『つみネコ』が5周年アップデートを実施!そしてこの5年を振り返ってもらいました(ブレイク編)
2014-01-19 17:00 投稿
売れ続けたワケとは?
ビースリー・ユナイテッドのスマートフォン向けアプリ『つみネコ』の配信5周年を記念したインタビュー企画の第2回。後編では『つみネコ』ブレイクのきっかけから、その火を絶やさずにいられた秘訣を聞いてきた。
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人脈作りが功を奏していいスタートが切れた
――『つみネコ』が売れたのはラッキーだったとおっしゃいましたが、でもそれだけではないですよね?
鈴木 そうですね、僕はBtoB(企業が企業向けに行う事業)をやってきていたから、それまでの人脈だったり、進め方の安定感は一定程度あったと思います。『つみネコ』のリリース時には、そういう人の繋がりや広がりがあったからこそという場面が何度もありました。
最初は、つみネコをリリースした直後の2009年の1月、サンフランシスコで行われたMacWorld開催期間に合わせ、日米のメディア向けに日本のiPhoneアプリ開発者達がそれぞれのアプリのプレゼンをするという企画“日本製iPhoneアプリ開発者とブロガーの夕べ in SF“というイベントに、ご縁あって参加させてもらった所にあります。当時はまだ受託企業上がりでメディアとのコネクションも無く、有効なプロモーション手段を持っていませんでしたから、このように一度に沢山のメディアの前でプレゼン出来る機会を貰った事は本当にラッキーでした。
それに会場はサンフランシスコにあるsix apartさんでしたが、その様子はUSTREAMでも配信していた事もあり、その場にいなかったメディアも記事にしてくれた事で、思ってもみなかった国で話題になったりと、期待を大きく上回る結果を得る事が出来ました。
――それ、iPhone初期のエピソードって感じがしますね。当時のムーブメントっぽい。
鈴木 ですね。あとは、このイベントがきっかけで、Appleさんのピックアップを頂けた事が大きいですね。AppStoreのPickUPバナーやAppleストア店頭のデモアプリに採用してもらったり、あのあたりがひとつの山だったと思います。特にAppleストアのデモ機に入れて頂いていた期間はかなり長かったので、そこで知っていただいた方も多かったんじゃないかな?
――その流れはいまじゃ考えられないですね。
鈴木 そうですね。つみネコはタッチ操作と傾きのセンサーを使っているので、iPhoneの特徴を図らずも活かしていた事が採用に繋がったんだと思います。今も店頭のデモアプリはありますが、当時のプロモーション効果は今に比べてとても大きかったと思いますよ。
――ああ、たしかにそうですね。ところで、『つみネコ』は有料アプリとして出していますけど、最初からその予定だったんですか?
鈴木 開発中いろんな人に見てもらいましたけど、みんなに「無料でしょ?コレ」って言われていました(笑)。
――なぜその選択肢を選ばなかったんですか?
鈴木 当時は無料でやった場合、どの位の収益になるのか全然イメージがわからなかったんですよ。なのでとりあえず有料で出しました。自分たちがウケたから出してみようって。そんな感覚ですよ。当時は本当に何も考えていなかった。まあ、今でもそんなに考えていないですけど(笑)。
――それは意外ですね(笑)。
鈴木 おもしろかったら投げ銭をもらえるでしょっていうくらいの感覚なので、とにかくおもしろいコンテンツを作る事だけを考えています。当然売れるべく手は尽くしますが、売上の計画的なものはどのようにでも書けてしまうので一切書きません。計算機は一応数回弾いてみる程度です(笑)。
グッズ展開からさらなる飛躍を果たす
――iPhoneアプリのキャラクターでグッズ化したのは『つみネコ』が先駆けでしたよね。
鈴木 つみネコリリースから1年くらい経った時に、玩具会社から連絡が来たのが始まりです。最初の商品は奇譚クラブさんというガチャポンメーカーが作ってくれたネコのフィギュアだったのですが、これがもの凄く良く出来ていたのと、とても沢山売れた事でその後の商品化に弾みがつきました。1個200円のガチャポンカプセルのフィギュアが第一弾二弾合わせて70万個売れたんですよ。
――70万個!!! ガチャポンってそんなに売れるんですか?
鈴木 通常ガチャポンの商品って1つの企画で6万個くらい売れるとまぁまぁだねって言われるらしいので、その数字は驚異的みたいですね。ガチャポンの流通はちょっと変わっていて、ジュースの自動販売機みたいに流通の店頭に置いてあっても、このガチャ機に商品を仕入れる会社は別だったりします。実はこの仕組みのおかげでそれまでライセンスビジネス素人だったにも拘らず、100以上もの商品を世に送り出す事が出来た秘密があります。
――詳しく教えていただけますか?
鈴木 尖った雑貨を置いているヴィレッジヴァンガードという人気の雑貨チェーン店がありますが、そのお店の入り口付近にもガチャポンマシーンが沢山置いてあります。お客様はそこに置いてある筐体はヴィレッジヴァンガードのモノだと思うので、当然ここに入っている商品に関する問い合わせはその店員に行きますよね。
当時つみネコ公式Twitterでは、グッズの商品化までの過程を公開していた事もあり、発売時には楽しみに待っていただいていたファンの方々が、近くにあるガチャポンコーナーに探しに行っていただいたのですが、フィギュアの第一弾生産量は多くなかった為、なかなか見つける事が出来なかったのです。ガチャポンコーナーがあるヴィレッジヴァンガードにも多くの方が探しに行っていただいたのですが、置いてなかったり、売り切れていたりとなっていました。
そこでお客様は店員さんに「つみネコはないんですか?」と声をかける事になります。これが短期間に各地で起きたのでしょう。その情報がヴィレッジヴァンガードの本部に伝わり→何かよく分からないけど「つみネコ」っていうキャラクターがキテるみたいだから仕入れよう→まだ雑貨ラインでは商品化されていない事を知る→本部に出入りしているメーカーに「つみネコを商品化してよ」と声をかけていただいた、という流れのようなのです。実際時を同じくして複数のメーカーさんから商品化の問い合わせをいただきました。
――いちばん大変だったのはどういった事ですか?
鈴木 業界自体を知らなかった事で、どのメーカーさんとどういった契約を結べば良いのかから分かりませんでした。それまで周りにライセンスビジネス関係者が居なかったので、ブレーンがおらず、戦略が立てられませんでしたね。
クリエイティブ的にも、ゲーム上で動くキャラクターのカットしか無かったですから、メーカーさんに渡すアートワークやレギュレーションも一から作る必要がありました。もがきながらも慎重に進めたつもりですが、やはりこちらがライセンサーとしてのビジネスの要諦を押さえていない事で、メーカーさんに迷惑をかけた部分も多かったと思います。
――ライセンスビジネスに参入して一番の収穫はどういう事でしょう?
鈴木 2つあって、一つ目は、iPhone自体が注目されていたあの時代に、そこで人気の「つみネコ」というアプリが世界で初めてグッズ化を果たした! と、ニュース性を持って広がった事で、その後それまでのアプリ紹介をメインにしていたネット媒体のみならず、TVの番組でも度々取り上げていただく機会が増えました。知っていただく方が格段に増えた事ですね。例えば朝の情報番組ではAKBメンバーがつみネコで勝負をして、勝った方がグッズを貰えるという企画をやってくれたり、深夜番組では私自身を日本で一番アプリで稼いだ男として担いでいただいたり。あ、これは事実とは全然違いますけどね(笑)。とても沢山の人に『つみネコ』という名前を知っていただくキッカケになりました。
2つ目の収穫は、グッズを通してファン層が広がった事です。具体的にはiPhoneは持っていないけれど、グッズは持っているという方ですね。たまたま立ち寄った店頭に並んでいた商品や、友人がデスク周りで並べたフィギュアから、可愛いネコのグッズとして知り、ファンになっていただいたという方。グッズがフィギュアからステーショナリー、ぬいぐるみと広がって行くに連れて、アプリ側のユーザー属性も次第に女性比率が高くなってきた事から、グッズで知ってアプリを購入していただく方が結構いたのではないかと考えています。
――すごいですね。ファンが移り変わっていくというのはおもしろいです。
鈴木 iPhoneの初期ユーザーに30代男性が多かったからなのでしょうが、アプリを直接の購入していただいた方と、つみネコの初期のユーザーは同じような属性だったと思います。でも、当初から直接の購入者である30代男性が、家では小さな子供と一緒に遊んだり、外では女性と話すネタに使ったりするシーンもよく見ていました。最近ではお年寄りのファンも多く、つみネコはユーザーの幅がとても広いのが特徴の一つとなっています。以前アンケートを取って、ビックリした事があります。90%の人がネコ大好き、60%の人がネコを飼っている、もしくは家族が飼っていると答えたからです。じつはつみネコのファンは完全にネコのファンだったという事なんです。可愛いネコキャラで興味を持っていただき簡単ゲームでハマる。それが全てだったのです(笑)。
――そうなると簡単なところに振り切ったのは大きな判断だったんですね。
鈴木 そういう意味では早い段階でオフ会に行ってよかったですね。iPhoneの可能性を考えたら“1年先で待ちましょう”っていう考えに至ったのは、リアリティーがあったからで、そこから導き出したキーワード「動物で簡単ゲーム」は、ごく自然な流れでしたからね。
――最近コラボも頻繁にやられていますよね。あれはもう1回ブームを起こしたいと?
※『クックと魔法のレシピ』が『つみネコ』と過去最大級のコラボ
※『つみネコ』×『ハッピーストリート』コラボ 村人の頭につみネコがいっぱい
鈴木 ブームを狙うというのとは違うのですが、ブランドって常に新しい取り組みをやっていかないと陳腐化してしまうので、つみネコも常に新しい可能性を模索しています。キャラクターを活かしたシリーズアプリを出したり、グッズ化したりするのは、既存ファンにつみネコの新しい一面(可能性)を見てもらい、つみネコを知らなかった人へもアプローチするという意味があります。その延長線上にコラボもあります。
今まではつみネコ側に他のキャラクターを招き入れる準備が整っていなかったので、コラボではネコ達を貸し出す形で行っていましたが、今は様々なキャラクターや背景でゲームが遊べる準備が整っています。季節ごとに違った背景のステージを用意したり、ネコ以外のキャラクターを積んだりと、ちょっと驚くような展開ができればいいなと考えています。
――では今後はそういうコラボを期待していいということですね。
鈴木 相手あっての事なので何とも言えませんが、どんどんやってみたいですね。それなら面白い展開が出来るよ、というイメージをお持ちのIPの方ご連絡お待ちしています(笑)。
――『つみネコ』の派生タイトルはいくつか出ていますけど、完全新作というのは考えていないのでしょうか?
鈴木 世に出せているアプリの数は多くはないのですが、いろいろ作ってはいるんですよ。Vegetable Allianceという簡単ゲーム×可愛い野菜キャラクターのシリーズとかね。今も取り組んでいる新作があり、春頃にはリリース予定なのですが、これも相当ハートを打ち抜ける仕上がりになると思いますので、ご期待いただきたいですね。なかなかコンスタントにアプリをリリース出来ていませんが、当然何もしていない訳ではないですよ(笑)。途中まで作って没ってっているんです。出さなかったものを合わせると結構あったりします。そこまで作ったら出せばいいと言われますけど、やっぱり作り手側が完全に自信を持って出せなければ、その先にいるお客様のハートは打ち抜けないでしょ?
――イメージは大切ですもんね。アニメなどの横展開は……?
鈴木 アニメはさすがに僕らのフィールドじゃ難しいかなと思っています。あとはいままでネコはしゃべらないできたのでやりにくいという部分もあります。無声映画みたいになってしまうから。それはそれでシュールでいいのかもしれないけど、それは4コマでやっていることなんですよね。
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最新バージョンの『つみネコ』をチェック
記者も配信後間もなく本作をダウンロードし、以降ずっとスマホ内にある定番アプリとして定着しているが、起動率という点ではほかのアプリよりも低かったのが正直なところ。しかし、久しぶりに起動してみるとさまざまな要素が追加されており、現在の最新アプリと比べても何ら見劣りする点はなく、それどころかより“楽しい”アプリとして進化していた。ここでは簡単ではあるが、現在の『つみネコ』について紹介したいと思う。
といった具合にステージも増えてメニューも充実し、ずいぶんにぎやかになっているのだ。もちろんiPhone 5以降の4インチディスプレイにも対応しているので、記者のような以前ダウンロードして久しぶりに起動するという人には、かなり遊びやすく感じるのではないだろうか。
ひとりで遊んでもネコの声に癒されつつ熱中できるし時を経ても変わらず楽しめる定番アプリのひとつとして、いまもってなおオススメできる1本だ。
つみネコ
- メーカー
- ビースリー・ユナイテッド
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料※
- 対応機種
- iOS 4.3 以降
- 備考
- ※プレイするにはdocomoのアプリ使い放題の月額制サービス“スゴ得”に登録する必要があります。
※AppStore版は100円[税込]になります。
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