【TGS2015】アジア・ゲーム・ビジネス・サミットで見えた日中のゲーム市場の違い

2015-09-17 22:08 投稿

日本のゲームは中国で通用するのか?

9月17日(木)に開幕した東京ゲームショウ2015。イベントステージでは、今年で6回目を迎える“アジア・ゲーム・ビジネス・サミット”が行われた。

終了予定時間を10分以上オーバーして語られた今回のテーマは、ずばり“リトライ:中国ゲームマーケット”。

急速な勢いで拡大し続ける中国で、いままで大成功を収めた日本メーカーが少ない理由や中国ゲームマーケットで成功する秘訣を、中国を代表するゲームメーカーや、中国市場に積極的に参入する日本企業の代表者をキーパーソンに招き、語ってもらった。

登壇したのは、

・『拡散性ミリオンアーサー』を中国で大ヒットさせた中国最大のゲームメーカーのひとつ盛大遊戯(シャンダ・ゲームズ)の総裁 銭東海氏。

・『聖闘士星矢 ONLINE』を5ヵ月で1000万ダウンロードさせた、こちらも中国最大のゲームメーカーのひとつ完美世界(パーフェクトワールド)のCOO 張雲帆氏とモバイル事業の責任者 孫晗氏。

・中国市場に積極参入。上海に従業員500人規模の現地法人を設立したDeNAのDeNA China CEO 任宜氏。

・10年以上前に中国市場に参入し、酸いも甘いも知り尽くしたスクウェア・エニックス・ホールディングス 取締役 本多圭司氏。

の4名に、特別ゲストの立命館大学映像学部 教授 中村彰憲氏と司会進行の日経BP社の品田英雄氏を加えた7人だ。

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▲左から品田氏、中村氏、銭東海氏、張雲帆氏、孫晗氏、任宜氏、本多氏。

簡単な自己紹介が終わると、本題に入る前に中国市場の現在を中村氏がパネルを使って説明した。

現在中国のインターネットユーザーは6億8000万人で、すでにアメリカの総人口を超えているという。そして、その中でオンラインゲームをプレイする人は3億8000万人。また、近年は携帯電話の普及も進み、所有者が12億9000万台に! 中国ではPCのMMOがもっとも人気の高いジャンルであったが、モバイルゲームが新興勢力として急速に台頭し、ゲームランキングを席巻しつつあるという。そして、2016年には売上60億ドルを超え、中国が世界最大のゲーム市場になるとのこと。

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中国市場の巨大さを現す、驚愕の数字や事実が発表された。そんな中国市場の特徴とは? パネーラーが日本の違いとともに説明してくれた。

中国のゲームマーケットで苦戦する日本メーカー

・3つのC

日本でも働いていたことがある銭氏は、流暢な日本語で“3つのC”、【会社環境:Company】、【競争:Competition】、【顧客:Customer】が日本と中国では異なると教えてくれた。

「日本ではGoogle PlayとApp Storeのふたつを押さえればいいが、中国では100種類以上!! のアプリストアが存在し、それぞれのバージョンを作る必要がある」。その【会社環境】の違いと、多くのストアに対応させないと生き残れない【競争】があり、開発に多くのコストがかかるという。また、【顧客】を満足させる仕組みも、日本と中国ではまったく違うという。

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ガチャひとつ取っても「中国のプレイヤーは、【お金を払った人に価値がある】という考え方の人が多いため、大量に課金する人を優遇する”vipシステム”が大切です」と孫氏。

するとDeNAの任氏が「日本では課金する人が全体の20~30%いるのに対して、中国では2~3%にしか満たない」と具体的な数字を提示。「だからこそ一部の高額課金ユーザーを満足させる仕組みが必要になる」と力説した。

・スピードの違い

「日本は、中国に比べると会社のスピードが遅い」と指摘するのは孫氏。日本でヒットしたゲームを中国で出そうとすると、商談して許可を得て、ローカライズ、それに伴う確認事項など、多くの段階を踏まえなけれはならなく、結局リリースまで1年はかかってしまうという。その間に似たようなシステムのゲームが中国のメーカーから発売されて、リリースしたときには、潜在的顧客を奪われてしまうという例も多い、と指摘。

孫氏は続けて、「IPモノも、中国人は日本のマンガやゲーム、ライトノベルの影響が高いから、需要はあるんです」と語る。ただ、すぐ遊びたいというユーザーが多いのですが、なかなかリリースされないため、そのIPに似せたモノ(パ○リ)でとりあえず遊んで満足してしまう(笑)とのこと。

なので張氏は、“現場の権限を大きくして、会社はそれをサポートする形”と、自社の開発スタンスを説明。

「日本企業は決定だけでも数ヵ月かかってしまうこともあり、チャンスを逃してしまう。アメリカの企業のように、中国支社の権限を大きくして、現場である程度決められる環境が必要だ」と言う。

「何をするにも”確認”、”確認”、”確認”ですから」と日本でも働いたことのある銭氏。その言葉を聞いて、聴衆たちから苦笑が(笑)。DeNAの任氏も就任当初は本社の確認を取っていたが、「いまは中国市場は違うからということで任せてもらっている」とのこと。

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中村氏も「もちろん、すばやく決定することで生まれる間違いもあるのですが、失敗した時の修正力も高い」と中国のメーカーを評価。また、会社システムだけでなく、「100%を求める日本のゲーム会社、日本人の職人気質は素晴らしいのですが、それを大切にするあまりスピード感を失っているのかも」と、モノづくりに対する両国の姿勢の違いも指摘した。

本多氏は、この日本と中国のこのゲームマーケットの違いを、ゲームの普及が日本はファミコン、中国はオンラインゲームだったことが大きかったのではないかと、解説。「作って売る形で完結するROMカードリッジとは異なり、オンラインゲームはユーザーの意見を聞きながら運営するため買い手市場であり、ユーザーの意見や期待にスピーディーに答える必要があった」。

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同じアジアのゲームのマーケットであるにも関わらず、まったく違った長所を持つ日本と中国。その中で日本のメーカーやIPが、中国で成功するためのには?

信頼できるパートナー企業に任せる

「外国の人がいきなり中国に来て、広大な中国の人種や文化、地域、すべてに対応するのは難しいし、サーバーの審査やネット環境も異なるため、直接参入せず信頼できるパートナー企業を見つけることです」と、現地をよく知るパートナー企業選びこそが大切と力説する張氏。「ただ中国では“約束できる”と“できる”は違う」ので、おいしい話に騙されずに、「名誉と信頼を重視する企業にしてください」と、注意すべき点も教えてくれた。

DeNAの任氏も「中国のことは中国でやる」と国の違いを明確にして臨むことの必要性を説く。ただ、20代以下の人たちはYoutube(※)など同じ場所で同じコンテンツを共有しながら成長するため、エンターテイメント市場は長期的に自然とグローバル化していくのではないかとも指摘した。

※中国国内では閲覧不可

銭氏も、「日本のメーカーが中国の歴史書『三国志』から『真・三國無双』シリーズを生み出したように、任せることで新たなコンテンツが生まれてくるような関係ができたらいいですよね」と、両国のメーカーの協力に期待を寄せる。

中村氏はこれを受け、「いまいちばんのチャンスがココにありますよ。数多ある中国の企業の中で、パネラーたちの企業は成功していますから」(笑)と、講演の来場者に向かってアピールして話をまとめた。

各社が中国市場で見据える今後の展開

最後に司会の品田氏が、パネラーに今後の中国市場をどう導いていくかを聞いた。

本多氏「中国だけに限らず、つねにユーザーに新しいモノを提供していきたいです。挑戦的でありたいですね」

任氏「モバイルで世界一の市場を持つ中国で通用しなければ、グローバルで戦えないと思ってるので、中国で成功を収めて、世界と戦える企業になりたいですね」

孫氏「キャラクターの眉や口調、アホ毛の角度にもこだわる、日本のモノ作りのよさは世界に認められてます。だからこそ、いいパートナーを選び、日本のよさを中国に輸出していってほしいなと思います」

張氏「中国市場はこれから、モバイル、PC、コンシューマーで世界最大の市場になるので、みんなに等しくチャンスがあると思います。また、自分たちは中国だけでなく、中国発のIPとしてグローバル化も目指したいですね」

パネラーの締めを飾った銭氏は、「自動車メーカーのトヨタがアメリカ進出してレクサスを発売した経緯に、中国市場進出での成功のカギがあるのではと」と、例え話で、来場者の人たちに中国進出の秘訣を教えてくれた。

各パネラーとも、中国市場だけでなく、世界を視野に入れてゲーム市場を語ったのが印象的だった。

そして最後に中村氏がパネラーの話を受け「まだ、中国では人気のMMOや映画はあるが、マンガやアニメなど、複数メディアをまたぐマルチメディア展開は実現できてないので、そこは攻めどころかな」と語り、フォーラムは幕を閉じた。

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