『ねぇ、君を救わせて』を手掛けたシナリオライター宮下英尚氏が開発中のスマホ向け新作MMO制作現場に突撃!本作で挑戦するMMOのタブーとは?

2018-08-21 18:58 投稿

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永劫たる振り子

挑戦を続けるクリエイター

皆さんは『ねぇ、君を救わせて』というスマホアプリをご存じだろうか?


LINE風のメッセージアプリを使ったサスペンスホラーアドベンチャーゲームとして、リリースされるとともにその上質なシナリオや、独特なゲームシステムが評価され、ストアで好評を博した作品だ。

今回は、そんな『ねぇ、君を救わせて』を開発したクオリアシステムズから、“まったく新しいMMORPG”を開発中という報を受けて制作現場に潜入取材を敢行。現在、クオリアシステムズの取締役を務めながら、これまでにシナリオライターとして数々の作品に携わった宮下 英尚氏に、その新作の動向をインタビュー。本記事にて紹介していこう。

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▲クオリアシステムズ取締役、宮下 英尚氏。

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▲クオリアシステムズの制作チーム。

宮下 英尚氏

■略歴
東京大学工学系大学院在学中に、RPGツクール95にてRPGゲーム『Lost Memory』や、ADVゲーム『人形の傷跡』を制作。多くのユーザーの心を掴み、Child-Dreamを設立。その後はPS3向けソフトからはじめ、スマホ向けアプリなど多数のアプリ制作に携わる。

■代表作
『Lost Memory』、『人形の傷跡』、『FolkSoul~失われた伝承』(全シナリオ部分を担当)、『千里の棋譜』、『ねぇ、君を救わせて』

このように数々のゲーム制作に携わってきた宮下氏に、まずはシナリオライターとしての在りかたや、いまのスマホアプリ市場について聞いてみた。

おもしろさについて妥協しない、シナリオライターとしての拘り

――まず、クオリアシステムズでは有料だったアプリを無料へ。広告も一切付けない“完全無料”のアプリ提供を数本*行っていますが、どういった意図でその決断に至りましたか?

『人形の傷跡』、『ANGEL WHISPER』、『緋染めの雪』、『千里の棋譜』

宮下 英尚(以下、宮下) 僕も若いころはビジネス目線での考えが強く、作ったものは必ずお金にするという意識が強かったのですが、ひと通りやりきったところもあったりして……過去、震災があったときにドネーション運営として無料配布を行ったことがありまして、その時に“たくさんの人に遊んでもらう”機会がありました。そこで大きく心境が変わりましたね。

――具体的にどういった心境の変化がありましたか?

宮下 昔は自分のゲームに価値を付けてくれる人にしか遊んでもらいたくないといった、ちょっと尖ったところがありました。ですが、最近はどうすれば多くの方々に遊んでもらえるかという考えをするようになりまして、そのひとつの手法として、広告などを付けない“完全無料”というアプローチをしました。

――ただ、現在は会社を運営していくといったことも考えなければならない立場かと思います。今後はどういった路線に進んでいくのでしょうか?

宮下 『緋染めの雪』や『千里の棋譜』といった4タイトルは、あくまで小さいチームでやってきたので、完全無料という形で世に出すことができました。今年からクオリアシステムズのゲーム事業として大きい開発に取り組んでいます。当然それはマネタイズをしてビジネスをしっかりやっていくということになります。

――宮下さんがゲームプランナー、シナリオライターの立場として心掛けていることはなんでしょうか。

宮下 おもしろさについて妥協しないということですね。よく“料理”に例えるのですが、自分がおいしいと思って出した料理でも、食べた人がおいしくないと判断すればそれはおいしくない料理になるわけで、それでは仕事をしたことにならないんですよね。クリエイターの価値は、最終的にはおもしろいといってくれるユーザーがいて初めて成立するものだと思っているので、自分のクリエイターとしての拘りは残しつつも、つねにユーザー目線で物事を考えるようにしていますね。

――昨今はレッドオーシャンとも言われるスマホアプリ業界ですが、これを生き抜くビジョンはありますか?

宮下 個人でも気軽にスマホアプリが作れる時代になってきているので、レッドオーシャンだとは思うのですが、正にいま開発している“新作MMO”は、口コミで広がりやすいという特性もありますし、個人で作れるレベルではないものを、クオリアシステムズのノウハウを総動員して作っています。

仰る通り、スタンドアローンのアドベンチャーゲームなどはDL数を伸ばすのはかなり至難の業になっているとは思います。『ねぇ、君を救わせて』をリリースして、DL数で見ると既存作ほどではないのですが、1ユーザー単位で見たときの熱量がすごかったのにはビックリしました。

本作はエンディングを複数用意しており、くり返し遊んでくれるユーザーが非常に多かったんです。広告型のアドベンチャーゲームとしてリリースした『ねぇ、君を救わせて』なのですが、1DLごとの広告料でいうとそこそこなものになっており、その点では勝機を見出せました。あとは、長く継続して遊んでもらえるサービスを提供することができれば、いまのスマホ市場でも十分戦っていけるのかなと思っております。

開発中のMMORPGとは?

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▲2018年内リリース予定の新作MMORPG『永劫たる振り子(仮)』。

――これまでノベルゲーム中心の展開でしたが、毛色の全く異なるMMORPGを作るキッカケはなんでしょうか?

宮下 まずRPGというところから入ると、アスキーが提供していたRPGツクール95の時代に『Lost Memory』という作品を作り売り出したのが原点で、それが幸いにもヒットしてゲーム開発の道に進んだという経緯があるので、じつはルーツはファンタジーRPGなんです。

なぜMMOなのかというのは、先に述べた長く継続して遊んでもらえるサービスという部分に着想を得ています。スタンドアローンのRPGをいまポッと出しても、大手各社が多くの作品を出している現状、きびしいという部分があると思います。

その点、MMOであれば長く遊んでもらえるものが作りやすく、本作の企画原案自体はかなり昔から練っていたものを使っているので、開発にスムーズに入れたということも大きいですね。

――『Lost Memory』から始まったクリエイターライフですが、そういった意味ではいちばんやりたかったことになるのでしょうか。

宮下 そういっても過言ではないですね。やりたかったというか「挑戦したかった」ですね。これまではスタンドアローンのゲームばかり作ってきたので、人と人が交わるMMOでどこまで行けるのか試したかった部分はあります。

――本作の開発にあたり、影響を受けたタイトルはありますか?

宮下 『ミネルバトンサーガ』という1980年代のRPGゲームがありまして、その世界観には強く影響を受けています。たとえば作中に登場する吟遊詩人に話しかけると、そこだけ音楽が変わるですとか、そういった細かい演出に感銘を受けました。
私はこれまでストーリーを作るということを中心にやってきたのですが、世界を作るという意味では『ミネルバトンサーガ』が挙げられますね。じつはこの『ミネルバトンサーガ』の作曲をされた大山曜氏とコンタクトを取りまして、新作MMOのBGMとして使わせていただく予定です。

――宮下氏の作品はこれまで物語を重視してきたと思いますが、本作の物語のポイントをお伺いできますか。

宮下 本作は古代氷河期のような世界設定となっていて、終末に向かう世界をふたつの陣営の視点から物語が展開されます。“進取と調和”というふたつの陣営を用意しており、ユーザーは片方だけを選択することが可能で、ヒトがメインとなる進取と、自然を愛する調和のエルフと分かれます。あまり多くを語るとネタバレになってしまうのですが、現代の地球温暖化といった問題を連想させるような内容などを盛り込んでおり、ユーザーはそれぞれ選んだ陣営の視点で物語を読み進めていくこととなります。
そのふたつの陣営がどう交わっていくのか、そしてどういう結末を迎えるのかに注目してもらいたいですね。

――MMORPGでは明確な物語のエンディングを用意するのが難しそうですが、本作はエンディングを用意しているのですか?

宮下 進取と調和どちらを選んだかによって物語が変わってくるマルチエンディングにはなりますが、ストーリーのオチは用意しています。

――本作ならではといったゲームシステムもあるのでしょうか?

宮下 本作はテキストベースの身軽な作りになっています。職業ひとつ追加するにしても、専用アバターを用意すれば簡単に追加できるといった具合に。そういった拡張性の高さは本作のウリだと思います。なので、職業やアイテムの数はかなり膨大な数量を用意できるので、そういった昔ながらのやりこみ要素が好きな方には楽しんでいただけると思います。

――事前に拝見した企画書にも、100の職業、1000の技というキーワードがありましたね。

宮下 その通りです。コツコツとアイテムを集めるですとか、キャラの職業をいろいろ経験していくといったことが好きなユーザーのニーズは満たせると思っています。

 
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▲戦闘はRPGとしてはおなじみのコマンド入力式。シンプル故に取っ付きやすい。

――ユーザーがキャラを強くしていくモチベーションは、本作においてどういったポイントになりますか?

宮下 基本的にはストーリーを進めていくことにはなるのですが、自身が強くなることで“他者を助けること”ができるようになってくるんです。本作は戦闘以外にも、“ランダムイベントエンカウント”というシステムがあります。たとえば、宝箱にエンカウントするイベントがあったとします。

自身の開錠スキルが高ければ問題ないのですが、そこでほかのプレイヤーに助けてもらうという選択肢もあるというわけです。ほかのユーザーに頼られる。そういったこともモチベーションのひとつとしてほしいですね。

――どういった層をターゲットにしていますか?

宮下 全年齢対象を意識して作ってはいますが、自分の作品を遊んでいただけているユーザーが30代以上が多いので、まずはそこがしっかりついてこれるよう作りたいですね。昨今のゲームは煩雑なUIが多いじゃないですか。どこをタッチすればいいのかよくわからない……みたいな。なので、そういったことがないよう極力シンプルな設計を心がけています。

――課金形態はどういった仕様を考えていますか?

宮下 基本的にはすべて無料で最後まで遊べるように、と考えています。まだ検討段階ではあるのですが、広告の導入や、全滅した後のコンティニューなど、そういったものを現在は考えています。

――最後に、ファン、ユーザーへひと言お願いします。

宮下 これまで作ってきたゲームの中では挑戦していることが多いゲームとなります。これまでシナリオメインでゲームを作ってきて、本作のようにシステムであったり、世界観から取り組むといったことは初めてとなります。既存ユーザーの方だけではなく、私のゲームを触れる新しいユーザーの方々にも、ぜひ期待してお待ちいただければと思います。

 
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▲左、クオリアシステムズ代表取締役岡崎 太氏。右、宮下 英尚氏。

永劫たる振り子

対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
このゲームの詳細を見る
ジャンルMMORPG
メーカークオリアシステムズ
公式サイトhttps://qualias.jp/mmorpg/
配信日2018年
コピーライト

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