『GANTZ』の奥浩哉がマグマ大使を描く!手塚作品キャラを大胆リメイクしたTCG『アトム:時空の果て』19枚のイラスト公開
2016-10-18 12:30 投稿
『アトム:時空の果て』誕生秘話
マンガの神様手塚治虫氏が生み出した『鉄腕アトム』、『ブラック・ジャック』、『火の鳥』、『どろろ』など、数々の名作たち。(※「塚」は正しくは旧字体ですが、正常に表示されない場合があるため、新字体で表記しています。)
そんな手塚治虫作品が一同に介する夢のトレーディングカードゲーム『アトム:時空の果て』(PC(Steam)/iOS/Android)が、アクティブゲーミングメディアから今冬リリースされる。しかも、登場するキャラクターは、著名なクリエイターやマンガ家がリメイクして描いており、原作とはまた違った魅力を引き出している。
今回、本作誕生の経緯を探るため、手塚プロダクションに伺い、手塚治虫氏の息子であり、手塚プロダクションの取締役を務める手塚眞氏と、アクティブゲーミングメディア代表取締役のイバイ・アメストイ氏へのインタビューを行った。
手塚プロダクション 取締役
手塚眞氏(文中は手塚)
アクティブゲーミングメディア 代表取締役
イバイ・アメストイ氏(文中はイバイ)
世界に通じるキャラクターと言えば手塚治虫作品しかなかった
――初めに、「『アトム:時空の果て』を作ろう」と考えたきっかけを教えていただけますでしょうか。
イバイ 最初のきっかけは、1年ほど前の、私と友人との会話です。「これまでにいちばん影響を受けた本は何か?」という話をしていて、私は作家のロバート・ルイス・スティーヴンソンが書いた『宝島』を挙げました。すると彼は、「ああ、手塚治虫ですね」と答えたんですよ。私はこれまで、手塚治虫作品は幅広く読んできたつもりだったのですが、失礼ながら『宝島』のマンガを描いていたとは知らなくて(手塚治虫氏の作品『新宝島』が生まれた背景にはスティーヴンソンの『宝島』がある)、驚きました。そして、その友人は、じつは手塚眞さんとつながりがある人物だったんです。
――ということは、その話をきっかけに、手塚眞さんに連絡を?
イバイ いえ、実際に連絡を取ったのは、それから半年後くらいです。いろいろなゲームの企画を考えている中で、“MARVELのように大勢の有名なキャラクターを集めて、ひとつのIPにする”という企画が挙がりました。日本には数多くのキャラクターがいますが、世界にも通用するキャラクターの共演となれば、手塚治虫作品しかないな、と考えたんです。そのとき、友人との会話を思い出し、眞さんに「お会いしたい」とご連絡しました。
――眞さんは、イバイさんのお話を聞いたときに、どんな印象を抱かれましたか?
手塚 ゲームを作りたいというお話をいただくのは珍しいことではないのですが、イバイさんとお話ししてみたら、イバイさんがとてもおもしろい方で。これまでに会ったことのあるゲームクリエイターの方々とは違うと感じ、「これはおもしろいものになるかも!」という期待を抱きました。
――イバイさんのパーソナリティーに魅力を感じたのですね。
手塚 イバイさんご自身はもちろん、アクティブゲーミングメディアという会社も興味深くて。外国人のスタッフが多いんですよね。
イバイ 7割が外国人ですね。
手塚 それがすごく新鮮でした。スタッフの皆さんは日本に住んでいるので、日本語が堪能ではありますが、ものの見かたはきっと日本人と違うのではないかと思って。違う国や文化から見た手塚治虫作品はどんなものなのかを知りたいという好奇心もあって、ゲーム制作に参加させていただくことにしました。
自分たちなりの解釈を加え新たな作品像を生み出す
――『アトム:時空の果て』は、どのようなゲームなのですか?
イバイ ひとことで言いますと、トレーディングカードゲームです。よくあるファンタジーの世界観とはちょっと違う、オリジナルのSFの世界観になっています。
――プレイヤーは、手塚治虫作品のキャラクターのカードを集めていくのですね。
イバイ はい。キャラクターのイラストは、さまざまなイラストレーターの方に“リメイク”して描いていただいています。
手塚 “原作の絵を使わない”と聞いた時点で、「おもしろいな」と思いました。これまでのゲームは、原作の絵を重視していましたから。あえて、原作とは表現を変えているという挑戦も、非常におもしろいです。
――リメイクという形を選んだ理由を教えていただけますか?
イバイ マンガ家の浦沢直樹さんは、『鉄腕アトム』を原作に『PLUTO』という作品を描いていますが、『PLUTO』は、原作に勝るか劣るかとは別の次元で、浦沢さんなりの解釈で描かれたすばらしい作品だと思います。私たちも、原作の面影は残しつつも、自分たちの解釈を入れて、かつ新しいファンが生まれるようなものを作りたいと考えたんです。
手塚 “オマージュ”と称して真似して描いたりすると、それはもう絵として弱いんですね。絵としての魅力がなくなってしまう。力のある人が、もとの絵以上のものを描こうとすることで、やっと同じレベルに並ぶくらいのものだと思います。ですので、今回のように、力のある作家さんたちがリメイクするというのは、すごくおもしろいですね。
――リメイクをお願いする際、絵についての要望も出すのでしょうか?
イバイ シチュエーションとポーズは指定しています。色合いや背景に関しては、できるだけ細かく情報共有をお願いしてやり取りしています。
手塚 ストーリーと世界観は最初から決めてあったものですが、やはり作家さんからひとつひとつ絵があがってくると、それに合わせてフィードバックして、「ならストーリーもこうしよう」というやり取りもあります。やはり設定を作ったとしても、それは文字ですから絵の力には敵いません。絵を見てそこから世界観が広がっていくのもいいですよね。
――本作の発表当時、『GANTZ』などで知られる奥浩哉さんが描いたマグマ大使の絵が公開されましたが、まさに新たな解釈で、世界観を広げていると感じます。
イバイ 奥先生はとても多忙な方ですが、手塚治虫作品のキャラクターをリメイクしてほしいとお伝えしたところ、「手塚治虫先生は私の神です」と言って引き受けてくださったんです。
――リメイクをするキャラクターは指定されたのですか?
イバイ 描いていただきたいキャラクターを8、9体提案しました。ビッグXとマグマ大使で悩まれていたのですが、最終的にマグマ大使になりましたね。ただ、アトムだけはきる自信がないと。
手塚 アトムはみなさん嫌がりますね(笑)。
――ちなみに、そのアトムはどなたが描かれているのでしょうか?
イバイ それはまだ言えないですね。ヒミツです。
――奥浩哉さんのほか、猫将軍さん、ヨシオカサトシさん、サイバーコネクトツーの松山洋さん細川誠一郎さんもキャラクターリメイクを手掛けているとのことですが、全部で何名くらいのイラストレーターが参加されているのですか?
イバイ 30~40名になります。依頼をしている最中の方もいますので、今後も増えていくと思います。発表させていただいた方以外にも、皆さんがあっと驚くような方にも参加していただいていますので、今後の発表にご期待ください。
140人以上のキャラクターによるオリジナルストーリーが展開
――続いて、本作のストーリーについてうかがいます。タイトルが『アトム:時空の果て』ということは、メインになるのは『鉄腕アトム』のキャラクターなのですか?
イバイ 最初に“アトムを探しに行く”というミッションがあり、そこからストーリーが始まります。アトムは、100年後でも200年後でも、人々に知られているであろうキャラクターです。日本のコンテンツの象徴になるのはアトムしかいないと感じました。
――登場するキャラクターは、アトムを含めて何人くらいですか?
イバイ 4~5作品の中から、140キャラクターが登場します。ストーリーは完全オリジナルですが、どのキャラクターも、無理のない形で物語に登場するようにしています。
手塚 『鉄腕アトム』だけでも相当な数のキャラクターがいますが、「こんなキャラクター、よく見つけたな」と思うようなキャラクターも登場しますよ。スタッフの皆さんはマニア揃いですから。
――ストーリーのボリュームも気になるところです。
イバイ 文字数で表現しますと、現在、20万文字は超えていますね。ストーリーを読まずにゲームをプレイする人も多いかと思いますが、本作では、しっかりと読んでいただけることを期待して、気合いを入れて取り組んでいます。
手塚 プロットを読ませていただきましたが、とても新鮮でしたね。あのキャラクターがこんな活躍をするのか、と。いろいろなキャラクターが登場する点については、手塚治虫自身が自分のキャラクターをさまざま作品に出してきましたので、違和感はありませんでした。
――ストーリーは眞さんが監修なさっているんですね。
イバイ ストーリーをチェックしていただく中で、「ああ、このゲームは、眞さんがいないと成り立たない」と実感しました。キャラクターが多すぎて、シナリオ担当のスタッフも、全キャラクターの性格や口調を覚えきれないんです。ですが、眞さんは「火の鳥は、こういうセリフは言いませんね」とパッと判断できる。我々が何度原作を読んでも把握できないことを網羅していて、さすがだと思います。
手塚 キャラクターをお預けした以上、自由に書いていただいたほうがいいので、細かいところは気にせずに読んでいます。ただ、キャラクターの性質から大きく外れてしまうと、ファンの方に申し訳ないですし、原作のよさが消えてしまうかもしれないので、そこだけは押さえています。
――キャラクターごとのショートストーリーなどは用意されていますか?
イバイ はい、用意する予定です。たとえば、メインストーリーの中では、残念ながら死んでしまうキャラクターも出てくるのですが、ショートストーリーではそのキャラクターが死ぬ前の時間に戻り、エピソードを体験するという仕様を考えています。
――死が描かれるということは、深く重いストーリーになりそうですね……。
手塚 手塚治虫は、タブーとされていた死をテーマにマンガを描いた初めての存在です。必要があるのであれば、死が描かれてもいいと私は思います。
イバイ 手塚治虫作品を読んでいて、「このキャラクターが死んでしまうなんて!」とショックを受けたこともありました。
手塚 『ブラック・ジャック』でも、キャラクターがあっさりと死んでしまったりしますが、ある場面においては、その死を免れないほうが、ストーリーに深みが出ることがあります。父がいつも言っていたのは、「自分が伝えているのはストーリーであって、ディテールではない」ということです。何よりも強くストーリーを伝えるため、死も描いているということですね。
――お話は変わりますが、音楽は山岡晃さんということで、山岡さんはどういった経緯で参加されたのでしょうか?
イバイ 私が『サイレントヒル』シリーズの音楽が大好きだからです。山岡さんと面識はなかったのですが思い切ってお願いしたところ、IPを聞いた瞬間に「条件はなんでもいい! やるよ!」と言ってくださって。
手塚 イバイさんのチームはいい意味で躊躇がなくて、とにかく気持ちよくやりましょう!って言って頂けるのが、本当にうれしいですね。
イバイ 山岡さんには現在3曲作っていただいています。あともうひとり、ジョルジオ・モロダーというアカデミー作曲賞を3回受賞した方も参加しています。
ユーザーが開発に参加できるよう クラウドファンディングを実施
――本作に収録されているモードについて教えてください。
イバイ ひとりで楽しめるストーリーモードと、オンラインの対戦モードを用意しています。また、ストーリーを終えることで解放されるモードもあります。
――ゲームで勝つには、レアなカードを集めることと、プレイングスキルを高めること、どちらがより重要になるのでしょうか。
イバイ それは間違いなく、プレイングスキルを高めることです。基本的なパックを入手していただければ、対戦は十分楽しめます。
――定期的なエキスパンションも予定されていますか?
イバイ もちろんです。先ほど、登場するキャラクターは140人だとお伝えしましたが、エキスパンションによって、キャラクターもストーリーも追加していきます。じつは第2弾のエキスパンションはモンスターをテーマにしていまして、『バンパイヤ』に登場したようなモンスターや妖怪のパックを予定しています。
――Kickstarter(キックスターター)とMakuake(マクアケ)でのクラウドファンディングもスタートしていますが、その狙いを教えていただけますでしょうか。
イバイ 本作におけるクラウドファンディングは、資金を調達するためというよりは、ファンの皆さんにも開発に参加していただくためのものです。手塚治虫作品は、MARVELのような、ユニバーサルなIPですので、世界中の皆さんに参加していただいて、その可能性をさらに広げられればと思います。
手塚 僕は、イバイさんのいまのお話もすごくおもしろいと思っていまして。手塚治虫とディズニーを比べる人は多かったのですが、MARVELと比較する人はこれまでいなかったんですよ。そのような現代の感覚でリメイクしてもらえるのは、手塚治虫作品にとってもすごくいい機会だなと思っています。
――クラウドファンディングなどを通じて、改めて手塚治虫作品に触れる人、または初めて読む人もいるのではないでしょうか。
イバイ ゲームに触れて「こんなキャラクターもいたんだ」と、驚く方が多いと思います。カードの裏には、原作の解説などを掲載しますので、それをきっかけに原作を読んでいただけたらうれしいです。
手塚 日本だけでなく、海外の皆さんに触れてもらえるというのもうれしいですね。手塚治虫ファンの方も、あまり読んだことがない方も楽しめるゲームですし、新しい手塚治虫を感じられると思いますので、ぜひプレイしてもらいたいです。
イバイ トレーディングカードゲームにおいて、これまでになかった展開をしていく予定です。この作品を、いまからいっしょに育てていきましょう!
『アトム:時空の果て』のバトルシステム
バトルでは30枚のカードでデッキを編成。“クアンタム”というポイントを使って、フィールドにカードを配置していく。
最大の特徴は、フィールドがふたつのエリアは分かれている点。相手を直接攻撃するエンフォーサー(前方)、敵の攻撃からプレイヤーを守るガーディアン(後方)のそれぞれのエリアにカードを配置する。カードはそれぞれスキルを持っており、“ゾーン内のカード攻撃”、“フィールド上のすべてのカード破壊”などといった、さまざまな効果のスキルを使いこなすことが勝利には欠かせない。
キャラクターギャラリー
グラスホッパー・マニファクチュア
ディレクター須田剛一氏/イラストレーター能丸督之氏
ピノコ(原作『ブラック・ジャック』)※ラフ画
サイバーコネクトツー
松山洋氏/細川誠一郎氏
アトラス(原作『鉄腕アトム』)※ラフ画
デッドクロス(原作『鉄腕アトム』)※ラフ画
奥浩哉氏(漫画家)
マグマ大使(原作『マグマ大使』)
猫将軍氏(イラストレーター)
マイマイオンバ(原作『どろろ』)
三郎太(原作『どろろ』)
琵琶法師(原作『どろろ』)
ヨシオカサトシ氏(イラストレーター)
お茶の水博士(原作『鉄腕アトム』)
アクティブゲーミングメディア内イラストレーター
アルソア(原作『鉄腕アトム』)
エプシロン(原作『鉄腕アトム』)
ブランド(原作『鉄腕アトム』)
ボックス(原作『鉄腕アトム』)
タマミ(原作『火の鳥』)
チヒロ(原作『火の鳥』)
ロビタ(原作『火の鳥』)
猿田博士のコンパニオンロボット(原作『火の鳥』)
山之辺マサト(原作『火の鳥』)
どろろ(原作『どろろ』)
二郎丸(原作『どろろ』)
※本記事は週刊ファミ通 2016年9月8日号に掲載されたインタビューを再編集したものです。
アトム:時空の果て
- ジャンル
- トレーディングカードゲーム
- メーカー
- アクティブゲーミングメディア
- 配信日
- 今冬
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iOS、Android、PC
- コピーライト
- (C)Tezuka Productions (C)2016 Active Gaming Media Inc. All rights reserved
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