超話題作『あいつ勇者やめるって』を作った新進気鋭のHappyHoppyHappyを直撃

2014-01-25 12:00 投稿

レトロRPGと脱出ゲームが融合した『あいつ勇者やめるって』を手掛けたHappyHoppyHappyに、インタビューを敢行。プロデューサー兼ディレクターのエニム・ゥー氏に、たっぷりとお話を伺いましたよ。

HappyHoppyHappy
代表取締役社長
エニム・ゥー氏

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やさぐれ(?)『勇者』誕生秘話

——『あいつ勇者やめるって』を開発されたいきさつをお聞かせください。

エニム・ゥー氏(以下、エニム) 昨年の10月の終わりに、私を含めたスタッフ3人で、親睦を深めるという意味もあって熱海に企画合宿に行ったんです。その中で出てきた企画のひとつが『勇者』だったんですね。企画を立てたのは私だったんですけど、RPGっぽいドット絵の脱出ゲームがあったら楽しいなと考えまして。

でも、勇者は本当なら戦わなきゃいけないので、勇者が脱出するときってどんなときかなと……じゃあ、もうやめたくなっちゃった勇者でいいかなって(笑)。それで『あいつ勇者やめるって』というタイトルが浮かんできたんです。

——タイトル先行だったのですね。キャッチーですもんね! ずばり、あの小説へのオマージュですか?

エニム じつは、小説も映画も拝見していないんです。字面だけで、「そういえば……」と。

——タイトルもそうですが、アイコンには“やめたい”って書いてあったりと、インパクトがありますよね。

エニム アイコンの案は、デザイナーの遊び心ですね。気づいたら“やめたい”って入ってました(笑)。

——プロデューサーが知らないと(笑)。本作の勇者は、勇者らしからぬ発言や行動をしたりしますが、 このキャラクター像はどのようにして誕生したんですか?

エニム 最初は、脱出ゲームって音もあまりないし、セリフも人も出てこない作品が多いので、セリフがあったら皆さんイヤかなと思って入れていなかったんです。でも、少しはRPGっぽくするために入れていたんですけど、最初の勇者の部屋の部分をエンジニアの”スミス”に組んでもらっていたときに、なぜか勇者がすごくしゃべるようになっていたんです。そのときは、すごくゲスい勇者でしたね(笑)。

本当は、私が書いたセリフのデータがあったんですけど、スミスは気づいていなかったらしくて。プログラムするに当たって、とりあえず何か入れとかなきゃということで、好きなようにセリフを書いていたらそんな勇者になってしまったと。

——いまよりもやさぐれた勇者だったんですね(笑)。

エニム ええ、さすがにやりすぎかなと思ったんですけど、ちょっとはそういうテイストがあってもいいかなと。キャラクターとしてもおもしろくなるなと思いまして、私の案と足して2で割った感じにしたのが、現在の勇者になりました。

それでも、だいぶ人間くさいですね。でも、意外とかわいいって言ってくださるレビューもあったり、一方で勇者に同情するような声もあったり。いい感じに仕上がったのかなと。

——勇者は白魔導士にお金を持ち逃げされたりと、踏んだり蹴ったりですよね……(笑)。

エニム そうですね、旅にはそういうこともあるかなと(笑)。そんなにみんな簡単に仲間にならないんじゃないかなと(笑)。

——そうかもしれませんね(笑)。セリフだけでなく、勇者の動きもいいですよね。速いし、ナナメに歩くんじゃなくてカクカクっと曲がっていくところとか、レトロRPGっぽいですね。

エニム 開発当初は、十字キーを画面に配置するユーザーインターフェースを考えていたんですけど、「これは操作しづらいんじゃないかな」と思ったんですね。「じゃあ、いままでの脱出ゲームみたいに、タップしたらそこに勇者が行けばいいんじゃない」と。そこがけっこう時間をかけた部分ではあります。スミスは「最短で行くロジックが……」と、うんぬん言っていましたが(笑)。

——その選択肢はよかったと思いますよ。どれくらいの開発期間で作られたんですか?

エニム そうですね。どのアプリも2週間から4週間のあいだで作っているので。『勇者』がいちばん時間はかかっていますね。

——1ヵ月くらいしかかかってないんですか。すごい!

『勇者』に影響を与えたゲームたち

——脱出ゲームの内容も3人で考えられたのですか?

エニム 中身の謎解きの部分は私が作りました。

——意外な仕掛けや、最後に○○○が○○するところなんて驚きましたけど、考えるのは苦労されたのでは?

エニム そんなに苦労はしていないんですけど、苦労しなかった分、不可解な謎が残ったりしたのかな……と思う部分もあります。最後はただ脱出するんじゃなくて、RPGっぽくボス戦があるといいなと。

でもそこでいきなり“たたかう”のコマンドが出てきたりするのもイヤだなあと。昔、プレイステーションの『クーロンズゲート』っていうゲームで、アイテムを選んで戦うというボス戦があったので、そういう形だったら、今回のボス戦にも合うかなと。

——そうだったんですね。ところで、それまでも脱出ゲームはよくプレイされていましたか?

エニム そうですね、フィーチャーフォンのときからちょいちょいやっていましたし、今回企画するに当たっては、評判のよい脱出ゲームをたくさんプレイしましたね。

——本作にはRPGファンならニヤリとするネタが散りばめられていますが、 やはりスタッフの皆さんはRPGがお好きなのでしょうか? 思い入れのある作品などがあればお聞かせください。

エニム 私はアクションゲームが苦手だったので、RPGをよく遊んでいましたね。ほかのふたりのほうがさらにプレイしているかな。小さいころから、いまもよく遊んでいるみたいですね。よく『メガテン』がどうしたこうしたと言っているのを耳にします(笑)。じつは、私もふたりの話に入ろうと、お正月に3DSの『メガテン』を遊んだんですよ。でも、ふたりは3DS版を遊んでいなく、けっきょく話しに交じれず……(笑)。

——ざんねん(笑)。ご自身がお好きなシリーズはありますか?

エニム 私は『ファイナルファンタジー』派ですね。あのふたりは『ドラゴンクエスト』派なんじゃないかな。

——『勇者』でも召喚獣や、小さなメダルのネタが出てきましたね。

エニム ええ。脱出ゲームって無機質なものが多いので、最初はこういうテイストを気に入ってもらえるのか心配でしたが、楽しんでいただけているようでよかったです。

ユーザーの反響と、新しいヒントの形

——人気急上昇の『勇者』ですが、何かヒットのきっかけがあったのでしょうか。

エニム 最初にマーケティングで多少費用を投じたのはあったんですけど、その後は何もせず……。やっぱりいろいろなメディアさんが記事を書いてくださったりしたことで、少しずつ盛り上がってきたようです。私たちもビックリしました。

——ユーザー層はどんな人たちが多いのでしょうか。また、ダウンロード数は現在どのくらいですか?

エニム ダウンロード数は、iPhoneとAndroid合わせて35万くらいですね。はっきりとはわかりませんが、意外とレビューを見ていると女性の方も多いのかなと思います。あとはドット絵やRPGが刺さる方、となると30代くらいの方が多いかなと。

——35万、すごいですね。ユーザーさんのレビューも高評価ですよね。

エニム そうなんです。ありがたいことに……。

——印象に残ったユーザーさんの声はありますか。

エニム 2周目で、持っていたアイテムを王様に投げつけたら、「まさか2しゅうめか!」って言われて、細かいところまで作り込んでいるっていうレビューをいただいたのが印象深いですね。そのネタはエンジニアのスミスが勝手に入れていたんですけど、「誰か気づいてくれる人いないかな」と言っていたら、そうやって書いていただける方がいて。「いたー!」って皆で喜んでいました。

▲正しい手順をすっ飛ばして実験室へ入ったときに、本来ならその時点で持っていないアイテムを使うと、王様もビックリ。道中で消費されるハズのタコなどで、薬をキャッチしようとするとこのメッセージが出てきます。開発陣からのありがとうに、勇者がツッコミを入れているのにも注目。

エニム それと、ヒントがよかったという声もいただいていますね。思った以上に皆さんヒントを見ているんだなというのは感じました。

やはり、脱出ゲームって達成感の連続が気持ちよさにつながると思うので、詰まってそこでやめちゃうよりは、ヒントでプレイを続けていただければと思ったんです。そこで、ヒントを見るついでに広告を見ていただければと。アプリによっては、課金でヒントが見られるところもありますが、これならユーザーさんの気分をそこまで害さないかなと思ったんです。

——確かに、気軽にヒントが見られるのはうれしいですね。

エニム ユーザーさんの声としては、ネコがかわいいという方もいましたね。ネコは、私がネコ好きなので無理やり入れたんです(笑)。よく、開発のふたりにネコを使ったアプリを作りたいなとは言っているんですけど、「ネコは王道だからなー」って言われちゃってまだ実現していませんが。

▲エニム・ゥー氏のお席を拝見。ほんとにネコがお好きなんですね。

HappyHoppyHappyってどんな会社?

——いまは3人だけで作られているんですよね。

エニム はい。エンジニアのスミス、デザイナーのピョロ・ッシュと私ですね。数奇な運命によって出会い、いっしょにアプリを作ることとなりました。

——ちなみに、社名の由来というのは?

エニム 3人で飲みながら社名を考えていまして。飲みながらってところからもう想像がつくと思うんですけど、「楽しそうな名前がいいよね」って言っていたときに、ひとりがホッピーを見て、「ホッピーってなんか弾んでいる感じでいいよね、これにハッピーとかつけたらもっといい感じじゃない?」と。思わず挟んじゃいました(笑)。

——たしかに楽しい感じがします。そういえば、エニム・ゥーというお名前の由来は……?

エニム スミスに、「クレジットどうするの?」ってせっつかれているときに、1分くらいで捻りだした名前なんです。そこから先の由来はないしょです(笑)。

——最初、中庭の木に刻んであるのを見たので、何かの暗号かなと思っていたんですよね。

エニム そういうミスリードを狙ったところもあります。ふつうの脱出ゲームはタップするところを探すぶん、『勇者』はタップするところはある程度わかってしまうので、逆にこれはヒントなのか、単なるジョークなのかというものを散りばめようと。

そういう意図で、いろんなところを調べて文字が出てくるようにしてあります。でも、みんなの名前を木に刻もうかというとき、「はて……、ENIMURの読みかたはどうしよう」と悩みました(笑)。

——そんないきさつがあったんですね。では、皆さんはふだん、どのようにして開発してらっしゃるのですか?

エニム 最初に企画をある程度作ってしまって、あとはふたりに渡す、という感じですね。音楽だけは、フリーで提供してくださっているサイト様からお借りしているんです。なので、たまに「コレ、あのゲームで使われていたのと同じ曲ですね」とか、「あのゲームを作っている会社さんのアプリですね」って言われることもあるんですけど……。

——そうではない、と。

エニム はい。いずれは弊社で作っていけたらいいんですけど。

——企画のほうは、どのように決められているんですか?

エニム 基本的に私が企画をいっぱい書きはするんですけど、ふたりにも作りたいものがあれば出してもらっています。そのときにそれぞれ評価軸を決めていって、3人でそれぞれ採点をして。ポイントが上位のものの中から、最終的に私が決めるという感じですね。なので、企画が決まって、とくにふたりから質問がなければ、あんまり会話はないですね(笑)。

——そうなんですか? 隣の席でいろいろ話しながら作られているのかと思いましたが……。

エニム シェアオフィスのほかの会社の方にも、私たちの会話のなさを心配されていて(笑)。「キミたち、席もバラバラで話もせずに仕事しているけど、大丈夫?」って。Skypeとかはやっているんですけど、ふたりは作業に集中しているとよくスルーされますよ(笑)。

でも、皆、楽しんで作っているのは間違いないですし、仲は悪くないので……。そういえばクリスマスに、ナノブロックで手作りの勇者グッズを3つ作って、あのふたりにもあげたんですよ。

——すてき! 『勇者』もグッズ化されるといいですね。

エニム そうですね。いずれはマスコットなんかも作りたいですね。そういえば、以前、カイロソフトさんのインタビューを拝見したのですが、カイロくんが答える形になっていて、さすが、うまいなあと。私、カイロソフトさんの作品大好きなんですよ。

——コラボなんかも実現したらステキですね。

▲デザイナーのピョロ・ッシュ氏がサラサラと描かれたという、勇者の設定画も見せていただきました。勇者、けっこうかっこよかったんだ!
▲シェアオフィスは、広々としたオシャレな空間でした。イベントが開かれることもあるとか。意外なことに、元は印刷工場だったそう。

驚異のスピードリリース! 気になる次回作は!?

——『勇者』の次回作はあるんですか?

エニム じつは開発に入ってます。

——まじですか!!!!

エニム 進行自体は、ふたりに任せている状態なので細かいところは言えないのですが、もう少ししたら「この辺までできた」というものが見られるかな、と。あんまり「どうなの?」って聞きすぎると、「そっとしといて」ってなっちゃうかなと(笑)。

そんなわけでふたりを信じて待っています。2月の中旬くらいには出せるといいんですけど、3人しかいないので、誰かがインフルエンザとかになってしまったら、もうちょっとかかってしまうかもしれません(笑)。

——お話できる範囲でいいので、次回作はどのような作品になりそうですか?

エニム 1作目のアップデートではなく、別アプリとして出します。続編といいつつも、テイストは少し変わりますよ。1作目とは違う外伝的な位置づけです。ストーリー仕立てというより、ダンジョンのフロアごとに小さい謎解きをクリアーしていって、どんどん地上に向かっていくという形です。

——まだまだ勇者はやめられないわけですね。

エニム はい(笑)。勇者も、ココを出たら今度こそ勇者をやめようとがんばります。

——そういえば、1作目で最後まで残ったアイテムの長靴が気になります。次回作で再登場する可能性はありますか?

エニム そうなんですよね、長靴だけ使い道がなくて……。それは現在、検討を重ねております(笑)。ふたりにも「つぎにつなげるんでしょ?」って言われて「あっ……、ああ、うん」と。もしかしたら、つぎのダンジョンでもずっと持っているかもしれません(笑)。

——期待が膨らみます。ちなみに、1作目を踏襲したようなストーリー仕立ての作品はお考えですか?

エニム そうですね、ストーリー仕立ての長いものをやるのが好きという方も多いですし、もう少しボリュームが欲しいという声もありますので、検討しています。1作目のようなフロアが広いタイプだったら、こういう謎もアリかなというアイデアもあるので。

——それは楽しみです。そのほか、『勇者』とは違ったアプリも予定されていたりしますか?

エニム いまあるものを見ていただいてもわかると思いますが、『あのうた』と『腸内戦争』は、それぞれ全然違うので(笑)。その時々で、何かしらの方向性を持ちつつも、遊んでくれる人の記憶に残るような、遊び続けてもらえるアプリをつねに考えています。

——『腸内戦争』はリリースされたばかりですが、どのようなゲームなのでしょう?

エニム お腹の中で、善玉菌と悪玉菌が戦うというゲームです。みんな、タイトルを聞いただけだど、“町内”のほうだと思っちゃうんですけど、お腹の中の戦争です(笑)。アクションゲームで、物理演算を使ったものが作りたいということで立ちあがった作品なんですね。いちばん最初に善玉菌のビフィズス菌がいて、このコをタップして腸内の悪玉菌にぶつけていくんです。悪玉菌もぶつかると慣性の法則でいろんな方向に動き回るので、かなりカオスな感じになりますね(笑)。

レベルが上がると使える善玉菌がアンロックされて、ゲーム内コインで購入できるんです。それぞれ、物理法則が違っていて、重たいコもいれば、跳ねまくるコもいたり。育成要素もありますよ。一応、社内ではかなりブームになっています(笑)。

▲新作の『腸内戦争』。善玉菌が跳ね返りながら悪玉菌をやっつけていきます。爽快感バツグン!

——ガラリと変わった内容ですね。それにしても『腸内戦争』でもう3作目。すごいスピードですね。

エニム 最初に『勇者』を作ってから、『あのうた』を作りました。そして、『腸内戦争』を作り始めて年が明けて。年明けから『勇者』がなんだかグイグイ上がってきて、続編という流れになりました。ふたりとも作るのが早いですし、物事を決めたり何をするにも早いので……。疾走感があるというか。そこが小さな組織で活動するメリットではあると思います。

——では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

エニム 続編を待っていただいている皆さんの期待に応えられるよう、ネタを散りばめながらがんばっております。それまで『腸内戦争』で遊びながらお待ちいただければと思います。これからも、いろんな方に楽しんでいただけるようにゲームを作っていきたいと思っています。『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』のように、遊んでくれた人の心に残るような作品が生み出せたらいいですね。

『あのうた』のダウンロードはこちらから

『腸内戦争』のダウンロードはこちらから

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あいつ勇者やめるって

ジャンル
脱出ゲーム
メーカー
HappyHoppyHappy Co.,Ltd.
配信日
配信中
価格
無料
対応機種
iOS 6.0 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。 iPhone 5 用に最適化済み。Android 3.2 以上。

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