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【注目アプリレビュー】中年男の夢を乗せ、今日も彼は宙を舞う!『Backflip Madness』

2014-03-21 19:00 投稿

K兄弟のバク宙に憧れた小学校時代、そして現在

筆者が通っていた小学校には、“K兄弟”というマンガのキャラみたいな呼び名を持つ兄弟がいた。弟は筆者の同級生で、兄は1学年上。“◯◯兄弟”という字面はヤンキーマンガの定番キャラである凶悪な兄弟(大体、弟のほうが危険なヤツ)を連想させるが、K兄弟は違う。むしろ勉学に勤しみ、誰にでも友好的な振る舞いで接する品行方正な兄弟であった。ではなぜ、“K兄弟”などという仰々しい名前で呼ばれていたのかと言うと、ふたりとも運動神経が飛び抜けてよかったからだ。

ご存知の通り、小学校では運動神経の良し悪しによってクラス、ひいては学校内の立ち位置が決まる。K兄弟は間違いなく学校の頂点に君臨する存在だった。足が速いのはもちろんだが、なんとこの兄弟、小学生にして後方宙返り(バク宙)を自在にくり出せたのである。体操クラブに通うといった“チート”をしていないにも関わらずだ。

圧巻だったのはK弟が5年生、K兄が6年生の時の運動会。揃って応援団に所属していた兄弟は、応援合戦のクライマックスで見事なシンクロバク宙を披露したのである。騒然とする男子、見とれる女子。その日以降、多くの男子生徒がお昼休みに体育館でバク宙を練習することになったのは言うまでもない。もちろん筆者もそのひとりだったが、側転すらできないまま卒業を迎え、バク宙への憧れも自然に消えていった。

あれから約20年が経つ。立派に中年を迎えた筆者だが、どういうわけかいま再びバク宙に夢中だ。とは言っても、自身がするのではない。ゲームの中でくり出される、エクストリームなバク宙の快感に酔いしれているのだ。タイトルは『Backflip Madness』。日本語に訳せば“バク宙狂い”と言ったところだろうか。

バク宙に夢破れたかつての少年よ、再び宙を目指してみないか

ゲームを始めると、スクリーンには背筋をピンと伸ばしたタンクトップ姿の男性が表示される。この男こそが、噂のバク宙狂いだ。画面右下にある円で囲まれたエリアをタップすると、バク宙狂いはグッと膝を曲げるので、十分に折り曲がったタイミングでもう一度タップしよう。体を少し逸らしたまま飛び上がったら、お好みのタイミングで三度目のタップをすれば、いよいよバク宙狂いの本領発揮だ。膝をグッと抱え、見事なバク宙を決めてくれる。

▲背筋をピンと伸ばして、バク宙に備えるバク宙狂い。

高さがあれば2回転も無理ではなく、キレイに丸まったバク宙狂いの姿は、『メトロイド』シリーズのサムスを彷彿とさせるほど美しい。しかし、それに見とれているとバク宙狂いは地面にキスをすることになってしまう。現実世界のバク宙同様(やったことないけど)、着地が重要なのだ。

着地姿勢に入るには、クルクルと回った状態で4度目のタップをするだけ。最初の跳躍とは逆に少し体を内側に曲げながら、両足を下に突き出すバク宙狂い。両足が地面に接すれば、少し無理な姿勢でも彼は力強く着地してくれるだろう。具体例を示すのであれば、マイケル・ジャクソンが『スムース・クリミナル』のPVで魅せた“ゼロ・グラビティ”くらいの角度までは問題なく着地することが可能だ。ただし、着地姿勢に入るタイミングが少しでも狂えば、地面にキス、あるいはヒップアタックをかますことになってしまう。

以上が『Backflip Madness』の基本操作。ルールは、指定されたエリア内にバク宙で着地するだけ、というもの。なんとシンプルでイージーなゲームだろうか……と言いたいところだが、実際に遊んでみると意外に奥が深いことに気付かされる。例えば、ゲージの不在だ。

ゴルフゲームにおけるスイングゲージを始め、スポーツゲームには攻略を突き詰めるためのゲージという存在が不可欠だが、本作にはそういったものが一切ない。バク宙へのファーストステップである屈伸運動から最後の着地まで、プレイヤーはすべて感覚的にタイミングを取らなければいけないのだ。

そういう意味で、本作のプレイ感覚はゲームの攻略というよりも、実際にバク転を練習する感覚に近い(くりかえすが、バク転をやったことはない)。どのタイミングで体を丸めて、着地のために足を伸ばすか? プレイヤーはそういった細かな判断のすべてを、瞬間的かつ感覚的にこなさなければいけない。現実世界同様、ゲージなんてないのだ。タップという極めてシンプルな操作しか用いられていない『Backflip Madness』だが、そのタップひとつひとつは、確実にプレイヤーの運動神経を刺激し、成長させているのである。

バク宙に夢破れたかつての少年たちよ! 『Backflip Madness』は、そんなあなた方の果てせなかった夢を、小規模ではあるが実現してくれるゲームだ。いますぐダウンロードして、思うがままに飛び、回転し、転倒してほしい。

▲明日に向かって翔べ!

……いかん、基本的にはバカゲーテイストなアプリにも関わらず、妙に大作感溢れる猛々しい紹介になってしまった。これでは読者の誤解を生む可能生もあるので、最後に少し話を脱線させようと思う。

■寡黙な主人公のバックグラウンドに思いを馳せる

『Backflip Madness』の魅力はバク宙の緊張感だけではない。スポーツジムに始まり、空港、田舎町、都市、そして最後には渓谷と、エクストリームに進化していくステージも楽しみのひとつだ。各ステージに複数用意されているバク宙のシチュエーションも、「なんじゃこれは!?」と思わずにはいられないものが少なくない。バスケットゴールからバク宙、屋根から屋根へのバク宙、谷底への地獄バク宙などなど……“バク宙狂い”の名に恥じぬ体の張り具合だ。

しかし、これだけ過激なアクションを披露しているにも関わらず、いずれのステージにも観客は存在していない。バク宙狂いはたったひとりで、誰に称えられるわけでもないバク宙に挑むのである。ともすれば理解不能にも映るその姿に、かの“巌流島の戦い”を重ねるのは筆者だけだろうか? アントニオ猪木がマサ斎藤を招き、無観客で行った巌流島の戦い。当時猪木はプライベートで問題を抱えており、巌流島の戦いはそれらの悩みを吹っ切るために行われた……という説もある。

▲孤独な戦いをエクストリームに続けるバク宙狂い。

もしかすると、『Backflip Madness』の主人公も私生活で何かしらのヘヴィーな問題を抱えているのかもしれない。無観客で行われるエクストリームバク宙は、彼にとっての巌流島の戦いなのだ。そう“思い込んだ”うえで、改めてゲームをプレイすると、寡黙な主人公の顔から、言葉では語ることのできない“深み”が滲み出てくるように思えて、自分の頭が少し心配になってしまう。

だが、待ってほしい。いまゲーム業界では、プレイヤーが自身で物語を補完して体験する“ナラティブ”という価値観が注目を集めているという話もある。筆者のこの激しい思い込みも、考えようによっては立派なナラティブと言えるだろう。つまり、『Backflip Madness』はいま流行りのナラティブゲームであると、筆者は断言する!

うむ、この記事の着地は盛大に失敗したようだ。

(キモ次郎)

Backflip Madness

メーカー
Gamesoul Studio
配信日
配信中
価格
100円(税込)
対応機種
iOS 5.1 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。 iPhone 5 用に最適化済み Android2.2 以上

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