日中ゲーム市場の違いを徹底討論!テンセント主催のシークレットディスカッションに潜入取材

2020-07-22 16:00 投稿

モバイルゲーム市場の違いを徹底討論

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2020年7月16日、日本と中国のゲーム開発事業者による非公開イベント“日中のゲームコンテンツ流通促進についてのシークレットディスカッション”が、テンセント主導のもとオンラインで開催された。

本ディスカッションは、日本と中国のゲーム開発者がそれぞれ異なる発展をしたモバイルゲーム市場を理解してゲーム流通をより円滑にするため、各国から参加した数十人のゲーム開発事業者たちがビデオ通話で対談するというもの。日本からはDeNAでゲームプロデューサーを務める張本龍司氏、MirrativのCEOである赤川隼一氏が登壇した。

誰でもできる配信サービスで小規模コミュニティを拡大

ディスカッションでは、赤川氏が日本最大のモバイルゲーム配信サービス『Mirrativ』の概要を中国事業者向けに紹介。

『Mirrativ』は、誰でも気軽に配信できることを重視しており、現在ではアクティブユーザーの20%が配信をしていることが語られた。

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張本氏が解説した“コミュニティマーケティング”の重要性には赤川氏も注目しており、ゲームアプリの市場動向を交えたコミュニティ施策に言及している。

現在の日本国内ゲームアプリ市場では、売上が伸びつつも、ひとりあたりのゲームプレイ数が下がっているという。氏はこの数字をもとに「ひとつのタイトルをいかに長く遊んでもらえるかがキモになってきている」とコメント。

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さらに赤川氏は、張本氏による“コミュニティマーケティング”の説明からさらに発展した小規模コミュニティの多数形成を解説。

これは、個人によるゲーム配信を活用したコミュニティ育成方法で、運営主導のコミュニティ形成とは異なり、『Mirrativ』のような、誰でもゲーム配信できるサービスが大きく寄与するものだという。

現在では、ユーザー主導型の小規模コミュニティが増加傾向にあり、ユーザー維持コストを重視する顧客生涯価値(LTV)の向上にもつながるそうだ。

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赤川氏はそのもっとも顕著な例として、『Mirrativ』の利用後に、某MMORPGタイトルにおける重課金ユーザー(月課金額10万円以上)の割合が6倍になったケースや、女性向けタイトルでARPU(1ユーザーあたりの平均収益を表す指標)が67%向上したことを紹介。

『Mirrativ』ユーザーが明確に、ゲームアプリの収益向上へ貢献していることが語られた。

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このほかにデータから読み取れる情報として、配信映えするタイトルでなくとも『Mirrativ』では盛り上がりが作れることを紹介。

その理由は、コミュニティであることを重視した配信サービスであるためゲーム画面の情報推移が少なくとも、配信者と視聴者のコミュニケーションにより盛り上がりが作り出せるという点にあるという。

最後に赤川氏は、こういったデータからゲーム開発各社が、“コミュニティマーケティング”へ注力することが重要であるとして、配信コミュニティによるアプリゲームへの貢献度合いの紹介を締めくくった。

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中国でも原作のあるRPGゲームが流行

続いて、中国から見た日本とのゲーム市場の違いとして、盛趣遊戯がそれぞれの売上高から市場の特徴に関して考察を述べる。

現在の中国では、モバイルゲームの売上がゲーム市場全体の70%を担っており、そのうちの54%がRPGとなっているそうだ。

つぎに市場で存在感が強いのはジャンル割合の大きいストラテジーゲームとなっているが、売上分布の割合ではMOBAゲームのほうが数字が大きくなっているというデータも示してくれた。

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つぎに、日本のIPタイトルが中国のユーザーに好まれていることを紹介。

日本のアニメ・漫画コンテンツに対する中国ファン層は、複数の流入経路からゲームへ来てくれる傾向があるため、中国事業者において人気IPを活用したゲームを重要視しているという。とくに原作再現度の高いものほど認知されやすくあるとのことなので、中国展開を意識する際にはこの点は重要になりそうだ。

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中国市場の紹介に合わせて、盛趣遊戯は日本のゲーム開発事業者に向けて、中国市場に合わせた活動、すなわちローカライズを強く意識してほしいと語る。

その中でも重要なポイントは、中国のパブリッシングライセンス取得における政府審査基準の把握とチート対策だそうだ。

最近でも、政府認可が下りていないという理由に2500以上ものアプリがAppStoreから消されていたり、そもそも認可が下りるタイトルが少なくなっていたりと審査は厳格化をしている。法令を遵守するためにも、ライセンス取得に関しては知見を多く抱える中国企業と組むのがいちばんの近道になるだろう。

またチート対策の重要性については国内市場でも同様であるが、中国市場においてはさらに重要度が高くなるようだ。

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続いて盛趣遊戯が長年にわたって開発、リリース、運営ノウハウを蓄積している点と、IPタイトルにおいてもリリース実績があるという内容が紹介された。

とくに今回のディスカッションでは、日本のゲーム事業者に向けて多数のIPタイトルを列挙することで、漫画、アニメコンテンツを重要分野としてきたことを強調している。

紹介の後には日本のゲーム事業者に対して、盛趣遊戯はスピーディなローカライゼイションが可能であり、積極的にIP提携を結ぶ姿勢を持っていることが語られた。

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異なるゲーム市場を持つ日本と中国の協業調整が重要

日中それぞれの市場紹介に続いては、それらをもとにしたディスカッションが実施された。ディスカッションはテンセントジャパン進行のもと、イベント中に寄せられた両国からの質問に、それぞれが答えていくという内容に。

ディスカッション最初のトークテーマでは「日本と中国の意思決定過程に要する時間の違い」というものが挙げられ、アイスブレイクからトークスタート。日本は意思決定までに時間がかかり、中国は意思決定までの時間が非常に短いという通念があるが、それは何に起因しているのだろうか?

これについて中国側からは「中国では企画を決める際に必要な承認が少ないので、短期間でプロジェクトが進行していきます。一方日本は承認を必要とする事項が多く、ローカライズ時に企業間の所要時間に差が出てしまっていると感じます」と意見。

どうやら、プロジェクトチーム単位で会社から大きな裁量権が割り当てられていることが進行速度の差となっているようだ。

続けて中国企業からは「日本国内のパートナー企業を探すのが難しい」という声が挙げられた。

企業間のマッチング部分に関しては、今回のディスカッションを包括する“グローバルゲームビジネスマッチングゲーム”を展開するテンセントクラウドが、プロジェクトの1項目として斡旋していくという。

そうしてディスカッションが進んでいく中で、日本企業側から「中国企業が日本のゲーム開発会社に求めていることを知りたい」という声が挙がった。

これに対し、中国企業側からは「中国人と日本人が持っているゲームに対する理解には差があるため、まずはそこを理解してほしいです。日本のゲームは日本人が持つこだわりや世界観を強く堅持していますが、中国進出を考えるのであれば、中国人の考えかたを理解し、ひとまず日本が持つこだわりを置いておいてもらえたら幸いです」という返答が寄せられた。

ディスカッションの最後には、中国企業が日本企業と提携する際に直面している問題、“監修”についてが語られた。中国企業側は、ゲームを開発した後にも日本側から監修が入ってくることがあり、これが課題として考えられているという。

スピーディーな開発を旨としている中国サイドにとって、監修というステップは簡略化したいものであり、また一方IPを保有しそれを大事にしている日本はこれを大切にしたい。こうした考えの食い違いは当面の課題として立ちはだかってきそうだ。

こうしてディスカッションは両国企業の考えかたや風習をすり合わせるような話が行われ、終了。改善案が提示されたトークテーマや、納得を得るのが難しいトークテーマなど、さまざまな色濃い話が行われた。

今回のオンラインカンファレンスを主催したテンセントクラウドが展開する“グローバルビジネスマッチングサービス”のマッチング事業や、海外進出コンサルティングは、今回のディスカッションでも露見した国外企業との協業調整を行ってくれるという。そしてその重要性は、今回のディスカッションでも明らかになった。

本サービスが中国市場進出に向けて、どれほどの有用性を示してくれるのか、今後の動向と実績に注目していきたい。

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