スマホゲームをPCで遊ぶって意外と新鮮!DeNAのPCゲームサービス“AndApp”のキーマンにその狙いを聞いてみた
2017-05-09 13:00 投稿
PCならでは“ながらプレイ”に注目
スマホゲームの魅力といえば、時間や場所を選ばず、いつでも手軽に遊べるところ。ゲームのほかにも、映画や音楽、SNSなど、スマホ1台あれば何でもできてしまう。
そんな時代にあえてスマホゲームをPCで遊ぶためのプラットフォームを立ち上げ、着実にタイトル数、ユーザー数を拡大しているサービスがある。DeNAが展開する“AndApp”だ。スマホ版とPC版でデータ共有できるマルチログインに対応しており、外ではスマホ、家ではPC(AndApp)という使いわけができるのが特徴だろう。
ただ、いちスマホゲームユーザーとして、本当に需要があるのかという疑問も。
そこで、AndAppに直撃し、サービス立ち上げのきっかけ、現状と今後の展開について話を聞いた。
AndAppでゲームを遊んでみる! |
PCを常日頃から開く方の“ながらプレイ”に
――まずはじめに、“AndApp”を立ち上げたきっかけから教えてください。
佐藤:実体験からですね。AndAppを立ち上げる前からPCでプレイできるスマホゲームはいくつかあって、実際に遊んでみたらゲームがとても捗ったことがきっかけです。
――“捗る”というのは?
佐藤:PCの処理速度や通信速度などもそのひとつですが、スマホゲームはPC画面の一部分だけでまかなえるので、ゲームをしながら攻略情報を見たり、動画を観たりという“ながらプレイ”ができるんです。スマホで遊ぶよりも、より濃い時間が過ごせるように感じました。それで、これをサービスとして提供すれば多くのユーザーによろこんでもらえるかもしれないと思い、立ち上げに至りました。
――立ち上げ後、ユーザーさんからの反響はいかがですか?
佐藤:Twitterなどを見ていても、“捗る”というご意見は多くいただいているようで、一定の手ごたえは得ています。
――PCのほうが捗るというのは、経験して初めてわかることですね。私は家でもスマホでゲームを遊ぶのですが、そうしたスマホメインのプレイヤーがAndAppを利用するようになるきっかけは何だと思いますか?
佐藤:一例ですがスマートフォン、とくにAndroid端末は多種多様なので、楽しみにしていたタイトルが自分のスマホに対応していなかったり、スペック不足だったりでスムーズに遊べない、ということもあると思います。そういう時にAndAppにそのアプリが存在すれば、遊んでみようと考えていただけるユーザーさんがいるかもしれません。ですが、基本的にAndAppのメインターゲットは“日常的にPCを起動する方”です。毎日PCを2時間以上起動する、そういった方々がネットサーフィンのついでに“ながらプレイ”として使ってくれることを狙っています。
坂本:もちろん、スマホ中心でゲームを遊ぶという方にも、スマホゲームをPCの画面でプレイするというのは新しい体験に繋がると思うので使っていただきたいという想いはあります。
佐藤:そうですね。AndAppならゲーム内チャットをつねに起動できたり、キーボードで文章を楽々入力したりできるので、そういう新体験をぜひ味わってもらいたいです。
――確かに同じゲームでもモニターが違うだけで印象が変わりますよね。PC向けにコンテンツを提供することでメーカー側にはどんなメリットがあるのでしょか?
佐藤:メーカーさんごとに見解が違うのですが、我々は“PC操作中もゲームを遊べるので、より深いエンゲージメントが得られる”点を推しています。AndAppの多くのユーザーさんがスマホとPCを併用したマルチログインで遊んでいますが、スマホのみの場合と比べると、定着率やARPPUの増加など、実際の数値面でも結果が出ています。
――それを聞くと参入メーカーも増えそうですね。AndAppに対応するタイトルはどうやって決めているのですか?
坂本:基本はメーカー側からオファーをいただく形ですが、我々からご提案することもあります。
――AndAppで提供されるゲームはGoogle Playなどの配信されているアプリと違いはあるのでしょうか?
佐藤:基本的にはありません。AndAppでのアプリはエミュレータで動かしているわけではなくexeになります。決済面など一部分をAndApp対応のSDKなどに変換していただく作業が発生するといった形です。
門間:スマホゲームでよく使われるUnityやcocos2d-xなどのゲームエンジンにはWindows出力できる機能があるのですが、それを使ってコンパイルしていただく前に、AndAppのSDKを組み込んでいただくという作業が必要になります。
――なるほど。参入する障壁はあまり高くないということですね。
門間:そうですね。SDKも基本的にはスマホから移植しやすい形に作成しているので、そういう意味で参入障壁は低いと思います。ケースにより工数は違いますが、いちばん短い工数でPC化+AndApp用SDKの組み込みで20人日ほどです。
――タイトル追加の目標数もあるのでしょうか?
佐藤:計画値はありますが、各種調整などでメーカー側に対応していただく部分もあり、タイトルによっても差があるので、ひとつずつ着実に進めていっています。
門間:とくにゲームエンジンを使っておらず、かつスマホ以外の Windows 出力を想定していないようなタイトルと遭遇するケースもありますね。長くかかるものだと 10 人月以上かかってしまうというケースもあります。
――御社では開発サポートも?
門間:そうですね。ケースごとに対応方法をご案内したり、質問の場を一時的に設けていただき、そこで質疑応答をしたりしています。あくまで主観なのですが、PC展開を検討されているメーカーさんも増加傾向にあるように感じているので、満足いただける対応ができればと思っています。
『RPGツクール MV』コラボタイトルも順調に推移
――『RPGツクール MV』とコラボもしていらっしゃいますが、こちらはどういった経緯でスタートしたのでしょうか?
佐藤:新事業は知名度ゼロからスタートするので、まずは認知してもらう必要があります。そのためのパートナーを探していた頃に『RPGツクール MV』が発表されたんです。スマホでもPCでも、ブラウザでも出力できるという紹介を見て、AndAppのコンセプトと近いものを感じ、お声がけさせていただきました。
――公開された作品の反響はどうですか?
坂本:想像以上ですね。リリースから、タイトル全体の累計起動回数が100万回を突破しました。現在でも、日々の起動数は安定して推移することができてます。
――それはすごい!どれくらいのペースで作品を追加しているのでしょうか。
坂本:どのような作品を追加するかは、パートナーのKADOKAWAさまと相談しながら決めています。1~2ヶ月に1本を目処に新しいタイトルを追加していければと考えてます。
佐藤:私たちはプラットフォーマーでもあるので、アプリを起動したタイミングで動画撮影し、その映像や写真をTwitterで拡散できる機能など、よりゲームを楽しめる仕組みも開発しています。
――『RPGツクール MV』で作られた『青鬼2016』も話題になりましたね。
佐藤:そうですね。『青鬼2016』も青鬼が出てきたタイミングで録画が開始され、逃げ切ったり、つかまったりするとそこで撮影が終了して「シェアしますか?」と画面が出てくるのですが、それも多くの方にツイートしていただきました。あとはアチーブメントの追加などの取り組みも行っています。
――『RPGツクール MV』のように他社との協業は今後もあるのでしょうか?
佐藤:あまりないケースだとは思いますが、国内外含めて検討はしています。
――海外展開も視野にいれていると?
佐藤:具体的な計画が言えるような段階ではないのですが、考えています。
年内10タイトルの追加が目標、内製タイトルも準備中
――さきほど決済システムのお話がありましが、AndApp独自の方式で対応されているのでしょうか?
門間:既存のスマホのストア決済と互換性が高いものを用意しております。比較的簡単に組み直すことができるので、実装が楽というのもウリです。決済手段はクレジットカード、モバコインによる2種類に対応しており、今後はWebマネーなども使えるようにしていく予定です。
坂本:ひとつ補足すると、AndAppはゲームをプレイするためのアカウント登録を必要としません。通常のプラットフォームなら必要な部分ですが、ダウンロードしたらすぐゲームが始められて、そのまま決済ができます。
――現在は基本プレイ無料のアイテム課金モデルが中心ですが、有料アプリを展開する予定はあるのですか?
佐藤:有料アプリも考えていますが、日本のPCゲーマーの多くの方はSteamを使われているだろうと思います。ですから、単純に有料アプリを提供するだけで大きな付加価値を生み出せるとは思っていません。まずはfree-to-playのスマホゲームを中心に、PCでゲームを遊ぶ体験を通してPCゲーマーの裾野を広げていくつもりです。文化というと大げさですが、PCで遊ぶ習慣が根付いてくれればいいなと。その中で長い目で見つつ、ユーザやディベロッパーからの要望も勘案しながら有料アプリの提供も判断していきたいと思います。
――家庭用ゲームのプラットフォームでは、自身もコンテンツを提供することが多いですが、AndAppだけのオリジナルタイトルの予定は?
佐藤:我々のコンセプトは“スマホとPC、どちらでも遊べる”ことなので、オリジナルという発想はあまりないんです。ただ、マルチログインの内製タイトルはいくつか検討しているので、楽しみにしていてください。ただ、内製タイトルは独自のゲームエンジンを使っているので、Windows対応に工数かかります。そのぶん、サービスインは遅くなるかもしれません。
――どれくらい先までのローンチ計画まで決まっているのでしょうか?
佐藤:内製タイトルも含めると、2017年中に10タイトル以上はラインアップを増やしたいですね。
――内製タイトル、楽しみにしています!
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