【インタビュー】CC2の松山氏が18年間夢を見続けた最新作『リトルテイルストーリー』にかける想いとは?
2014-03-25 12:30 投稿
サイバーコネクトツーが贈る、イヌやネコが擬人化された世界観“リトルテイルブロンクス”。コアなファンを多く抱えるこの世界観を題材にした新作がスマートフォンで登場する。それが『リトルテイルストーリー』だ。愛らしいキャラクターや世界観はそのままに、誰もが手軽に楽しめるような作品となっている。今回は、本作の生みの親であるサイバーコネクトツーの代表取締役、松山洋氏と、同作のプロデューサーを務めるバンダイナムコゲームス三戸亮氏に、作品の魅力や制作秘話を聞いた。
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『リトルテイルストーリー』開発秘話
――それでは、本作の開発の経緯をお聞かせください。
松山洋氏(以下、松山氏) すごく長い話になるのですけど(笑)。まず、『リトルテイルブロンクス』という”イヌヒト”、”ネコヒト”というキャラクターたちが浮島で生活する世界観がありまして。この世界観から始まっている『テイルコンチェルト』、『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』(以下、ソラトロボ)というゲームを作ったんですね。ですが、これが想像と違い、あまりよい結果を残せなかったんです。それで、その数字を受けて、当時の担当プロデューサーだった方から「『ソラトロボ』は構想10年かけてうまくいかなかったけど、また10年後にがんばって下さい」って感じのことを言われたんですよ(笑)。そのときは「10年後くらいになったらまたバンダイナムコゲームスのプロデューサーポジションの人をそそのかして、『リトルテイルブロンクス』でなんか作ろう」と考えていたんです。でも、もし10年後に『リトルテイルブロンクス』の話を持っていくにしても、「10年前に失敗したIPでもう一度やりましょう」と言っても、いい返事は返ってこないじゃないですか? それなら、きちんと一度実績を作ろうと思って、『リトルテイルブロンクス』の世界観を踏襲したスマートフォンのゲームを他のパートナーと作ろうと思ったんです。
――すごく歴史のあるIPだったんですね。
松山氏 私たちはこの世界が好きですし、『リトルテイルブロンクス』はウチのスタッフからも強く愛されている特別なIPです。それで、ほかのメーカーやゲーム会社にも話を持って行ってたのですが、そんな動きをしていた最中に、『.hack』の担当プロデューサーの三戸Pから「『ソラトロボ』の世界でもう1回勝負しましょうよ」って言われまして。ビックリしましたね(笑)。それで、隠し事をしているのもよくないから、「あのね、実はね、前のプロデューサーさんに、『また10年後』って言われちゃったから、ほかの会社に営業かけて打ち合わせしてたんだけど……」って告げたら、三戸Pに「勝手なことしないでください!」って怒られちゃいました(笑)。
三戸亮氏(以下、三戸) いやだって、ビックリしましたもの(笑)。
松山 バンダイナムコゲームスさんからいらないって言われたから、こっちはこっちで動いてたのに(笑)。そう言ったら三戸Pが「そんなこと言ったヤツはもうウチにはいない!」って(笑)。そこからバンダイナムコゲームスさんでまた『リトルテイルブロンクス』の世界を作れるんだ!ってことになったんです。それまで営業をさせていただいたところに、謝罪とご挨拶に行ったりはしましたけど。なんか、「元カレとヨリを戻すことになったから」って別れを切り出すみたいになっちゃってましたけどね。「ごめんね、ごめんね、バンダイナムコゲームスさん、浮気みたいになっちゃったけど、本気なのはアナタだけだから」みたいな(笑)
――(笑)。では、三戸さんきっかけでプロジェクトがスタートしたような感じなのですね。
松山 三戸Pがいなかったらホントに他のところとやってましたからね。
三戸 危なかったですね(笑)。ちょうどその話をしていたとき、僕たちは『ギルティドラゴン(以下、ギルドラ)』というタイトルもやっていて、成功しかけていたところだったんです。それで、このノリでもう1本いきたいなと考えていたのですが、『ギルドラ』は『.hack』をベースにしている部分があるので、世界観がコアなんですよ。なので、つぎはもっとカジュアルユーザーに受けるものにしたいと思っていたんです。そこで、サイバーコネクトツーさんの過去作を思い返してみたら、『ソラトロボ』というちょうどいいものがありまして。それで松山さんに相談したら、コレですよ(笑)。
松山 まぁ、あのときのドギマギ感って言ったらないですよ(笑)。後ろめたさというかなんというか。
三戸 ホントに明らかに浮気していたのがバレたって感じでしたよ(笑)。
なぜスマートフォンでリリースを?
――松山さんは、過去のインタビューでソーシャルゲームがお嫌いだと仰られていましたが、そんな中でコンシューマーで暖めていた『リトルテイルブロンクス』をスマートフォンで出すのにあたって、抵抗はなかったのですか?
松山 まったくないですね。というのも、そういうものがまったくなくなった後の話でしたから。たくさんのファンの方に支えていただいて、『テイルコンチェルト』や『ソラトロボ』の世界を好きでいてくれるのは嬉しいし、ありがたいことなんですけど、やっぱりもう少し分母を広げていかないと、IPとして育てていくのが難しいんです。それに、『ソラトロボ』が終わったときに、つぎは『リトルテイルブロンクス』の世界を、もっとたくさんの人に見てもらえるハードで出したいと考えていたので。これが、スマートフォンで出す理由ですね。
――そもそも、なぜソーシャルゲームが嫌いだったのでしょうか?
松山 一時期、画面をポチポチして、いっときの迷いでお金を払ってしまうという流れが確立されたゲームが流行ったじゃないですか。私もクリエイターなので、あのコンテンツのダメなところがスゴイ見えちゃって。あれはエンターテイメントじゃないし、そもそもおもしろくないし、それで人生観が変わったりとか明日への活力になったりすることはないって。だから、ウチは絶対カードソーシャルはやらないと、当時は思っていました。それがだいたい4年くらい前の話ですね。
――そこからどんな変化があったのですか?
松山 それから2年くらいたったあたりかな? バンダイナムコゲームスの鵜之澤(伸)副社長に呼び出されて怒られたというか、ハッパかけられまして。「いっぱしのことを言うのはもう分かったから。つまんねぇゲームだって言っていいのはお客様だけで、お前はクリエイターだろう? つまんねぇって思うんだったら、面白いものを作ってみせろよ。やってもいないヤツが横からガタガタ言うなんて、クリエイターとしてみっともないと思わないか」って。もう、グゥの音も出ませんでしたね。私もしゃべるときは信念を持って言っていますけれど、そのときに言われたことは、前面的に正しいと思い知らされました。だったら、面白いものを作ってやろうと気持ちを切り替えて『ギルドラ』を作ったんです。そこで、もうスマートフォンゲームに対する気持ちというのは吹っ切れたので、今は考えが変わっています。
――そんなことがあったんですね。『リトルテイルブロンクス』の世界観を、1プレイの時間が短く、言葉で世界観を伝えにくいスマートフォンで描くのに苦労した点はありましたか?
松山 世界観は、語るものではないと思うんです。これは家庭用ゲームでも同じですけど、世界観というのは、透けて見えてくるものなのです。ホーム画面ひとつを見るだけで、そこに世界観を感じられるかどうか。画面1枚の中に、世界観をハッキリと伝えるだけの説得力があるかどうか、それが大事なんですよ。そういった点で見ると、『リトルテイルストーリー』は、世界観の伝え方としては、ここ数年で一番うまくいったものだと思っています。世界観のはめ方、UIのデザイン、レスポンス。どれをとってもよくできたと実感できるものになっているので、そこはぜひ触れて感じて欲しいですね。
システムへのこだわり
――開発で一番時間をかけた部分はどこですか?
三戸 やっぱり、バトルシステムですかね?
松山 そうですね。手触り感、わかりやすさ。このふたつにはこだわりがあったので、開発中に何度も変化をした部分です。
――その部分の最終的なジャッジは、感覚的なものだったのですか?
三戸 触ってみないことには分からないものなので、感覚的といえば、そうだと思います。たとえば、今はパーティーメンバーをぐるぐる回して、攻撃のバーが溜まったキャラからコマンド入力するシステムになっていますが、前まではメンバーをグルグル回すだけで、攻撃のコマンドは全部オートでした。ただ、それを実際に触ってみたら……。
松山 あれはゲームに介入している感覚がほとんどなかったからね。
――ちなみに、そのローテーションをしながら戦うというのは、どのような経緯で生まれたのですか?
松山 「スマホゲームのアイデアコンペやるよ」とウチの人間に声かけをして、そこで上がってきた企画の中に、このローテーションバトルの雛形がありました。三戸Pも納得のものだったので、このシステムを機軸に進めていくことが、そこで決定しました。
三戸 今回はスマホで、しかもカジュアルユーザーを狙ったものですから、あまり複雑な操作は入れられない。でも、シンプルさを追及するあまり、操作性を犠牲にしてしまうと、それだけでストレスの原因になってしまいます。直感的に動かせるはずのスマホを、直感的に動かせないというのは、相当のストレスです。そこをしっかりと検討して雛形を進化させていった結果、いまのバトルシステムになりました。
――戦いと戦いの間に、メンバーを回復させたり攻撃力を増加させたりというインターバルが設けられていますが、あれはなぜ採用したんですか?
三戸 ほかのゲームにはないシステムですよね。
松山 よくあるゲームのように、3~5戦を立て続けにやって、死んだキャラクターはそのままって感じにしてしまうと、ある程度でゲームが行き詰まってしまうんですよ。それに、最後までそのまま突っ走らせると、クリア難易度が高くなってしまう。戦いが終わるごとに、メンバーが傷ついていないかが確認できれば、ゲームの難易度は易しくなりますし、やはりメンバーがイヌネコなので、愛を持って可愛がってあげて欲しいという想いの現われです。
――そういえば、本作のキャラクターにレアリティがありませんよね。装備アイテムでキャラクターを強くしていくのであって、キャラクターのベースはすべて同じ。どういった意図があって、この仕様を採用したのでしょうか?
松山 まず、キャラクターのレベルアップと武器防具の強化という、2種類の育成要素があると、幅広くお客様に遊んでいただけないと思ったのです。というのも、1パーティーの人数が7人ですから、両方のシステムを採用してしまうと、RPGとして遊んでいる時間よりもカスタマイズしている時間のほうが長くなってしまいます。そうなってしまっては、目標としていたシンプルな作りとはかけ離れたものになってしまいますからね。
松山 あと、”イヌヒト”、”ネコヒト”には、シバやパグ、アビシニアン、ペルシャと、いろいろな種類がいるのですけど、それぞれに強弱やレアリティを付けてしまうと、「私の好きなビーグルはノーマルしかないの? なんで?」と、みなさんに嫌な思いをさせてしまう可能性があります。そんな差をつけてしまったら、もういざこざしか生まれませんから(笑)。みんなを平等に愛して欲しい。それに、もしもパグが最強ってことになれば、どのパーティーも全員がパグになってしまって、ワイワイ感が薄れてしまうんですよね。悪魔のパグ軍団みたいなのが編成されても……ねぇ(笑)。
三戸 それは怖いですね(笑)。装備だけで強弱が決まるというシステムなら、そんな事態は起こらないし、なにより装備を変えることで見た目が変わったら、その見た目にも楽しめる部分ができておもしろいですからね。
――戦闘中の演出で、こだわった部分はありますか?
松山 戦闘中に、キャラクターが振り返ってくれたり、手を軽く振ってくれたりするのですけど、あそこはコダワリました! いちいち可愛いっていうのを目指して作りましたよ。
三戸 媚びすぎない、ギリギリのバランスで可愛らしさを演出しましたね(笑)。あと、強化マシンの煙とか、本当にとにかくいちいち可愛い場所があるので、そこはぜひ見ていただきたいですね。
――今回、装備に関わるシステムで強化、進化、発明と3種類ありますが、発明というのはドコから出てきたのですか?
松山 どこから……。うーん、たしか自然と出てきた感じですよね?
三戸 いや、僕が発明したいって言い出したんです(笑)。強化、進化というのは、ゲームとしてあるべきシステムなので、当然入れるとして。今回せっかく装備というシステムを厚くしているんだから、装備品の発明というか、自作をしたいと思って。開発側にその話をしたら、システムとして難しいのか、結構渋っていたのですけど(笑)。でもやりたいと押し通しました。
――では逆に、もともと入れようと思っていて、入れなかったシステムはありますか?
松山 基本的には、まずシンプルな軸があって、それに対して何が必要かを考えて追加していったので、削ったということはありません。最近のゲーム作りは、ドンドン削っていくというのが主流ですけど、私たちがやったのは、その逆ですね。
三戸 なるべくシンプルにしたかったんです。松山さんの世界観の話にもありますけど、世界観を語るゲームってよくありますよね? でも、あれって読まない人多いんですよ。読まない説明なんて必要ないですから。そこは雰囲気で語ってもらう形にしたりと、最初からそういった形で骨子を作っていたので、外した要素はありませんでした。
今後の展開は?
――今後の展開についてお聞かせください。
松山 そうですね。装備を増やしていったり、職業を増やしたりしたいですね。イヌネコの種類も増やしたいですし。それと、『.hack』や『ソラトロボ』でセルフコラボをしようと考えています。今回はイヌヒト、ネコヒトという擬人化されたキャラクターなので、衣装さえ借りてくれば、なりきりごっこもできます。バンダイナムコゲームスさんは有名IPをたくさん持っていて、人気キャラクターもたくさんいますから、その衣装を可愛いイヌネコたちが着れるとなれば、これはちょっとやってみたくなりますよね? ということで、今は三戸Pに社内営業をひたすら頑張ってもらっています(笑)。これに関しての具体的な案内は、ほどなく発表できると思います。
――それは楽しみですね。本作にPvPやGvGを搭載する予定はありますか?
三戸 それはないです。フレンドと一緒に冒険をしたりとかはありますけれど、基本的にはかわいいキャラクターを作って、それをリアルの友達同士で自慢しあって楽しむということも想定して作っているので、そういったガチガチの繋がりが求められるようなシステムは搭載しません。
松山 企画を作るときに、まずスマホゲームでよくある要素を書き出して、何を入れるか入れないかという審議をしたことがあるのですけど、PvPとかGvGは真っ先に大きなバツを付けましたから。絶対にやりません。とことん可愛く、とことんにぎやかに、見ているだけでハッピーという方向性で頑張っていこうと決めて動いているプロジェクトです。
――最後に、本作のリリースを待っているユーザーさんたちにひと言お願いします。
三戸 今回はカジュアルな人向けに作っているところもあって、より男女問わず幅広いお客様に楽しんでもらえる内容になっています。見た目は可愛いので、ライトなものかと思われるかもしれませんが、実際にプレイしてみれば、ゲーム性もしっかり備わっていると分かると思います。ほかのゲームアプリと比べていただいても、遊び応えがあります。今後はイベントもたくさん仕掛けていくので、ぜひインストールして遊んでみてください。
松山 『リトルテイルストーリー』は、ウチが18年ずっと夢見てきている『リトルテイルブロンクス』の最新作になります。てなことを言うとね、「スマホはいいから早く家庭用やれよ」と、愛のある応援をたくさんいただくのですが(笑)。この『リトルテイルストーリー』がみなさんに応援いただいて、多くの方に愛されるタイトルになれば、家庭用でやりたいと思っています。まずは、無料で遊んでみてもらって、この世界に触れてほしいです。それで、気が向いたら「アイツら元気にしてるかな?」みたいな、キャラクターたちが気になるタイトルになっていると思うので、自分の友達というか、仲間たちを末永く可愛がって欲しいと思います。
――やはり、最終的には家庭用が目標なのですか?
松山 何を言ってるんですか。ハリウッドですよ。ハリウッドで、ピクサーで映画化。これが目標ですよ(笑)。
これでキミもケモナーに
インタビューを記念して、松山氏がインタビューに着用していた耳フード付きブランケットと、トートバック、THE KEMONO BOOK 2、B3ポスター3枚をセットにした、サイバーコネクトツーオリジナル商品“THE KEMONO PACK”を抽選で1名にプレゼント! プレゼント希望の方は、下記の必要事項を記入して、ぜひ応募してほしい。
応募期間:2014年4月7日午後11時59分送信分まで。
※プレゼント当選者の発表は、賞品の発送(2012年4月中旬を予定)をもって代えさせていただきます。
リトルテイルストーリー
- ジャンル
- RPG
- メーカー
- バンダイナムコゲームス
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iPhone 4s,iPhone 5,iPhone 5s, iPhone 5c iPad 2以上 ※iOS5.1 以上 Android 2.3.3 以上 ※一部非対応機種あり
- コピーライト
- ©2014 NBGI
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