【OGCレポート】gumi West今泉氏が体験したスマゲ界”モノ作りの3年間”

2014-04-23 21:22 投稿

変化する”モノ作り”だけが生き残る

秋葉原のベルサール秋葉原にてブロードバンドコンテンツの総合カンファレンス“OGC 2014”開催された。その中から、今回はgumi West代表取締役社長の今泉潤氏の講演の模様をお伝えしよう。

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▲gumi West 代表取締役社長の今泉潤氏。

映像業界からの転向

今泉氏はもともと映像制作会社でドラマや演劇などのエンターテインメント作品のプロデュースに従事。DVDなどが売れなくなってきた時代で、ドラマを作っても収益にならない。「日本でやっていてもハリウッドで作れる気がしない」と当時の自分を振り返る。

そんな中、gumi 代表取締役社長の國光宏尚氏がゲームを制作しているところにシナリオ担当として参加。自分のドラマを人に届ける機会がない時代に、50万人もの人にゲームを届けられたことに驚いたという。

一年目”個人としてのモノ作り”

“Zynga”の躍進や”モバゲー””グリー”などのサービスがオープン化した年。少人数の気の合う仲間同士で制作を行っていた。各タイトルごとにスタジオ制で開発を行う方式だ。まだ社員数が20~80人規模だが、ゲーム会社、営業、IT、出版などさまざまなジャンルの人たちが混在。制作するタイトルもさまざまなジャンルに及んでいた。

「俺たちこれ作りたい!」

「いいじゃん」

という大学サークルのような形で制作を行っていたという。

しかし、当時「ヒット作を出していない人間の言うことはなかなか聞いてもらえなかった」と漏らす。

二年目”組織としてのモノ作り”

2011年は”モバゲー””グリー”が大躍進。主流はガラケーのブラウザゲーへと動く。『ドラゴンコレクション』のヒットから、カードバトルゲームが流行していた。

gumiはこの年、ディレクター部門、エンジニア部門、デザイン部門に分かれ、スタジオ制を廃止。一方で『任侠道』がヒットし、その後”道”シリーズとして継続していくことで、ユーザーの獲得に成功した。テレビドラマにヒントを得て、二作目の制作を提案した結果だ。1本限りのエンタメではユーザーをつねに確保しておくことは難しいが、継続してシリーズ化することで、それを可能にした。コンセプトが同じなので、「似たようなゲームは似たような人がやるんじゃないか」と読んだのだ。

この時、「どんなガチャが流行るのか」などといったマニュアル化が社内では推し進められていた。しかし、今泉氏は「ゲームは生き物なのでマニュアル化は不可能だ」と気付いたという。

「やり続けなければわからないし、数字も感覚的な部分が多い」

三年目”現場と組織作り”

2012年は”美麗”カードバトルが流行。また、スマホの普及もあり、ネイティブアプリも力を伸ばしてきていた。

gumiではその年企画と運用を分け、再びスタジオ制に戻る。東京の開発ラインがいっぱいだったため、福岡オフィスも立ち上げた。「いろいろ大変だったので反対していたが、気づいたらできていた」という。スタジオ制のおかげで東京では運用を任せ、東京のリソースを活用して福岡オフィスを作り上げた。東京での経験を生かし、二ヶ月に一本のペースで新作を出していた。しかし、このころ”意思決定の遅れ”などのさまざまな摩擦が起こり始める。急激な組織拡大の結果によるものだった。

四年目”マネージメント”

ブラウザではなくネイティブになっていく節目の時代。『パズル&ドラゴンズ』や『クラッシュオブクラン』が大ヒットを記録していた。

gumiの中でも大規模開発と市場の拡大による制作へのモチベーションの変化が起き、「ネイティブをやりたい」という流れができていた。そんな中でグループ会社であるエイリムの『ブレイブ フロンティア』がヒット。急速な海外展開を行い、「現地の気持ちは現地の人しかわからない」という思想から、各国のチームに運用を任せていった。そのような大きな流れの中で今泉氏は

・マネージメント
自分がやりたいことをやるために他の人にやりたくないことをやってもらう必要がある
・選択と集中
自分がカバーできる範囲とできない範囲を見極める
・クリエイティブにおいて一人日は同じではない
プレイングマネージャーしか制作現場の最適化はできない
・担当アプリをどのように愛させるか
プロデューサーの権限を徐々に譲り、目標を設定させ、全社会で発表させる

といった点について重要性に気づいたという。

そしてこれから

2014年、フジテレビとgumiが共同で”フジ&グミゲームス”を設立。今泉氏は「テレビとネットが初めて結びついた瞬間だった」と語る。

制作を取り巻く環境として変わった点と変わらない点について、今泉氏は振り返って以下の項目を挙げた。

変わったこと

・数字の最適化⇒感性・感覚を重視へ
・ウェブサービス制作⇒ゲーム制作へ
・ゲームの多様性⇒類似アプリの減少
・開発費の高騰⇒2000万から億単位へ
・開発期間長期化⇒3ヶ月から1年以上へ
・ユーザーの送客が効かない⇒ 莫大な広告費or斬新なマーケティング

これからは、「モチーフを変えればヒットした時代から、”ゲーム作り”へと変わっていく」という。そして、斬新なマーケティングが必要の必要性を感じているようだ。

変わらないこと

・作り続けることのむずかしさ
・ノウハウよりも作品への情熱
・本当に作りたいものがあるのか?
・アウトプットのためのインプット
・企画に”エゴ”があるか? 
・作品を子供のように考えられるか?

「ヒットをつなげて一塁打、二塁打、たまにホームランが出ればいい」と語る今泉氏。「ゲーム作りのためにゲームをやっているかどうか」が重要だという。

そして最後に、今泉氏は

「”一番クールなモノ作り”は”魂のモノ作りを継続できる組織”だ」

と語る今泉氏のもとには、講演後大勢の人が一言交わすために長蛇の列を作っていた。

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