【注目レビュー】それではお話変わって“バカ歩き”アプリのご紹介です
2014-08-11 13:00 投稿
it’s!(はじまるよ!)
2014年の話題と言えば、皆様は何を思い浮かべるだろうか。ブラジルW杯? プレイステーション4とXbox Oneの発売? それとも『パズドラW』の配信開始? はたまたハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』の公開? やっぱり9月の発売が噂されているiPhone 6?
確かにいずれも非常に興味深い出来事ではあるが、筆者が熱を上げるのはそのいずれでもない。今年最大の話題と言えば、“モンティ・パイソン”の30年ぶりとなる再結成公演である。7月1日~同月20日までイギリス・ロンドンで実施された公演は、日本でも8月24、31日の2回にわたってNHK-BSプレミアムにて放送が予定されており、筆者はその日を指折り数えて待ちわびているのだ。
……と、さも当たり前のようにモンティ・パイソンの最新情報をお届けてしてしまったが、ファミ通App読者の中には「そもそもモンティ・パイソンってなんなのさ、このぉ~ちょんちょん!」という人も少なくないだろう。
モンティ・パイソンとはグレアム・チャップマン、ジョン・クリーズ、テリー・ジョーンズ、マイケル・ペイリン、エリック・アイドル、テリー・ギリアムの6人が1969年に結成したイギリスのコメディグループ。BBCが製作・放送した彼らのコント番組『Monty Python’s Flying Circus』は貧乏人、金持ち、アホ、インテリ、女王陛下、そして神すらも笑いのネタにするタブーを怖れぬ内容で人々から熱狂的な支持と強い嫌悪感をもって受け入れられ、英国だけでなく世界中にブラックな笑いの革命を巻き起こしたのである。後世への影響を評して、彼らを“コメディ界のビートルズ”と呼ぶ人も少なくない。まさに、伝説のお笑い集団なのである。
日本では1976年から東京12チャンネル(現在のテレビ東京)で『空飛ぶモンティ・パイソン』として山田康雄、広川太一郎、納谷悟朗ら豪華声優陣による吹き替え版が放送され、本邦にも多くのパイソニアン(モンティ・パイソンファンの総称)を生み出すことになった。ちなみに筆者の場合は2000年あたりにNHKで放送された字幕版が初めてのモンティ・パイソン。当時高校生だった筆者はシュールでブラックなギャグの数々に頭が追いつかず「な、なんだかオソロシイものを観てしまった……」と震えたものだが、それでもめげずに観続けるうちすっかり虜に。番組は可能な限りビデオ録画をして、後年発売されたDVDはTVシリーズはもちろん映画作品も含めてチェック。いまではのBOXセットを複数種所有する立派な中年パイソニアン(と言ってもマニアの方に比べればまだまだ若輩者である)になってしまった。
前置きが非常に長くなってしまったが、とにかくモンティ・パイソンは偉大なグループであり、それが30年ぶりの公演をするとなれば、興奮しないわけにはいかない。「まったく、今年はナツいアツになりそうだぜ……」などとひとりごちる筆者だが、先日ネットのニュースをサラサラと徘徊していたところ、そんなモンティ・パイソン熱をさらにホットにさせるアプリを発見してしまったのだ。早速紹介したいところだが、その前にもう少しだけパイソンズの話をさせてほしい。
モンティ・パイソンの数ある傑作スケッチ(コント)の中でも、とくに知名度が高いものに『Ministry of Silly Walk』という作品がある。日本語に訳すと“バカな歩き方省”となるこのスケッチは、同省の大臣に扮したジョン・クリーズがバカ歩きを披露するというタイトル通りの内容だ。メンバーいちの高身長でありイヤミなインテリ臭プンプンのクリーズが、真面目な表情を崩さずにトリッキーなバカ歩きを披露するさまは説明不要のおもしろさ。海外では最早ポップアイコンのひとつとして数えられるほどの圧倒的な人気を誇る、伝説のお笑い集団による伝説のスケッチなのだ。
筆者をホットにさせたアプリとは、この“バカな歩き方省”をモチーフにしたラン&ジャンプ(強制スクロールで障害物をかわしながら進む)系のゲーム。その名も『Monty Python’s The Ministry of Silly Walks』である。
ロンドンを猛スピードで歩くバカは都市伝説級の存在感
『Monty Python’s The Ministry of Silly Walks』はモンティ・パイソン公認ゲームだけあって、ファンにとってうれしい要素が盛りだくさん……と言えるほどではないが、確実に遊ぶ価値のある内容にはなっている。まず注目したいのは、バカ歩き省の大臣ことジョン・クリーズの生声が使用されている点だ。
バカ歩き省からスタートしたクリーズが、ロンドンの街中、公園、川沿いの道をバカ歩きでひたすら進む、というシンプルなラン&ジャンプの本作では、障害物を避ける際に行うジャンプやスライディングといったアクションのたびに「うひょい」「うほほーい」といった感じの生声を聴くことができる。近年は『ハリーポッター』シリーズや『007』シリーズといった大作映画への出演も多いクリーズなので、たとえモンティ・パイソンを知らない人でも、その声には聞き覚えがあるかもしれない。また、ミスをした際には少し長いセリフも流れる。悲しいかな筆者は英語のリスニングがサッパリなので何を言っているのかはまったくわからないのだが、鼻にかかった皮肉っぽい声が聞くだけで「なにかイヤミったらしい悪口でも言っているのだろう」と思わずニヤケしてしまう。
肝心のバカ歩きの表現については、かなり原作に忠実。片足を高く上げる基本姿勢(?)はもちろん、腰を落とした広いストロークの歩み、ヒザを落として足を左右に広げて進むスタイルなど、要点はバッチリ押さえられている。個人的には一歩進んで二歩下がるや、人を小馬鹿にしたようなターンが入っていなかったのは寂しいところだが、ひたすら前進するラン&ジャンプ系ゲームとの相性を考えると、除外はいたしかたなかったのだろう。開発者の苦悩が偲ばれる。
一方で、ゲーム化されたことによってバカさがより増した点もあった。速度だ。バカ歩きは人を喰ったようなノロマさ(と便宜上ここでは表現しておく)も魅力のひとつだったが、『Monty Python’s The Ministry of Silly Walks』でそれを再現するわけにはいかない。ひたすらゆっくり進むラン&ジャンプ系ゲームなんてありえないからだ。そこで本作も同ジャンルの基本ルールに則って、徐々にスピードが増すというシステムになっているのだが、これによって思わぬ化学反応が起きている。
ステージの進行に沿ってスピードを増すバカ歩きは、遊び始めて数分も経つころには“猛スピードのバカ歩き”という衝撃的……いや、笑撃的な光景をプレイヤーに見せてくれるのだ。日本には老婆が高速道路を猛スピードで走る“ダッシュババア”という有名な都市伝説があるが、本作におけるクリーズの姿はソレに近い。ロンドンを猛スピードで走るバカ、である。なんとも感動的な話ではないか。
とりあえずパイソンズの“ゲーム”が遊べる事実に感動しよう
ちなみにモンティ・パイソンの公認ゲームは『Monty Python’s The Ministry of Silly Walks』が初めてではない。過去にPC向けタイトルが複数発売され、その一部は日本語化もされている。しかし現在それらを入手するのはなかなか難しく、Amazonのマーケットプレイスのプレミアム価格に手を出すか、あるいはネットオークションで探すくらいしかない。しかも仮に入手できたとしても、最新のWindows 8は当然対象OS外なのでちゃんと遊べる保証もないのである。かく言う筆者もPC版ゲームには触ったことがなく、いつか触ってみたいと思いつつも「ちょっと難しいだろうな」と半ば諦めているクチだ。
『Monty Python’s The Ministry of Silly Walks』は、そんな“モンティ・パイソンのゲーム”に対するファンの渇望感を満たす作品と捉えることができるもしれない。
正直言って、本作はゲームとしてはよくも悪くもふつうのラン&ジャンプ系ゲームなので「これぞ!」とオススメできるポイントはない。ゲーム内で集めたコインを使って衣装を購入することができるものの、とくにモンティ・パイソンと関係ある衣装があるわけでもない(ガンビーの衣装くらい入れてほしかった)。ゲームの背景に床屋が映るものの、そこにオカマのランバー・ジャックはいない。障害物としてクリーズを邪魔する鳥はオウムじゃないし、しかも生きている(これは大問題だ!)。
でもくり返すが、これは公認ゲームなのである。DVDも書籍も出尽くした感があるモンティ・パイソンコンテンツにおいて、なかなか手の届かないところにあった公認ゲームが、こうしてすぐ遊べる状態にあるのだ。もちろん、かつて発売されたPCゲームの再リリースを望むのはファンとして譲れないところではあるが、いまはとりあえず『Monty Python’s The Ministry of Silly Walks』で“ゲームのモンティ・パイソン”が遊べることに感動したい。
興奮のあまり最後は完全にファン以外を置いてけぼりにした内容になってしまったので、ここらでスパムでも食って落ち着こうと思う。
(キモ次郎)
Monty Python's The Ministry of Silly Walks
- メーカー
- Boondoggle Studios
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 100円[税込み](iOS版)、171円[税込み](Android版)
- 対応機種
- iOS 7.0 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。 iPhone 5 用に最適化済み Android 要件 2.3 以上
- コピーライト
- (C) Boondoggle Studios Ltd 2014
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