コーエーテクモゲームスのスマホゲームブランド“midas”のかつてないチャレンジとは?【インタビュー】

2017-04-20 00:00 投稿

コーエーテクモゲームス第6のブランド発足

2017年4月1日より、スマートフォン向けゲームアプリ市場で新たなIP(知的財産)を創発することを目的に、新ブランド“midas(ミダス)”を発足させたコーエーテクモゲームス。

シブサワ・コウ、ω-Force、Team NINJA、ガスト、ルビーパーティーに続く第6のブランドとなるmidasは、デジタルネイティブ世代である20代、30代の若手社員を主力とし、スマートフォンゲームアプリ市場において新たなIPの創発を掲げ、その活動を開始している。

本記事では、同ブランドのブランド長に就任した藤田一巳氏にインタビュー。ブランド立ち上げの経緯やその特色、他ブランドとの関係、今後の展望などを伺った。

コーエーテクモゲームス
執行役員/
midasブランド長
藤田一巳氏
(文中は藤田)
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スマホゲーム制作体制に変革を

――これまで家庭用ゲームでは『モンスターファーム』などを、その後もさまざまなモバイル系のプロジェクトを手掛けてこられた藤田さんですが、今回の新ブランド長就任に際して、どのような考えをお持ちでしょうか。

藤田 “midas”はデジタルネイティブ世代である20代、30代の社員を中心にしたブランドとして発足しました。

それらの若い力をコーエーテクモグループ全体でサポートしながら、“IP(知的財産)の創造と展開”をテーマに、新たな形でのスマホゲームアプリ作りを進めていく予定です。

――若手主力というその陣容を見ても“挑戦”への意欲が見て取れますが、“新たな形”とは具体的にはどのようなものになるのでしょうか。

藤田 これまで、コーエーテクモゲームスにおけるゲーム作りは、家庭用やPC、スマホなどデバイスを問わず“プロダクトアウト(作り手がいいと思ったものを作る)”がメインでした。

その手法でやってきたからこそ、現在までこのような業績を積み重ねて来られたわけですが、スマホゲームアプリ市場においては、それとは逆の手法である“マーケットイン(市場のニーズに合わせて作る)”が主流となっています。

――スマホゲーム市場はトレンドの変化も早いです。

藤田 そうですね。ですから、新しい発想を取り入れたり、たとえばブランド内でコンペを行って開発するタイトルを決定するなど、従来になかったことをやっていこうと思っています。

――コーエーテクモゲームスでは、すでにスマホゲームアプリも数多く展開されていますが、あらためてスマホに注力する新ブランド“midas”が創設されたのには、どういった経緯があったのでしょうか。

藤田 まずひとつは、メーカーとしてスマホゲームアプリ市場でオリジナルのヒット作を作り出せていない、という状況がありました。『信長の野望』や『三國志』、『ウイニングポスト』、『無双』など、既存のIPが多く、ほかの家庭用ゲームのメーカーと比べても、立ち後れている印象がありました。

――確かに、最新作である『拡張少女系トライナリー』は別として、ファンにはおなじみのIPをモチーフにした作品が多いような気がします。

藤田 それから、当社にとってスマホゲームアプリ市場の存在が、もはや手をこまねいていることが許されないほど大きくなってしまったからです。

こういった状況から当社の企業としての将来を考えた結果、“midas”というブランドが生まれました。

――そもそも、“midas”にはどのような意味が込められているのでしょうか。

藤田 言葉の由来は、ギリシャ神話に登場するミダス王が神から与えられた、“触れるものすべてを黄金に変える力”である“Midas Touch(ミダスタッチ)”です。

その力自体は、実の娘さえも黄金の彫像に変えてしまったほど、人の手には制御できないものでしたが、ブランドとしての“midas”は、最終的に、ミダス王が川で身を清めると、砂金を産む豊かな土壌が生まれ、王国が豊かになった……というエピソードをイメージしてつけました。スマホでわれわれのゲームに触ってくれた方が豊かになるように……そんな意味を込めています。

――ミダス王と言えば、その後『王様の耳はロバの耳』のエピソードにも登場する、かなりの有名人でしたよね。

藤田 人間味溢れる人物であるのは確かですね。ちなみに名前を“ミダスタッチ”ではなく“ミダス”としたのは、3音にしたほうが響きがよく、誰でもすぐに覚えてもらえるからです。

――たしかに、短い言葉のほうが言いやすいですね。

藤田 某国の新大統領がまさに同じタイトル(Midas Touch)でビジネス書を出されていて、ひょっとしたらそちらのイメージがある方もいらっしゃると思います。たまたまこのタイミングで重なってしまいましたが、もちろん、このネーミングはその本とは関係なく付けました。

“お金を生み出す新ブランド”ではなく、“ユーザーの皆さんに豊かになってほしい”という意味だと、ぜひ皆さんには覚えておいていただきたいですね。

――記事でも強調しておきます!(笑)。ちなみにmidasというネーミングは、どなたが発案されたのでしょうか。

藤田 じつは私なんです。発案時、本命はmidasでありつつも、ほかの候補も含めていくつか提案したところ、当社会長の襟川(陽一)が真っ先に「これがいいんじゃないか」と言ってくれたんですよ。私もイチ押しだったので、うれしかったですね。

――他のブランドとはまったく違う系統のネーミングですし、インパクトがありますよね。ロゴデザインも独特ですね。

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藤田 ロゴデザインは、名誉会長の襟川(恵子)がみずから担当したものなんですよ。

――そうなんですか?

藤田 じつはこれまでも、さまざまなタイトルでロゴやパッケージデザインの製作や監修をしていたのですが、今回は襟川みずから鉛筆を手にデザインを作ってくれました。midasのロゴも、いい意味でゲームメーカーらしからぬ、存在感のあるものになったと思っています。

――フォルムも正方形で、コーエーテクモゲームスのブランド全体でも珍しい形ですよね。

藤田 そうなんです。そのあたりも意識していたようですね。このことからも、コーエーテクモゲームスにおけるmidasへの力の入れ具合がわかっていただけるのではないでしょうか。

――若手ばかりを起用した実験的なものではなく、トップも参加して会社全体でフォローしていく姿勢が感じられます。

藤田 コーエーテクモゲームスは、会長、社長から新人まで、同じ話題で盛り上がれるほど風通しがいいんですよ。むしろ風通しがよすぎて、困ることもあるくらいです(笑)。でもそれが、私たちの密かな自慢でもあります。

――コーエーテクモさんほどの企業では、それは非常に大きな魅力ですよね。そういった体制で船出を迎えた“midas”ですが、このタイミングで発表されたのにはどんな理由があるのでしょうか。新タイトルの発表があるとか……。

藤田 タイトル発表に関しては、まだ先になるかと思います。今回、こうしてブランドを発表させていただいたのは、新年度を迎えコーエーテクモゲームスという企業がスマホゲームアプリ市場に対して、より力を入れて取り組んでいくという、意思表示の意味があります。

――ユーザーだけでなく、株主やコーエーテクモゲームスで働くことを希望する人材などにも、いいアピールになりますよね。

藤田 また、midasはスマホゲームアプリを作るブランドではありますが、単に新規IPを産み出すだけに留まらず、10年後、20年後の未来に残るIPの創発も目指しています。

もちろん、コーエーテクモゲームスの既存の5ブランドからも、私たちの存在のせいでスマホゲームアプリがリリースされなくなったり、サービスを終了するということではありませんので、安心してください。

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既存のIPは使わない

――制作体制の変革について伺ってきましたが、今後midasでは、具体的にどんなタイトルをリリースしていく予定なのでしょうか。

藤田 midas発足に際しては、社長の鯉沼と相談し、ルールをふたつ用意しました。ひとつは“若手でやる”こと。もうひとつは“社内の既存IPは使わない”ことです。

――必ずオリジナルIPで新作を出す、ということですね。

藤田 その通りです。もちろん、社内の横のつながりを無視するということではありません。技術的な協力もあるでしょうし、ゲームの配信後はコラボイベントも実施することだってあると思います。

ただ、私たちの作品が『三國志○○』だとか『信長の○○』みたいなタイトルにはならない、というわけです。

――実際に、制作が動き出しているタイトルはあるのでしょうか。

藤田 いまのところは企画を進めている段階です。じつは今回、企画段階から宣伝やマーケティング担当のスタッフを入れて、広くアイデアを募ろうと考えています。

ふだん、どんな用途でスマホを使っているのか、いま遊びたいと思われているのはどんなテイスト、ジャンルなのかなど、制作側だけでなく、いろんな立場、感性を持った人間を集めて、改めて検討するつもりです。

――マーケットインの手法を進めるにあたって、お手本にしたことなどはありますか。

藤田 とくにはありませんが、midasとは関係なく最近私の刺激になっているのは、ガストブランド(2011年よりコーエーテクモゲームスに)の存在です。

彼らが作るゲームは、いずれもこれまで私たちが考えもつかなかったような、独自の企画が盛り込まれているんですよ。新作の『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』や『拡張少女系トライナリー』など、内容も制作スタッフも、まさにこれまでになかったものになっていますよね。

――確かに、コーエーともテクモとも違う、ゲーム市場全体を見てもオリジナリティー溢れるテイストの作品がどんどん出てきていますよね。

藤田 つねに変化し続けようとするその姿勢は、いまの私たちにとってもっとも必要とされるものだと感じています。

――『拡張少女系トライナリー』のように、最初から他社と協業してリリースする……という可能性もあるのでしょうか?

藤田 もちろん、あると思います。どういうタイトルを作るかによって、制作体制についても柔軟に対応していくつもりです。midas単体でもスタッフはある程度の人数を揃えていますが、内部制作にはこだわらず、外注スタッフも含めた最適な体制を模索していきたいですね。

――あらゆる面で、従来とはまったく違う制作体制を確立しつつあるということでしょうか。

藤田 従来のやりかたを変えるからといっても、制作に入ったら必要最低限のルールは設定するつもりです。かつて私自身がやろうとして叱られたことでもあるのですが、たとえばオリジナルのサッカーゲームを作るとして、サッカーゴールをなくしてしまったりしたら、それはもはやサッカーゲームではなくなってしまいますよね?

――それはやり過ぎかもしれませんね。

藤田 私たちが新しいことに挑戦するのは、スマホゲームアプリ制作ではそうすることが必要だからであって、挑戦そのものが目的ではありません。

ゲームについても、コテコテの歴史ものが求められているようなら、そういった作品を作る可能性もあるということです。

――いったいどんなタイトルが出てくることになるんでしょうね。

藤田 私たち自身も、どんなタイトルをリリースすることになるのか、ワクワクしているところなんです。

――現状はタイトル発表はないとのことですが、初タイトルをいつごろには出したい、というような目標があれば教えてください。

藤田 今期中に1本出したいですね。ただ、今後も当社のIPとして長く続くような作品にしたいので、満足いくものができれば、という条件付きにはなりますが。

我々としては、デビュー作ではありつつも、ブランドの代表作にする、という意気込みで臨んでいます。

――タイトル発表が待ち遠しいですね。では、最後に今後の展開に期待しているファンに向けてメッセージをお願いします。

藤田 遊んでひと言「おもしろい」と言っていただけることだけを考えて、制作体制の整備を進めています。いまや生活に深く組み込まれているスマホを使う時間を、楽しい気持ちで満たせるようにできるものとは何なのか、たくさんの人間のアイデアを集めているところです。

皆さんの生活をより豊かにするゲームにすべく、一所懸命制作して参りますので、ぜひ期待して待っていてくださいね。

コーエーテクモゲームス、スマホ特化の新ブランド名は“midas(ミダス)”

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