日本と海外のインディーゲームの違いとは?『はねろ!コイキング』の製作者が語るインディーゲームの舞台裏

2018-04-06 20:55 投稿

ふたつの視点からインディーゲームの実情に迫る

2018年4月6日、東京都港区のGoogle Japanオフィスにて、“Google Play インディーゲームディベロッパー メディアセッション2”が開催された。

本稿では、その模様をお届けする。

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『はねろ!コイキング』の開発者が語るインディーゲームの舞台裏

今回開催されたイベントは、4月28日に予定されている“Google Play INDIE GAME FESTIVAL 2018”に先駆け、トークセッションを通してインディーゲームの開発現場の実情を届けていこうという趣旨のメディア向けトークイベント。

2回目の開催となる今回は、ゲストとして『はねろ!コイキング』や『生きろ!マンボウ!』で知られるSELECT BUTTONのCEO、中畑虎也氏が登壇。

Google Playビジネスディベロップメントマネージャの五十嵐郁氏から中畑氏へインタビューを行う形で、セッションが進められた。

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▲左から中畑虎也氏、五十嵐郁氏。

日韓のインディーゲームの違い

最初のトークテーマは、日本と韓国のインディーゲームの違いについて。

中畑氏は過去に韓国で開催された“INDIE GAME FESTIVAL 2016”に審査員として参加した経歴も持ち、ここではそこで体感した、日本インディーメーカーと韓国インディーメーカーの違い、そして市場の違いについてを語ってくれた。

市場の違いについて、氏は「日本のインディーゲーム市場では現在、尖ったアイデアひとつでシンプルに遊べるカジュアルゲームが主流となっています。そして一方の韓国のインディーゲーム市場は、3Dモデルを使用したリアルタイム対戦機能を実装したゲームが多い」とコメント。

中畑氏はこの違いが生まれる理由について、“市場規模を背景とした狙いの違い”によるものと分析している。

曰く、韓国のインディーデベロッパーは市場規模の関係上、最初から海外展開を意識してゲームを制作しているが、日本のインディーデベロッパーは国内市場でヒットすれば十分な売上が期待できるので、いかに国内で流行らせるか、という点を重視しているとのこと。

市場規模の違いがゲームのターゲットの違いに繋がり、結果としてゲームそのものの違いとして現れているのではないかという分析だ。

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審査で注目しているポイントは?

つづいて中畑氏に投げられた質問は「審査ではどのようなポイントを見ているか」、「どのようなゲームを探しているのか」というもの。

韓国で審査員経験のある中畑氏は、自身の経験を振り返り「審査をするためにゲームに触れられる時間は、思っている以上に短い」と語り、プレゼンテーションがいかに大事か、ゲームのおもしろさが伝わりやすいゲームデザインが重要であるという話を説いてくれた。

また、韓国で審査員としてインディーゲームの審査をした際の思い出として「プレゼンテーション後の会場の盛り上がりと、自身が付けた点数は比例していた」といったエピソードも紹介。

国民性の違いにより盛り上がりの度合いに違いはあれど、人を盛り上げられるようなプレゼンテーションが出来るかどうかという差は大きいと示してくれた。

さらに、基本的には審査項目に沿って審査するが、自分がおもしろいと思うかどうかはユニークさで見ていると説明。「ほかに代替品がないか」、「とがったところがあるか」という点に注目していることを明らかにした。

開発者から見た“Google Play INDIE GAME FESTIVAL 2018”のメリット

ここで五十嵐氏から、「Googleが主催するインディーゲームイベントについて、審査員でありデベロッパーでもある立場から見るとどのように映るか」という質問が。

 
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中畑氏は韓国で開催された“INDIE GAME FESTIVAL 2016”について、ふだん日の当たらない開発者たちが、ステージでプレゼンテーションを行い、観客から大きな歓声を受けるスターとなっていたことを指し、「かっこいいイベントだったという感想に尽きる」と表現。

さらに中畑氏は、このイベントに参加することで得られる3つのポイントをピックアップしてみせる。

まず1点目は、眼の前でユーザーにゲームを触ってもらい、直接反応をもらえるという点。

やはりインターネットを介してコメントを寄せられるよりも、目の前でユーザーのリアクションが見られるというのは、開発者としては大きな経験となるのだろう。

続く2点目が、ユーザー獲得の場としてのメリット。

“Google Play INDIE GAME FESTIVAL”への参加は、巨額の広告費用を投じなくとも多くのユーザーにタイトルを見てもらえる、露出の場として機能し、さらにアワードを受賞できればGooglePlayでフィーチャーされるという特典も得られる、ユーザー獲得の大きなチャンスが得られる場。

メジャーなメーカーのように、潤沢に広告費をつぎ込めないインディーメーカーにとって、このように低コストで大きく宣伝を行える場は貴重であるため、この点は見逃せないとのこと。

そして3つ目に挙げられたのは、ゲーム開発者同士のつながりが生まれるという点。

「インディーゲーム開発は少人数で行うため、ふだん孤独な作業になりがち。こうしたイベントを通して仲間ができれば、互いに意識しあってモチベーションアップにつながるのではないか」と述べ、実際に開発に携わる立場から見たイベントの効果を語った。

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“丸み”と“とがり”を意識したゲームづくり

セッションも半ばを過ぎ、話題はゲーム開発者としての中畑氏に関する内容に。

中畑氏がゲームを作る際、大事にしているのが“丸み”と“とがり”だという。“丸み”は見たことがあるような親近感、“とがり”は違和感や突拍子のなさ、見たこともないものを指すとのこと。

まず“とがり”について、「とがってないと、そもそもみんなの目に止まらない。最初に何だこれは、と思わせなきゃいけない」と語る。

ただ、とがりすぎているだけでは一瞬でコンテンツを消費されてしまうため、実際にゲームに触れた後には、丁寧な作りであることを感じさせることや、またなにも考えずに遊べるような“親近感”が得られるような工夫が重要なのだそう。

中畑氏はこのふたつのバランスがゲーム開発、とくにインディーゲーム開発には大事なポイントとして、実際の開発時には“丸み”と“とがり”をつねに持つように心がけていると述べた。

事実、それを重要視している中畑氏が手掛けるゲームアプリは、翌日継続率が8割超という驚くべき数字を叩き出していることも明かされ、会場からは驚きの声が上がっていた。

 
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トークの最後には、中畑氏が今後提供する新作についての話題も。

中畑氏の携わるゲームは、ダウンロードや売上の7割程度が海外のユーザーによるものだという。

これに加え、海外展開を強く意識する韓国のデベロッパーに触発されたこともあり、現在は海外でヒットするゲームを作りたいという意識が高まっているとのこと。

中畑氏は、新作は最初から海外での展開を意識していることを明言。現在は東アジアや北米など、海外でもヒットするようなゲームを考えていると語った。

質疑応答

セッション終了後、来場者から中畑氏に対する質疑応答が開催された。

●中畑氏がこれまで見てきた中で「これはスゴい!」と思ったタイトル

中畑 「いろいろあるが、直近では『どうぶつタワーバトル』。小さい子も女の人も遊べて、言葉はいらない。動画を見たらすぐやれてしまう手軽さと、動物というシュールでかわいらしい要素もある。あんな簡単なゲームで成立して、さらにおもしろい。最近ではいちばんすごいと思った」

●インディーゲームの収益体制

中畑 「とにかくダウンロード数を増やすのが僕たちが考えていること。ソーシャルゲームと違い、我々のゲームは運営が不要でほとんど手がかからない。ひとつのゲーム(のダウンロード数)を上げることに注力している」

●中畑氏のゲームが海外でヒットした理由について

中畑 「結論はわからないが、こうしてはいけない、というのはある。海外を狙うにしても、海外の人はこういうものが好きだろうな、というデザインでは作らない。欧米受けするイラストでは、欧米の人が描いた絵には勝てない。自分たちが思うようにゲームを作って、そこから欧米の人がわかるように、文字を減らすなどして、文字を読まなくてもわかるようにするべき。僕たちはそこに力を入れているから海外でも通用したのではないかと考えている」

●世界的にインディーゲームのトレンドとして、どういうものが流行っているのか

中畑 「最近はユーザー獲得の方法が変わってきている。いままでのカジュアルゲームは1日か2日で終わってしまうため、1本あたりの収益が小さく、ダウンロードで稼ぐモデルだった。しかし最近は動画広告を出稿し、広告で客を集めて広告収入を得るモデルもある。インディーゲームディベロッパーも広告を出すようになってきた」

●制作するときにSNS受けや動画映えは考えているか

中畑 「僕らがいちばん考えているんじゃないか、というぐらい考えている。このゲームはSNSでバズる要素があるのか、というのを企画段階から考えている。この2月から3月にかけて、ゲーム制作が1カ月進んでいない時期があった。そのときは企画書を作り、それがSNSでバズるかどうかを考えてやめる、というのをくり返していた。それほどに重視している」

イベント参加応募は4月15日まで!

作品を評価する審査員としての顔と、作品を評価されるディベロッパーとしての顔を併せ持つ中畑氏。

今回のセッションでは中畑氏だけが持つ視点を通じて、インディーゲーム開発現場の実情をさまざまな角度から覗くことができた。

そんな中畑氏が審査員として参加する“Google Play INDIE GAME FESTIVAL 2018”は4月28日に開催予定。

イベント参加応募は4月15日まで受付を行っている。

興味を持った人は実際に参加し、インディーゲームシーンの盛り上がりを体験してみてはいかがだろうか。

“Google Play INDIE GAME FESTIVAL 2018”公式サイトはこちら

“Google Play INDIE GAME FESTIVAL 2018”公式サイト内参加フォーム

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