スマホ版『ロマサガ2』がアップデートでSFC版のSEに近くなるかも!?

2017-05-09 00:40 投稿
ゲームエンジン“Unity”を使うデベロッパー向けに毎年行われているカンファレンスイベント“Unite”。
本記事では、2017年5月8日に行われたUnite 2017 Tokyoの講演“大作RPGを効率的且つ高品質にリマスターするためのUnity活用”の模様をリポートする。
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本講演に登壇したのは、アルテピアッツァの眞島真太郎氏(アートディレクター/CGデザイナー)、杉村幸子氏(開発ディレクター/ゲームシナリオライター)、吉岡直人氏(テクニカルディレクター/エンジニア)。
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本題に入る前に、アルテピアッツァがどのような会社であるかを杉村氏が紹介。
同社は『ドラゴンクエスト』や『ロマンシングサガ』などの大作RPGの企画・開発や、オリジナル作品『オプーナ』の開発を手掛けるほか、パブリッシャーとしてもニンテンドーDSiウェアや3DSダウンロードソフトなどを配信。
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約30年にわたってゲーム開発を行ってきた同社。Unityを活用し始めたのはスマホ版『ドラゴンクエスト』シリーズからだという。そして昨年iOS、Android、PlayStation Vitaで配信された『ロマンシング サガ2』(以下、『ロマサガ2』)も、そのUnityを使って開発された。
杉村氏に続いてマイクを持ったのは吉岡氏。実際にUnityを使った経験者の立場から、「現状では、マルチプラットフォーム性という意味では最強と言っていいかもしれません」、「新ハードが出るときは同発完全サポートをしてもらえるとうれしいですね」など、同エンジンを活用したゲーム開発の利点から、より使いやすくなるための要望などが語られた。
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講演のトリを務めたのは眞島氏。『ロマサガ2』のアートワークにおけるリマスターについて、アートディレクターの視点から、同氏が気を使った部分が語られた。
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「ゲームに関する絵の仕事にはいろいろ部分があります」と眞島氏。そのいろいろな部分というのは、キャラクターの魅力やマップの美麗さといった完成評価の部分と、ゲームの仕様として必要な要素が必要な情報量で、必要な印象の付けかたとして表示されているかという部分だという。
それに加えて、眞島氏曰く「最近新たに加わった要素がある」そうだ。それが重量バランス。
これはスマホゲームを持ったときの手にかかる重量のバランスで、縦持ちで遊ぶか、横持ちで遊ぶかの違いで、そのバランスが変わるのだとか。それによって「画面上のメニューなどのレイアウトが変わる面もある」とのこと。
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上のスライドは、『ロマサガ2』の携帯ゲーム版とリマスター版の画像の比較。よく見ると、キャラクターサイズと建物のサイズがほぼオリジナルを踏襲している。
なぜサイズを踏襲しているのかというと「じつはゲーム性の部分でサイズを変えようがなかった」と眞島氏。「『ロマサガ』をプレイしたことがあるユーザーにはわかると思いますが、『ロマサガ』はフィールドで敵キャラを避けて歩くことが重要なポイントになっているので、キャラや建物のサイズの比率が大きく変わってしまうとゲームがまったく別のものになる」(眞島)という問題が。従って、サイズの踏襲は絶対に外せない要素として残っているとのこと。
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リマスター版を作るにあたって、「キャラクターひとり分、要するに1歩動くマス目のサイズが36ドットという変則的なサイズになっています。これは画面の見えかたと実際のデータを作る要素を考えた結果、8の倍数ではなく36ドットという奇妙な数字になったが、これもゲーム性を変えないようにするために割り出したもの」だそうだ。また、画面四隅にあるメニューボタンも画面の比率が変わり左右に余白ができた部分を使って、ボタンをできる限り大きく配置している。このような部分も「絵に携わる人間の作業」として眞島氏から語られた。
続いて、『ロマサガ2』CGリマスターのコツについて。“予算と作業コストから最高のパフォーマンス”というのが、その秘訣のようだ。
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眞島氏によれば、全体のCGの作業量を割り出したときにゲーム全体のゲームサイズを考え、そこから逆算していく方法。1度に読み込めるマップの広さなど、ゲーム性に関わる部分もあるため、それらをすべて考えたうえで、どのサイズなら実装できるかを、いろいろなパターンで考えたという。その結果、実装データはjpgを使い、背景アニメーションに関しては3Dで制作。キャラ絵は2Dのドットを使用するという形になったそうだ。
ちなみにモンスターは元のドット絵からパーツを分解し、アニメーションで動かす手法を用いているとのこと。キャラはオリジナルが発売されたあともクオリティアップが随時進んでいる部分もあったため、「それらをうまく使いながら高品質なものを目指した」(眞島)
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CGリマスターについて「じつはこれがキーだと思うんです」と眞島氏。そのキーというのが、ゲームに対するユーザーの印象。
「ゲームって比較的全体の雰囲気、どんなゲームだったかなという部分はマップが与える印象が大きい。どんなキャラがどんな物語をというのを深く印象に残すという意味では重要で、街を歩いている人物も含めたキャラクターをオリジナルから大きく変えないということが大事だと思います。オリジナルの発売から28年経っていますが、当時のユーザーさんと新しいユーザーさんを結びつける部分で、マップやキャラといった部分はむしろ大きく変えないで引き継ぐことが重要だなと判断し、あえて高解像度化はしなかった。2Dのドット絵を工夫して動かしたことで懐かしさと新しさの良いバランスが生まれた」(眞島)
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また、全体の制作コストも関わる話として、「OP、EDなど長いイベントシーンで、けっこう大技を使っています」と眞島氏は、実際にスライドでOPシーンの映像を流しながらその手法を解説。
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曰く、長いイベントシーンはすべてSpriteStudioのワンシークエンスのアニメーションとして作ったという。「途中、暗転が入ったりもするがそこも含めて作ったのでフレーム数が膨大なことになっている」としながらも、「まとめて一本のデータとしてグラフィックの人間が作ったので、微妙なタイミングの調整というところでスプリクターの手間をかけずに済むのが大きなメリットだった」とのこと。また、細かくシークエンスを分割して搭載すると、さまざまなスマホ、さまざまな環境でみたときにBGMとのタイムラグが出てしまうそうだが、その点も心配しなくて済む面もあったそうだ。
講演の最後に眞島氏は大作RPGのリマスターについて、「リマスターの作業というのは、新規に作るというより、物語を再解釈することが重要かなと思う」と自身の考えを述べた。
また、「(オリジナルで)表現されたものに対して、さらに何かそこに足してやろうとすると作品の方向性がブレます」とリマスターにおける注意点を挙げ、「スーパーファミコン時代は、ハードの表現力がいまほど豊かでなかったので、パレットの割り振りひとつとってもものすごく制約がある中で作っていた。だから、それを新しく表現し直す際に、当時オリジナルを作った人たちが“どういうものをイメージして作ったのか?”というところに、一旦立ち返ってみる」そうだ。
そうやって立ち返ったところから、「それをもう一度自分の中で現実的な風景として再構築し、新しいメディアの新しい表現に落とし込んでいく」作業を眞島氏は行っている。「それがむしろ作品の本質というか、オリジナルの狙い、見せたいものを変えずに良い形であたらしい表現にできる手法かなと思っています」(眞島)
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「まずはオリジナルをきちんとリスペクトして、オリジナルで表現したかったことを僕らはどうやったら新しい表現で歪みなく新規のユーザーに伝えられるかに注力しました」と語った眞島氏。原作へのリスペクトこそが、『ロマサガ2』、そして大作RPGのリマスターにおける最大の秘訣のようだ。
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