インディーゲームコンテスト“Google Play l Indie Games Festival 2020”最終選考会リポート Vol.1
2020-07-22 19:00 投稿
とんでもない熱量の20作品!
Googleが主催するインディーゲームアプリのコンテストイベント“Google Play Indie Games Festival 2020”のオフライン開催が中止され、一般非公開の中オンライン審査が開催された。
同イベントは例年、TOP20に選ばれた開発者本人が審査委員や一般ユーザーの前でプレゼン、質疑応答を行い、投票により各賞受賞タイトルを決めるイベントとなっていたが、今年はコロナ禍ということもあり、一般非公開の中でプレゼン、および質疑応答が行われた。
本記事では、TOP20に選出されたタイトルのプレゼンからわかったタイトルの概要と、審査員による質疑応答の様子を4回にわけてリポートしていく。
本記事にて紹介していくのは、『あまやどり』、『アンクラウン』、『Overturn』、『キューブガーデン』、『ギガフォール』の5タイトル。
【ノミネート作品一覧】
・雨音と癒しの放置ゲーム – あまやどり – / NaoYanase
・アンクラウン / 株式会社ネストピ
・Overturn / Kats
・CUBE GARDEN -キューブガーデン- / Fukudanuki
・GIGAFALL-ギガフォール- / 四季GameStudio
・グミシューター / simatten
・限界しりとりMobile / 株式会社baton
・SOUND JOURNEY SCHOOL WANDERER / SOUND JOURNEY
・ザ・ファイナルタクシー/ 合同会社ズィーマ
・スノーマン・ストーリー / Odencat
・Zelle -ツェレ- / Fuming
・定時退社オンライン / toru sugitani
・ホームファイター / hap Inc.
・ボクと博物館 / oridio
・まつろぱれっと / SleepingMuseum
・メットボーイ! / REBUILD GAMES
・モカ – Dagsaw Puzzle – / Kotoriyama, Inc.
・モンスタートレーダー / moitititi
・忘れないで、おとなになっても。 / GAGEX Co.,Ltd.
・World for Two / Seventh rank
【審査員一覧】(所属は割愛)
安藤武博氏、田中泰生氏、日高幸子氏、キム・チョンサ氏
五十嵐郁氏、上田太地氏、根本真也氏、細野修平氏
⇒審査員の詳細はコチラ
あまやどり
NaoYanaseが手掛ける『あまやどり』は、“雨の音で癒される癒しアプリ”をコンセプトにしたタイトル。キャラクターCVにYouTubeなどで活躍するタレントを起用している。
勉強や作業の合間、入眠前に聴くような、癒し・入眠用のアプリという側面を持つようだ。
ゲームとしてストーリー性を持たせつつも、睡眠導入などにも利用できるツールとしての側面を併せ持っているのが特徴敵なタイトル。なお基本的なゲームシステムは放置ゲームとなっており、時間経過で増える雨水をボトルに貯め、それを利用してストーリーを解放するというものになっている。
本作は小雨篇・大雨篇・春雨篇の3つにわかれており、放置したい人は小雨篇、ゲームとして遊びたい人は大雨篇など、プレイスタイルに応じて選択できる仕組みだ。
質疑応答
日高 癒しへのこだわりを強い作品でした。音とストーリーへのこだわりを感じましたが、デザイン面への訴求はもっとあってもよかったのではないでしょうか?
NaoYanase まず完成させようというところからスタートしたこともありますが、本作はあまり画面を長く見るゲームではないので、デザイン面よりも音やストーリーに力を入れています。
安藤 小雨篇のキャラクターボイスで、イントネーションになまりがあったのがとてもよかったです。通常、ゲームの音声収録ではリテイクされることも多いイントネーションがそのままになっているのは、意図したものなのでしょうか?
NaoYanase 収録はDiscordを通じて行ったのですが、その際になまりを残したバージョン、通常のバージョンのふたつを収録しました。ですが、前者のほうがより自然に感じたので、こちらを採用しています。イントネーションについては、CVを担当された方の出身地の方言になります。
安藤 方言を楽しむコンテンツではなく、思わず出てしまったものを採用するというのは目から鱗ですね。その意外性もよかったと思います。
アンクラウン
『アンクラウン』は、esportsのようにガチガチなゲームプレイではなく、緩く世界中のプレイヤーと戦えるRTSを作ることを目標にして開発されたタイトル。
1戦4分で遊べる手軽さ、フリック&配置だけの簡単操作、そして負けても報酬がもらえる優しさの3本柱をコンセプトに、それぞれの要素を追求して開発されたという。とくにRTSでの勝敗よりもRPG感覚での育成が楽しめる、育成要素に比重を置いた開発がされているとのこと。
しかし、その一方でRTSが好きなプレイヤーでも満足できるよう、バトルシステムは戦略や駆け引きが生じやすい形にしているそうだ。また“逆転が難しい”、“後出し有利”など同ジャンルが持つ弱点を排除し、多くのプレイヤーが楽しめるような工夫も加えられているという。
少人数で開発されたゲームながら、各種システムへのこだわりを感じさせるタイトルだ。
質疑応答
細野 作り込みがすばらしいタイトルでしたので、今後『アンクラウン』をさらに改善していくのか、違うチャレンジをしていくのかが気になります。
株式会社ネストピ 『アンクラウン』はより伸ばしていきたいです。ですが、新作を作りたいというクリエイターの欲求も強くあるので、どちらもやりたいという欲張った気持ちでいますね。『アンクラウン』につきましては、大型アップデートも予定しています。
細野 大型アップデートはどういった内容を?
株式会社ネストピ つぎはGvGを実装する予定です。コミュニティを強くしていきたいという思いがあるので、そこに注力していきます。
上田 本作において、IPとコラボする予定などはありますか?
株式会社ネストピ 世界観を壊さないという前提で、IPと組むのもアリだと思っています。我々はインディーに留まらない規模を目指していますので、開発メンバーといっしょに大規模タイトルを今後も作っていきたいと考えています。
キム バトルが終わった後の酒場での勧誘はドキドキしましたし、兵士のスキンを変えられるのは最近のアプリらしくてよかったと思いました。プレゼンで発表された以外にも、こだわった部分はありますか?
株式会社ネストピ 酒場で英雄と出会うというシステムは、まさにこだわった部分になります。現在のアプリゲーム市場では、ガチャがゲーム内キャラクター(英雄)との出会いの場になっていますが、それだと出会いは一瞬で終わってしまいます。
私はそこに疑問を感じていたので、キャラクターとの出会いを酒場での出会いというものに落とし込んでみました。そうしたことで、出会いにもストーリー性が生まれ、おもしろくなったと思っています。
Overturn
『Overturn』は、三角のキャラクターを動かして鍵を取るというシンプルなパズルゲーム。ステージでは動かせるブロックや静止することができないブロックなど、3つのギミックが登場するという。
開発者がこだわったのは画面遷移の部分で、不要なブロックを下に落とし、新たなブロックを上から降らせることでスムーズなステージ移動を可能にしているという。キャラクターの表現にも工夫があり、移動した方向への視点移動や、動かした方向に身体が縮むなど、操作への反応がわかりやすい作りになっているそうだ。
本作は着想を得てからわずか二ヵ月で完成したそうだ。そして完成後もゲームコンテストなどに出展させ、プレイヤーからのフィードバックを得てアップデートをくり返すことで、より完成度の高いゲームへとなったという。
フィードバックの具体例として、最初は10手必要だと考えていたステージが2手で解かれるなど、開発側の想定を超えたプレイを確認できたエピソードも紹介された。
質疑応答
五十嵐 『Overturn』はとてもよくできたゲームでした。今後、どのような開発者を目指していますか?
Kats 今回のようなアプリを作っていると、将来ゲーム制作に関わりたいのではと思われるのですが、自分はゲームよりもアプリ開発をメインに、ゲームについてはゆるく作っていきたいと考えています。
キム パズルが苦手な私からすると、難しいステージが多く救済措置が手薄だと感じましたが、これは意図したものでしょうか?
Kats その点については、難易度調整が上手くいっていない部分が多いです。序盤にやさしいステージを用意して慣れてもらう予定でしたが、それでも救済措置としては不足でした。
田中 本作を作るにあたり、インスパイアされたゲームはありますか?
Kats 突発的に思いついたものなので、参考にしたタイトルはありません。ふだんからゲームをさほどプレイしないので、影響を受けたタイトルもないですね。
田中 思いつきで、シンプルでしっかり遊べるゲームを作れるというのは才能ですよね。ぜひゲーム開発の道に進んでほしいです。
CUBE GARDEN -キューブガーデン-
本作は、3×3×3のキューブパズルをベースとした本格パズルゲーム。キューブで作られたフィールドを散歩する王様を、ルービックキューブの要領でゴールまで誘導できればステージクリアーとなる。
キューブパズルの敷居の高さを理解した上で、本作を開発しようと決意した背景には、インディーゲームの利点があったからだという。
大手メーカーが作るゲームは、商業的にもユーザーに成功を約束しないといけないという背景を持っているが、そういった縛りに囚われないインディーゲームでは、敷居が高いと思われるジャンルにも挑戦できると考え、開発に踏み切ったという。
開発の際には、プロトタイプを持ってキューブパズルのコミュニティやインディーゲームイベントに参加し、そこでユーザーの反応を見ながらプレイする人の思考パターンを分析していったという。
そして分析した思考パターンをもとに3つの工夫を施すことで、本作はパズルゲームが苦手な人でも楽しめる仕組みを完成させたという。キューブパズル初心者から上級者までが楽しめる仕組みは、テストを重ねたゲームデザインがもたらした結果と言えよう。
ほかにも、本作にはタッチパネルでの操作感や温かみのあるデザイン、断片的な情報からプレイヤーが自身の視点で思い描くストーリーなど、さまざまな要素が取り入れられているとのこと。
質疑応答
五十嵐 本作は今後アップデートの予定はありますか?
Fukudanuki 新作を手掛けている最中ですが、タイミングを見てギミックを追加したフリーモードのアップデートを考えております。ギミックについては試行錯誤中ですが、新しい要素を加えていければと。
安藤 この手のタイトルはステージデザインが難しいと思われますが、どのように制作しているのでしょうか?
Fukudanuki ステージ作成用のエディターを使用して、正解ルートから逆向きに回って作っています。ルービックキューブのコミュニティにも参加して、そこで教わったことも多いですね。
安藤 やはり、ルービックキューブが上手い人はこのゲームも得意ですか?
Fukudanuki ルービックキューブはパターンを覚えるものなので、本作では通用しない部分も多いようです。ふだんのセオリーが通じないので、ルービックキューブが好きな人にとっても新しい発見があり、好評を得ています。
GIGAFALL-ギガフォール-
『GIGAFALL-ギガフォール-』は、地球に飛来する隕石をタップで撃ち落としていくアクションゲームだ。
同作を手掛ける四季GameStudioが生まれたキッカケは、“TokyoIndies”という開発者向けのイベント。「就活に役立つかも!」と考え、月イチで簡単なゲームを作り披露していたのが始まりだという。それがSNSやイベントで予想外の反響があったため、年内リリースを目標に開発をスタートさせたそうだ。
当時美術大学の四年生だった開発者は卒業制作でべつのゲームを手掛けながらも、目標通り『GIGAFALL-ギガフォール-』の年内リリースに成功したという。
『GIGAFALL-ギガフォール-』の世界観にも深いこだわりがあるようで、“地球滅亡の危機に瀕した人類が、地球防衛の能力を鍛えるために政府が開発したアプリ”という設定を持っているという。そのため、回復やスピードアップのエフェクトには、その世界でアプリ開発に資金提供をしてくれた企業のロゴが入っているとか。
驚くべきことは、本作開発者はプログラミングが何もわからない状態からスタートし、Android端末を持っていないにも関わらずAndroidアプリをリリースしている点だ。こうした背景があったため、さまざまな問題を抱えながらのリリースになったようだが、無事にリリースされ大きな反響を得ている。
質疑応答
安藤 本作をプレイ中、偶然複数の敵を倒すことが多々あり、その偶然性が気持ちいいゲームだと感じました。敵の配置やスピードは、プレイヤーが偶然倒すことも想定して設計されているのでしょうか?
四季GameStudio 敵の配置はランダムですが、ランダムに出現しても一気に倒せる要素を入れているので、半分は意図したものになります。
安藤 ステージタイトルに物語性があるのも魅力と感じましたが、どのような考えでタイトルを付けたのでしょう?
四季GameStudio アプリを作る際、私はゲームの世界観からデザインを考えています。本作の場合は、システムから隕石をテーマにすることにしました。そこからストーリーを膨らませて、物語性を匂わせるようなタイトルを考えています。語りすぎず、プレイヤーに補完してもらうストーリーの体現を目指しました。
田中 デザインによってはもっと売れるタイトルになると思いましたが、デザインは開発側の好みでしょうか?
四季GameStudio インディーゲームは、カラーコードが決まったものが多いのですが、本作のカラーリングはさまざまなゲームを見てきた中で、自分がいいと感じたものを選んでいます。暗い雰囲気の中にも、明るさを感じさせるものを目指しました。
本稿では、実際に“Google Play l Indie Games Festival 2020”で行われたプレゼンおよび質疑応答の内容をまとめてリポートしているが、同イベントを始めとする各種イベントに出展予定だったインディーゲームタイトルにフィーチャーしたインタビュー企画記事もあるので、気になる人はこちらもチェックしてみてほしい。
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