小規模開発だから出せた”尖った個性”『旅かえる』生みの親がインディーゲームの舞台裏を語る

2018-03-08 19:29 投稿

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旅かえる

人気インディーゲームを生み出す秘訣とは?

2018年3月7日、東京都港区のGoogle Japanオフィスにて、“Google Play インディーゲーム セッション”が開催された。このイベントは、日本から世界へ向けて活躍するインディーゲームの開発現場を、メディアを通して世の中に届けていくことを目的として開催された。

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Google Playビジネスディベロップメントマネージャの五十嵐郁氏は、今回のセッションを企画した意図について「コンテンツの多様性が非常に重要だと考えていて、多様なニーズに応える多様なコンテンツをユーザーに届けたい。ヒットポイントの作品がクリエイティビティや独創性の面で非常に優れていたため、このような席を設けた」と述べた。

今回のセッションで取り上げられたのは、現在国内や中国、台湾で大ブームを巻き起こしている『旅かえる』。同タイトルを開発したヒットポイントから、ディレクターの高崎豊氏、プランナーの上村真裕子氏がスピーカーとして登場した。

セッションは五十嵐氏が質問役となり、インタビューのような形式で進行した。

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▲左から上村真裕子氏、高崎豊氏、五十嵐郁氏。

『旅かえる』とは?

『旅かえる』は、いわゆる“放置ゲー”と呼ばれるタイプの作品。

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ゲームの主役となるのは旅好きの“かえる”。かえるは気が向いたときに旅に出て、一定時間が経過すると戻ってくる。戻ってきた際には各地で撮影した写真や、旅先の名産品など、訪れた場所のおみやげをプレイヤーに見せてくれる。

かえるが旅に出る際、“おべんとう”や“おまもり”などを持たせて送り出すことで、旅の結果が変化。おなじ旅先でも違った風景やおみやげを持って帰ってきてくれる。

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『旅かえる』生みの親が語る誕生秘話

気になる最初のテーマは、本作の誕生経緯について。

高崎氏によれば、もともと『ねこあつめ』に続くようなゲームを考えていたときに、上村氏が“旅をするかえる”をモチーフにしたゲームの企画案を出してきたことがスタートだったという。

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決め手となったのは、“旅”と放置要素との相性。かえるがただ旅をするだけ、という部分に放置要素との相性の良さ、およびユーザーに好まれそうなおもしろさを見出し、開発チーム内での話し合いを経て製品化にいたったとのこと。

この狙いは見事にハマり、順調なスタートを切った『旅かえる』だが、その人気は国内にとどまらず、現在日本語版しかリリースされていないにも関わらず国外から高い評価を受けている。

とくに中国での人気が高く、iOS版は中国でのダウンロード数が全世界の95%を占めるほどの人気。

また台湾では、ローカライズされていない本作の内容を中国語で説明したアプリが登場し、『旅かえる』とそろって無料アプリランキングの1位、2位を獲得するほどに人気が加熱しているという。

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▲Google Play内でちょっと調べただけでも、数々の翻訳アプリや攻略アプリがヒットする。

こうした海外でのヒットの原因について、高崎氏は「まったく予想していなかった」としながらも、「ソーシャルメディアで拡散してもらうべく組み込んだ機能が評価され、その結果として中国や台湾など、ソーシャルメディアが盛んな地域で広がっていったのではないか」と分析した。

小規模開発の現場から生み出せる尖った個性

続くトークテーマは、こうしたヒット作を生み出しているヒットポイントの開発環境について。

同社は名古屋と京都に拠点を持っており、社員数は合わせて23~24名。社長も含め、全員が開発に携わっているそうだ。会社の方針でチーム単位での開発を行っており、名古屋に1チーム、京都に3チームと、合計4つの開発チームが存在。

チームごとに独自でプロジェクトを進める形になっており、スケジュール管理のみならず収益や収支も含め、チームごとにほぼ独立して管理されているという。

高崎氏はこのチーム制度について、「言ってしまえば放任みたいなシステム。だが逆に言えば現場主義の形が取りやすく、会社の構造にジャマをされないのがひとつの強み」と説明した。

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作品のオリジナリティを守るための取り組みとして、高崎氏のチームでは“客観的に見てもらえる場面を大事にする”“個々の得意な分野を活かす”という2点を重要視しているという。

まず客観的な意見の例として、『旅かえる』開発当時にGoogleとの打ち合わせの中で挙がった意見を受けて企画会議を行い、ブラッシュアップを重ねていったエピソードを披露。「いまはどのようなゲームを作っているか、誰にでも言って回っているわけではない。客観的な意見をもらえる限られた機会をひとつひとつ大事にしている」と、外部からの意見の重要性を説いた。

さらに“個々の得意な分野を活かす”点については、「大人数がいるからこそ作れるゲームもあると思うが、個人が担当しているものであればどこかしら尖ったものがある。それを表に出せるように作っていけるのが少人数で作る強み」と、小規模開発ならではのメリットを強調した。

小規模開発のもうひとつのメリットとして挙げられたのが、スケジュール管理。上村氏によれば、『旅かえる』は2017年1月ごろに企画が立ち上がり、当初は半年程度で制作する予定が10カ月ほどに延びた経緯があるという。こうしたスケジュールの変更への柔軟な対応も少人数のメリットだと語った。

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セッションの中で印象的だったのが、高崎氏らは個性の尖った作品を作る一方で、つねに客観的な視点からその全体像を把握し、堅実にゲームを改良していく姿勢を見せていたこと。

持てる武器を活かしたうえで、さらに地道な努力を積み重ねることこそが、インディーゲーム市場で成功を納める最大の秘訣なのかもしれない。

着々と開催の準備が進められる“INDIE GAMES FESTIVAL 2018”

Googleでは今回のセッションをはじめ、小規模ディベロッパーの支援を目的としたインディーゲームイベントを開催予定。

その中でもっとも大きなイベントとなる“INDIE GAMES FESTIVAL 2018”は、Google Playで配信されている作品を対象としたインディーゲームコンテスト。2016年から韓国やアメリカで開催されており、日本では今回がはじめての開催となる。

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このイベントの目玉は、クリエイターにはたまらない豪華賞品の数々。トップ3に入賞した作品にGoogle Play ストアでの特集やゲームの翻訳、Google I/O 2018への招待など、さまざまな賞品が用意されている。

▶賞品の詳細はこちら

4月28日に開催されるファイナルイベントでは、コンテストの応募作品の中から上位20作が一般展示され、イベント参加者が実際にゲームをプレイし、よかったと思う作品に投票することができる。最終的には一般参加者による投票結果と審査員による審査結果を総合し、トップ10とトップ3が決定される。

ファイナルイベントの審査員を務めるのは以下の6名と、ゲームビジネスや開発に携わっているGoogle社員4名の計10名。

安藤武博(シシララ 代表取締役/ゲームDJ)
カイロくん(カイロソフト プログラマー兼アイデアマン)
川島優志(Nianticアジア統括本部長兼エグゼクティブプロデューサー)
キズナアイ(バーチャルYouTuber)
中畑虎也(SELECT BUTTONディレクター)
林克彦(週刊ファミ通編集長)

▶審査員の詳細はこちら

なお今回のレギュレーションでは、2017年1月1日以降にGoogle Playで配信されたゲームが参加可能。

現段階ではベータ版のゲームも、2018年内に正式配信されるものであれば対象となる。こうした作品がファイナルイベントに残れば配信前のゲームを手に取って遊べる可能性もあるとのこと。

高崎氏は本イベントについて、「僕自身学生のころからゲームを作っていたが、遊んでもらえるのは友達の中だけということが多かった。実際にゲームを遊んでもらい、その表情を見られる機会はとても大事だと思う」とコメントを残した。

INDIE GAMES FESTIVAL 2018開催概要

【場所】
複合施設“TABLOID”(りんかい線日の出駅近く)

【時間】
4月28日10時~17時

【ファイナルイベントまでのスケジュール】
3月25日:ゲーム登録受付締切
4月10日:トップ20ファイナリストの発表(web上での選出)
4月15日:イベント一般参加受付締切
4月16日:イベント一般参加可否連絡
4月28日:ファイナルイベント開催

“INDIE GAME FESTIVAL 2018”公式サイトはこちら

旅かえる

対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
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ジャンルシミュレーション
メーカーヒットポイント
公式サイトhttp://www.hit-point.co.jp/games/tabikaeru/
配信日配信中
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