天沼矛、天羽々斬、そして塩盈珠&塩乾珠!日本神話のアイテムアレコレ【しゃれこうべが語る元ネタの世界 第28回】

2020-04-29 12:00 投稿

すごそうに見えて、元ネタは意外に……?

いやぁ、自宅にいると時間がいっぱりあるようにも思うじゃないです?

こ~れがもう、『遊戯王』の完走が間に合わなそうなのに『セーラームーン』の無料公開も始まっちゃってもうたいへんですわ!!!

編集U「すこぶるどうでもいい」

HAHAHA! 『セーラームーン』もおもしろい!!!

さておき、今回は日本神話に出てくるアイテムをいくつかご紹介!

扱いまするは、天沼矛(あめのぬぼこ)、天羽々斬(あめのはばきり)、塩盈珠(しおみつたま)&塩乾珠(しおひるたま)の3つ!

編集U「4つあるが」

いやまぁ珠はセットってことでね……?

んでは、いざいざ!

【目次】
・天沼矛
・天羽々斬
・塩盈珠&塩乾珠
・次回は怪物のお話を!

天沼矛

まずは天沼矛! 名前の通り矛でございますが、こちらは日本神話の最初期、まだ日本の国土ができあがる前に登場したもの!

混沌から原初の神々が生まれ、その後イザナギイザナミのふた柱が生まれたのち、神々はイザナギ&イザナミに国土を固めるように命じます!

編集U「固めるってのはつまりどういう……?」

まだ世界が混沌状態を引きずっていたのか、地面(?)が最初はふわっふわした状態だったとかなんとか!

これを固めて地上界を作りなさい、ってなことですな!

20200429_海幸山幸 (6)

編集U「安定の雑さ」

ちなみに、このときにイザナギとイザナミが立っていたのは天浮橋(あめのうきはし)!

地上が固まっていない状態で天に橋が浮いてるってのが何とも謎というか神話ならではですね!

で、コロコロとかき混ぜられた地上の潮(海水?)が引き上げられた天沼矛から滴り落ち、積もり積もった潮が島となります! その名もオノゴロ島!

編集U「コロコロ混ぜただけにオノゴロ的な……?」

音的にそんな感じかもですね~!

で、そのオノゴロ島にイザナギとイザナミが降り立ち、日本列島やさまざまな神々を生み出していくってな感じですよ!

しかし島を作り上げたってことを考えると、天沼矛は相当デカいような……?

編集U「それを言い出すと、その矛を持ってたイザナギとかもかなりの巨人ってことになりそうだが」

日本神話の初期が巨人揃いってのもそれはそれでロマンありますね!

さておき、天沼矛はゲームで武器として登場したりすることもありますが、神話的には国作りの道具、儀式的なアイテムだったんですよ、と!

天羽々斬

続いて天沼矛よりも知名度高そうな天羽々斬! こちらはスサノオが持っていたとされる剣ですね!

20200429_海幸山幸 (5)

日本神話には十握剣(とつかのつるぎ)と呼ばれる、握り拳10個ぶんほどの長さ、だいたい80センチちょいの剣が登場しておりまして、天羽々斬もそのうちのひとつですね!

スサノオで剣、と言えば以前に紹介した天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)ですが、こちらは大蛇の怪物・ヤマタノオロチを退治した際に、その尻尾の中から出てきたというもの!

20200429_海幸山幸 (4)

対して天羽々斬は、スサノオがヤマタノオロチを倒す際に使っていたという代物!

オロチを切りつけた際に刃が欠けてしまった、という話もありますね!

編集U「んじゃ攻撃力はいまいちか」

んま~、とは言え相手がヤマタノオロチですからね~! 神の武器という意味ではけっこう強くてもいいような……?

個人的には天羽々斬と言うと『魔界戦記ディスガイア』に出てきた上位ランクの剣って感じしますね!

編集U「具体例は出さんでよろしい!」

ちなみにほかの十握剣で言えば、イザナミが火の神・ヒノカグツチを産んだ際に負った火傷がもとで命を落とし、それに怒ったイザナギがヒノカグツチの首を斬り落とすのにも使われています!

つぎに紹介するお話でもちらっと出てきたりと、やはり十握剣は日本神話の標準的な装備品だったっぽいですね~!

塩盈珠&塩乾珠

そしてラストが塩盈珠(しおみつたま)&塩乾珠(しおひるたま)!

編集U「名前的に潮の満ち引きをコントロールできるとか?」

いかにも! そのまんま満潮、干潮を引き起こせる宝珠ですね!

こちらの持ち主は、火遠理命(ほおりのみこと)、別名・山幸彦!

兄の火照命(ほでりのみこと)、別名・海幸彦との兄弟喧嘩のなかでこちらの宝珠をゲットするので、そのお話をざっくりと紹介しましょう!ちょっと尺余りそうだし!

ちなみにこの海幸山幸兄弟、系譜としては太陽神・アマテラス孫・ニニギノミコトの息子にあたりますよ! つまりはアマテラスのひ孫ってことですね!

20200429_海幸山幸 (3)

んでは、海幸山幸のお話をどぞ!

むか~しむかし、海幸彦と山幸彦という兄弟がおりました。

海幸彦は海で魚を釣り、山幸彦は山で獣を狩って暮らしていましたが、ある日、山幸彦がひとつの提案をします。

20200429_海幸山幸 (7)
海幸彦はこれを受け入れ、海幸彦が山で獣を狩り、山幸彦が海で魚を釣るという生活を始めました。

釣り針を借りて海に出た山幸彦ですが、なかなか魚は釣れず、挙句の果てに釣り針を海に落としてなくしてしまいます

編集U「しょうもない奴だ……」

やがて海幸彦が釣り針の返却を求めてきましたが、なくしたものは返せません。

仕方なしに山幸彦は事情を話し、自分の持っていた十握剣を砕くと、その破片で釣り針を作って兄に送ろうとしました。

が、海幸彦はこれを受け入れず、もとの針を返せと要求してきます。困り果てた山幸彦は、海辺で泣き始めてしまいます。

20200429_海幸山幸 (1)

そんな山幸彦を見かねた塩椎神(しおつちのかみ)が、海の向こうにある綿津見神(わたつみのかみ)の宮を訪れるように助言を与えます。

その言葉に従って山幸彦が海にある宮を訪れたところ、彼は綿津見神に気に入られ、綿津見神の娘である豊玉姫(とよたまびめ)を娶り、そのまま宮で3年ほど暮らすのでした。

編集U「針はどうした針は」

宮で暮らし始めて3年が経った後、ふと自分が宮に来た理由を思い出した山幸彦は、針探しの苦労を思ってか、大きなため息をつきます。

その様子を心配した綿津見神たちに事情を話すと、ちょうど1匹の赤鯛が喉を傷めていたという話がありました。

赤鯛の喉を調べてみると、そこに刺さっていたのは海幸彦の釣り針だったのです。

編集U「最初から事情を話してればすぐに帰れたのでは……?」

こうして山幸彦は釣り針を持ち帰りましたが、彼が宮から帰る前に、綿津見神は彼にひとつの呪文を授けていました。

「山幸彦よ、この針を兄上にお返しになる際、“おぼち、すすち、まぢち、うるち”と唱えながら、後ろ向きにお渡しなさい」

この呪文はそれぞれ、心配ごとで心を呆けさせる針、すさんだ針、貧しい針、愚かな針、という意味を持っていたのです。

20200429_海幸山幸 (2)

編集U「何も呪わんでも……」

そしてまた、綿津見神はふたつの宝珠を山幸彦に手渡しました。

「兄上があなたを恨んでくるようなことがあれば、この塩盈珠で兄上を溺れさせ、そののちにこちらの塩乾珠でお助けになるといいでしょう」

編集U「鬼かな?」

地上に帰った山幸彦は、綿津見神の言葉に従って海幸彦のメンタルをボコボコにし、ついに屈服した海幸彦は、山幸彦の守護者として仕えることを誓ったのでした。

~ 幕 ~

編集U「狩場の交換を申し出たのも釣り針なくしたのも山幸彦なのに、海幸彦が散々だな……」

ま、まぁ剣を折ってまで釣り針を作ったのに許さなかったから的な……?

天沼矛や天羽々斬に比べるとエピソードがしっかりしている感じの塩盈珠&塩乾珠ですが、ぶっちゃけゲームやらで見かけるかは怪しい感じもしますね!

編集U「これ元ネタの話するコラムだよな???」

山幸彦(火遠理命)とか海幸彦(火照命)はちょいちょいゲームとかで見かける(気がする)からセーフ!! ってことでひとつ!

次回は怪物のお話を!

ってことで、今回は日本神話に出てくるアイテムのお話をちょろっとさせていただきましたよ!

ゲームで印象的なアイテムだったり神様だったりが、原典だと意外に出番短いとかはよくある話ですよね~!

今回出てきたヒノカグツチとかはその筆頭だと思いますが!

編集U「生まれてきてすぐ斬られるからな……」

火の神って時点で格好いいんですけど、まさかの即死……!

さて、次回は何の話をしようかってところですが、今度は伝説の獣やら化け物やらのお話もいいかな、と!

編集U「あ~、キマイラとかそういう」

そうそう!

ちょっと図書館がロックダウンしてるおかげで資料の準備がアレな感じですが、おそらくギリシア神話系のお話になるかと!

それでは、YouTubeで無料公開中の『セーラームーン』を見ながらおさらばにございます!! ムーンティアラ! アクション!!

文/しゃれこうべ村田(@SRSWiterM

参考文献

上田正昭・井出至編(1978)『観賞 日本古典文学』(第1巻) 角川書店 .
蓮田善明(2013)『現代語訳 古事記』 岩波書店.

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