきたようです。
そして、海賊になったファリスと幼い頃からいっしょなのが、海竜・シルドラ。ファリスにとっては家族に等しい存在なのですが、別れは突然やってきます。
運河の途中で水生のモンスターに襲われた一行。なんとか切り抜けたかと思いきや、モンスターは最期の悪あがきと言わんばかりにシルドラごと沈んでいきます。
筆者、ここで号泣。
最期までこっちを見つめるシルドラの目も、悲しそうなシルドラの鳴き声も、何もかもが全部しんどくて、しばし放心していました。
さっきシルドラに出会ったばかりの筆者ですらこんなつらいのに、長年連れ添ってきたファリスの気持ちを思うと……。
いつもファリスがレナを励ましてきたように、今度はレナがファリスを励まします。
そして、レナの言葉が現実となり、一行はシルドラと再会。
みんなが海で溺れそうになっているところにシルドラが現れ、助けてくれたのです。
筆者、ここで再び号泣。
しかし、シルドラは決して無事ではなく、満身創痍で最期の力を振り絞り、ファリスたちを助けてくれたようで……。
今度こそ力尽き、シルドラは海の向こうへ消えてしまいました。
悲しいエピソードでしたが、結局プレイしてから何年経っても覚えてるゲームのシーンって、こういう「しんどい」ものが多いなあと思ったり。ゲームの“体験”が“思い出”に変わるのって、心にちょっと傷が残って、癒えても完全に消えることはないからなのかもしれませんね。
私はこのシーンが一番心に残りましたが、『FF5』はこれ以外もいくつも印象的なシーンがあるので、きっと多くの人の心に残っている作品だろうな、と感じた筆者でした。
ひょっとするとプレイした年齢や状況によっても変わるかもしれないので(筆者は昨今、とにかく動物に弱い……)昔やった人も改めてプレイしてみると、当時とは違ったところに感情移入できるかもしれません。
GWも近いので、ぜひ『ピクセルリマスター』で『FF』を遊んでみてはいかがでしょうか。