【インタビュー】ついにベールを脱いだ『テイルズ オブ リンク』 4人のキーマンを直撃
2014-02-17 15:40 投稿
『テイルズ オブ リンク』は今春リリース予定
昨年8月に発表されたスマホ向けの『テイルズ オブ』シリーズ最新作『テイルズ オブ リンク』。久しくベールに包まれてきたが、今春に配信されることが判明した。本作は『テイルズ オブ』シリーズの英雄たちとオリジナルキャラクターが登場し、最大12人のキャラをつないで戦うリンクバトルシステムが特徴。ストーリーはオリジナルとなっており、世界にばらまかれた災厄の種をめぐる物語がくり広げられていく。開発を手がけるのは『サウザンドメモリーズ』でしられるアカツキ。
そこで、ファミ通Appではバンダイナムコスタジオのチーフプロデューサー 大舘隆司氏、ディレクター 直井啓訓氏、アカツキの代表取締役CEO 塩田元規氏、ディレクター 山本和哉氏にインタビューを敢行。本作の開発経緯や状況について話を聞いた。
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バンダイナムコスタジオ
チーフプロデューサー 大舘隆司氏(写真右)
ディレクター 直井啓訓氏(写真右から2番目)
アカツキ
代表取締役CEO 塩田元規氏(写真左)
ディレクター 山本和哉氏(写真左から2番目)
『テイルズ オブ』がホームランゲームに!?
――まずは『テイルズ オブ リンク』をアカツキさんと一緒に開発することになった経緯についてお聞かせください。
大舘隆司氏(以下、大舘):僕らは、スマートフォン向けにブラウザゲームの『テイルズ オブ カード エボルブ』というタイトルを提供しているのですが、ネイティブアプリのソーシャルゲームを作らなければいけないというのは、以前から考えていました。企画自体は先行してあったのですが、パートナー会社さんをどう見つけようかと考えていて、そんなときにアカツキさんに出会って、わりとすぐに意気投合した感じですね。
塩田元規氏(以下、塩田):最初にお会いしたときは、メチャメチャ怖かったんですよ(笑)。
大舘:そうでしたっけ(笑)。
――当初から『テイルズ オブ』シリーズのアプリを作ろうとしていたのですか?
大舘:僕ら自身はそう考えていました。ちょうどアカツキさんも、“これからはネイティブアプリのゲームだ”という同じ認識を持っていて、技術を蓄えていく段階だったんです。それならいっしょにやろうっていう話になり、このプロジェクトが始まりました。
塩田:僕らもネイティブでいくことは決めていたのですが、開発費も高騰しているし、技術的に困難を経ている状況で。ですから、『テイルズ オブ リンク』もそうですが、最初はいっしょにおもしろいゲームエンジンを作って両社で使えればいいよねと話していたんです。
――技術的なノウハウを両社で共有するということですか?
塩田:そうですね。でも、大舘さんはいい意味で企画にこだわりがある方なのでそれを活かすためにも、開発は僕らが担うことになりました。どちらかと言うと、実作業は僕たちが手を動かして、バンダイナムコゲームスさんからは配信されているネイティブタイトルの知見をいただいたり、という関係性ですね。
大舘:我々は3DSやPSP(プレイステーション・ポータブル)のタイトルもやってきてるので、コンシューマーゲームっぽいものは作れるのですが、コンシューマーの手法をそのままネイティブに持ち込むのは違うと思っています。片手で焼き魚定食を食べながらできるゲーム、でもブラウザゲームではなくて、一定の達成感が得られるゲームを発見しなくてはいけないというところで、お互いのやってきた畑は違うのですが、アイデアを出し合って形にしていきました。
直井啓訓氏(以下、直井):けっこうそこが難しかったですよね。
塩田:難しかったですねぇ。縦持ちにするのか横持ちにするのかとか……僕は絶対縦持ちだよなっていうのはありつつ。
大舘:こちらとしてはコンシューマーだったら横持ちだよねというのがあって、ゲームを遊ぶなら横に持つはずだっていう(笑)。ただ、何か違うという感覚もあって、何度も試作しました。最初はRTS(リアルタイムストラテジー)みたいな形で……企画書あるかな?
塩田:いやー黒歴史ですね(笑)。
大舘:この歴史があったこそ、いまがある(笑)。
塩田:最初はポチポチ感が強かったんですよね。
大舘:その前があったんだよ! キャラクターを選んで重ねるっていうのがあって。今で言うと『○○○○』みたいな(笑)。
塩田:『○○○○』や『○○○○』も経ましたよね。いまの人気タイトルのシステムを踏襲したものは作ったうえで、僕たちの中でこれでは違うと。
大舘:それでつぎに作ったのがホームランゲーム(笑)。敵が来ました、タイミング良く打ち返しましょうっていうゲームでした。とにかく、その作っては壊して、作っては壊しての期間が長かったです。
――いまの形になるまで相当な数の試作があったのですね(笑)。
塩田:そのプロセスでノウハウが溜まっていった気がします。
『レディアントマイソロジー』シリーズの後継作として
――そもそも企画が立ち上がったのはいつごろなのですか?
直井:2012年の10月くらいですね。
――それで、現在の形が見えてきたのは?
大舘:去年の2月か3月です。偶発的にこれよくない?というのが見つかって、そこからまとめ始めていまの形になりました。
直井:元々ヒントはあったと思うんです。手軽に遊べて、なおかつアクション性と頭を使う要素もあって、でもキャラクターを大事にしたい。そういったいろいろなヒントがあったうえで、それらをつなぐとどうなんだろうと。そういう意味では偶発と言いつつも、必然性もありましたね。
大舘:確かに流れはあったね。このキャラクターとキャラクターを選んで、このキャラクターに行かせるというのを、タップ操作なのか、なぞり操作なのかを求めているうちに、なぞり操作だったらルールがあったほうがいいという部分が自然を見えてきたり。
――元々のコンセプトはどういった感じだったのですか?
大舘:お互いが思ってたのは、ネイティブアプリの時代になっていく中で、競争力のあるゲームフレームやゲームエンジンを持つということです。ですから、オリジナリティという部分には非常にこだわりました。少し後付けっぽいのですが、無機質なものを機械的になぞるのではなくて、キャラクターに触ることでコミュニケーションする仕組みを絶対に取り入れたかったんです。キャラクターに触ると「よし行くぞ」とか「イヤン」とかしゃべったり、ポージングしたり、僕らの強みでもあるキャラクターIPを活かす部分に注力しました。
――本作に登場する歴代のキャラクターたちは、この世界にどう関わるのでしょうか?
直井:元々、歴代キャラクターが活躍する『レディアントマイソロジー』シリーズというタイトルがありまして、その形に近いものになっています。『レディアントマイソロジー』シリーズでは、『テイルズ オブ』シリーズのキャラクターはパラレルワールドの住人という形で、例えばどこどこの騎士、どこどこのお姫様という設定を持っています。『テイルズ オブ リンク』もその形を踏襲しています。
大舘:最初は『テイルズ オブ』シリーズのキャラクターは過去の英雄なので、本作のストーリーでは生きていないイメージは持っていました。ただ、開発が進んでいく中で、いろいろなキャラクターがシリーズを飛び越えて会話する喜びを本作でも表現したくて、ここでやるかっていうギリギリのタイミングでストーリーを全部変えました(笑)。
塩田:それ、最近の話じゃないですか(笑)。
直井:収録スタジオを押さえて、 一度録ったメインシナリオのボイスを録り直しました。
大舘:『テイルズ オブ リンク』は、『レディアントマイソロジー』シリーズの後継のコンテンツに引き上げていこう考えていて、持っていけると思っています。事前登録で情報を軽く出したところ、『レディアントマイソロジー』シリーズの後のタイトルだと思っていただいた方もいて、だったらそれに応えないといけない。「シリーズを飛び越えたキャラクターの関わりを楽しみたいと思ったらこのゲームを遊んでね」と言えるタイトルとして、我々は『テイルズ オブ リンク』をポジショニングしています。
――『テイルズ オブ』はストーリーも魅力ですが、シナリオとしてのエンディングは用意されているのでしょうか。
大舘:いい質問ですね(笑)。区切りは設けてはいるのですが、その先は必ずあります。コンシューマーゲームとは違って売り切りではないので、どんどん作り足していくことがソーシャルゲームのおもしろさ、運営型ゲームの楽しさです。ですので、ユーザーさんの反応を見ながら望んでいる方向に、ちょっと軽く裏切ったりしつつも、ストーリーを膨らませていければと思っています。
山本和哉氏(以下、山本):メインシナリオだけではなくて、イベントもストーリーを重視していて、いろいろ用意しています。その辺は直井さんがストーリーラインをけっこう頑張ってくれていますね。
直井:“『テイルズ オブ』らしさ”を考えると、ストーリを推さないわけにはいきませんからね。群像劇っぽい形になっているので、いったんメインシナリオが終わっても、「あの時あいつはどうしていたんだろう」といったように、どんどん続いていく形になっています。
塩田:シナリオやイベントも“リンク”していく感じですね(笑)。
――うまい(笑)。もうひとつ、個性的なサブキャラクターも魅力のひとつですが、例えば漆黒の翼とかその辺のキャラも登場するのでしょうか?
大舘:お、すごくタイムリーな質問が(笑)。『サウザンドメモリーズ』にリターナーにLPポイントを与えるためのモブキャラがいるのですが、『テイルズ オブ リンク』ではどうします? という話が3週間前にあったんです。それで、ネコ忍やカメ忍という話もあったのですが、漆黒の翼でいこうということになりました。
――本当に最近のお話なんですね(笑)。
大舘:漆黒の翼にフォーカスしようっていうのはつい最近です。グッドクエスチョンでした(笑)。
――他にも主役級以外のキャラが登場するのですか?
大舘:そうですね。『テイルズ オブ』のヒーローたち、英雄だけを扱っていくと、世界が小さくなってしまうんです。ですから、もっと幅広くて、いろんなストーリーやキャラクターを用意しています。最初は名も無き英雄たちもいるんですよ。その子達のバックストーリーはこれから用意していくのですが、彼らが後々人気を持ってくれるといいなと画策しています。
直井:オリジナルキャラクターもいますし、『エクシリア』でサブキャラ的な存在だったアグリアとか、『ファンタジア』のボスのダオスとか、そのあたりの登場キャラクターに入っています。
大舘:メインのキャラ以外もしっかり抑えてつつ、オリジナルにも超期待してほしいと思います。着ぐるみマルルンって子がいるのですけど、すごい可愛いんです!
直井:誰に話してもこの話になるんですよ(笑)。
――(笑)。リリース時にはどれくらいのキャラがいるのですか?
直井:130体くらいですかね。
大舘:それも去年の12月くらいに増やすぞって急遽手配したんです。
塩田:そうですね。この1ヵ月で30体くらい増えました。
――シリーズキャラだけで一回揃えたいですね。
塩田:絶対そういう人いますよね(笑)
山本:主人公だけで揃えると、ニヤニヤ感が出るんですよね。
大舘:最近、メチャメチャ『テイルズ オブ』ファンの子に触ってもらったんです。そのときの反応が、いちいち声が嬉しい、反応が嬉しいとキャッキャしていました。そういう意味では賑やかな感じなので、ファンも喜ぶと思います。
バトルシステムはとにかく“たくさんつなぐ”ことに集約
――戦闘画面を見せていただいたときに、アカツキの『サウザンドメモリーズ』と近いゲームシステムに感じたのですが、『テイルズ オブ リンク』ならではの仕組みはあるのでしょうか?
山本:あります。共同でゲームエンジンを作っていたのはお話した通りなのですが、『テイルズ オブ リンク』は『サウザンドメモリーズ』と違って、“たくさんつなぐ”ことに、よりフォーカスしています。『サウザンドメモリーズ』では経過したターン数でスキルが発動しますが、『テイルズ オブ リンク』ではつなぐことでリンク数が溜まっていき、それを消費してスキルを使う仕組みになっています。例えば、リンク数が100溜れば、ひとりのキャラで20消費するスキルを3回使ってもいい。いわゆるMPみたいな概念に近いですね。
大舘:デバック兼チューニングを何回もやっているのですが、『サウザンドメモリーズ』とは頭の使い方が微妙に違います。『サウザンドメモリーズ』はコスト管理のゲームで、そこにやり込み要素や戦略性があるのですが、ワンパンで敵を倒せる状況なら、つながずに倒すと思うんです。それはそれでおもしろくて頭を使う部分でもあるのですが、『テイルズ オブ リンク』は逆にすごく敷居を低く作っています。“つなげば楽しい”、“つなげば得だよ”ということに集約させました。ですから、カタルシスの部分で言うと、じつは『サウザンドメモリーズ』のほうがあります。耐えて耐えて、多くのリンクができたときに一気に大ダメージを与えて倒すおもしろさがあるのに対し、そこの耐え度を若干抑え気味にしているのが『テイルズ オブ リンク』なんです。
山本:もうひとつ、属性という概念も打ち出しています。どの属性の武器を装備させるかを考えながらパーティー編成を行うのも『テイルズ オブ リンク』の特徴です。
――武器や防具には、『テイルズオブ』シリーズに出てきたものが使われているのでしょうか?
大舘:そうですね。『レディアントマイソロジー3』までで出していた武器や防具を基本として、それを全部イラストで描き直してカードにしています。そういうところからスタートして、一通りやり終えたので、これからはネタ武器に(笑)。
――ネタ武器、いいですね。開発にあたっていちばん苦労された部分はどこですか?
塩田:機能的にほとんど使わないだろうというところでも、かなり深く作り込んだので全体的に苦労しました。あとはUIも試行錯誤をしながら、触りながら、変えていったので、そのスクラップ&ビルドの部分はけっこう大変でしたね。最初は3、4ヵ月でいける思っていたのですがぜんぜん無理で。正直、ナメていました(笑)。
大舘:手触りの部分もすごくこだわっていて、指の当たりの認識範囲、検出範囲をどのように定義するかで、手触りが全然変わるんです。このゲームって誤爆するとメチャメチャ腹が立つんですよ。そういうところをなるべく踏まないバランシングで、ドット単位で調整していきました。あとは、テンポ感ですね。とにかくテンポを悪くしてはいけないというところが一番最初にあったので、そこもけっこうこだわりました。
直井:チビキャラが攻撃するアニメーションもすごく丁寧に作っているので、本当はじっくり見ていただきたいのですが、あえて見せないくらい、テンポ感を大事にしています。
――なんかもったいない(笑)。
大舘:フィニッシャーで最後に9連携をうまく作って、その9連携をフィニッシュしたら、そのキャラクターがクローズアップして最後の2コマだけキュッ、キュッって止まるんですよ。“あっ、この子はコケて攻撃してるんだ”ということが分かる!(笑)
――こだわりが見える瞬間ですね。
ゲーム運営については長い目で見てほしい
――ゲリラダンジョン的な要素はあるのでしょうか?
山本:あります。ゲリラダンジョンみたいなものもありますし、まだ開発中なんですが、精霊みたいな概念をイベントの中に登場させようと話をしています。イベントでがんばるといい精霊がつぎの1週間だけ使えたりですとか、そういう機能を追加しようとしています。コミットできないですけど(笑)。あと、闘技場みたいなシステムも検討しています。
――それはPvPなのでしょうか?
山本:PvPではなくて、強いモンスターと戦っていくという感じです。
――『テイルズ オブ』シリーズにある闘技場に近いですね。
塩田:ファンの方は絶対に裏切りたくないというのが根底にあります。山本は攻略本も読み込でいて、僕が「もうちょっと早く企画上げてよ」と言っても、「これ読み込まないと終われません」って(笑)。
――徹底していますね。それだけ『テイルズ オブ』という名を冠したタイトルを作るプレッシャーがあったということでしょうか?
山本:正直ありますが、子供の頃からやっていた作品に関われるというのはとても光栄です。ただ、ファンが喜びそうなものはどんどん入れていきたいですね。
大舘:じつは僕たちもプレッシャーは感じています。オリジナルシリーズを作ってきた作り手側もいるし、ファンの方と一緒に広げてきたものでもあるので、その見えない壁というか、やっていいのかなこれ?っていうさじ加減を考えながら作るのが難しいんです。
塩田:ウチの社内でも、携われないメンバーはキレ気味なんですよ。なんで山本なんですか、っていうね(笑)。
――シリーズの歴史が長いので、熱いファンも多いですからね。
大舘:最初は、けっこうザワザワすると思うんですよ。でも長く運営していくので、一瞬、特定のキャラがひいきされているように見えても、長い目で見たら他のキャラもフューチャリングされていくので、長い目で見てほしいです。僕らはこういう時はお父さんの目線で、みんな可愛いんだよと、お父さんの目線で……やんなきゃね!(笑)。
――キャラクターそれぞれのスピンオフのストーリーがあったりも?
大舘:イベントのほうが盛り上がってきたら、そっちのほうのストーリーを太くしてくというのはあると思います。ストーリーが厚くなったのなら挿絵も入れてみようとか、そういうこともやっていきたいですね。あとはボイス。ずっとあるわけではないのですが、このイベントを盛り上げたいから音声収録をもう一度やってみようというのも、可能性としてはあると思います。
――しゃべるとテンション上がりますよね。
大舘:そこはドキドキしながら実装中です。容量食うので「どこまでやるんですか」って言われますね(笑)
――もしや、Wi-Fi経由でないとダウンロードできない?
山本:いえ、ふつうにケータイの回線でダウンロードできます。
大舘:容量とボイスの量がトレードオフになっているのでけっこう悩みます。しかも、オープニングムービーもありますし。
塩田:あれいいですよね。
山本:いいんですけどね、90秒もあるので(笑)。
直井:限界ギリギリの闘いがまたここに(笑)。
――配信楽しみにしています。ありがとうございました。
(C)NAMCO BANDAI Games Inc. developed by Akatsuki/NAMCO BANDAI Studios Inc. (C)いのまたむつみ (C)藤島康介
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